そうやってレナスによる一通りの実演および説明が終わった後。
休憩もかねて全員いったん現実世界に意識を戻し、マリアの方がレナスにとっては見慣れない武器である、『銃』の攻撃特性について軽く説明。
「弦を引く動作のない、クロスボウのようなものと考えていいのかしら」
「中世時代に使用される弓の一種? これにも装填時間はなくはないけど、確かにああいうのに比べたら一瞬で撃てると言ってしまって構わないでしょうね」
レナスなりに自分の世界にあるものに例えて『銃』への対処法を考えたらしいところで、再び円卓上に意識を戻し、さっそくレナスを相手にした複数対一のバトルシミュレーション開始である。
当初はレナスには思う存分「力」を使ってもらう予定だったのだが。
昨日の出来事に遭遇したフェイト達一同みんな、実際に本気出されたら戦闘開始直後に隕石衝突跡イコール即全滅という結果になるような気しかせず。それじゃ全く鍛錬にならないという事で、多分の温情をかけた動きをしてもらう事になった。
レナス自体は積極的には動かずみんなの攻撃を受ける側にまわり、攻撃しているこちらに明らかな隙ができてしまったら、指摘の意味も込めて攻撃に出る。
慣れてきたら少しずつ制限を緩めるとは言ったものの、それだけの条件をつけてもらったのだ。
ようするにほぼ棒立ち状態の一人に全員で総攻撃をしかける、という非常識にもほどがある練習方法なのだが、いかんせんそのただ一人の能力自体が非常識極まりないので仕方ない。
そもそもこちらが出した条件というより、レナス自身が
「大抵の「力」は行使者の集中が途切れたら使えないはずよ。こういう場合、なにより連携を意識した戦いが有効だと思う」
と提案したところが大きいのだ。
というか結局そこまでしてもらってからに、案の定こっちは散々な戦いぶりを披露するはめになったわけだし。
初戦はフェイトとクロードとチサトとクリフとミラージュようするにレナスを囲んだ前衛全員がいっぺんに攻撃の順番を人に譲った結果、二秒くらいの長い沈黙を経てレナスが上空に飛び上がり槍が降ってきて終了。
ソフィアなどは最初の紋章術を詠唱中の間の出来事である。
二戦目は前回の反省を踏まえ、前衛の数をばっちり息の合うクリフ、ミラージュの二人のみに削減。
さっきよりはマシだったが、これまたお互い呼吸の分かる後衛マリアによる援護射撃を厄介なものだと即認識したらしく、さっそく攻撃の隙をみつけたレナスが最優先でマリアに弓矢攻撃。
同じくソフィアも回復術発動前にレナスにやられ、剣による近接攻撃もちょいちょいされ、やはり武器が拳の二人だけでは大変厳しい戦いを繰り広げていたところで後衛にまわったクロードが
「みんな、技を出すから避けてくれ!」
と事前に宣言。
そして出した結果の『空破斬』がぶっちゃけ(ソフィアでも避けれるなこれは)みたいな速度の地を這う衝撃波だったために槍が降ってきて終了。
三戦目はちょっと発想の転換をしてみた。
ずっと隙を与えないようちまちま攻撃し続けるより、いっその事大技で一気に決めるとかどうだろうという事で、各自技を思いっきりぶっ放してみる事にしたのだ。
前回の失態を引きずっているクロードが
「僕の空破斬が、遅いからッ! だから全滅したんだ!」
とか言いつつ後ろの方でひたすら『空破斬』を繰り出し続けている中。
レナスもみんなの好きなようにやらせてみる事にしたらしく、今回は一切手出ししないでおとなしく技を受ける事を宣言。
「確かにみんなの最大火力を見ておくのも必要ね。いいわ、一度にかかってきて」
という事なのでとりあえず、詠唱時間の関係で攻撃タイミングを合わせづらいソフィア、遠距離技を持たないミラージュ、および特訓中のクロードを除いた四人で一斉に、レナス目がけて『イセリアルブラスト』『バーストエミッション』『マックスエクステンション』『チアーガス』をぶっ放してみた。
結果、レナスどころか周辺の地面が根こそぎ消滅。
これはさすがにやりすぎてしまったかもしれないとみんなして察したところで、レナスの姿が、かなり離れた場所からふわっと現れたのだった。
レナスもさすがに危険を感じたので肉体を霊体化して緊急回避したのだとか。
聞いたフェイト達も渾身の一撃をあっさり避けられたとかいうショックより、正直なところ無事でよかったというのが主な感想である。……いやどうせシミュレーション上での事だし直撃していてもまあ本人は大丈夫なわけだが。なんとなく、気分的な意味で。
それはともかく。
受けると宣言したのに思わず避けちゃったレナスも認めた通り、火力面は当たりさえすれば十分足りているという事は分かった。
半面、その当たりさえすればという面が目下最大の課題となった事もはっきりしたわけだが。
「どれだけ痛い攻撃でも、『霊体化』で逃げられてしまえばすべてノーダメージ。なかなかに厄介な能力ね」
「これは私も瞬時にできるものじゃないから。相手が私と同等以上に「力」に慣れているという事でもない限り、交戦中ならよほどの隙を与えなければ大丈夫だとは思うわ」
「瞬時にはできないはず、って……ねえ?」
「当たる直前まで姿見えてた人に言われても説得力皆無なわけですが」
「まあしゃーねえな。なんにせよ避けられたら意味がねえんだ。言われた通り地道に連携意識していく、つう手しかねえか」
そんなところで、その日の全員での想定演習はひとまず終了だ。
各自自由行動となった後も、フェイトなどは昨日と同じく張り切ってトレーニングルームに直行。
これまた昨日と同じように備え付けの機具を使った運動、あるいは開けた場所で人と現実世界でできる範囲の手合わせなどをして。
思いっきり汗をかいた後は、昨日と同じくもう少しだけ残ると言ったレナスと食堂で別れてまた会議室に戻り。
ここでも同じく人を相手に対戦、あるいはフィールド上に設定しておいた頑丈な案山子相手に連携練習をするなどして、気の済むまでイメージトレーニングの続きに勤しんだ。
☆☆☆
七対一とだけ聞けば、こちらの圧倒的有利に思えるが。
その顔触れは全員が全員長年肩を並べて戦ってきた間柄でもない、いわば寄せ集めのチームだ。
いくら大勢で一人を囲もうと、遠慮がすぎれば相手に隙を与え、反対に主張しすぎれば同士討ち。相手が全く動かない的だったとしても、大勢で絶え間なく一人を攻撃するというのは案外難しいものなのだ。
よって次の日の七人全員揃った想定演習では、戦闘ごとに前衛後衛各人の役目が立ち替わり、この七人での理想的な攻撃フォーメーションを模索した。
この時点で出た結論は、前衛の数は少なすぎると当然レナスを抑えきれなくて、かといって多すぎても前衛同士の連携が難しくなり、さらにソフィアやマリア等後衛の邪魔にもなるという事。
よって前衛は二、三人がベスト、残りは後衛にまわり援護攻撃または術での補助など、とにかくパーティーが壊滅しない事を優先した立ち回りをするのがいいという方向性だけ決めて演習は終了。
その後は前日と同じようにして一日がすぎ。
その次の日の想定演習で、なんとようやく、
「そもそもこのメンツで七人連携やろうってのがまず無理なんじゃねえのか」
「私、機械操作メインなら中衛やれるわよ? ただ現実世界で今使えるかって言ったら……名刺とスタンガン以外は帰ってプリシスにお願いしなきゃだけど」
「わたし一人で補助と回復と攻撃全部やるのは、ちょっと……」
「大体の術師もエクスペルに残ってるんだよな。レナとかセリーヌさんとか、メルティーナさんとか」
「……ここにレナがいればなあ」
という根本的な前衛の過多が判明。
剣士二人の格闘三人。ソフィアとマリア以外みんな前衛だったのである。
遠距離技もない事はないが、ぶっちゃけ使えないクロードの『空破斬』(特訓なお継続中)以外、どれも前衛を巻き込む可能性の高いものばかりという悲惨さ。
もうしょうがないのでこの際七人全員での特訓は諦め、剣組と格闘組の二チームに分けて連携練習を続ける事に。
引き続きフェイト達の特訓に付き合ってくれるレナスにも、これからは
『姿は見えてないけど実は紋章術で防御バリアはり続けてるレナがいるから後衛への攻撃は効かない』
という脳内設定でさらに手心を加えてもらう事になった。
レナスおよび後衛の二人には両組の演習に入ってもらうので、一チーム辺りの練習時間も単純に半減。
正直なんともいえない方向性の演習になってしまったが、だって人が足りていないんだからしょうがない。
必ずこの七人でレナスさんの「力」持ってる相手と戦うってわけでもないし。
帰り道ずっと待機で体鈍らせたくないから鍛錬頑張ってるだけだし。
一応なんでもありなわけでもなく『でも後衛の元に直接辿り着かれたらレナバリアは無効』っていう、形だけは実戦に沿っているっぽい制限もつけておいた事だし。
それに存在していない人をあてにしてるわけじゃなく、エクスペルに戻ったらちゃんといる人なのでたぶんセーフだと思う。
まあそんな経緯ではあるが、後衛への遠距離攻撃なしというのは実際かなり大きな有利を得た。
攻撃が飛んでくる心配がないので(ていうか今までは確実に飛んできていたわけだが)、マリアとソフィアも援護攻撃や前衛の支援に集中できるようになり、フェイト達前衛もレナスを直接後衛に近づかせない事だけを気にしていればいいようになったのだ。
もちろんその分だけレナスも棒立ちを止めほどほどに移動をするようにもなったし、前衛への攻撃に力を入れ始めるペースも速くなっている。
新ルールで始めたばかりの今の段階ではまだ、気を抜いたらこちらがやられるというほどに彼女が追い詰められている気はしないが。とりあえず七人全員で無理やり戦ってた時より本気を出してくれている事は間違いない。
全力でぶつかって鍛錬をしたいフェイト達にとってもなによりの傾向である。
で、肝心の連携練習はというと。
フェイトの場合、後衛のソフィアとマリアについてはすでに知った仲だ。お互いの戦い方もある程度分かっているので特に問題はなかった。
肝心の前衛をやる相方クロードについてだが、このディプロに乗るまでに彼と肩を並べて戦った事は、片手で数えるほどしかない。
行きの時にもよくやってた対戦ゲームで彼の戦い方はなんとなく掴めてきてはいるが、それもなんとなくであり、実際何度か一緒にレナスに挑んでみても、とても阿吽の呼吸ができているとは言い難い結果になってしまった。
なんというか、肝心なところでお互い遠慮が出てきてしまうというか。
フェイト個人の演習目標としては、彼との連携をどれだけうまくやれるかが今後も最大の鍵になりそうなところだ。
それとフェイト個人の演習時間が減った分、現実世界で肉体トレーニングする時間を増やしたのだが、こっちの成果はたぶん相変わらずといったところか。
まあこの辺はたった数日で大きく変わるものでもないし、一応体が鈍らない程度以上には動いているので問題はないと思う。
時間が合う時、手合わせをよくしてくれるレナスにはやっぱり負けてばかりだが。
こっちだってそれなりに腕を磨き続けているはずなのに、一向に差が埋まった気がしないというか。
クロードとコンビを組んでの二対一という事までやってようやく勝率三割なのだから、一対一での結果などお察しである。
なんかもう最近は、彼女の剣技により磨きがかかってきているような気すらするのだ。
「これはあくまで能力が制限された場所での結果よ。あなた達に本気を出されたら、今の私ではどうなるか分からないわ」
とか真面目に言われても。
場所柄上、向こうもリンガの聖地の時みたいな本気を出してないのはまるわかりなのでなんの慰めにもなりゃしない。
一緒に旅してた頃のあの堂々としたサボりっぷりは一体何だったのかと、真剣に本人に問いただしたくなるような剣さばきである。
そういやここ数日は特に、会議室で演習に付き合っている時間以外はほぼトレーニングルームにこもっているような感じだし、実際は鍛錬がとても大好きな人だったのだろう。
いや、そうでもなければそもそもここまで強くはならないとは思うが。本当にあのサボり時期は一体何だったのか。
正直彼女に関してはもう現実世界ですら勝てる気がしないので、クロードともども諦めている。
こっちももっとたくさん体を動かし続けていたい気持ちだけはあるけども、無理しすぎて次の日に響いてもしょうがないし。
人間勝つ事だけがすべてではない。常軌を逸した人を目の前に、たまにはどれだけ追いすがれるようになるかを目標にしてもいいじゃないかとフェイトは思うのだ。
☆☆☆
そうやって数人での想定演習が始まってから、また何日かがすぎていった。
この時点で現実世界での方のフェイト個人とレナスとの手合わせはというと、一対一は相変わらず。クロードとコンビを組んだ場合は二回に一回勝てるかどうかというところか。
お互い本気でぶつかれない場所での結果だし、フェイト達が強くなったという証明にはならないとは思うが。まあ一応は連携練習の効果が出ていると考えていいのだろう。
そんなこんな、現実世界でのトレーニングは、そこそこ上達したような変わらないような。
一方、円卓上での演習はみんなほんの少しずつではあるが、順調にお互いの戦い方や、近接攻撃中に特殊技を組み込む攻撃方法などを徐々に学んでいき。あとクロードが特訓中の『空破斬』は、なんかだんだん黄色みを帯びていき。
それに付き合っているレナスもその分だけ徐々に、瞬間的な本気を出す場面が増えていったのだが──
順調に航行を続ける宇宙艦ディプロが、惑星エクスペルへの帰路を三分の二ほど過ぎた頃。
現実でも演習でものめり込むように鍛錬を続けているフェイトやクロードに、ほどほどに鍛錬を続けているらしいクリフがなにか嫌な予感がしたのか、
「お前らその向上心は結構だが、負けず嫌いを不必要に刺激すんなよ」
という謎の釘を差した、まさにその次の日。
そんな戦いづけの日々は、突如縮小を余儀なくされた。
その時“創造神レナス”と激しい戦闘を繰り広げていたのは、フェイト、クロード、ソフィア、マリアの四名。
ここ最近フェイト、クロード両名による隙を与えぬ近接連携攻撃がなんとか形になってきたという事で。
かねてより四人で相談していた、避けられない本気の一撃をレナスに与えるための案を、いよいよ実践してみようという事になったのである。
まずは定石通り、戦闘開始直後にマリアがレナスに遠距離攻撃。相手が攻撃を回避しているその間にフェイト、クロードが接近し、マリアを交えての遠近連携攻撃をしかける。
ここでいつもは攻撃威力上昇の『グロース』や身体能力向上の『エンゼルフェザー』等、他の味方の補助術に専念しているソフィアが別の紋章術を詠唱。
今回選んだのは敵単体の頭上から拘束効果のある雷を落とす攻撃術、『サンダーストラック』だ。
詠唱が終わるぎりぎりまで近接攻撃を続けてから、フェイト、クロードの二人は術に巻き込まれないよう一歩下がる。
もちろんこの時にも隙を与えないようマリアの援護射撃に合わせて、下がる際に技を放つ事も忘れない。
目論見通りソフィアの術は命中。
レナスはというと自身の周辺に特殊な障壁を展開。
フェイト達が放った技と同様にダメージは与えられていないようだが、目的はその場から動けないようにする事なので問題はない。
術の発動時間は数秒ほど。この間に遠距離にいたマリアが自ら前に出る。
レナスの方はというと障壁の中で、近づいてくるマリアに一瞬やや面倒そうな表情をした。
ここ連日レナスと戦ってみて分かったが、どうやら彼女はマリアが持つ銃での攻撃を苦手としているようなのだ。
他の人の攻撃は浮遊盾や剣で受けるなり障壁で無効化するなりしているのに、マリアの攻撃だけは必ずといっていいほど受けずに回避している。
理由もマリアから聞いているので分かっている。
というか、もしフェイトがレナスの立場だったらたまったもんじゃないだろうなとも思ったが──まあ使えるものを利用しない手はないだろうと。
この戦法を提案した時のマリアは正直怖いくらいにやる気の目をしていた。
彼女の性格上やられっぱなしは我慢ならないというのは分かるが、まさかはっきり表情に表れるほどとは。
戦いに消極的なソフィアですら「やめようよ」とは言わなかった辺り、二人ともフェイトやクロードの倍はこのバトルフィールド上で戦い続けているせいで、精神的な疲労というかストレスが想像以上に溜まっていたのかもしれない。いよいよ抑えがきかなくなった結果だと思われる。
(……これは確かに、負けず嫌いは敵にまわしたらダメだよな)
と正直マリアの事を偉そうに言えないフェイトは、マリアとは反対に後ろに下がって「力」の発動準備。
手に握った剣は下に向けたまま、状況の対処に戸惑った様子のレナスを前に、紋章術の効果が切れるより前に、タイミングを合わせてクロードが完全に黄色くなった『空破斬』を放つ。
結局威力が上がっただけでこの衝撃波が速くなる事はなかったが、今回は近距離で当てにいっているので何も問題はない。
これも避けずにレナスが障壁で防いでいるところで、辿り着いたマリアが至近距離から拡散レーザー『プルートホーン』発動。
レナスは今度ははっきりと焦りの色を示した。
「ち……っ!」
避けきれず障壁と浮遊盾の両方で防いだレナスに、すかさず二撃目の『空破斬』。
先ほどの攻撃で脆くなっていた……いや脆くされた浮遊盾を壊され。
なお襲いかかってくる衝撃波を障壁で防ぐのにレナスが若干手間取った瞬間を狙って、さらにマリアが
放たれたエネルギー弾はやはり、障壁を一切無視してレナス本人に直撃。
マリアの持つ特殊能力『アルティネイション』で障壁のみを透過するよう、弾自体を改変した結果である。
レナスの動きを封じている重力の檻が壊れないよう集中を維持しつつ、マリアはふうと息をつく。
「ぐっ……こんな、もの」
「よかったわ、そこそこ効いてるようで。この状態で障壁もすぐ張り直されたら、さすがにどうしようかと思っていたのよ」
何気にこの時点でレナスにまともなダメージを与えられたのは今回が初なわけだが、これが実戦ならまだまだ相手を倒したとは言えない段階である。
という事でクロード達も安全圏に下がっているようなので、弾速の遅い重力の檻に引きずり込まれている体を引きはがそうと、レナスが必死にもがいている最中。
それまで破壊の「力」をしっかり溜めていたフェイトはためらいなく、自身最強の必殺技である『イセリアルブラスト』を発動。
「これが耐えられるなら、耐えてみせろ!」
確実に避けられない状態のレナス目がけて特大ビームを放出しつつ、
(これはさすがにやったか!?)
と心の中で特大フラグを立ててしまったところで。
「……っ」
ぎりぎりまで追い込まれすぎたレナスは、マリアの作り出した重力の檻を、本気の力ずくで破り、
「こんな、もの──!」
そのまま本気の本気を出して、襲いかかってくるフェイトの「力」も、無理やり変換して自分の「力」に加えた後。
さらに加減がきかなくなったのか、そのまま本気の本気を出しすぎて、自身を中心とした「力」の大爆発を起こしたのだ。
限られた大きさのバトルフィールド上でなおかつ、その爆発のほぼ中心部にいたフェイト達自身には、その爆発の正確な威力は分からなかったが。
体感的な事でいうと、あれはたぶん、最近もはやお約束になってきた槍投げの比ではなかったのだと思う。
この閉じられた世界中、何もかもが強く輝く光の中で
(これは確かに、やる気出したら星一個壊せるはずですね)
という諦めの境地でとっとと意識を手放す。
そうして現実世界に意識が戻った時。フェイト達が目にしたのが御覧の通り──
無残に砕け割れ、完全に使い物にならなくなった『パラケルススの円卓』の残骸という次第である。
あげく円卓上のバトルフィールド崩壊に巻き込まれたのか、それとも本気出しすぎて疲れたのか。
いつもならフェイト達を全滅させたすぐ後には起きてくるはずのレナスが、目を覚まさないまま。
大変な事になってしまったどうしようと慌てふためきつつ。四人でレナスをとりあえず彼女の精神が残っているかもしれない、円卓の残骸一式とも一緒に医務室に搬送……
……したのに、なんとよりにもよってこんな時に現代技術による機械を使った大抵の医療設備が、転送装置同様レナスには使えない事が判明。
医者の方もびっくり仰天して頭を抱えつつ、なんとか使えそうな機械で体温測ったり脈拍とったり、果てには円卓上のホムンクルスの方を入念に調べ始めたり。
そうこうしているうちにダメ元でやってみたソフィアの状態異常回復術『キュアコンディション』が効いたのか、それともただ単に時間が経って覚醒しただけなのか。
最終的に、レナスは一応無事に目を覚ましたのだが。
☆★☆
「で、お前ら全員やる気出しすぎた結果こうなったと」
騒ぎを聞きつけ医務室にやってきたクリフは、やりすぎたフェイト達四人とぶっ壊れた『パラケルススの円卓』および、ぶっ壊して寝て起きてまだ眠そうなレナスを一通り見比べた後、盛大にため息をついた。
少し頑張りすぎなきらいはあっても、お互いに刺激され能力を高め合っている事自体は悪くない事だしと、個人の好きにやらせていたのだが。
こうなったらいよいよ何も言わないわけにはいくまい。
「ったく、お前まで何やってんだよマリア」
「言わないで。自分がどうかしていた事くらい、私も分かってる。力を制限して戦闘に付き合ってくれていただけの相手を、ルールの隙をつくようなやり方で負かそうとしたんだから」
四人とも正気に戻って素直に反省している事だし、うつらうつらしてるもう一人はどうせ今何言ったって耳に入っていないだろうしで、やってしまった事に対しての説教はほとんどなし。
ただクリフは、全員まとめて今日と明日は一切の鍛錬禁止。
体と頭をしっかり休める事と、さらに今後も決まった時間以上は鍛錬してはいけない事とを、決定事項として言い渡したのだった。