その手を   作:アイリスさん

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んー、やっぱり‥‥‥。
13話。盛大なるフラグ回です。何の、かは言えません。

敢えて一言言うならば『旗艦大和、推して参ります』と書きたかった。

では、本編へ。


sentence13 再会

「ああ、何時もすまないね」

 

執務室。山本が話している相手は、黒髪の少女。

白がベースのジャージらしき上着に紺の超ミニスカート。敬礼している所を見るに、やはり軍属の艦娘。

 

「いえ。今回は事情が事情ですから。皆さんに宜しくお伝えください」

 

彼女が持ってきたのは、弾薬や燃料など補給用の物質。それと、間宮特製のアイス等のスイーツ類。先の戦艦水鬼のイレギュラーの一件で、関東一帯の鎮守府を急遽廻らされている補給艦、速吸だ。

 

「速吸ちゃん、帰りの海も気をつけてくださいなのです」

 

「はい。ありがとうございます、電秘書艦」

 

心配してくれた電と山本に再度敬礼した速吸は、クルリと回れ右。「では、失礼します」という言葉と共に退室していった。

速吸にもちゃんと護衛が付いているが、もしも戦艦水鬼と対峙した時に果たして無事で済むかどうか。彼女達補給艦にとっても海上は戦場だ。

 

「しかしな‥‥‥アイツも余計な事を‥‥‥」

 

頭を悩ます山本。「そんな事ないのです。今の電達には、とっても有り難い事なのです」とフォローをしている電も、どうしたものか悩んでいるのは同じ。

速吸とは別に、横須賀からある艦娘が来てしまったのだ。因みに山本の発言の『アイツ』とは勿論、横須賀鎮守府の提督を指す。『グラーフと金剛が戦艦水鬼に襲われた』と聞き付け、態々工作艦を寄越したのだ。横須賀の提督の魂胆が透けて見えるようだ。‥‥‥大方、大鳳に『力になってあげて』と言われてふたつ返事で快諾した、という所だろう。武蔵の発言からも分かる通り、横須賀の提督は大鳳が大好きで大好きで仕方ないのだ。

因みに、横須賀の提督は(大鳳の事以外は)軍人としては優秀。今回の戦艦水鬼のイレギュラーの件に関しては彼にとっても完全なる誤算だったであろう。

 

「しかしだな‥‥‥こんごうの事が明石にバレると、なし崩し的に広まってしまう可能性もあるしな。大本営には知られる訳には‥‥‥」

 

工作艦明石。速吸と共に来て、この鎮守府に暫く滞在する事になった。主な任務はこの鎮守府の艦娘の艤装、装備品の改修。各所を回っている彼女は色々と鋭い。実は憲兵よりも厄介かも知れない。

 

「‥‥‥なのです」と困った顔で先程受け取った荷物のリストに目を通す、ソファに腰掛ける電。後ろから覗くようにそれを見た山本がある部分で目を止めて指差した。

 

「買収、してみるか?」

 

山本の指差した部分は、間宮謹製のスイーツのリスト。電は右手で山本の制服の袖を掴んで引っ張りながら、フルフルと頭を左右に振って否定する。

 

「駄目なのです。買収はやっぱり良くないのです。それに、間宮さんのスイーツは皆さんも楽しみに待っているのです」

 

「ああ、そうだな。電も楽しみにしてた、もんな」

 

本心を見抜かれて恥ずかしかったらしく、耳と頬を染める電。か細い声で「十三さんは、意地悪なのです」と抗議の姿勢だけは見せるものの、それ以上は言ってこない。

 

「ごめんごめん。後で食べに行こうか」

 

コクン、と頷きそれに同意した電。その右手の薬指には、貰ったプラチナの指輪。因みに今の二人の体勢はと言えば、物資の搬入リストを左手に持った電を、山本が後ろから抱き絞めている状態。電の右手が、山本の右手の袖を掴んでいる。‥‥‥横須賀の事は言えないようだ。

 

******

 

ピンク色の長い髪を一部おさげにし、赤いリボンの付いたセーラー服を着て、腰回りの露出したミニスカート(本人曰く、行灯袴を詰めた)からは、スラリと綺麗な細い脚が伸びる。細身ながらも女性として主張する部分は主張している。整った顔立ちな事もあり、世の男性には少々扇情的な格好の工作艦・明石は工厰へと向かっていた。

パタン、と扉を開くと、熱帯魚の水槽が幾つも目に飛び込んでくる。備えられた椅子に座り、(はぁ~癒される‥‥‥やっぱり此処に転属したいなぁ)等と考えながら暫し見蕩れる。

山本提督への挨拶は、先程済ませてきた。電の右手に光る指輪が『ケッコンカッコカリ』用の物とは違う事を直ぐに見抜き、ニヤニヤしながら二人を眺めていたら『工厰でも見てきたらどうだ?』と追い出された。

 

(全く山本提督も電ちゃんも‥‥‥少しからかっちゃおうと思ってただけなのに)

 

一人心の中で文句をいいながら、立ち上がる。階段を下りて、向かうは下の階にある開発、改修工厰へ。

 

(ドックが工事中って‥‥‥例の深海棲艦対策に大型艦が建造できるようにでもしてるんですかね~)

 

そう。建造ドックは工事中だから近付くな、と忠告された。それらしく『工事中』という札が提げられた扉。勝手に入られて四番ドックを見られては困る、という山本の苦肉の策だが、近付くなと言われれば見たくもなる。それに、もしかしたら最新鋭の設備が見られるかも知れないという、明石自身の好奇心。悪いとは思いながらも、明石は扉に手を掛けてゆっくりと開く。

 

「んんっ?」

 

見た所、改修しているような痕跡はゼロ。一番と二番は前回来た時と何ら変わっていないし、三番ドックも使われた形跡が無い。

 

(あっれ~?工事中だって言ってたのに‥‥‥)

 

不思議に思いながら四番ドックに目をやると、扉が微かに開いていて中からは光が洩れている。(ああ、此処かぁ)と一人納得し、明石はそっと中を覗く。

 

(へぇ‥‥‥随分弄って‥‥‥ん?)

 

勿論、中は建造ドックとはかけ離れた施設となっている。興味深げに見ている明石の瞳に留まったのは、今まで見たことの無い艤装‥‥‥『こんごう』の艤装。それと、夥しい数のミサイル。

 

(え?待って‥‥‥何あれ?)

 

もう少し良く見たい、と思わず一歩踏み出してしまった。つい今まで他の妖精さん達に指示を出していた『こんごう』妖精さんが気付き、目が合った。

 

「あ‥‥‥アハハハ‥‥‥かっ、変わった装備ですね」

 

『こんごう』妖精さんに、勿論聞かれた。『山本提督の許可はとったのか?』と。此処で真実を言ってしまえば、もしかしたらこの興味深い未知の艤装が永遠に見れなくなるかも知れない。そう思った明石は迷い無く、満面の笑みで答えた。

 

「勿論ですよ!取ったに決まってるじゃないですか!」

 

そこからは、得意気な『こんごう』妖精さんの説明が続いた。対艦ミサイルや三連短魚雷の性能、こんごうの艤装のレーダーなどについて。

 

「自動追尾なんて‥‥‥凄いですね‥‥‥‥」

 

感嘆の声を漏らす。この高性能電探と自動追尾する魚雷や対艦ミサイルを各艦に実装できれば、砲雷撃戦が格段に此方に有利となり、敵をより安全に、より確実に撃破できる。うんうん、と頷きながら『こんごう』妖精さんの話に聞き入る明石は「そういえば」と先程から少しばかり気になっていた事を口にする。

 

「あの‥‥‥金剛さんの口調、ブームか何かなんですか?」

 

先程から『金剛語』で話している『こんごう』妖精さんはサムズアップ。どうやら『こんごう』妖精さんの中では金剛の特徴的な話し方がブーム、のようだ。そういえばこの『こんごう』妖精さん、どことなく金剛に似ている。

 

「あ、やっぱりそうなんですね。‥‥‥思ったんですけど、どうしてこの装備って金剛さんだけなんですか?皆さんに装備して貰った方が戦力は格段に上がると思いますけど。やっぱり資材の関係ですかね?」

 

‥‥‥この質問が不味かった。明石本人にそんな気は全く無かったが、『こんごう』妖精さんから見れば『明石は今の『こんごう』の事を全く話してもらっていない』と自白しているのと同じ。『こんごう』妖精さんの表情は一瞬にして固まり、何も言わずに走って何処かへと行ってしまった。

 

(何か不味かった?)

 

首を傾げた明石。突如、背後からゾッとするような気配を感じた。ガシッ、と右腕を掴まれる。恐る恐る振り向くと‥‥‥そこには呉に居るとばかり思っていた大和が‥‥‥肩に『こんごう』妖精さんを乗せて立っていた。

 

「えっ?大和さん!?どうして此処に!?」

 

「明石さん、少しお顔を貸して頂けませんか?」

 

******

 

その頃。入渠を終えた比叡が部屋へと戻ってくる。「こんごうさん、只今戻りました!」と扉を開いてみると、こんごうは椅子に座ったままの姿勢でうたた寝していた。テーブルには料理本。開かれているのはスコーンの作り方の書かれたページ。

 

「‥‥‥こんごうさん」

 

比叡はこんごうを起こさないようそっと隣に座る。少しでも『金剛』に近付こうとしてくれているのか。きっと‥‥‥。

 

「比叡の為‥‥‥ですか?こんごうさん」

 

一人呟く。椅子に寄りかかってチラチラと見ていた比叡だったが、椅子を向かい合わせに移動し、座って正面から見つめてみる。

見れば見るほど、姉である金剛と瓜二つ。

 

「‥‥‥『お姉さま』」

 

こんごうのプニプニした頬に両手で触れる。比叡の顔は、吸い込まれるようにこんごうの唇に近付いていく‥‥‥。

 

コンコン、と突然のノック音。思わず「んびゃぁぁぁぁあ!?」と奇声をあげてしまった比叡は我に返り、慌ててこんごうの頬から手を離した。

 

「失礼します、比叡さん」

 

入って来たのは大和と明石、それに『こんごう』妖精さんの3人(?)。

 

「なっ、何もッ!比叡はッ!何もッ!してませんからッ!」

 

その余りの慌てように少しは疑問はあるらしいが、大和は動じる様子はない。「少しお時間宜しいでしょうか?」と、比叡とどうやら目覚めたらしいこんごうに問うてきた。

 

「何かお話ですか?‥‥‥って明石さん!?どうしてこの鎮守府に!?」

 

今更ながら明石の存在に気付いた比叡。寝起きのこんごうの「明石さんって、此方の方ですか?」という口調に驚いている明石の肩に座る、『こんごう』妖精さんが手に持ちヒラヒラさせている間宮アイスの引換券5枚に視線を奪われながらも、大和に答えた。

 

「これからですか?えっと、食堂で、ですよね?」

 

 

 

5人(?)は食堂に移動。赤城やグラーフ、夕立、電、山本までもが既に先客として間宮謹製のスイーツにうつつを抜かしていた。

 

瞳をキラキラさせながらアイスを頬張る『こんごう』妖精さんを横目に、各々もアイスを食べながら。大和が比叡とこんごうに視線を向けて切り出した。

 

「お二人とも。『金剛』さんと『こんごう』さんについて、明石さんにお話を」

 

当然ながら、明石には意味が理解できず。「ん?んんっ?」と首を傾げている。

 

チラリ、と山本に視線を向けた大和。山本の方も気付いたらしく「はぁ」と溜め息をついた後、コクリと無言で頷いている。それを確認し、大和は話し出した。

 

「明石さん、先ず理解して置いて欲しい事があります。今から話す事は横須賀鎮守府には勿論のこと、他の鎮守府、大本営にも一切秘密にしてください」

 

「‥‥‥理由は?」

 

大本営にも、と言われ明石の目つきが変わった。鋭い瞳がこんごうへと向く。

 

「それはですね」と大和が話そうとしたその時。警報が鳴り響く。少し間を置いて、青葉が食堂へと駆け込んできて、山本目掛け怒鳴る。

 

「司令官っ!緊急の応援要請です!」

 

******

 

明石への説明は先伸ばし。艤装を装備し海上で待機済みの六人、旗艦大和、グラーフ、比叡、夕立、電、そしてこんごうに、山本からの無線。

 

『いいか、六人とも。交戦中の北上、大井と合流、敵艦隊を殲滅してくれ。敵艦隊は12。リ級4、ヲ級2、イ級5。敵旗艦は南方棲鬼だ。一人も欠ける事無く必ず全員で帰還しろ』

 

送られてきた南方棲鬼の写真。遠くとも分かる。大和はそれを握り締め「武蔵‥‥‥私に会いに来たのですね」と密かに呟き、無線をオンにして声を張る。

 

「山本少佐、承知致しました。これより第一艦隊、敵艦隊殲滅に向かいます。‥‥‥旗艦大和、推して参ります!」

 

 

 




はい、山本の鎮守府の臨時第一艦隊(全員キラ付け済み)。

戦艦大和(旗艦)
空母グラーフ
戦艦比叡
駆逐艦夕立
駆逐艦電
駆逐艦こんごう

ラストバトルもこの艦隊になる予定。

そういえば、2015艦娘人気ランキングなるものを発見しました。1位は安定の加賀さん。2位はあざとさで初心者ホイホイの島風。3位は六駆のエース、ヴェールヌイでした。
‥‥‥あれ?この3人ってここのSSに未登場‥‥‥べっ、別に気にしてないし!4位の電ちゃんが出てるし(震え声)
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