その手を   作:アイリスさん

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おまけです。呉鎮守府のそれから。夕立、暁、大和の関係のお話。
またしても短話で失礼します。


おまけ2 呉鎮の日常

「第一艦隊、帰投したっぽい!」

 

夕立も一応は旗艦である。敬礼し、無事に帰った事を報告。座っている椅子を夕立の方に向けて「御苦労だった」とそれを労う東郷。現在の階級、少将。クーデターの中核を担った彼が少将止まりというのも不思議な話ではあるが、東郷も山本同様、出世の為にクーデターを起こした訳ではない。クーデターの目的はあくまでも大本営の腐った部分の排除。

トップである海軍大将には横須賀の提督、木村昌を担いだ。秘書艦の大鳳が優秀だという事もあるし、何より面倒な政を木村に丸投げ、自分は自由にやりたいという東郷の本音もある。

 

呉の艦娘達もそれで納得してくれた。というより、東郷が東京に出ていって、他の人間が提督を務める姿が想像出来なかったらしい。

 

その東郷の言葉の後に「お疲れ様でした、夕立。ゆっくり休んでください」と、丁寧に労った現在の秘書艦、大和に、夕立は少しだけムッとしてみせた。その大和の左手薬指には、ケッコンカッコカリの指輪が嵌まっている。これで三人目だ。まだまだ見た目子供の暁なら兎も角、大人の女性、しかも性格もスタイルも申し分ない大和が相手だと、夕立も内心は穏やかではない。

 

「失礼するっぽい!」

 

ちょっとだけ乱暴に扉を開けて執務室を出た夕立。一直線に駆逐艦寮の自室へ。

 

一人部屋ではない。同じ部屋には吹雪、それと暁の三人部屋。再三『初代の漣さんってどういう人!?』と質問責めをしてきていた吹雪は今は遠征中で不在。つまり、夕立の目的は暁だ。

 

「ただいまっぽい!」

 

「あ、おかえりなさい」

 

暁は呑気にファッション雑誌を見ていた。見た目は子供だが中身は16歳。本人は一人前のレディーになろうと必死らしい。イギリスでの生活のせいもあってか金剛にも憧れを抱き始めた。それも、厄介な部分で。

 

「暁ちゃん、作戦会議っぽい!」

 

「またなの?でも‥‥‥うん、そうよね。ladyとして大和さんには負けられないし」

 

どうにも所々で英語を挟みたがるようになった。クーデターの後に金剛と一度対面したのが不味かった。山本への態度や所謂『金剛語』を除けば、金剛は優雅で淑女に見える。まだまだお子様な暁にはそれが眩しく見えたらしい。金剛の真似こそレディーへの近道だと思ってしまったようだ。

 

「きょ‥‥‥トゥディは作戦どうするの?この前の誘惑作戦は失敗だったし‥‥‥」

 

「これから考えるっぽい‥‥‥」

 

前回の誘惑作戦は見事に失敗。風呂上がりのバスタオルの格好のまま、二人で東郷の自室に突撃した迄はよかったが、東郷は『風邪ひくぞ、早く着替えてこい』と動揺の色は見えず。呆気なく撃退された。

 

うーん、と二人で悩むこと数分。コンコン、とノック音。吹雪が帰ってきたのかと思い扉を開けると、珍しい人物が居た。

 

「久し振りだね、二人とも」

 

立っていたのは響だ。確か古鷹、漣と共にウラジオストクに出向いていた筈。どうやら一時帰国したようだ。その辺も、クーデター後に緩くなった。それなら先程食堂の方から『メシウマ!』と聞こえて来た声は恐らく漣(二代目)か。

 

「響ちゃん、久し振りっぽい!」

 

「久し振りね、響」

 

響の左手薬指には指輪。どうやらケッコンカッコカリを済ませているらしい。それにしては改二に改修されていないようだ。

 

「響ちゃん、なんで改止まりっぽい?」

 

夕立の疑問に、響は驚きの答え。響が改二改修をするとヴェールヌイ、見た目別人になるらしい。その変化を、彼女達の提督が嫌がっているのだそうだ。『響のままで充分だろォが』だそうだ。

 

「でもそれってちょっと酷いっぽい!響ちゃんだってもっと強くなれるのに!」

 

「私は平気だよ。司令官はそういう人なんだ。今の私を大切にしてくれているんだよ。表現が少し過剰ではあるけどね」

 

それでも、響は現状で満足しているらしい。ただ、それに納得していない暁が「なにそれ。それってただのロリコンよ。ここはladyの暁が直接‥‥‥」と言い掛けて両手と両膝をついて落ち込んだ。

 

「東郷さんはロリコンじゃない‥‥‥って事は暁は相手にされてないって事‥‥‥?」

 

慌てて「暁ちゃんはレディだから大丈夫っぽい!」とか、「そうだよ、暁は16歳なんだし。ロリコンには入らないよ」という慰めを敢行する夕立と響。その慰めには小一時間を要する事になる。

 

******

 

同時刻、執務室。

 

「よう、古鷹。元気そうで何よりだな」

 

「はい、少将殿。お陰様で良くしてもらっています」

 

東郷に挨拶をする古鷹。古鷹は呉を経由し、これから山本の鎮守府へ出向く予定となっている。勿論、久し振りに青葉と再会するためだ。その青葉が、まさかジャーナリズムに目覚めているとは思ってもいない。

 

「アイツの様子はどうだ?」

 

「いつも通りです‥‥‥ウチの提督は悪戯が過ぎて困っていますよ。今頃は島風を追い掛け回している頃かと思います」

 

古鷹はお目付け役だ。その彼女が居ないとなれば、何をしでかすか分からない。日本に居た頃は頻繁に長門とつるんでいたウラジオストクの現提督。それ故に左遷されたのを忘れているようだ。

 

「俺の所にもこの前連絡してきてな?クーデターを『勝手に面白ェ事してンじゃねェ。俺も混ぜやがれ』だとよ」

 

「‥‥‥申し訳ありません、少将殿」

 

と、此処で古鷹は大和に視線を向けた。前回来た時は確か、夕立が秘書艦だったと記憶している。視線に気付いて書類を捌く手を止め「はい?」と顔をあげた大和。「あの」と声をかけようとした古鷹に、東郷からは驚きの一言。

 

「なんだ、古鷹?俺の嫁が気になるか?」

 

「‥‥‥嫁!?ケッコンカッコカリではなくてですか!?」

 

思わず声をあげた古鷹。それと頬を染めた大和と、表情の変わらない東郷。

東郷は大和と籍を入れたそうだ。混乱を避ける為、まだ呉鎮守府の面子には言っていないらしい。勿論、暁や夕立にも。つまり‥‥‥暁と夕立には勝てる見込み等無い、という事だ。

 

‥‥‥因みに、このあと雷はロシア嫌いになったらしい。

 




古鷹さんの苦労は続きます。
‥‥‥知りませんよ、友情出演?一方●行?セロリの事なんてわかりません。

横須賀の提督さん、撤退作戦の某司令官の末裔です。
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