その手を   作:アイリスさん

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17話。こんごうさん、悩む。
此処までで伏線は殆んど回収したかな?後は‥‥‥

本編へ。


sentence17 Who am I?

 

その場にいるほぼ全員が疲れ切ってへたり込み、肩で息をしている。汗だくで立ち上がる事もままならず、中には地面に横になってしまっている者までいる。

 

「1日目だし、こんなものかしらね」

 

こんな事をさらっと漏らす足柄。彼女も周りの駆逐艦達と全く同じメニューをこなしていたにも関わらず、平然とした顔をしている。

 

足柄は周りを見回し、春雨に向かって真っ直ぐ歩いていく。地面に倒れ動けない様子の春雨を見下ろし、厳しい視線を向けた。

 

「夕立の妹‥‥‥だったわね。ハッキリ言って話にもならないわ。全然駄目。明日の朝から走り込みしなさい。それと、今日の内容の復習も、よ?」

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ‥‥‥はい、教官」

 

息も絶え絶え、やっとの事で返事をした春雨。足柄のその余りの言い種に辛くて涙を溜めていて、今にも泣きそうな表情をしている。

 

「それから、夕立」

 

そんな春雨をその場で見下ろしたまま、今度は夕立に声を掛けた足柄。「はい」と答えた、立って息を整えていた夕立の感情を逆撫でするような言葉を発した。

 

「戦艦水鬼との戦いで、万が一この子が沈むような事態になっても助けに行っちゃ駄目よ。その時は諦めなさい」

 

春雨の我慢が限界を迎え、涙が溢れ出す。それと同タイミングで激昂した夕立が物凄い剣幕で足柄に食って掛かる。

 

「幾ら教官でも言っていい事と悪い事があるっぽい!!取り消してっ!!」

 

今にも殴りかかろうとしている夕立を、こんごうが後ろから抑えた。「放してっ」と逃れようと藻掻く夕立は、近付いてきた足柄を怒りの籠った瞳で睨む。その夕立の左頬が、足柄の右掌に打たれた。

 

「自分の立場を弁えなさい、夕立。春雨が原因で貴女が沈むような事態になったら、それこそ万に一つかも知れない勝機が潰える事になるのよ?今や貴女は日本の駆逐艦のエースと言っても過言じゃ無いの。その貴女が沈むって事が他の艦娘達にどれ程影響するか理解しなさい」

 

夕立が拳を握り締め、奥歯を噛んで黙った。夕立にだって、『日本の駆逐艦最強』という自負はある。でなければ、あんな特攻紛いの突撃などしない。ただ、足柄の言うような事は考えもしなかった。もし自分が轟沈した時に周りが受ける影響。横須賀の連合艦隊が戦艦水鬼のイレギュラーにやられた、という事を聞いた時は確かに衝撃があった。しかしながら、それでも『自分なら』とか『大和と一緒なら負けない』という思いはある。ただ、それは自分が夕立だからだ。他の艦娘達‥‥‥特に駆逐艦の子達からしたら、あの武蔵や陸奥を擁した横須賀の第一艦隊で歯が立たなかった相手に萎縮してしまうのは当然。そこにもし夕立や大和まで轟沈させられた、という事態になれば、それこそ駆逐艦でなくても戦意喪失してしまうかも知れない。そうなれば、日本という国にとって危機だ。

 

「だからって!」と漸く言葉を絞りだした夕立を遮るように、足柄は続ける。

 

「みんなもいい?これは‥‥‥遊びじゃないのよ。戦艦水鬼との一戦には、この国の存亡が掛かってるって言ってもいい。だから‥‥‥打てる手は全て打つ。貴女達も、生き残りたいのなら必死に付いてきなさい。それが出来ないのなら、海軍を辞めて故郷に帰りなさい」

 

それだけ言い残し、足柄が戻っていく。こんごうが手を放すと、夕立は項垂れて「ごめん、春雨」とだけ呟いた。

 

「‥‥‥大丈夫です、夕立姉さん。私‥‥‥姉さんの足を引っ張りたくないですから」

 

涙で濡れた顔を手で拭って、春雨は立ち上がった。汚れを流そうと入渠に向かう辛そうな小さな背中を、夕立とこんごうはただ見つめる事しか出来なかった。

 

******

 

一方。此方も足柄にしごかれて、電は部屋のベッドで仮眠中。そこにソロリ、ソロリ、と近付く小さな影。

 

(Targetロックオンデース)

 

小さな身体は、隠密行動にうってつけ。金剛は電に気付かれる事無くベッドによじ登る。

 

(電ばっかりズルいネ!ワタシもテートクから指輪欲しいデース!)

 

目標、電の右手薬指。そこに嵌まった指輪だ。

 

(嵌められなくても、首から提げればOKネ!)

 

電の右手の掌の前まで来た金剛だが、ふとある事に気が付いた。ケッコンカッコカリの指輪は、左手の薬指に嵌めるものだ。にも関わらず、電は右手に嵌めている。これは、どういう事なのか。

 

(Why?そういえばどうして右手なんでしょうネ?)

 

近くでマジマジと指輪を見つめてみて、気付いた。電がしている指輪は‥‥‥艦娘の装備品では無かったのだ。

 

(What!?コレは‥‥‥!!)

 

指輪に手を掛けた所で、ガチャリ、と扉が開いた。慌てて両手を引っ込め恨めしそうに指輪を見つめた金剛に声を掛けたのは、雷だ。

 

「あれ?こんごうさんの妖精さん?こんな所で何してるの?」

 

『なっ‥‥‥何でもないデース!電の様子を見に来ただけネー!』

 

「ふーん‥‥‥」と怪しむ視線の雷から逃げるように部屋から退散。金剛は仕方無くこんごうの所へ戻ろうと歩く。

 

(テートクぅ‥‥‥電にengagement ringなんて聞いてないデース‥‥‥)

 

ガックリと肩を落とし、トボトボと歩く金剛。何処か締まりが無いように見えてしまうのは、彼女が二頭身の妖精の姿だからだろうか。

 

「金剛、いいかしら?」

 

突然後ろから声をかけられた。『What?』と項垂れたまま振り向くと、そこに立っていたのは足柄。

 

『テートクから聞いたんデスか?』

 

「あの子‥‥‥『こんごう』って何なの?」

 

表情を引き締め直した金剛が、足柄の肩に乗る。話し難い事だし、周りに聞かれるのは余り良くないと判断し、足柄が間借りした部屋へと移動。

 

『あの子‥‥‥こんごうは‥‥‥』

 

金剛は数日前の事を話した。比叡達を助ける為に自身が轟沈したこと。その際に金剛の肉体は軍艦の魂に侵され深海棲艦化してしまった事。それと、最後の力で温かい光に縋りついた事。

 

「それ、本当なの?」

 

『こんごうは何も覚えてないデース。互いの魂がfusionした時に彼女のmemoryがresetされたんだと思いマス』

 

足柄は、耳を疑った。金剛が最後に縋った光は‥‥‥初代の漣の魂だったというのだ。

つまり、日本最初の艦娘『駆逐艦 漣』の魂と『高速戦艦 金剛』の魂が混ざって生まれたのが『護衛艦こんごう』だと。

 

「だから、こんごうは駆逐艦?」

 

『Yes。ワタシの意思を尊重してくれて、姿は譲ってくれまシタ。but、どうしてこんなequipmentなのかは分かりまセンネ‥‥‥‥‥‥聞かれましたネ』

 

金剛が扉の方に目を向けた。足柄が立ち上がって扉を開けると、逃げるように走り去っていく後ろ姿。間違いなく、こんごうだった。

 

『‥‥‥problemが増えたデース』

 

******

 

(漣?サザナミって誰?)

 

勢いでついつい逃げてしまった。金剛は何となく分かるが、降って湧いたような『漣』という人物の名。戸惑うのも無理はない。

 

(どうして‥‥‥どうして言ってくれなかったの?‥‥‥金剛さん)

 

他の子とは違ってはいるものの、『金剛』の事も妖精さんだとばかり思っていた。どうして今まで、いや、今なお、こんごうに打ち明けてくれないのか。そんな思いばかりが頭を巡る。

 

(‥‥‥そうだ、もう一人の妖精さんに聞けば、教えてくれるかも)

 

妖精『金剛』とは別の、もう一人の『こんごう』妖精さん。彼女なら、きっと詳しく教えてくれる。そう思い走る。扉を開き、階段を下りて、四番ドックへ。

 

結論から言えば、もう一人の『こんごう』妖精さんは何も知らなかった。金剛の言った通り、やはり融合時に記憶が失われたのだろうか。

 

その『こんごう』妖精さんと一時別れ、トボトボと脱力して歩く。

熱帯魚の水槽の並んだ部屋の前まで戻ると、人の気配。どうやら中にいるのは足柄と金剛、それと明石。足柄達とは今は顔を会わせ難いこんごうは、部屋の外から暫く様子を伺う。声だけが聞こえてくる‥‥‥。

 

「足柄さん、あんな言い方しちゃって良かったんですか?あれじゃ足柄さんが悪人ですよ?」

 

「春雨の事?‥‥‥仕方無いわ。今、夕立を失う訳にはいかない。それに‥‥‥いざって時は私が助けに入る。命に代えても、ね」

 

昼間に話していた時と、若干だがニュアンスが違う。目的の為なら切り捨てろ、と言っていたのかと思っていたが、どうも違うようだ。

 

『教官‥‥‥春雨の事、本当はどう思ってるデスか?』

 

「そうね‥‥‥悪くない。少なくとも私よりは才能有るんじゃないかしら。まあ、本人のやる気次第だけどね」

 

‥‥‥昼間のあれは、足柄なりのエールだったというのか。何という回りくどい言い回しか。思わず部屋に入って声を掛けようとしたが、金剛とどう話していいか戸惑い、結局その場を離れドックの方へと戻る。確か、一番ドックから海へと出られた筈。海面からぐるりと回って、表から戻ればいい。

 

海を回り、浜に出た。深海棲艦が現れる前ならば、夏になれば海水浴客で溢れていたであろう砂浜。

その浜の上、道路と防波堤の間に設置されている小さな駐車場。そこに置かれたベンチに座り、今は穏やかな海を眺める。

 

『やっと追い付いたネ』

 

眺め、暫し経った頃。道路沿いにトコトコと近付いて来たのは、妖精金剛。鎮守府を抜けて此処まで歩いてきたようだ。

 

『言わなかった事は謝りマス。ワタシも自分の記憶に気付いたばかりネ。電と大和とmeasurementした後‥‥‥丁度こんごうがワタシの記憶を覗いた後デス』

 

「教えて、金剛さん。私は‥‥‥何なの?」

 

潤む瞳を向けた。金剛は柔らかな笑みを見せ、こんごうの膝に座る。

 

『元はワタシと漣かも知れまセンが‥‥‥こんごうはこんごうデース』

 

金剛の話は分かるようで分からなかった。そもそも『魂が融合して一人の人間を形成している』という事自体謎だし、妖精『金剛』がこんごうの魂の延長でこんごうの一部、という話もピンと来ない。

 

『気にする必要無いネ。『こんごう』はこんごうで、一人の人間デス。それだけ有れば充分デース』

 

「私は、私‥‥‥?」

 

『Yes!』と振り向きサムズアップした金剛に、こんごうは微かに微笑む。自分の一部に慰められるというのも不思議な感じだが、少しは気が楽になった。自分は自分。それでいいんだ、と。

 

『それと、比叡にはまだSecretでお願いするヨ。貞操の危機を感じマス』

 

比叡が放送出来ないようなニヤけ顔で妖精『金剛』に襲いかかる場面を想像できてしまい、クスッと思わず吹き出したこんごう。「はい、金剛さん」と今度は間違いなく笑みで答え、膝の上の金剛を抱き上げた。

 

 




足柄さん、今は悪役に徹するようです。全ては全員を生還させる為。とはいえ、春雨ちゃんにはちょっと辛かったようです。

これで山本を諦める金剛さんではない‥‥‥

あ、これ漣フラグじゃんよ‥‥‥

******
注意:以下のコーナーのみ作者の気紛れです。思い付きです。会話形式です。キャラ崩壊、クロス有りです。これ一回限りのコーナーです。ご注意ください。

***頑張れ古鷹さん***
ロシア:ウラジオストクにて

A「だりィ」

古鷹「提督、仕事してくださいよ」

A「ア゛ァ?お前オレの秘書艦だろうがァ。代わりにやっとけェ」

古鷹「駄目です。ロシア政府からも大本営からも提督を監視、仕事させるよう命じられてますから」

A「面倒くせェ」

古鷹「はぁ‥‥‥私だってロシア出張なんて本当は‥‥‥」

A「‥‥‥分かってますゥ。やってやるからその書類早く渡しやがれ」

古鷹「そうそう、手紙が来てましたよ?」

A「手紙だァ?」

古鷹「はい。ドイツからですね。差出人は‥‥‥あっ」察し

A「オォ、同志からじゃねェか」←差出人:ながもん

A「ア゛ァ!?何なんですか何なんですかァ!?」

古鷹「提督、どうかしましたか?‥‥‥って、何してるんですか?その『なのです掛け軸』どうして外してるんですか?あんなに大切にしてたじゃないですか」

A「もう必要ねェ。お前にやるわ‥‥‥電ちゃンのファン辞めるわ‥‥‥18なンだよ」

古鷹「え?」

A「同志の情報によるとなァ、電ちゃンは18なンだよ‥‥‥13歳以上はなァ、ババァなンだよォ!」

古鷹「‥‥‥はぁ」

A「‥‥‥手紙によるとなァ、雷ちゃンは11なンだと。雷ちゃンが11‥‥‥クカカッ、イィねェイィねェ、最ッ高ォだねェ!」

古鷹「‥‥‥相変わらず揺るぎないロリコンですね」

A「古鷹、日本行くぞ」

古鷹「一応聞きますね、どうしてですか?」

A「決まってンだろゥがよォ。雷ちゃンに会いにだ。オレは雷ちゃンと会える、お前は青葉と再会出来る。win-winじゃねェか」ドヤア

古鷹「青葉と再会‥‥‥‥‥‥駄目に決まってるでしょう」←少し悩んだ

A「チッ‥‥‥っと、仕事だ。北方棲姫が現れた。古鷹、やる事は分かるな?」

古鷹「はい、提督。‥‥‥今回も提督も出るのですね?」

A「ア゛ァ?当然だろうが。前線に出ねェと最適な指揮なんざ出来ねェだろ‥‥‥期待してんぞ、秘書艦」

古鷹「勿論です。私も、信頼していますよ、提督?」←Aとケッコンカッコカリ済み、レベル155、改二











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