登場人物の話し方が思ってた以上にその人っぽくならないように思います。こんな感じじゃない、って思われるかもしれませんがその際はご一報ください。
ーーでね、それでね!
一番聞き慣れた、高い声。
ーーもー、聞いてよ如月ちゃん!昨日ねー!
常に元気で、小言を言うような時もどこか楽しく嬉しそうで。
ーーあ、あのね、如月ちゃん。
最後に見たあの、照れたような恥ずかしがっている笑顔。
ーーねーねー、吹雪ちゃん、夕立ちゃん!
ーーだけど。
ーー今日はどうしよっか!間宮さん行く?
今目の前に見える笑顔は、違う。
その笑顔は、今まで見てきた笑顔とは、全く。
ーーえ、如月ちゃん?
やめて。お願い、言わないで。
縛られて欲しくはない。だけど、嫌だ、それだけは。
許されないとはわかっていても、そんな仕打ちは酷すぎるから。
だから。
だから、どうか。
如月のこと、忘れないで。
ーー如月ちゃんって、居たっけ?
【覚-awake】
「睦月ちゃ……!」
叫びながら上体を跳ね起こす。
そして初めて、今の睦月が夢の中の存在であったことに気付く。
如月はその事に安心し、荒い息を整えつつあった。
「……あら?」
如月は落ち着いたことで、今の自分の状況をじっくり把握することが出来た。出来たからこそ、新たに今の状況に混乱している。
「私……轟沈したはずじゃ……」
如月の記憶に残る最後の光景は、自ら目掛けて降ってくる一個の爆弾と、どんどんと遠のく水面の光であったはず。
だが、今目の前に広がる光景は、一体何があったらこうなるのか、というようなもの。
明るい茶色の木目の壁、壁より濃い茶色のタンスが二つ。右手側には、最後に見たのと同じ陽の光が差し込む窓。自分にかけられているのは清潔そうな掛け布団だし、よく見れば着ている服もいつも着ている彼女の服ではなく、半袖の白いワンピースであった。
一体どういうことだろうか。如月が不思議そうにしていると、窓より少し先のドアがギィ、と開いた。
すぐに視線を向けると、そこにはーー
「あら、目が覚めたのね」
そこに居たのは、栗色の髪をポニーテールに纏めた、ウェスタン風な服を着た女性だった。
その容貌は美人揃いだった鎮守府の人達と比べても劣らない程のものであった。
「どう?気分はいいかしら?」
女性は部屋に入るとベッドの横に置いてある椅子に座り、如月に向かい合う。
如月も身体ごと顔を女性に向けた。
「初めまして。私の名前は
「……如月、です」
「如月ちゃんね」
莉杏と名乗った女性は如月の名前を聞くと、不意にマッチを取り出し火を付ける。
どういうわけかその火の色は緑色で、何故火をつけたのか、その色はなどと聞く前に莉杏はその火を消してしまった。
「……もうちょっとだけ待っててね、今貴女を拾ってきた人を連れてくるから」
「え、あ……はい」
莉杏が席を立ち、再び部屋の外に出て行く。
莉杏が出て行ったことで再びやることをなくした如月は、ふと自分の身体に違和感が無いことに気が付く。
そしてそのことに違和感を感じた。
(……身体、痛くない)
記憶が正しければ、敵艦載機の爆撃を受けたのだから、身体は傷まみれのはず。なら身体中痛みやらなんやらが残っているはずなのに、如月の身体はそう言った傷の痛みなどを殆ど訴えていなかった。
腕を改めて見てみれば、包帯やらガーゼやらは貼られているものの、まるで形だけそうしてるようにしか思えないほど痛みが無い。
(どうしてかしら……)
疑問は尽きない。そしてふと腕を見ていた時、今まで失念していたことを思い出した。
「……そういえば、私の艤装は!?」
艤装。彼女達「艦娘」が戦うための力。
それがなければ彼女らの敵と戦うことが出来なくなる、文字通り彼女ら艦娘の「もう一つの命」。
それは今どこにあるのだろう。
探さなければ、とベッドから降りようとしたその時だった。
ーーガチャ
「入るよ」
声と同時に男が部屋に入ってくる。
茶色の髪に黒いコートを着た容姿端麗ーーどちらかと言うと子供っぽさを感じさせるものだがーーな男性。
少なくとも提督よりイケメンの部類である。最も提督の顔しか男の顔を知らないのだが。
男性は如月を見ると柔和な微笑みを浮かべて、先程まで莉杏の座っていた椅子の近くまで歩み寄る。
莉杏は、と思ったら男性の後ろから現れて、再び椅子に座った。
男性はその隣で腰を落とし、床に膝を着く形で如月と視線を合わせた。
「気分はどう?」
莉杏と同じ問いを投げかけてくる男性。
如月が問題無い、と答えると男性は安堵したように笑った。
「良かった。君を見つけた時かなり酷い怪我だったから」
「……あの、私を見つけてくださったのは、あなたなのですよね」
「そうだよ。あ、名乗ってなかったね。俺は
男性は自分の事を流牙と名乗った。
如月の名前を知っているのはさっき莉杏が呼びに行った時に聞いたからだろう。
「はい……あの、ここは」
流牙の名前がわかったところで如月はずっと抱いていた疑問を投げかけた。
「ここは……俺たちの泊まってる宿屋だよ。ちょっと用事で出ている時の帰り道で倒れてる君を見つけたんだ。君ーー如月ちゃんこそ、あの怪我は一体……」
今度は流牙から質問される。如月は一瞬言うべきか考えるが、すぐに本当のことを話そうと口を開いた。
「あれは敵の艦載機の爆撃で……あの、それで私、轟沈したはずなのですけれど……何故私はここに」
「ちょ、ちょっと待って」
如月が再び疑問を投げかけようとしたところで今度は莉杏が如月を止める。
そして、如月にとって思いも掛けない言葉が返ってきた。
「轟沈に敵の艦載機って……なんのことなの?」
「……え?」
驚愕に驚愕で返す。
わからなかった。
"何故そんなことがわからないのか"、が。
"艦娘が敵艦載機の爆撃で轟沈する"ということなど、艦娘の名前を知らなくても、彼女にとっては誰もが知っている、疑問に思うことでは無いはずだから。
そこまで思って一つ思い出した。
そう言えば二人に自分が艦娘だということを言っていなかったことを。
如月の名前を知らなければ、如月が艦娘だと気付くことは不可能だろう。
そう、勘違いしながら。
「だって、私は睦月型駆逐艦二番艦の如月ですもの。爆撃で轟沈なんておかしいことでは」
「待って」
今度は流牙が話を遮る。
そして、如月に一つ、確信を持たせることを言った。
「……君は、何を言っているんだ?」
如月が得た確信。
それは、彼らが、艦娘を知らないということ、だった。
******
「……もしかして、艦娘を、ご存知無い、のですか?」
如月の問いに、流牙と莉杏は顔を見合わせる。
「……聞いたことあるか?」
「少なくとも
「俺も無い。ここの図書館で読んだ本にも艦娘なんて無かったよ」
「……どういうこと?」
二人の会話に如月も更に疑問を覚えた。
(……艦娘の情報が無い?)
彼女達艦娘のことは事細かに、とまではいかなくとも、そこそこの情報は一般にも公開されている。
それが、図書館の本にも一切記載されていないのは不自然だ。
如月が全く聞いたことの無い地名が飛び交ったこともあって、如月はふとある仮説に辿り着く。
荒唐無稽な、普通あり得ない仮説。
「……嘘やデタラメを言っているとは思えない。如月ちゃんが身につけていた機械のこともある。考えられるとするならば……」
「「……異世界?」」
如月と莉杏の声が被る。
莉杏も同じ結論に至っていたようだ。思わず顔を見合わせる。
「でもそんな……異世界なんて……」
「無くは無い、ってことか……他に何かあるかもしれないけど、その線が一番手っ取り早いな」
そんな馬鹿な、と思うようなことをしかし流牙は可能性の一つとしてすんなりと受け入れた。
莉杏も同様であった。
「い、いいのですか?そんな荒唐無稽なことを……」
如月は思わず不安になって流牙達に問いかけるが。
「あくまで可能性の一つだからね」
と、軽く受け流された。
(……可能性の一つとして、だとしても普通はそのような発想が思い浮かばないはず。それをさも当然のように……この人達、一体何者なのかしら?)
二人に対して疑念を抱き始める如月。
だが助けてもらった恩と、ここまでの僅かな時間でこの二人が少なくとも悪い人ではないと感じた為、湧き上がった疑念を如月は振り払った。
その時、ふと流牙の言ったことを思い出す。
「……そう言えば流牙さん。さっき、私が身につけてた、と仰いましたよね?」
「ん?うん。なんかよくわからないものを背負ってて、手には……」
間違いない。私の"艤装"だ。
一応は軍事機密の塊だ。命の恩人と言えど下手に手をつけられたらマズイだろう。
直感的にそう判断した如月は、それを自分の元に戻そうと考え、行動しようとした。
「あの、それを私に見せ--」
が。
ーーくぅぅ。きゅるるるる……
「…………」
「…………」
「……えーっと、そう言えばお昼だし、ご飯、食べよっか」
「……ハイ」
真っ赤にした顔を俯かせながら、如月は小さく呟いた。
「お待たせっ」
如月の腹が自己主張をして十数分後、部屋を出ていた莉杏がお盆を持って部屋に入って来た。ちなみに部屋の扉は流牙が開けた。
お盆の上にはほかほかと湯気をたてているパン粥とサンドイッチ。
流牙が椅子とテーブルを用意している様子から、二人もここで食事を取ろうと考えているのだろう。
実際一人で食べるのは少し淋しいものがあったので如月としては歓迎であった。
「作りたてだから熱いわよ、気を付けてね」
「はい。このお粥は莉杏さんが……?」
「ええ。ここって結構珍しい宿で、宿って言うより貸し部屋みたいな感じなのよ。料理とかお風呂とかも全部部屋に備え付けなの」
成る程、道理で出来るのが早いし米の粥ではなくパンの粥なのか、と納得した。
「だからお米炊いてなくてパン粥になっちゃったわ。ごめんね?」
「いいえ、気にしませんわ。むしろ私の分を作ってくださってありがとうございます」
礼を言い、流牙と莉杏が椅子に座ってから一緒に食べ始める。
流牙と莉杏はサンドイッチを頬張っている。
「うん、美味いよ」
「当たり前よ」
さも当然のように言う莉杏に小さく苦笑を浮かべながら、如月は莉杏お手製のパン粥を一口。
甘めのコーンポタージュで作っているため、コーンの甘さがパンに染みていて、とても美味しかった。
二口、三口と食べ続ける。
甘くて、暖かくて、美味しい。
その粥の美味しさが。
粥に籠められた莉杏の真心が伝わってくるようで、如月はここにきて初めての安心を覚えた。
そして。
安心と共に、「生きている」実感を、感じる。
その実感が、思い出させる。
轟沈させられた時の痛み、ほとんど感じてなかったはずの恐怖、約束を破ったことへの罪悪感。
ーーなによりも。
「……如月ちゃん?」
流牙の声にハッ、と意識がはっきりする。
そして、お盆に雫が何滴も落ちているのに気が付いた。
「……あ、れ」
「だ、大丈夫如月ちゃん!?もしかして味が気に入らなかったかしら……?」
莉杏が慌てふためくのを、如月は大丈夫だと言おうとして声が出せなかった。
声を出そうとすれば、嗚咽が漏れそうで。
「だ、じょ……ぐすっ、ですか、ら」
なんとか振り絞った声も、二人には心配の材料にしかならなかった。
そうこうしているうちにも如月はその瞳から涙を零し続けてしまう。
「ーー!」
不意に、暖かい感触に頭が包まれる。
目の前に広がる、茶色い世界。すぐに莉杏の服の色だと気付き、莉杏に抱き締められたのだと理解する。
頭の上から莉杏の声がした。
「ごめんなさいね……なにか、気に食わないことをしてしまったみたいで」
違う、違う。
言おうとしても嗚咽しかこぼれない。
その時、手に触れられる。
見なくてもわかった。流牙だ。
莉杏に抱き締められている今、流牙が何をしているかわからないが、如月の手を包むその暖かさは心地よいものであった。
「……如月ちゃんを呼ぶ声がする」
唐突に、流牙が口を開いた。
「如月ちゃん、如月ちゃん、って。凄く大事そうに、凄くーー愛おしそうに」
流牙の少し震えた声が、誰のことを言っているのか理解して。
今この涙が止まらない理由を、しっかりと認識した。
恐怖でも、痛みでも、罪悪感でもなく。
「むつ、き、ちゃ……!会い、たい、よぉ……!」
ただただ、一番大事な人と会えないことへの、寂しさだった。
******
「……泣き疲れて寝ちゃったわね」
眠る如月に布団を優しくかけてやる莉杏。
如月の髪を優しく梳いて、立ち上がる。
「……どうするの?」
小さく問う莉杏に、流牙は少し押し黙って考えていた。
「……少なくともホラーじゃ無いなら、斬ることは無いよ。それに……」
一度言葉を区切って、如月を見つめる。
「……あんなに、一人の人のことを思って泣ける子を、放ってはおけない」
「それは同じ思いよ。だけど……」
「……」
『そんなに悩むなら最初から連れてこなければ良かったんじゃないか?俺様はそう言ったはずだぜ?』
流牙の「左手」から声が発せられる。
「悩んでなんかいない」
『そうかい。なら一つ教えてやる。その娘ーー』
『なにか、人とは違うものを感じるぞ』
その言葉を受けて、再び如月を見つめる流牙と莉杏。
自らを艦娘と名乗った少女。この子は一体……?
そんな思いが、二人の中に生まれていた。
いつの時代も、人の集う地は賑やかなもの。
傷心の人も、その賑やかさに救われるものがあるかもしれない。
次回、町-walk
賑やかな裏に、蔓延る闇。
*****
と言うことで前回からすでにばれているとは思いますが、今回登場するのは流牙と莉杏コンビでございます。
チョイス理由はこのコンビが一番好きなこと、このコンビが一番如月のことで葛藤してくれそうなこと、戦う女性繋がりなどなどであります。まぁ台詞が二人っぽくないように感じてしまうのなんとかしないといけないわけですが。
ちょっとだけ艦これの話(一応艦これとのクロスですし)
冬イベお疲れ様でした(超今更
当鎮守府はグラーフ堀りのためにE3だけ乙、後は甲で挑んで無事クリアしました。
グラーフもメンテ前日の夜になんとか着任してくれました。やったね。でも朝霜と瑞穂今回も着任してくれなかったよ。畜生。
あと雲龍も居ないんですそろそろ建造にですね(((
そして昨日ノリで大型したら武蔵引きました。初大和型やったぜ。
また次の話もだいぶ先になるかもしれません(とりあえず17から名古屋に旅行行ってしまいますの)
長くお待たせしてしまうと思います。ごめんなさい、少しでも早く次の話を投稿します。