十六夜と結絃は苛立たしげに言う。
「で、呼び出されたはいいけど何で誰もいねえんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねえのか?」
「まったくだ、待つのは嫌いじゃないがチュートリアルが始まるのが遅すぎる」
「そうね、何の説明もないままじゃ動きようがないもの」
「・・・・この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思うけど」
(まったくです)
少女がこっそりツッコミを入れた。
もっとパニックになってくれれば飛び出しやすいのだが、場が落ち着き過ぎているので出るタイミングを計れないのだ。
(まあ、悩んでいても仕方ないのデス。これ以上不満が噴出する前にお腹を括りますか)
四者四様の罵詈雑言を浴びせている様を見ると怖気づきそうになるが、此処は我慢である。
ふと、十六夜がため息交じりに呟く。
「・・・仕方ねえな。こうなったら、
物陰に隠れていた少女は心臓を摑まれたように飛び跳ねた。
四人の視線が少女に集まる。
「なんだ、貴方も気づいていたの?」
「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?そっちの猫を抱いてる奴と黒コートも気づいてたんだろ?」
「風上に立たれたら嫌でもわかる」
「この辺の生体反応、一つ多かったからな」
「・・・・へえ?面白いなお前ら」
軽薄そうに笑う十六夜の目は笑っていない。四人は理不尽な招集を受けた腹いせに殺気の篭った冷ややかな視線を少女の向ける。少女はやや怯んだ。
「や、やだなあ御四人様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」
「断る」
「却下」
「お断りします」
「無理っぽいな」
「あっは、取りつくシマもないですね♪」
バンザーイ、と降参のポーズをとる黒ウサギ。
しかしその目は冷静に四人を値踏みしていた。
(肝っ玉は及第点、この状況でNOと言える勝気は買いです。まあ扱い・・・)
「何を値踏みしてんの?」
結絃が声を上げた。
「へ?な、何のことでしょうか?」
「あら、気のせいだったかね。ま、いいや」
指摘されて黒ウサギの心象は冷や汗だらだらである、そのまま四人にどう接するべきか冷静に考えを張り巡らせている・・・と、春日部耀が不思議そうに黒ウサギの隣に立ち、黒いウサ耳を根っこから鷲摑み。
「えい」
「フギャ!」
力いっぱい引っ張った。
「ちょ、ちょっとお待ちを!触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか!?」
「好奇心の為せる業」
「自由にも程があります!」
「へえ、このウサ耳って本物なのか?」
今度は十六夜が右から摑んで引っ張る。
「・・・・・。じゃあ私も」
「ちょ、ちょっと待・・・・!」
今度は飛鳥が左から。左右に力いっぱい引っ張られた黒ウサギは、言葉にならない悲鳴を上げ、その絶叫は近隣に木霊した。
「ウサ耳ちゃんの名前は黒ウサギ、耳はコスプレじゃなく本物っと」