第2話 魔鳥、襲来
エリカは目の前の光景に思わず息を飲んだ。
目の前には海から続々と上がってくる『NSG-12α コボルド』が50を越える大群となる姿が見え、更にその背後からは『NSG-25r シュトラウス』もコボルドと同じ数だけ上がってきていた。
「嘘……。こんな数…一体どこに?」
エリカは既にクファンジャルを駆り、次々に上がってくる敵性FAにMG-04 ミッドマシンガンの弾丸を浴びせかけているが、数が減ったようには見えない。
友軍機である三二式一型 轟雷や、SA-16 スティレットも射撃を繰り返しているが、敵は増え続けている。
エリカはMG-04 ミッドマシンガンだけでは火力が足りないと、クファンジャルの腰からML-04 マルチミサイルランチャーを取り外し、射撃。
ドォンッ!
爆発により、直撃したコボルドとその付近にいたシュトラウスが吹き飛ぶ。
エリカだけでなく、周囲のパイロットたちも射撃を繰り返し大群に穴を開ける。
コボルドとシュトラウスの大群は合計が200を越えたあたりで上陸する機体はいなくなった。
だが、コボルドもシュトラウスも強力なFAであり、脅威であることに変わりはない。
『ぐあぁっ⁉︎』
ドォンッ!
回線に悲鳴が響いた。コボルドの持つビーム兵器により、友軍機であるスティレットが一機撃墜されたのだ。
爆散するスティレット。あの爆発ではきっとパイロットは生きてはいないだろう。エリカは悔し涙を堪え、目の前の敵を殲滅する為にトリガーを引き絞る。
MG-04 ミッドマシンガンから弾丸が発射され、空薬莢が飛び散る。着弾した弾丸はコボルドの装甲を削り、UEユニットを破壊、爆散させる。
SH4000-D セイレーンmk.Ⅱ Dが火を吹き、クファンジャルの機体が空中へと飛び上がる。突進してきたシュトラウスをやり過ごし、無防備なその背部に弾丸を叩き込む。
『背後カラ2機ガ接近シテイマス』
「分かってる!」
肩の姿勢制御スラスターをSH4000-D セイレーンmk.Ⅱ Dと共に吹かし、クファンジャルをバク宙し、背後から忍び寄っていたコボルドにミサイルランチャーのミサイルを撃ち込み、爆殺。
『敵1機、急接近シテイマス』
「しまっ…!」
バク宙をした影響で一時的に動きが鈍ったエリカのクファンジャルに向かってシュトラウスが急接近し、その腕部に付けられたブレードが迫る。
ガガガガガガガッ!!!!
「…………え?」
迫る恐怖に目を閉じたエリカは来るべき衝撃が来ないことに疑問を持ち、目を開く。すると、そこには無残な姿となったシュトラウスの残骸が残っていた。
着地したクファンジャルが頭部を上に向けると、そこには白銀の塗装を施された1機のスティレットが飛行していた。
『よう、エリカ。油断すんなよ?』
「先輩〜!」
回線から響くロイズの明るい声は、エリカの不安を解消させた。
『SA-16 スティレット(ロイズ・カスタム)』
そう呼称されるそのスティレットは『SA-16B25 スーパースティレット』と同じ肩部のスラスター、強化エンジンを搭載し、機体を白銀色にカラーリング。
武装にはM547A5 60mmガトリングガンを2丁、S41-B 2連式ミサイルランチャーも2セットを腕部に取り付けた、まさしく隊長格のみが扱える機体だった。
「先輩、前っ!」
ロイズの乗るスティレットに複数のコボルドがビーム兵器を放ち、光が迫る。
『心配すんな。何の問題もねぇよ』
合計8本のビームを凄まじい操縦技術によって躱し、スティレットは両手に持ったガトリングガンをコボルドに向け、構えた。
『
ロイズは眼前の敵を瞳に映し、トリガーを引き絞る。連動してスティレットの両手の指がガトリングガンの引き金を引き絞り、弾丸が吐き出される。
ヴィィィン…ガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!!!!
凄まじい爆音が鳴り響き、コボルドはなすすべなく粉砕されていく。外れた弾丸は地面に着弾し、土煙が視界を塞ぐ。
『ほらな?』
エリカは回線から響くロイズの声を聞き、心配など無駄だったと思い、苦笑した。
「さすが先輩ですね。心配する必要はありませんでした」
『お前に心配されちゃ、敵わんからな。ほら、まだ敵はいるぞ』
「分かってます。行くよ、クファンジャル!」
エリカはクファンジャルを駆り、敵を殲滅する為、一歩を踏み出した。
*****
「コボルドとシュトラウスの殲滅、終了しました」
『おう、お疲れ。コッチでも殲滅は確認した』
防衛軍はその後、更に1時間ほど戦闘をし、上陸してきたコボルド、シュトラウス全ての殲滅を成功した。
今、エリカやロイズが立っている地面には残骸となった敵や味方のFAがあちこちに散乱していた。
「先輩、帰還命令はまだ来ませんか?」
『まだ来ないな。というか、さっきから基地との通信自体が悪くて…』
この場にいるパイロットたちは、既に殲滅を終了させたのに基地からの帰還命令がなかなか来ないことを疑問に思っている者が多かった。
だが、基地も情報の整理や処理で連絡が遅れている可能性があるので大人しく機体を地面に降ろし待機していた。
『おっ、繋がったぞ』
回線から聞こえたロイズの声にエリカも含めたパイロットたちは回線から聞こえる音に集中する。雑音が酷いが、段々と音声は鮮明に聞こえてきた。
『…答…よ。……せよ、…ち…は本部。応答せよ!』
『はいはい、聞こえたぜ。帰還命令はまだか?』
『こちら本部。敵のFAはどうした⁉︎』
『殲滅を成功させたぜ。基地に帰ってもいいかい?』
聞こえるようになった基地からの連絡に代表としてロイズが返答を返す。
パイロットたちはこれでやっと基地に帰れると思いながら欠伸をしていたが、基地からの回線から続いた言葉に息を飲むこととなる。
『何を言っている!敵のFAが高速接近中だ!もう直ぐそばにいるぞ!』
『はぁ?どこにもFA何ていないぞ?』
『いいから早く戦闘態勢を取れ!敵の識別コードは…』
ズガァァンッ!!
爆発音が鳴り、エリカは咄嗟にクファンジャルのスラスターを吹かして横に飛んだ。
揺れるコックピットの中でクファンジャルの頭部が爆発が起こった場所を見る。エリカの正面の画面には爆散した轟雷の姿が映った。
そのまま頭部を上空に向け、カメラをズームするとそこには8機のFAの姿を捉えることに成功した。
それは、紫にペイントされ、所々に半透明のT結晶を使った武装を持つ悪魔のFA。戦闘機のような形状のそれは、
『敵の識別コードはNSG-X1 フレズヴェルク!防衛軍に大打撃を与えた魔鳥だ!』
絶望が、舞い降りた。