スター・プロファイル   作:さけとば

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3. 十賢者と創造神の「力」

 リンガの聖地を出たフェイト達一行は、その後バーニィを使ってすぐにリンガの町に戻ってきた。

 時刻はすでに夕方。

 ではあるがしかし、あれだけ色々な事があったせいか、ボーマンの店で話を聞いてからまだ半日も経っていないという実感はフェイトにはまったくない。

 数日ぶりに人里に降りたような変な気分だ。

 

(ようやく戻ってこれた……。いやあ、大変だったな)

 

 とフェイトが感慨にふける中。

 

「だ、大丈夫ですか?」

「……乗り物じゃない、あんなん絶対乗り物じゃない」

「やめろ。思い出させるな」

 

 なんかへろへろ状態になっているメルティーナとアリューゼの二人に、レナが心配そうに話しかけている。

 どうやらバーニィに酔ってしまったらしい。リンガの聖地の中をあれだけ魔物倒しまくりながら走り回っていたりもするくせに、たかだか十分くらいの時間でバーニィ酔いとは、体力あるんだかないんだか分からない人達だ。

 

「なんだあいつら、情けねえなあ」

 

「そうじゃないわ。……あれは、慣れないと辛いものがあるから」

 

 二人を見て言うクリフにレナスが言い返した。

 仲間をバカにするような発言を無視できなかったのだろう。二人の気持ちは心底わかるわーみたいな表情を浮かべてはいるけども、しかし言っている彼女自身に具合が悪そうな様子は少しもない。ただ普通に元気がないだけである。

 

「それじゃあレナスさんはもうバーニィに慣れたんですね」

 

「……そう、かしら。それほど距離がなかっただけだと、思うけど」

 

 わりかしどうでもいいなと思いつつ、フェイトがレナスの話に相槌を打つと。

 やっぱり若干ヘンな間があった。

 フェイトとしてはただ、

 

(なんか、レナスさんの顔をちゃんと見るのも久しぶりだな)

 

 ぐらいの感想を持ちつつ話しているだけなのだが。

 あまり目を合わせてこない様子からするに、彼女が今気まずさを感じているらしい事は間違いない。そしてその原因はやっぱりこれであろう。

 

「よかったですね。メルティーナさん、ちゃんと顔の文字消してくれて」

 

 

 今現在フェイトの眼前にあるレナスの顔はただひたすらに人を寄せつけないほどの常人離れした美貌を放っており、決して彼女が寝ている間にかの暴虐非道なメルティーナによって不思議な力で書かれた、不条理な『バカ』などという文字列は存在しない。

 

 フェイト達とはぐれた際にもう半分の鞘もなくしてきたらしく、夕日を浴びてゆらりときらめく抜き身の剣を腰に下げ。これまたリンガの聖地で拾ってきた、ぼろぼろの首のない人形を片手に抱いて持ち歩く彼女の姿は別の意味で若干近寄りがたい空気を放っていたりするが、まあ大体いつもの事だ。

 フェイトの方も色々あってぼろぼろの身なりだったりするし、とてつもなく似合わない『バカ』と向き合いつつ話をする事に比べたらマジでどうという事もない。

 至って普通に話しかけられるいつもの彼女である。

 

「ええ。そうね──」

 

 レナスは遠い目でフェイトに答える。

 過ぎた時間に思いを馳せているらしいレナスに、

 

「ずっとあのまんまなのかと思いました」

 

 とフェイトが安堵とともに本音を口に出すと。どこから話を聞いていたのか、よれよれのメルティーナが杖をつきつつ反論してきた。

 

「冗談はやめてよね。あんな顔のままで町中うろつかせてごらんなさい、私達の世界全体の恥になるじゃないの」

 

「自分で書いたくせにそこまで堂々と言い切りますか」

 

 どこまでもウワサに違わぬキッツイ女である。

 関わりたくないけど結局この一連の事件の様子からして、まだまだこの人とも関わる事になるんだろうな。

 やっぱり元気のないレナスの横で、フェイトがひしひしとそんな嫌な予感を抱いているところで。早く色々な事を知りたいらしいチサトに「ねー早く行こうよー」と急かされ。

 

 フェイトとクリフとレナ、それにレナスとアリューゼとメルティーナと、さらにおまけにチサトを加えた総勢七人は、揃ってボーマンの店に向かった。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 店の中には、店主であるボーマンの他にプリシスもいた。

 もうぼちぼち閉店時間なのだろう。

 店の隅っこに座っているプリシスがなにやらむくれた様子でフェイト達を出迎える中。店の片づけをしていたボーマンはチサトに「おー、お帰り」と声をかけた後、アリューゼとメルティーナを見るなり言った。

 

「おっ、お前らは……。ちゃんと再会できてよかったじゃねえか。わざわざ礼を言いにでも来たのか? 名前も言わねえ割には律儀だな」

 

 口止めされていたはずの事をレナスに喋ってしまったからか。

 二人に話しかけるボーマンの調子はわざとらしいほどに愛想がよかったりするが、ご機嫌を窺われている二人の方はというとそんなもんもうどうでもいいらしい。すごい投げやりに答えている。

 

「戻りたくはなかったんだけど」

「事情が変わってな」

「ああそうそう名前はメルティーナよ」

「アリュ―ゼだ」

「あ、ああ。そうか……」

「事情が変わってな」

 

 一方プリシスはというと。足をぱたぱたさせて、ちゃんと捕まえる事ができたらしい無人君に慰められている。

 戻ってきたフェイト達に、さっそく恨み言を言ってきた。

 

「ひどいや、おいてけぼりなんて。アタシすぐ行くって言ったのに」

 

「ごめんねプリシス。いろいろ慌ただしかったからつい」

 

「まあ、んな楽しい出来事あったワケでもねえしな」

「むしろ行けなくてよかったと思えばいいんじゃないかな」

 

 正直に忘れてた事を謝るレナに続き、クリフとフェイトは正直に思った事を言っただけである。

 いやだって本当に楽しい事は何もなかったし。どちらかというと地獄だったし。

 

「本当だって。死ぬかと思うような目に合わなくて済んだんだから」

「本当にな。なんであんなとこでこんな大荷物持って走り回らないかんのか」

「えーなにそれ」

 

 そんなやり取りをしていると、ボーマンがレナに聞いてきた。

 

「で。お前さんがた、こんな大所帯で挨拶しに来ただけってわけでもないんだろ? あいにくベッドも客室も足りねえが……そうだな、男共にはリビングのソファーなりなんなりでも使ってもらうとするか」

 

「ええっそんな、悪いですよ」

 

「おいおい、今さら遠慮する仲でもねえだろ。第一宿は決まってんのか?」

 

 おっしゃる通り、フェイト達は話を聞いてすぐにボーマンの店に行ったりリンガの聖地に行ったりで、今日の宿をまだ決めてなかったのだ。

 返事につまるレナに、

 

「決まりだな。今店閉めるから、ちょっと待ってな」

 

 とボーマンは言い。

 申し訳なさそうに渋るレナにも、こう言って返した。

 

「いやでも、急にこんな大人数は……。ニーネさんも困るでしょうし」

 

「ああ、ニーネの事なら一応心配はいらん。……悪いが少しワケありでね、飯は俺とチサトの手作りで我慢してくれや」

 

 

 

 そのボーマンが心配ないと言っていた、彼の奥さんのニーネの事だが。どうやら不在というわけではなく、具合が悪くて寝室で寝ているという事だったらしい。

 部屋の片付けに行ったのかボーマンが先に一人で家に入っていった際、小さく聞こえてきた女の人の声に、気遣うように「いいから寝てろって」と言う彼の声が聞こえたのできっとそういう事なのだろう。

 

「ニーネさん、どこか悪いんですか?」

 

「いやまあ……ちょっとな。なに大丈夫だ、重い病気とかいうやつじゃねえよ」

 

 心配そうに聞くレナにはそう答えていたので。

 薬剤師の彼が言うくらいだから彼の奥さんの事は本当に大丈夫なんだろうと。なにやらにやにやしているチサトとプリシスの横で、フェイトはそう安心したのだった。

 

 

 

 さてそんなこんなで、フェイト達は揃ってボーマン家のリビングに通された。

 

 奥に見えているキッチンの方では、今もボーマンとチサトがなんかまるで戦闘中のようなすごい音を立てつつ料理を作っていたりする。

 話し合いたい事が色々あるので手軽に食べられるものがいいというフェイト達の要望に応えて、みそ汁やおにぎりなどの結構シンプルなやつを作っているはずなのだが。一体なぜ、というか一体どうやったらそんな音が出せるのか。

 

(晩ご飯、だよな。作ってるの)

 

 我慢してくれってそういう事かと思いつつ、フェイトは人でいっぱいのリビングを見渡した。

 今はキッチンにいるが家人のボーマン、居候のチサトと、フェイト達の話を聞きたくてお邪魔しているプリシスも含めると総勢九人の大人数である。

 

 真ん中に置いてあるテーブルを挟んで二人分ずつ、正面から向かい合う格好になっている計四人分のソファーには、順にプリシスとレナとレナスとメルティーナの女性陣が座り。食卓の方の椅子は話し合いをするには少々距離があるという事で、クリフやフェイトは空いているカーペットの上にあぐらをかいて座っている。

 アリューゼなんかはソファー近くの壁に背を預けて立っているという状況だ。

 

 ごく一般家庭のリビングにこれだけの人数とは、改めてこの家の人に申し訳ない気持ちになるが、まあ今のフェイト達には話し合いの場が欲しかった事も事実だ。今さら遠慮する仲でもないという彼の言葉に甘えて、ありがたく使わせてもらうとしよう。

 

「それじゃあ、そろそろいいかな」

 

 一部まだ席についてない人もいるが、会話の届く距離にはいる事だし問題はないだろう。

 さっそく通信機を取り出してエル大陸にいる仲間達に通信を繋げ、お互い落ち着いて話し合いのできる場所にいる事を確認してから、フェイトは通信機を話し合いの中心、テーブルの真ん中に置いた。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 中には今日初めて会った人もいるという事で、最初にエル大陸にいる仲間達を含めた全員が、改めて簡単に自己紹介した後。

 次にフェイト達全員が話し合ったのは、今日起こった出来事についてだ。

 

 ラクール大陸にいるフェイト達は、レナスの知り合い二人およびチサトがいるかもしれないという情報を聞いてリンガの聖地に行き、色々な騒ぎの末にそこで発見した十賢者の一人サディケルを撃破。

 クリフとそこで偶然会ったレナスの知り合いであるアリューゼの二人が言うには、倒したサディケルは本当に倒したかどうかを確かめる間もなく、すぐにシャボン玉のように消えていなくなったとの事。

 

 一方エル大陸にいるクロード達は、今日向かったエルリアタワーの中で同じく十賢者であるミカエル、メタトロン、ラファエルの三人を発見。これも交戦の末に撃破。

 彼らの死体も同じく、すぐにきれいさっぱり消えてなくなったと言う。

 

 

「十賢者が、復活? そんな事って……」

 

「な、なんで? だって十賢者は、ちゃんとアタシ達が」

 

 最初は興味津々だったプリシスやチサトも、さすがにフェイト達の話を聞き終わった今はすっかり真剣な様子だ。

 いきなりの事に戸惑っている二人に、

 

「信じがたいけど、でも本当の事なんだ。……全員の姿を確認したわけじゃないけど、エル大陸とラクール大陸の両方に四人はいた。他の奴らだっていても不思議じゃない。十賢者は今もこのエクスペルのどこかに潜んでいて、昔のように銀河征服か何かを企んでいるんだと思う」

 

 とフェイトが言うと、アリューゼが聞いてきた。

 

「あのガキ、名前はサディケルといったか。確か『ハニエルよりはマシ』とかなんとか言ってたな。そいつも十賢者でいいのか?」

 

 通信機のざわめきと一緒に、レナが少し驚いてから頷く。

 クリフもお手上げとばかりにため息をついて言った。

 

「ええ、その『ハニエル』も十賢者で合っています」

 

「てことは……やっぱり全員、いるんだな」

 

 全員が静まり返ったところで、アリューゼが言った。

 

「なあ、俺達にも分かるように説明してくれないか。──その十賢者とやらは一体どんな奴らで、何人いるんだ。名前の通り十人でいいのか? そんなに面倒な奴らなのか」

 

 確かに十賢者を倒したレナ達英雄や、その出来事を知っている未来人のフェイト達とは違って、レナスとその知り合い二人は十賢者が起こした一連の事件の事を知らないはずだ。

 彼女達に今回の件について知っているだろう事を説明してもらう前に、まずは彼女達に十賢者の事を知ってもらった方がいい。

 アリューゼに言われた通り、フェイト達は十賢者の事を説明した。

 

 

 通称十賢者事件。

 

 遥か昔の時代。

 卓越した技術を持っていたネーデ人によって作られた彼らが、ある出来事をきっかけに暴走し、その強大な「力」によって銀河全体を危機に陥れた事。

 当時のネーデ人達の多大な犠牲をもって、全員が辛くもエタニティスペースと呼ばれる、時間の停止した特殊な檻に封印された事。

 

 それから時が過ぎ、今から数か月前。

 エタニティスペースから抜け出し惑星エクスペルに降り立った十賢者達がした事。

 ネーデ人の末裔が住む外界から閉ざされた人工惑星、エナジーネーデに無理やり転移し、その技術力を悪用して再び銀河を危機に陥れようとした事。

 

 彼らが発動させようとした全宇宙の崩壊を引き起こす禁断の紋章、崩壊紋章の事。

 最期は全員、レナやクロード達十二人の英雄によって倒された事。彼らの野望も阻止された事。

 

 その十賢者達の名前、特徴。

 ガブリエルをリーダーとして、それに次ぐルシフェル。

 それぞれ下位三体の賢者を統括するミカエル、ハニエル。

 メタトロン、ジョフィエル、ザフィケル。ラファエル、カマエル、サディケル。

 

 計十人、それぞれが並の人間には敵わぬほどの強大な「力」を持つ集団。

 銀河史上に名を残すほどの極悪犯罪者集団。それが十賢者である──

 

 

「……と、まあ大体こんなところか?」

 

「うん。まあそんなんでいいんじゃない? 大体は」

 

 

 あらかた説明し終えたところで、クリフとプリシスがそう言って締めくくった。

 こういうのはやっぱり十賢者を倒した本人達に説明してもらうのがいいし、大体の説明はレナ達みんなにしてもらったけど。すごい大変な事件だった割に、倒した本人のまとめかたにあまり緊張感がないのがすごいところである。

 

 今のはちょっとワルモノこらしめてきたぐらいの気楽さで語る事なのだろうか。

 たぶんそれが彼女の持ち味なんだろうとフェイトも分かってきたものの、動揺したのもフェイト達の話聞いた直後だけで今はもうあっけらかんとしてるなんて、つくづく英雄ってばすごいと感心せざるを得ない。

 

 語り終わったプリシスがお気楽に無人君と遊び始め。その横で同じくショックを受けていたはずのチサトも一応は周りを気にしつつ、しかしのん気に自分の作った握り飯(フェイトもすでに二、三個頂いているが、どういうわけか普通においしかった。本当にどういうわけなのか)をおいしく頂いている中。

 

 

 一方の説明してもらったレナス達三人はというと、ひたすらに無言である。

 ていうかなんかすごい「やらかした~」みたいな暗い空気がこっちまで伝わってきている。

 

 アリューゼとメルティーナの二人は揃って無言でレナスの方を見、見られているレナスはというと頭を抱えて塞ぎ込んでいる様子。

 これほど分かりやすい反応もないだろう。

 今回の件について、彼女は確実に何かをやらかしてしまったのだ。

 

(一体なにをしたんだレナスさんは)

 

 とフェイトが、レナや食卓の椅子を移動させて座っているボーマンと一緒に黙ってその様子を見守る中。

 クリフが咳払いをしてレナス達に話しかけた。

 

「まあとにかく。今ので現状は理解できたな?」

 

「……ええ」

 

「そうか。……で、俺らが知りたいのはだ。ずばりこうなった原因についてなんだが──」

 

「……分かってる。全部話すわ」

 

 さすがにやんわりと聞くクリフに、頭を抱えていたレナスはそう答えて静かに顔を上げた。

 やはりうつむきがちに、けれど言葉を選ぶ事なく

 

「……十賢者が今エクスペルに存在しているのは、私の「力」のせいで間違いないと思うわ。創造の力──。その「力」を手にした何者かが十賢者を創ったのだとすれば……」

 

 と話し始めたレナスに、クリフが「ちょい待った」と声をあげる。

 

「その前にまず、お前の事を教えてくれねえか? こっちもお前のお国の事情にはさっぱりでな、順を追って説明してくれねえと意味がわからねえ」

 

「私の事を?」

 

「ああ。……確かお前、自分は別の世界の創造神だって、そう言ってたよな。まずそっちの意味を教えてくれ。“創造神”ってのは一体なんなんだ?」

 

 聞かれたレナスは返事に詰まる。

 どうはぐらかそうか考えているというより、どう説明したらいいのか困っているといった様子だ。

 

(そうだよな。“創造神”って一体どういう事なのか、説明してくれないと)

 

 とフェイトがひそかにレナスの事を注視する中。

 通信機の向こうは、これまたいきなりの新情報に『創造、神……って』『つまり神様ってことですの?』『レナスさんが?』『どういう事?』とざわついていたりする。

 返事に困るレナスに代わり、メルティーナが答えた。

 

「分からないもなにも創造神ったら創造神でしょ。読んで字のごとく、まんま創造神よ。こいつは私達の世界の創造神。なんかすごい「力」でふわーっていろいろ創ったりするアレよ。……ほかに何かあんの?」

 

「……なんかすごい「力」で、ふわーっと?」

 

「そうよ。なんかいかにも神様っぽい感じでふわーっ、よ」

 

 ちょっと説明がてきとーすぎて理解に時間がかかるのだが。

 何を難しく考える必要があるのか、みたいな彼女の言いようからするに……これはもしかして、自分が真っ先に思い浮かぶあの“創造神”とは違う奴なのだろうか?

 

 ふわーっ、な感じをしばらく大真面目に考えてみた後で。

 フェイトがメルティーナに確認してみたところ、

 

「それはつまり、あれですか。レナスさんはつまり、どっかのおとぎ話に出てくるような神様みたいな、イメージ通りのベタな創造神さまってことですか」

 

「そうなんじゃないの? どっかのおとぎ話がどこなのか知らないけどー」

 

 大体想像通りの答えが返ってきた。

 やはりレナスの言う“創造神”というのは、フェイトが知っているものとは全く別のものを指す単語だったようだ。

 

(なんだそういう事か。レナスさんはじゃあ、よその創造神だったのか)

 

 つまり彼女はどっかのFD人とは違って、フェイト達の住む世界を構築したわけでもない、彼女の住む星においては、いかにもまんま創造神っぽい創造神的な存在であると。

 謎が解けてフェイトがすっきりする中。

 

「なるほどねえ。そもそも人間ですらなかったとは、そりゃ普通じゃねえわけだ」

 

『あなたが“神様”って。それは道理で……挙動不審なはずですわね』

 

 とクリフやセリーヌがなにやら揃って納得し、

 

「いかにも神様っぽい、まんま創造神……?」

 

『ふわーっと、なんかすごい「力」で、いろいろ創ったりする……?』

 

 レナとクロードも揃って訝しげに呟く。

 次いで少しの間、沈黙があった。

 

 

「ええっ!? じゃ、じゃあ十賢者が生き返ったのって……!」

 

 

 沈黙を破ったのはプリシスである。

 生き返った十賢者。まんまそれっぽい創造神のレナスさん。

 ……とくれば、ここまでまんまな原因もないだろう。

 

 やってしまったんですかレナスさんとみんなで一斉に驚きつつ、分かりやすく沈んでいる様子のレナスに視線をやると。フェイト達の思った事が分かったらしく、すぐさま横にいたメルティーナがしかめ面で言ってきた。

 

「誤解しないでくれる? こいつがよそ様の世界の大悪人、勝手に創っちゃうような事するわけ……」

 

 が、途中で首をかしげた。

 なんかすごい考えている。ていうかメルティーナだけでなく、後ろの方にいるアリューゼまで訝しげな顔だ。

 

(なんなんですかその反応は。もしかしたらするかもしれないんですか?)

 

 フェイト達がますます不安になりかける中、

 

「と、とにかく! やったのはこいつじゃないわよ! 十賢者の事だって知らなかったんだから!」

 

 とメルティーナは力いっぱい疑惑を否定し、続けて力強く言い切った。

 

「こいつはただ、バカなだけよ!」

 

 

 という事で今度こそレナス本人による十賢者が生き返っちゃった原因についての説明、もとい彼女がエクスペルに来ちゃった時の話である。

 

 内容としてはリンガの聖地で彼女がアリューゼ達二人に向けて喋ったのと同じものだ。

 今度はフェイト達にも分かるように丁寧に話してくれ、それとアリューゼ達も合間に補足説明などを挟んでくれたので、みんな大体の事情を理解する事ができた。

 

 その補足説明で色々分かった事のひとつを挙げると、レナスの話の最初の方に出てきた“声”というものだ。

 彼女いわく自分はある“声”が気になってエクスペルに来たとの事だが、どうも普通に喋る声とはニュアンスが違うものを指しているような話しぶりだったので、話の最中にその旨を確認してみたところ。

 思った通りまったくの別物だったらしい。

 

 

「まあなんか、他人の心の声ってやつよ。こいつにはそれが聞こえるってワケ」

 

 言いづらそうなレナスに代わりそう説明したメルティーナは、一斉に驚いたフェイト達一同を見てさらにこんな補足も加えた。

 

「ああそんな焦んなくても大丈夫よ。あんたらが今頭ん中でどんなにやましい事考えてようが、こいつには何にも聞こえちゃいないわ。そこまで融通のきく「力」じゃないみたいだし」

 

「何でも、は聞こえないって事ですか?」

 

「とにかく聞ける条件が限られてんのよ。まず、相手の“声”がでかくなきゃ聞こえてこない。こいつもその相手の“声”にしっかり意識を傾けていないといけない、って感じで」

 

「でかくなきゃ、って?」

 

「そりゃまんまでかい“声”よ。普通の声だってでかい声で叫ばなきゃ遠くにいる相手には伝わんないでしょうが」

 

「はあ、なるほど」

 

「普通に生活してる分には、そんなでかく叫ぶ事なんてめったにないでしょ? どうせ聞こえちゃいないってのはつまりそういう事よ」

 

 最後まで説明を聞いたフェイト達の方はというとみんな表面的にはなんてことない風を装っていたけども、内心では今までの心の声全部彼女にダダ漏れじゃなかったと分かってものすごい安心した事は間違いないだろう。少なくともフェイトはものすごい安心した。

 

「ま、どっちにしろ今のこいつは……」

 

 とメルティーナがまとめかけたところで、チサトが唐突に「あっ」と驚き。

 メルティーナの方も首をかしげてレナスを見た。

 

「じゃあ今日私を助けてくれたのって、そういう事だったの?」

 

「……ってそういやさっき“声”聞いてたわね、あんた。全部とられたわけでもない、って事かしら」

 

 二人のその反応からするとリンガの聖地でのレナスのあれは、その特殊能力でチサトのピンチを察知して急いで助けに行ったという事だったらしい。

 いきなり走り出していったから何事かと思ったけど、事情を知ればフェイトも(自分の顔より人命救助を優先したんだな、レナスさんは)と彼女の一連の行動に深い畏敬の念を抱くばかりである。

 

 とりあえず色々つっこみどころがあったとしても、彼女は人間的には素晴らしい人だ。そんな彼女をバカにするような事、例え心の声が彼女本人にダダ漏れしてなくてもこれからは一切やめようじゃないかと。

 それはさておき気のせいだろうか。なんだかとっても不吉な単語が聞こえた気がしたのだが。

 

「すみません。とられたってなんですか」

 

「だから、それを今から言おうとしてんでしょ」

 

 

 という事で、今度の今度こそ説明再開である。

 

 ようは自分の世界で創造神やってる時に、聞こえてきた“声”がすごい気になって。

 自分の世界にある“水鏡”なる通用門とか、次元の歪みっぽい“道”とかをあまり深く考えずに進んでいったら。いつの間にかマーズの紋章の森上空にいて。

 

 本当だったら神様だから、肉体の“霊体化(アストラライズ)”とかいうなんかすごい「力」で空飛ぶみたいな事ができたはずなんだけど、なぜかそれができなくて空から落ちて意識を失って。

 そこをレナとセリーヌに助けられて。それから色々あって、今に至ると。

 

 あの時の事はもうよく覚えていなくて、厳密にはいつの時点でエクスペルに来ちゃったのかもよく覚えていないんだけど、とにかく自分が持ってた「力」はその時その“声”を聞いたのを最後に全部使えなくなってて、おまけに今も使えない状態が続いていると。

 

 そして今思えば、あの時あの“声”を聞く前に、なんか変な“音”も聞いていたような気がする。

 とにかく“声”の方が強く印象に残ってて、だからそっちの方の記憶は特にあいまいで、今さら思い出して本当にごめんなさいと。

 

 そんな感じの内容を、レナスは全員の視線を集めつつ、肩を落として語ったのだった。

 

 

 

「えーとつまり、気になってこっち来ちゃった時のそれが実は罠で、それであなたの「力」をとってっちゃった人……? が、十賢者を生き返らせたって事なのね?」

 

 チサトのまとめに、レナスは深刻そうな様子で「ええ。恐らくは」と頷いた。それからメルティーナのつっこみにがっくりとうつむいた。

 

「恐らくも何も、十中八九そうでしょうよ。他に原因あるわけ?」

 

「ごめんなさい……」

 

 まあ、知らないうちに自分が今使えなくなっているはずの、自分の「力」と思わしき力で死んだはずの悪人が生き返っていたって。

 そこまで偶然が重なっちゃったら、やっぱりメルティーナも言ったように十中八九そうなんだろう。これで無関係だったらそっちの方がびっくりだ。

 

(とられちゃったんだなレナスさん。罠にかかって。まんまと。しかも“声”の前に変な“音”もしてた気がするって……)

 

 それは確かに、色々とやらかしてるなあとフェイトが思う中。

 鼻で息を吐いたメルティーナの方は、通信機の人達の素朴な疑問にもなげやりに答える。

 

『神様の「力」って、そんな簡単にとられちゃうものなんだ?』

 

「私だってびっくりだわよ。でもそう考えるしかないでしょ? その十賢者とかいう奴らは現に今存在してんだから」

 

『うーん、まあ、そうですよね』

 

『とられちゃったんだ、簡単に』

 

『肝心なところは結構てきとうなしくみなんですのね』

 

「あいまいと言いなさい、あいまいと」

 

 それからこっちに向かって確認してきたので、フェイトも頷いて、

 

「つまり十賢者なんつう大悪人を勝手に創りやがった、大バカの元凶は別にいるのよ。……ちゃんと分かった? こいつはうっかり「力」とられただけのただのバカで、人様に顔向けできなくなるようなことは一切してないってこと」

 

「ええまあ大体は。ついさっきまでとられた事にすら気づいてなかったって辺りが最高にバカっぽいですね」

 

 

 うっかり彼女につられて本音の方を口に出してしまった。

 訂正するひまもなくメルティーナがブチ切れる。

 

「はあ!? なんなのよあんた、それがひとに向かって言う言葉!?」

 

「はあすみません。けど、正直顔に文字まで書いた人に言われたくはないです」

 

「私はいいのよ! だってこいつ本当に、言いたくなるくらいバカなんだから!」

 

「やっぱりバカなんじゃないか」

 

「なんですって!?」

 

 ボーマンが「くだらん言い争いはよそでやってくれんかね」とぼやくも、二人、というかメルティーナの耳には届かず。フェイトの方ももはや本当の事言っただけじゃんと開き直りぎみだ。

 

 こんな時いつもならレナがすぐに諫めてくれるのだけど、こっちもなにやら考え中で止める気配はまったくなし。

 代わりに止めたのはチサトだ。命の恩人が悪く言われまくっている事に耐えかねたらしい。

 

 

「ちょっと! 悪いのはその「力」をとっちゃった人でしょ? 彼女だってわざと「力」をとられたわけじゃないんだし、そんなよってたかって責める事ないじゃないのよ」

 

「ああ!? 誰がいつこいつの事責めたって……」

 

 反射的に反論しかけたメルティーナは、ものすごい落ち込んでいるレナスを見てむっつり黙り込んだ。

 これでは本当によってたかって彼女をいじめたみたいではないか。

 前言撤回、自分達だって彼女が「力」をとられた事が原因で、わざわざ過去の時代まで来てひと月以上意味も分からずぐだぐだ旅をさせられていたようなものだし、一言ぶっちゃけるぐらいはいいじゃないかと開き直っていたフェイトもこれには言葉をなくさざるを得ない。

 

 さすがに悪い事をしてしまったとフェイトが内心動揺する中。

 こっちもさすがにいたたまれなくなったのか、クリフがレナスに向けて筋の通った気安めを言った。

 

「確かにまぬけな話ではあるが……。最初っから罠にかかった自覚があったとしてだ。最初に会った時点でそれ全部正直に打ち明けられても、どうせ俺らも信じなかっただろうしな」

 

 確かに。神様っぽい「力」をだいたい全部とられちゃった今の彼女は、美人属性とアホみたいに強い事を除けば、はっきり言ってただの人間だ。

 彼女が聞いたかもしれないという謎の“音”の事はともかくとして、見せつけられる「力」もないのに自己紹介で「私は神です」って打ち明けられても、正直頭やばい人きたなこれとしか思えないだろう。

 

 実際、彼女の「力」で生き返った十賢者がいるという事実を事実として認めざるを得なくなった今のこの状況でも、フェイトはレナスの言う事を半信半疑で聞いているくらいなのだ。

 “別の世界の創造神”って、いくらなんでも話盛りすぎじゃないですかとか。

 あくまで彼女の住む未開惑星の中では“神様”という扱いなだけであって、実際は現地住民に崇め奉られちゃった系な、ただ紋章力が異様に強力な人とかそういうオチなんじゃないか? とか。

 

 さすがにフェイトも責任を感じて落ち込んでいる最中っぽい本人に向かって、そんな無神経な事バカ正直に言うつもりはないけど。ていうかまず言えないけど。

 

 

「……まあなんだ、俺らも今日やっと復活した十賢者のツラ見れたわけだし、やらなきゃいけねえ事が色々はっきりしてよかったんじゃねえの?」

 

「そうよね。復活しちゃったんなら、また倒せばいいのよね」

 

「そーそー。前に一度倒してんだしさ、なんも難しく考えることなんかないって。アタシ達なららくしょーじゃん?」

 

 チサトやプリシスも明るい調子でそう言い始め、さらには大皿に残っている握り飯をやたらと勧め始めた。

 

「そんな事よりさっきから全然食べてないじゃん。ほら、レナスも食べよ食べよ?」

 

「そうそう、いっぱい作ったからどんどん食べちゃって。あ、……ちゃんとおいしいから安心していいのよ?」

 

 なんか近所のおばちゃんっぽくなってきたが、彼女達もレナスを元気づけたい気持ちでいっぱいなのだろう。

 我に返ったレナやフェイトも二人に続けて、下を向いたままのレナスにあくせくと話しかける。

 

「そうですよ、倒せばいいだけなんですから」

 

「すみません、うっかりぐらい誰にでもありますよね。大丈夫です、そのご飯本当にちゃんとおいしかったですから」

 

 

 そんなみんなの気持ちが伝わったかどうか。

 しばらくして、レナスは下を向いたまま、

 

「ええ。もちろん十賢者も、彼らを創った存在もこのまま放ってはおけないわ」

 

 と静かに答えた。

 

「創造の力──。あれは決して、悪意を持った者の手に渡っていいものじゃない。一刻も早く、私の「力」を取り戻さなくては……」

 

 

 やはり深刻な様子で、けれど憔悴しきった様子ではなくレナスは言う。

 今はとにかく自分のやるべき事を。このまま落ち込んでみんなに慰められるだけじゃいけないと、そんな意思が窺える表情だ。

 

 だよね倒せばいいよねと周りに言われた通りに開き直って勧められた握り飯を素直に食べ始めない辺り、(相変わらず真面目な人だな)と思わない事もないけど。

 それでもとにかく前向きに考える事にはしてくれたようなので、フェイト達みんなも一安心である。

 

『よし、じゃあみんなで十賢者を倒そう!』

 

 さっそくクロードが元気よく言い。プリシスやチサトなど、ノリのいい奴らもそれに合わせて「おー!」『倒すぞー!』と続いた。

 アシュトンやセリーヌも前向きなコメントを寄せ、

 

『そうだよね。僕達みんなが力を合わせれば、十賢者なんか簡単にやっつけられるよね。……よし、僕も頑張らなきゃ』

 

『前よりこちらの人数も増えてますもの、そりゃもう余裕ですわね』

 

 なんかいい感じの雰囲気で話がまとまりかけたところで、ノエルが喋って全部台無しになった。

 

 

『でも一体どこにいるんですかねえ、十賢者』

 

「……」

 

 

 そりゃフェイトだって、当然そういう問題がある事には気づいていたけど。

 レナスさんってば結構周りの空気に流されやすい人だからこの際こういうノリもありかと思って何もつっこまずに作り笑顔までして付き合ってたのに、どうしてこのタイミングでそういう事正直に言っちゃうのか。いや最初に空気悪くしたの自分だけど。

 

 静かになったフェイト達が、結局少しも流されなかったっぽいレナスの様子を恐る恐る窺う中。

 同じく空気読まない組のマリアとディアスが平然と話を進め、

 

『さすがに、居場所が分からないと倒しようもないわね』

 

『……今までに倒した十賢者はエルリアタワーに三人、リンガの聖地に一人か。以前と違って、まとまった所にいない点は厄介だな』

 

 さらにマリアとクリフが普通にレナスに質問し、レナスも真剣に考え込みつつ答える。

 つまりそういうノリは別に求めてないという事か。作り笑顔もいらないと。なんか損した気分である。

 

 

『それに十賢者を生き返らせた、そもそもの元凶の事も気になるわね。──ねえ。あなたを罠にかけたその誰かは、あなたの事を最初、何か変な“音”で呼び寄せたと言ったわね。その“音”というのは、もしかしなくても』

 

「ブオー、って感じじゃなかったか? それもなんつうかこう、不規則な」

 

「……ええ。断定はできないけど、あれは確かにあなた達が考えているものと同じだったと思うわ」

 

「だろうな。んじゃその事を思い出せたついでに、そのメッセージの内容なんかもばっちり思い出せたりは」

 

「“モールス信号”というものが私の世界に存在するか、という質問なら答えは否よ。あの時実際に聞いた“音”をそのまま再現しろ、というのも──」

 

「分かってるって。まったく印象に残ってねえってくらいよく覚えてねえ事なんだろ? あげくひと月以上も経ってるとくれば、そりゃな」

 

「……ごめんなさい」

 

「いや、それだけ分かれば十分だ。どうせ大した事は言ってねえだろうしな。……しっかしマジで何考えてんだそいつは。俺らを挑発でもしてんのか?」

 

 

 レナスの話を聞いてすぐにフェイトもそうじゃないかと思ったが。

 もしかしなくてもレナスを謎の“音”や“声”で誘い罠にかけた奴は、FD世界のブレアに変なメッセージを送り、フェイト達未来の人間をこの時代のエクスペルに呼びつけたのと同じ奴だったようだ。

 

「自分で十賢者生き返らせといてからにあんな救難信号送りつけやがるとは、つくづくふざけた野郎だぜ。千発は殴らねえと気が済まねえ」

 

 全く意味がわからなくてもそれでも放っておくわけにもいかないから今の今までそいつの言葉に付き合って、ディプロの転送装置も使えやしない中、エクスペルをひたすらに歩き回っていたというのに。

 蓋を開けてみればなんという事はない、すべての元凶はそいつだったという事だ。

 

『転送妨害も、やっぱりその人がやってたって事なんだよね』

 

『さあ。もしくは十賢者の方かも知れないわね』

 

「どっちだって一緒だろ? どっちがやってたって、とにかくそいつらが自分達の好き勝手にできるようにやってる事に変わりはないんだ」

 

「だな。結局どっちもぶっ飛ばす事に変わりはねえ」

 

 とは言うが、フェイト達四人の気分として実際どっちをよりぶっ飛ばしたいかというと。

 やっぱり極悪だと話に聞いた事があるだけの十賢者より、こんな事をしでかしたあげくに、挑発としか思えない行動の数々で今なお自分達を翻弄してくれている元凶の方だろう。

 

 一体そいつは何を思って『このままじゃ宇宙マジヤバい』などというふざけきったメッセージを送りつけ。何を思ってひと月以上もの間、自分の姿も十賢者の姿も一切フェイト達に見せず、ただひたすら無為に時間を過ごさせるような真似をしたのか。

 どうせ救難信号の内容からしてふざけている奴の事だ。

 自分の言動によって周りの人間が困るのを面白がっているに違いない。

 そいつがどこのどいつなのか今どこでどうしているのかも知らないが、一向に自分の尻尾を掴めていないフェイト達の事を鼻くそほじりながらあざ笑う姿が目に浮かぶようではないか。

 

 

 拳を鳴らすクリフに、マリアもソフィアも『きついお灸を据えてあげないといけないわね』『泣いてごめんなさいしたって、絶対に許してあげないんだから!』と言い、フェイトも(まったくだ)と強く頷く。

 そんな様子を見て、メルティーナが聞いてきた。

 

「何? あんたらその大バカに、何か心当たりでもあんの?」

 

「いえ。私怨はかなりありますが、そいつの居場所については僕らもまったく」

 

「じゃあ意味ないじゃない。ったく使えないわね」

 

「……。メルティーナさんって一流の紋章術師なんですよね? 術でそいつと十賢者達の居場所をいっぺんに突き止めたりはできないんですか?」

 

「バカじゃないの? ついさっき名前聞いたばっかの奴らの事なんか私が知るわけないじゃない。魔術の基礎すら知らないアホはこれだから困るわ……つか私は“一流の魔術師”よ。んな変な名前で呼ばないでくれる?」

 

 

 そんな細かい名称の違いはどうでもいいうえに、結局偉そうに言う自称一流のメルティーナにも十賢者達の居場所を突き止める事はできないらしい。

 同じく十賢者達の知識に乏しく、ほぼただの人間になってしまったレナスも深刻そうに黙ったまま。

 通信機の向こうも色々喋ってはいるが、

 

『セリーヌさんも?』

 

『当たり前でしょう。できたら最初っからやってますわ』

 

『もう一回、エルリアタワーの中をくまなく調べてみるっていうのは……ダメかなあ』

 

『あそこに残っているのはどれも過去の計画のものばかりで、今現在の彼らの情報は全くと言っていいほどなかったわ。転送妨害装置のたぐいも見当たらなかったし。彼らはただあそこにいただけで、タワー内の設備にはほとんど手をつけていなかったんじゃないかしら』

 

『うーん、やっぱりダメかあ。そういやシステムキーも昔のまんまだったもんな。無駄に自分達の居場所書きまくるなんてこと、してくれてないよなあ』

 

『ただひとつ、彼ら個人が持っている端末になら、他の十賢者達の位置情報もあったのかもしれないけど……。死体ごと消えてしまったらどうにもならないわね』

 

 

 などと、具体的な解決方法は誰にも見つけられなさそうだ。

 フェイトもレナもボーマンもアリューゼも何も言えず、プリシスもチサトもとりあえずうんうん唸っているだけ。

 十賢者も元凶も絶対に倒すと意気込んだそばから、早々に手詰まりになりそうな雰囲気すら漂ってきたところで。

 

 クリフが「ふーむ、行ってみる価値はあるかもしれんな」と呟くと。

 いきなりこんな事を言ったのだった。

 

「しゃーない。宇宙の平和もかかってる事だし、こうなったらズルするか」

 




説明回終了。
……ですが、会話中心回は次回以降もしばらく続きます。

それと一応、今回の話で変わったみんなの行動方針まとめなどを。

・SO勢のみんな
 宇宙を平和に。いつの間にか生き返ってた十賢者を全員倒す。
 それと十賢者生き返らせた元凶の大バカもはっ倒す。
・レナスさんとその仲間達
 とにかくとられた「力」を取り戻す。
 それとこんな事になった責任をとって、その「力」で創られた十賢者も倒す。

創造された十賢者達のうち
・サディケル
・ミカエル、メタトロン、ラファエル
 以上の四人はすでに撃破済み。よって残りは六人。
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