「わっ‥‥‥私の大規模改修ですか!?」
驚き、飲んでいた紅茶を噴き出したのは春雨。屋外だった為に紅茶が地面に散らばった。
「はい、春雨ちゃん。妖精さん達と夕張ちゃんの話だと‥‥‥私の艤装が幾つか適合するらしいんです」
こんごう‥‥‥『レン』が言うには、春雨の艤装に組み込めるのは対艦ミサイル、新たなレーダー一式、それにVLS。それと、20㎜機関砲も。殆んど別の艦になると言っても過言ではない。いまの春雨は白露型だが、艤装を聞く限りではこんごう型のそれに近い。因みに、明石から色々教わって来た夕張は最近着任。
『こんごう妖精さん』から渡された、予定の装備を眺めていた春雨は、ふとある事に気付いた。
「あの‥‥‥この『SH60J』って何ですか?」
『こんごう妖精』さんの説明に、春雨は驚きの余り腰を抜かして地面にへたり込んでしまった。
「哨戒機!?哨戒機って‥‥‥あの、私、駆逐艦なんですよ!?」
哨戒ヘリコプター。対潜水艦魚雷も積んでいるらしい。現時点では文字通り春雨用のオンリーワン装備だ。
『こんごう妖精』さんの話によれば、元々『護衛艦こんごう』の存在していた世界にある装備なのだそうだ。どうして春雨だけに適合するのかは全くの謎。他の艦娘の艤装とはどうやってもリンクできないそうだ。
「私の艤装とデータをリンクできるらしいです。春雨ちゃん、これから一緒に頑張りましょうね?」
レンの持つ護衛艦こんごうの艤装のデータと、春雨が搭載予定の艤装のデータは相互リンクできるようだ。という事は、今後は春雨とレンが共に出撃する回数が増えるという事か。春雨にとってそれは嬉しいような、少し気が引けるような。
「第1艦隊で出られるのが多くなるのは嬉しいですけど、その‥‥‥」
チラリ、と春雨が向けた視線の先には、此方の話を盗み聞きしている、酷く落ち込んだ様子の比叡。金剛に慰められているにも関わらず、その効果は無さそうだ。比叡は最近本格的に姉離れ出来たらしい。それが、今だけは裏目に出てしまっている。
「レンさん、後で比叡さんを元気づけてあげてくださいね」
少しだけ苦笑いの春雨。対してレンの方はよく分かってはいない。「え?あ、はい」と何とも微妙な返事。それもこれも、ヘタレな比叡があれ以来何もアクションを起こせずにいるせいだ。金剛に言わせれば比叡は『coward(意気地無し)ネ』。
その後、レンと別れ、春雨は工廠へと向かう。扉を開き階段を下りていくと、油とススにまみれた夕張が待っていた。
「待ってたよ、春雨ちゃん」
「あ、はい‥‥‥」
時間はヒトサンイチマル。恐らくお昼を食べていないであろう夕張に彼女の好物である蕎麦を渡してあげると、物凄く喜んでもらえた。夕張はどれだけ蕎麦が好きなのだろうか?
「それじゃ春雨ちゃん、心の準備はいい?」
「お願いします」
春雨は夕張に手を引かれ、第4ドックへ。艤装と各々の装備のリンク、艤装と春雨自身のリンク。それと、護衛艦こんごうの艤装とのデータのリンク調整も含め、三時間。
「気分はどう?」
「生まれ変わったみたいです」
晴れて『むらさめ型護衛艦』の艤装を背負った春雨。その試運転、データ取りを含め、その状態のまま海へ。
海ではレンと、データ記録用の端末を持った電が待っていた。因みに電はあと一ヶ月で寿退艦の予定。
「春雨ちゃん、では試験開始なのです」
VLSの試運転、対艦ミサイルの試射、哨戒ヘリのデータ、それに春雨自身のステータス取り。結果は上々だった。
「春雨ちゃん、おめでとうなのです。これで‥‥‥電がいなくても安心して任せられるのです」
電がニッコリと微笑む。この小さな鎮守府で、電が抜ける意味は大きい。電ほどの実力なら、大幅な戦力ダウンだ。山本はその為に夕張、伊58(前鎮守府の提督と大喧嘩した為移動させられたらしい)の着任、そして春雨の大規模改修に踏み切ったくらいだ。
「そんな事ないですよ!私なんてまだまだで‥‥‥夕立姉さんや電ちゃんとは比べものになりませんよ!」
そうして、この小さな鎮守府に新たに戦力が加わる事になった。『むらさめ型護衛艦2番艦』春雨。
わるさめちゃんフラグをへし折ってやりました。
『護衛艦はるさめ』船内にむらさめ型の艤装を背負った春雨の絵が飾ってあるらしいので、今回は思い付きです。