3話目からはまったり投稿になるかと。申し訳ありません。
少しずつ伏線が現れ始めます。
では、本編どうぞ
「金剛?『金剛』、なんだよな?」
目の前に立つ、真っ白な服を着た青年の問い掛け。必死に思い出そうとしても、浮かぶのは『こんごう』という自身の名前のみ。他は、何も思い出せない。どうして倒れていたのかも、起きる前に何があったのかすらも。
ただ‥‥‥自分は『こんごう』なのだ、と。その事に、不思議と誇りすら感じるくらいに。
「‥‥‥‥‥‥はい。こんごうです」
目の前にいる青年は、どうも自分を知っているようだ。聞けば何かを思い出すかも知れない。だが、隣に座るセーラー服の少女が、嬉しそうだったのが曇った表情に変わってしまったのが視界に入る。何がかは分からないが、自分の発言が少女を傷付けてしまったと思い視線を背ける。
青年が「電‥‥‥」と少女の頭を静かに撫でる。電と呼ばれた少女は、泣きそうなのを必死に堪え「大丈夫、なのです」とか細い声を出している。
電‥‥‥いなずま‥‥‥。これも何処かで聞いた気がする。思い出そうと思考を巡らせていると、急な頭痛と眩暈に襲われる。
「大丈夫か!?」
青年が、心配して慌てて覗き込んできた。少しだけ顔を顰めさせたあと、これ以上心配させまいと声を出す。
「大丈夫です‥‥‥ごめんなさい」
その言葉の直後、電と呼ばれた少女は遂に泣き出してしまった。やはり自分が原因なのだという罪悪感と、何も思い出せない事への恐怖が心を蝕んでいく。
丁度、コンコン、とノック音が聞こえ、担当医が入って来た。どうやら青年の到着を待っていたらしい。
「ふむ。さて‥‥‥山本提督、彼女の容態についてだけどね?」
そこまで言って、医師はチラリ、と視線を電ともう一人の少女(青葉)へと向けた。山本提督と呼ばれた青年の「彼女達は私の信頼の置ける部下です」という言葉に納得したらしく、「うん、では、説明するね?」と続ける。
どうも自分は、記憶喪失というものらしい。ただ、ショックによる一時的なものらしいので、そんなに心配せずとも記憶は戻るらしかった。
「もしも何かあった時は僕を呼ぶといいね?患者が必要とする物なら、どんな物でも用意するのが僕の仕事だからね?」
そう言うと微かに笑い部屋を後にするその医師に「ありがとうございます」と頭を下げる山本の姿を、少しだけ安堵し見つめていた。
(私の記憶‥‥‥戻るんだ‥‥‥良かった)
******
これから更に精密検査をしなくてはならない『こんごう』を医療スタッフと妖精さんに任せ、3人は部屋を出る。
「記憶喪失ですか‥‥‥焦りましたよ。何せあの金剛さんが流暢な日本語話してるんですから」
そこまでの心配は要らないとわかり、少し笑みを溢す青葉。確かに妙な、似非外国人のような訛りで話していた金剛に真っ当な日本語を話されると、もうそれだけで心配になってしまう。主に頭の中が。
「けど‥‥‥いつ記憶は戻るんでしょう‥‥‥電は‥‥‥いつもの金剛さんが好きなのです」
もう今日は泣きっぱなしの電。山本の制服にしがみ付き、肩を震わせ声を殺して泣き始める。‥‥‥その頬と耳が仄かに朱に染まっているのを、青葉が少しだけ羨ましそうに見ている。
「兎も角だ。金剛の事は今は専門家に任せよう。僕は書類を作成しなきゃならないし」
「‥‥‥いっ‥‥‥電も‥‥‥行く‥‥‥のです」
所々言葉に詰まりながらも発した電。電とて秘書艦。いつまでも泣いてばかりもいられない。ポンポン、と慰めるように電の頭を優しく叩く山本に嬉しそうな雰囲気を纏い付いていく電。
その二人の後ろ姿を(あーあ、私も古鷹さんに久々に会いたくなっちゃったなぁ)と不貞腐れながら、青葉はクルリと回れ右をして金剛の病室へと向かう。
執務室へと戻ってきた山本と電。「よしっ」と気を取り直し、溜まっていた書類に取り掛かる。電達が出撃後、通信が途絶えてから『こんごう』が運び込まれてくる迄全く手につかなかった書類の山。
「こりゃあ‥‥‥夜中まで掛かりそうだな」
「でっ、でしたら、電がお夜食作るのです!」
今度こそ、頬を染めている電。「じゃあ、お願いしようかな」と山本が立ち上がったところに、血相を変えた比叡が飛び込んできた。
「お姉さまはっ!お姉さまは何処ですか!?」
******
「え?何で?どうしてですか?」
青葉は驚きを隠せなかった。もしかしたら艤装を見れば直ぐに思い出すかも知れないと思い、金剛の予備の艤装を引っ張り出してきて装着させようとした。だが、どうやっても接続出来ない。
「だって、金剛さんの艤装ですよ?何で!?」
何度も試してみても同じ。妖精さんによると『この子の艤装ではないから装着出来ない』らしい。
「だって妖精さん、この人は確かに金剛さん、なんですよね?」
コクリ、と頷いて見せる、2頭身の小さな小さな妖精さん。
金剛が金剛型ではなく別人、という可能性なのだろうか。だとしたら、妖精さんの『『こんごう』は確かに『こんごう』』という言葉とは矛盾してしまう。
この世界において、『艦娘』とは『過去の大戦で活躍した艦の魂をその身に宿し、深海棲艦に対抗しうる唯一の存在』を指す。艦娘になるには、先ずその身に艦の魂を宿していなくては話にならない。艦娘の適合者を見分ける方法は簡単。『妖精さん』が見えて、意思疎通が出来るかどうかだ。志願して海軍へと入ってくる女性もいれば、艦娘や妖精さんがふとしたタイミングで見付けてくる時もある(艦娘になると歳を取らなくなってその容姿が艦娘になった年齢のまま固定される為、不老、永遠の若さを求めてやって来る不届き者も中には居たりする)。
ただし。妖精さんが人間に協力してくれている現在、軍施設以外で適合者が艦娘へとシフトすることは先ず無い。妖精さん達の間のネットワーク(詳しい原理はよく分からない)から外れて艦娘が『建造』された事例は、歴史上最初の艦娘が出現した時だけだ。
故に、目の前の『こんごう』が自然発生的に『建造』された、というのは非情に考え難い。今の所、他の鎮守府で『金剛型』が建造されたという報告も無い。それに何よりも、例え新たに金剛が建造されていたとしても、同じ容姿にはなり得ない。容姿だけは、人間であった時のまま変わらない。仮に10人の金剛が居たとすれば、その容姿は全員バラバラの10通りになるのだ。つまり‥‥‥理論的に考えて、目の前の『こんごう』は青葉達の知っている『金剛』以外には考えられないのだ。
悩む青葉の元へと、とある物が運ばれてきた。先の北上達がこんごうの傍で見付けたという、謎の艤装。
「え?何ですかこれ?」
それは、初めて見る物だった。何処でどう情報網を作ったのか、青葉は他の鎮守府の艦娘達にも顔が利く。だから、殆んどの艦娘の艤装は知っている。だが、目の前にあるそれは、既存のどの艦の物とも違う。
青葉達の知っているものと形は違うが機関砲や単装砲等の副砲があるのはまだいい。見た目もそうだが、尤も大きく違うのは、金剛の艤装になら有るはずの長く大きな砲塔‥‥‥主砲が無い。代わりに、甲板には埋め込まれたような、開閉ハッチの付いた発射口が幾つも並んでいる。それから、見たことの無い形状の電探‥‥‥他にも見たことの無いものが幾つも‥‥‥。
「え?待ってくださいよ。ここに運ばれてきたって事は‥‥‥まさか金剛さんの艤装なんですか?これが?」
『多分そうだ』という、妖精さんの何とも曖昧な返事。どうやら妖精さん達でも初めての代物のようだ。そんな艤装を、『こんごう』は先程の金剛型のものの時と同じように不思議そうに眺めている。
「あの‥‥‥これは何なのですか?」
こんごうの言葉に強烈な違和感を感じながらも、「艤装ですよ」と答えた青葉。
「私達が深海棲艦と戦う為に必要な力ですよ」
確かに姿は金剛その人である目の前の艦娘は、本当に金剛なのだろうか?青葉の中で徐々に疑問が大きくなっていこうとしていたその時。扉が壊れるかと思う程勢いよく開かれ、涙目の比叡が二人めがけて突っ込んで来た。
「お姉さま!!」
勢いそのままに比叡はこんごうに抱き着き、二人仲良くベッドにダイブ。こんごうの左手がベッドの手摺にぶつかる。少し痛そうだ。
「お姉さま!ご無事で良かった‥‥‥」
比叡の凶行に驚いていたこんごう。いきなりお姉さまと呼ばれ、困惑した様子で比叡を見つめている。比叡の方はそんな事はお構い無しに、こんごうの胸に頬擦り。
「お姉さま、お姉さま‥‥‥」
やがて何かを思い出したらしくハッとした表情に変わったこんごうが、恐る恐る口を開いた。
「‥‥‥‥‥‥きりしま?」
「ヒェェ~!こんな時に冗談なんて酷いです~!比叡ですよ、お姉さま~」
涙目のまま、頬擦りはそのままに訴える比叡に「‥‥‥‥‥‥はるな?」とこれまた思い出したように口にしている。
「比叡ですってば~!心配してたんですからね!」
訴える視線を向ける比叡だが、やはり頬擦りは止める気配は無い。困ってしまった様子のこんごう。
そのやり取りで、青葉の疑問は一時的にではあるが片隅に追いやられてしまった。何だ、記憶喪失状態でも妹の霧島や榛名の名前が出るなんて、やっぱり金剛さんじゃないか、と。
やっと笑みをこぼし二人を見ていた青葉だが、比叡がどこからか取り出した土鍋を見て表情を変える。‥‥‥嫌な予感。
「さっ、お姉さま!お姉さまの為に比叡が気合いッ!入れてッ!作りました!」
開けられた土鍋の中には、表現できない色をした何かが入っていた。‥‥‥状況から察するにあれはお粥‥‥‥なのだろうか?どうやったらあんな、異次元の色になるのだろう。
スプーンでそれを掬い、「はい、あーん」と食べさせようとしている比叡。記憶喪失のせいか、こんごうは「ありがとうございます。いただきます」と、何の疑問も抱かずそれを口に含んだ。‥‥‥含んだ?傍観していた青葉が我に返り、慌ててこんごうへと駆け寄る。
「‥‥‥だぁぁぁあ!!金剛さんっ!!吐いて!吐き出してぇぇ!」
‥‥‥時既に遅し。こんごうの視界は暗転。白眼を剥いて再び意識を失った。
******
こんごうが目を覚ましたのは、夜中。瞳を開いてみると、視界には椅子に座った山本の姿。他には誰も居ないようだ。
「起きたか。比叡の飯にやられるとは災難だったね」
「えっと‥‥‥」
山本の顔は笑っていない。寧ろ、真剣そのものだ。その頭と肩には、妖精さんが一人ずつ乗っている。その妖精さんは二人とも、見たことの有るような白い制服を着ている。
「ああ、この妖精は二人とも君の艤装の中で気を失ってたらしくてね。どうやら君の事を知っているようだよ」
山本の言葉に合わせ、妖精さんは敬礼。こんごうにはその仕草が可愛かったらしく、思わず目で追ってしまった。
「‥‥‥それで、だ。先ずは謝らせて欲しい。この妖精達に頼んで、勝手に映像を見せてもらった。ただ、見せてもらったのは僕だけだ。他の者には見せてはいない」
山本によれば、妖精さん達はこんごうが気を失って北上達に発見される迄の映像を持っているらしい。「君も見るといい」という言葉と共に、妖精さんが再生を開始し始める。
そこに映っていたもの。鯨のような、イルカのような異形‥‥‥駆逐イ級が三体。それと、頭に大きな口の付いた巨大な帽子のような何かを被った、青白い瞳の人型の異形。手にはステッキのようなものを持ち、上半身は真っ白、下半身は真っ黒な衣服にマント‥‥‥ヲ級が三体。
手にした機関砲でイ級を蹴散らす自分。手に持った何かをヲ級の内の一体に向かって投げる。ヲ級は旋回してそれを避けようとするも、その何かがヲ級の方に吸い込まれるように方向を変え、追尾。直撃。
残り二体のヲ級が帽子の口から大量の艦載機を吐き出し、発艦。自分の上空が真っ黒に染まる。
妖精さんが何かを伝えてくると、後ろにある自分の艤装にある発射口のハッチが開いて、何かが空に向かい多数発射される。数秒もしない内に、敵艦載機が瞬く間に撃墜されていく。
同時に、自身の太股に付いた魚雷を三発発射。もう一体のヲ級に直撃し、炎上。危険と判断したのか、ヲ級の最後の一体が撤退していく。
その映像の内容に、思わず「‥‥‥え?」と声をあげたこんごう。これが、全て自分のしている事とは信じられなかった。込み上げてくるのは、恐怖心。それも、こんな異形を相手に圧倒している自分に対する。
まだ映像は終わらない。映像が再開。ヲ級が居なくなったのを確認、落ち着いて艤装を解いた直後。上から何かが降って来て、蹴り飛ばされる自分。その何かは銃撃しながら突進してくる。その左手には魚雷らしきもの。避け切れずに衝突された、と思った直後、爆発音。どうやら持っていた魚雷を直接叩き付けられたようだ。映像に映っている限り、自身の左腕の肘から先が吹き飛ばされている。
何とか体勢を立て直そうと起き上がる。その映像が捉えていた相手の姿は‥‥‥相手の両手とは別に、背中から生えているような大きな腕のような物が構える砲。白い肌に、白いロングヘアー。胸元辺りに歯の付いた黒のノースリーブを着ている。スカートは穿いておらず、腰にはベルト、太股にはホルスター。頭にイ級の顔のようなヘルメットを被っている。‥‥‥鬼級の駆逐艦か。
その鬼級が更に魚雷を放ち、慌てて艤装を展開する自分。間に合わず、吹き飛ばされる。だが、鬼級は何かを見付けたらしく撤退。暫くして北上達の姿が微かに見えてきた。
そこで映像が途切れた。
「見ての通りだ。此方の早とちりで別人と勘違いしていて、大変申し訳なかった」
再度頭を下げた山本。「えっ?あの、でも‥‥‥」と何と返していいか分からなかったこんごうの方に、山本に乗っていた妖精さんが飛び移ってきた。
‥‥‥こんごう型ミサイル護衛艦一番艦『こんごう』。それが、妖精さんが教えてくれた自身の名前だった。
こんごうさんの装備(スロット6!?)
E 12.7㎝単装砲or20mm機関砲
E 艦対艦ミサイル
E 32.4㎝三連装短魚雷
E MK41VLS(主砲)
E MK137チャフ
E 電探(SPY-1D対空、OPS-28D水上、OPS-20航海、OQS-102ソナー)
‥‥‥なぜこれなのかの意味は後半へ。
萩か‥‥‥じゃなかった、駆逐水鬼がそれっぽく登場。
艦娘の定義~:本作ではこれでお願いします
はるな、きりしま:こんごうの頭に浮かんだのは、どちらも護衛艦の名前。
医師:友情出演。何やってんだリアルゲコ太