牙狼-紫月の救済-   作:ドンじゃらほい

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大変遅くなりました申し訳ございません(待ってる人がいるとは言っていない)


牙狼 DIVINE FLAME はいいぞ(いいぞ


話-fleet girl

【話-fleet girl】

 

「おはようございます」

 

「おはよう、如月ちゃん」

 

「あら、早いのね?」

 

「元々朝は6時起きが義務でしたから」

 

如月がこの世界で目覚めた日の翌朝。今度はいつも通りの時間に起きた如月は、自身の使っている部屋から出て流牙と莉杏に挨拶をした。

 

「朝ごはんもうすぐ出来るから待っててね」

 

キッチンに立つ莉杏はそう言って調理に戻る。

手伝おうかとも思ったが手伝うほどもやることがなさそうだったので素直に従い、席についた。

流牙は如月に挨拶を返してからは、外で買ってきたのであろう新聞を広げている。

 

「……」

 

新聞を読む目は真剣だ。ここまで真剣に新聞を読む人もいないだろうと思い、流牙に話しかけるでもなく見える部分の記事を読んでいた。

と言ってもテレビ番組の一覧となんということのない記事しか載っていないのだが。

 

「こういうある意味独立した街だと一面記事になるようなことってほとんどないの。だから一面記事になることは街のPRかいいニュースばかりだわ」

 

コトン、とテーブルに皿が置かれる音が2人の視線をそれに向ける。

 

「……赤城さんが食べてた量みたい……」

 

「?」

 

その皿に盛られた山盛りも山盛りのサラダを見て、如月はそう思わざるを得なかった。

なおそのサラダの6割は流牙の腹に収まったというのは余談である。

 

 

 

 

 

「さて……なんだかんだできちんと話せてなかったから、そろそろ色々とお話しましょうか」

 

朝食を終え、莉杏が「それ」をテーブルの上に置いて話し始める。

 

「……」

 

如月はテーブルに置かれた「それ」を手に取った。

ほんの数日前までその手に持ち、彼女と彼女の仲間を守り、敵を撃ち沈めていた武器。

12cm単装砲。破損しているし弾もないが、紛れもなく如月が使っていたものであった。

 

「……艦娘、と言ったな。俺達の世界にそんな存在は無い。だから説明して欲しい。艦娘って、一体なんなんだ?」

 

流牙の質問に、やはりここは自分の居た世界とは違うのだなと思い知らされた如月は、破損した単装砲を撫でるように触りながら語り始めた。

 

「……私は睦月型駆逐艦二番艦如月。深海棲艦と戦う存在です」

 

 

艦娘。

それはかつて人間同士の戦争に用いられた海上戦闘用兵器、俗に言う『軍艦』だの『戦艦』だのと言った兵器の力をその身に宿した少女達のことである。

軍艦のような装備ーー艤装をその身に纏い、軍艦のように水上を駆け、大砲を撃ち、魚雷を放ち、戦闘機を飛ばし。

軍艦と同じ力を持ちながら、その姿は少女である艦娘達は、彼女達のいる世界において、全ての海を支配する未知の敵勢力ーー深海棲艦と戦いを続けている。

 

 

 

「……そして私はある出撃の時に、敵の艦載機の奇襲を受けて轟沈してしまったのです。帰ったら伝えたいことがある、って言ってくれた人を残して……」

 

そこまで話して俯いてしまう如月を、流牙と莉杏はとても辛そうな表情をして見つめ続けた。

しばらくの間沈黙が続く。その沈黙を破ったのは全てを語った如月自身だった。

 

「……ごめんなさい、辛気臭くしてしまって……」

 

「……ううん、いいのよ、いいのよ……!」

 

莉杏の声が鼻声になっているのに気付いて、如月は再び鼻の奥に熱を感じた。

こんなにも自分のために感極まってくれる人の存在が、嬉しくて。

必死に目に浮かぼうとするものを抑えていると、流牙も辛そうな表情を浮かべながら口を開いた。

 

「つまり君達艦娘は……『軍艦の力を使える人間』ってことなんだな……」

 

「……ッ!」

 

流牙の言葉に、一瞬息をのむ。それを悟られないようにすぐに頭を巡らせる。

 

「……えぇ、そういうことに、なるのかと……」

 

「そっか……」

 

なんと続ければいいのか悩んでいる様子の流牙は、如月の境遇に憐憫の情を抱き悲しんでいる莉杏は、気付かない。

 

一瞬、如月の様子が変であったことに。

 

その如月は、先程までの悲しみにくれた表情を「作っていた」。

 

 

 

自身の本当の正体を、悟られないために。

 

 

 

 

 

 

 

******

 

「調査員……ですか?」

 

如月の告白から十数分、今度は如月が流牙と莉杏のことについて聞いていた。

流牙はうん、と頷き、話を続ける。

 

「俺達はある組織の調査員として、世界各地を回って様々な不思議な現象や事件を調べているんだ」

 

「だからこのアスピナシティにもその調査で来たの。それで調査をしてる時に、偶然流牙が倒れている貴女を見つけた、ってわけ」

 

「そうだったのですね……じゃあ私がその調査の手がかりだとお思いになられて……?」

 

如月の少し意地悪な疑問に流牙は苦笑しながら答えた。

 

「そんなんじゃないって。確かに最初はその事件に巻き込まれたのかって思ったけど、君はそうではなかったし、そうであろうとなかろうと怪我をしている君を放ってはおけなかった、それだけだ」

 

流牙の真剣さがその瞳の真っ直ぐさから伝わって、如月はほんのりと顔を赤らめて視線を逸らした。

 

「あら、じゃあ流牙さんは私のことを心から心配してくださったのですね……?ふふっ、照れてしまいますわ」

 

「そんなに照れることかな?」

 

「……」

 

ゲシッ!

 

「痛って!何するんだよ莉杏!」

 

「流牙の足に虫が止まってたから」

 

「だからってそんなに勢いよく蹴るなよ!」

 

「しょうがないじゃない手元が狂ったんだもの!」

 

そのまま口喧嘩に発展する流牙と莉杏を見て、如月は口を出すことなく苦笑いを浮かべてその様子を見続けていた。

ただどうしても、これだけは言っておきたいと莉杏に声を掛ける。

 

「莉杏さん、足で蹴ったのに手元と言うと変ですよ?」

 

「………………」

 

「……ふっ」

 

「今鼻で笑ったでしょう!?あったまきた、今日は流牙の晩御飯作りませんからね!」

 

「な、おいそれはないだろ!」

 

「……ふふふっ」

 

さらに激化する二人の喧嘩のようなじゃれあいに、如月は笑いをこらえることができなかった。

結局このじゃれあいは軽く一時間ほど続いたという。

 

 

 

 

 

その夜、如月が寝つき、莉杏もまた自室に戻った頃。

流牙は街をブラブラと歩いていた。特に目的はなく、夜風に当たりたかった程度の理由でだが。

 

『いいのか?あの小娘をいつまでも近くに置いておいて』

 

流牙の左手から声が聞こえる。流牙は左手を眼前に持ってくると、中指に嵌めた髑髏を模した指輪に向かって話し始めた。

 

「前も言ったろ。今は放っておく訳にはいかないって。何かしらの目処がついたらそうするさ」

 

『それまでに本業に巻き込まれるかもしれないぞ?』

 

「……その時は守るだけだ」

 

話は終わりだ、と言わんばかりに左手を下ろし、再び街を歩き始める流牙だが、頭の中で先程の言葉が繰り返される。

 

(それでも、今放り出したらあの子はこの世界で完全な孤独だ)

 

浮かび上がる様々な疑念を、流牙は強靭な心をもって打ち払う。

たとえ何が起きようと守ればいい。いつものように、と。

 

「……帰るか」

 

そうして流牙は莉杏と如月が待つ家に帰るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

#####

 

「ふむ、なんとか間に合いましたか」

 

「ひ、いや、いやぁ!助けて!家に返してください!」

 

どこかの昏い部屋。男の声と、窓から差し込む月光に照らされた裸身の女性。

女性は体を鎖で巻かれており満足に身動きが取れない。

怯え、泣き、姿の見えない男に命乞いをする女性。

 

「そういうわけにはいかない。君は本来昨日ここに来るはずだったのだからね」

 

そう、今鎖に巻かれた女性は昨日流牙が裏路地で助けた女性その人だったのだ。

 

「とはいえスマートでは無い連れ方をしてしまったのは申し訳ない。まさか君が入浴中に押し込むとは思わなかったよ。あぁ安心してくれ、私は君の体を見ていないからね。落ち着いてみればわかるだろうが、大事な部分は鎖に隠れているから」

 

「そんな、いいから家に返して下さい!こんな、こんなことして許されると思ってるんですか!?」

 

女性が必死に叫ぶが、男は何を言っているんだと言わんばかりに女性に語り返す。

 

「人の法では許されないだろうがそれは人に限った話だろう?人間は自らが喰らう牛をその牛の家族の元から引き離し殺し喰うじゃないか。それも犯罪かい?違うだろう?そんなこと言ったら人間は肉を食べられないじゃないか。それと同じだよ」

 

コツ、コツという足音が部屋に響く。

女性は悟った。声の主が近づいているのだと。涙を流しながら必死に全身を使って離れようとする。だがそんなものは無意味で、すぐに男は女性の傍に立つ。

その顔はまだ暗闇に隠れていて誰か判断出来ない。

 

「君は僕にとっての牛さんさ。乳という甘露を絞りとられ、肉という絶品のメインディッシュを戴かれ、魂という最高のデザートを堪能されるだけの、ね」

 

「……ぃ、いや、いやいやいやいやいやぁぁぁぁ!!」

 

その時、女性は火事場の馬鹿力というものを発揮したのだろう。物凄い勢いと距離を体だけで跳躍してみせた。それでもせいぜい数十センチと言ったところではあるが。

だがその数十センチの跳躍が、女性にその男の顔を確認させるという奇跡を起こした。

 

 

時として、奇跡は人に希望をもたらす。

 

だが、必ずしも希望だけをもたらすわけではないのだ。

 

 

 

「……!?そ、そん、な、あな、たは」

 

「……見てしまったか。なら尚更生かしては返せないね」

 

「な、なん、どうしてこんな、なんであなたがこんなことを!?答えてくださいち」

 

女はそこまでしか話せなかった。そこで、彼女の頭部に巨大な針が刺さり、そのまま絶命したからだ。

 

「……急ぎ長期保存処理を施さねば。とはいえこれでは三日保つかといったところですね……すぐに次のを見つけなければ」

 

男がそう呟いた時、彼の足元に写真がひらりと舞う。

誰が撮ったか、誰が渡したかわかりもしない写真を拾い上げ、そこに写る「少女」を見る男。

 

[トオソヌツネ、ニョルアイロリヨサユヂナチカザ、コケノルナトルガコロノリナチカ]

 

「……なるほど。しかも見たことがない子だ。これは……」

 

ニヤリ、と口元を歪める男。

 

「……少し準備が必要ですが、明後日には捕えましょう。楽しみだ」

 

そう言いながら写真に写る少女を舐めるように見る。

 

赤紫に近い紫の長髪に、髪よりも紫色な瞳、未だ幼ささえ感じさせるその少女は。

 

紛れもなく、如月本人だった。




夜の前には朝がくる。騒乱の前には静寂がある。

何かが起こる前には必ず逆のことがある。

次回、休-daily

つかの間の休息が来たら、その次には。




DIVINE FLAMEの完成披露試写会に行ってました。浪川さんとか見ました。佐咲紗花さんも拝見させてもらいました(流石に話すとかは無理ですが)
本当に素晴らしい作品でした。さぁまだ見に行っていない人すぐにでも見に行くのだ(興奮
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