※オリキャラ≠作者です。念のため。
《ダサーッ! メリルちゃんダサーッ!
……いやもう、びっくりしちゃったのなんのって。
さすがに気になって様子みに来てみたらこれって。
まさかバーニィで酔うって……あ、それとももしかして、“あっち”にはいない系?
ふにゃー。それじゃ仕方ないかもにゃー。
なんかもう思いきりプギャーして笑っちまってマジごめんなさいですたい。
でもかなり面白いからキミのコトこれから先も勝手に観察しまくるけどいいよね!
私ってばむちゃくちゃ興味津々な外野だからね! 仕方ないね!
……。
うん、嫌ともなんとも聞こえないからたぶんヨシ!
て事でちょくちょく様子みに来るね、メリルちゃんガンバ!
──いやはやそれにしてもまったく、一時はどうなる事かと思ったけどにゃー。
あげなおひとよしのお手本みたいなコに拾われてるって事は、このまんまホッタラカシでも……》
☆★☆
この辺でいったんバーニィから降りて一休みするというレナの提案は、結局のところ、採用される事はなかった。
メリルさん本人が「必要ない」との意向を示したのである。
乗り物酔いの程度というものは実際その人本人にしか分からないものだし。それにいったん休憩したところで……メリルさんには酷な話だが、結局バーニィに乗ってクロスまで行く事は変わらないのだ。
結局またバーニィに酔う事にも変わりないのだから、乗り物酔いをしている本人的には「だったら休憩を挟まず一息に目的地に到着した方がいい」といったような気持ちも先行するのではなかろうか。
「お気遣いありがとうございます、レナさん。けれど……そこまで不調というわけでは、ありませんから」
と具合の悪そうな本人に穏やかに言いきられてしまっては、レナもセリーヌも「それじゃあこのままクロスまで行きましょう」と言うほかない。
とりあえず「休憩したくなったらいつでも言ってくださいね」と声をかけ、メリルさんの様子を見ながらクロスへの道行きを進める事にしたのだが。
そんなこんなで休むことなくバーニィに乗って、ひたすら街道上を進み続けている今現在。
メリルさんの顔色はさっき以上に優れない様子だ。「ひょっとしたら具合が悪いのかも」だったのが、今は「誰がどうみたって具合が悪い」に変わっている。
もはや健常を装う元気もないらしいメリルさんは、バーニィに揺さぶられつつ、その背中のもふもふの毛並みに埋もれるように力なさげに頭を預けている。
レナとセリーヌの二人は、そんなバーニィに揺られ続けるメリルさんの気を少しでも紛らわそうと、しきりと彼女に話しかけていた。
「……旅の格好のまんまでエクスペルに迷い込んじゃったって事は、やっぱり今回もその、旅の途中だったんですよね、メリルさん」
「普段は買い物すら自由にさせないほどつきっきりなくせして、事故に巻き込まれる瞬間には誰一人としてそばにいなかったなんて、なんというかまあ……メリルさんのお付きの人達も、肝心な時に役に立たないですわね」
そんなセリーヌの話が気になったらしい。
二人の話を聞いていたメリルさんは、「いえ、そのような事は決して……」と口を開いて話し始めた。
「今回の件、皆に……落ち度は何一つありません。あれは旅先ではなく、居住区内で起きた事ですから。あの時……私は旅先から、戻ったばかりで──」
青白い顔で、どうみても無理して喋っているといった様子だ。
いよいよ心配になったレナは、メリルさんの話を遮って声をかけたが、
「メリルさん、やっぱりちゃんと休憩した方が」
「その必要はありません。……このまま、クロスまで行きましょう」
しっかりした人も正直、ここまでくればただの強情である。
始めに「大丈夫ですか?」なんて、いかにも心配したような言葉をかけてしまったのがいけなかったのだろうか。「わたしも疲れちゃったから休みましょう」とでも言っておけば、メリルさんも休む気になったのかもしれないのに。
(今からでも言ってみようかな)
とレナが考え始める中。
「ちょっとくらい休んだって、今日中にクロスに辿り着けますのに」
「少し、眩暈がするだけですから。本当に……何か他の事をしてさえいれば、気にならない程度の……」
同じく休憩を勧めるセリーヌにも言いはってから、メリルさんは再び途切れ途切れに、先ほどの続きを話しだしたのだが──
「私が、エクスペルに来たのは……いつも使っている“門”が、知らない内に……この世界と繋がっていたせいで」
「きゅきゅん」
「……すべて、私の不注意が招いた事だったと思っています。あの時、私は」
「もきゅ?」
「そうですね……他の事に気をとられていたとしか──」
「きゅー……」
頑張って話しているメリルさんの言葉を遮って、今度はバーニィ達がなにやら騒ぎ出した。
怯えているような鳴き声に、レナ達が進行方向に目をやると。街道の先、街道すぐ脇にある大きな岩の陰から、ちょうど魔物が三、四匹飛び出してきた。
向こうもすでにレナ達に気づいているようだ。
進行を阻むように、戦意まんまんで各々の武器をレナ達がいる方向に突きつけている。このまま進めば、彼らとの戦闘は避けられそうにない。
といっても、こちらは全員バーニィに乗っている。
思いっきり飛ばせば振り切れなくもないけれど──
「やっぱり、いったん休憩するしかなさそうですわね」
セリーヌの言葉に、レナも続けて「そうみたいですね」と頷いた。
魔物がいるところの近くまでバーニィを進めると、レナとセリーヌはさっとバーニィから飛び降りた。
二人に少し遅れて、メリルさんもよろめきながらバーニィから降りる。
「ちゃっちゃとやっつけちゃいますから、しばらくそのまま休んでいてくださいな。レナは援護を頼みますわね」
ぐったりとした様子で地面に座り込み、乗っていたバーニィに体を預けたメリルさんにそれだけを言い、自ら進んで魔物達の方へ近づいていくセリーヌ。
レナもすぐに、そのセリーヌの後を追おうとしたら、
「……すみません、レナさん。私が不甲斐ないばかりに、あなたに危険な事を」
とメリルさんが弱々しく言う。
(そっか。普通に考えたら危険な事よね。魔物と戦うって)
メリルさんはきっと魔物が怖いんだろう。いつもはたくさんいる護衛の人達がいない上、これから魔物に立ち向かう自分は武器一つ持っていないのだ。
とっさにそう考えたレナは、わざと自信たっぷりに言ってから、セリーヌの後を追いかけた。
「安心してくださいメリルさん。こうみえてもわたし、多少体術の心得があるんです。ちっとも危険なんかじゃないですよ」
一応言っておくと、レナは何もメリルさんを安心させるためだけに「多少体術の心得があります」と言ったわけではない。
本当に体術の心得があるのだ。言葉通り“多少”ではあるけれども、護身術として。
レナの体術はそれこそ護身術レベルではあるが、先の旅の途中、幾度となく繰り返された実戦で磨かれている事もまた事実だ。
レナ自身、そこらの弱い魔物程度なら自分だけでもどうにかできると考えているくらいだが……
さっきレナがメリルさんに自信たっぷりに「ちっとも危険なんかじゃない」と言い切ったのは、それが主な理由ではない。やはりレナの本来の得意分野は回復や補助であって、攻撃ではないのだ。
レナが持つ絶対の自信は、自分自身に対してというより──
ほぼもう一人の彼女に起因している、と言っても差し支えないだろう。
セリーヌはすでに紋章術の詠唱に入っている。
少しだけ遅れてセリーヌの元に辿りついたレナは、特に打ち合わせる事もなく、魔物から一定の距離をとって詠唱を続ける彼女のすぐ横をすりぬけた。
槍を持った一匹の魔物が、さっそく無防備な詠唱者を狙って近くに寄って来ている。
レナはセリーヌの邪魔をさせないよう前に飛び出ると、槍を持った魔物の手元を思いっきり蹴りつけた。
魔物が怯んだ隙に素早く片手で槍を掴み、がら空きになった胴に体重をかけた肘鉄を喰らわせる。
槍を掴んだ手を離し、レナがよろめいた魔物から距離をとった瞬間、
「ウィンドブレイド!」
セリーヌの指先から、無数の風の刃を含んだ小さな竜巻が現れた。
竜巻は直前までレナが相手していた魔物の元へと向かっていき。逃げる隙も与えられなかった魔物の体を、包み込むように巻き込む。
魔物を巻き込んだまま去っていく竜巻を横目に、セリーヌが高らかに宣言した。
「これで一匹!」
そう、レナの絶対の自信の源はセリーヌにこそあった。
紋章術師の村として有名なマーズ村の出身者。そのマーズの村の中でも、セリーヌの実力は抜きん出ているという。
言うなれば彼女は、エクスペルで最強の紋章術師なのである。
そんなセリーヌが味方についているのだから、レナには不安の「ふ」の字もない。
といっても紋章術には詠唱時間があるから、セリーヌが紋章術を撃てるようになるまで誰かが時間を稼ぐ必要はあるけど。
先の旅では、もっぱらその役回りはクロードやディアス、アシュトンといったいわゆる前衛がこなしていて、レナのような後方支援担当がそれをやる機会はあまりなかったわけだが──
(まあこの程度なら、わたしでもなんとかなるわね)
そう敵を判別できる余裕も、レナは持ち合わせていた。
レナとセリーヌの息の合ったコンビネーションで、魔物は次々とあっけなく倒されていく。
ついに最後の一匹。
そいつをレナがしばらくの間食い止めていると、セリーヌから合図があった。
詠唱が完了したのだ。
レナは足払いをして魔物の体勢を崩し、魔物から距離をとって身構えた。
すかさずセリーヌの紋章術が発動する。
「エナジーアロー!」
セリーヌが放ったその紋章術は、とどめとしては十分すぎる一撃であった。
魔力で造られた無数の矢が魔物の周りを取り囲み、一気にそのあわれな魔物目がけて襲いかかる。
そして最後の一匹が倒れたところで、
「思ったより弱かったわね」
「弱すぎるわね」
……なんていう率直な感想を、二人が述べる余裕はなかった。
一仕事終えた気分で、メリルさんの方を振り返った時。
メリルさんからほど近い場所にある岩の影──死角になっていた場所から、突如傷だらけの魔物が姿を現したのだ。
魔物は槍を手にうなり声を上げながら、バーニィに寄りかかるようにして座り込んでいるメリルさんの元へどんどん近づいていく。彼女に危害を加えようとしている事は一目瞭然だ。
レナとセリーヌはすぐさま駆け出した。
が、いかんせん、ここからだと二人とメリルさんとの距離が少々離れすぎている。
「逃げてください、メリルさん!」
無駄とは知りつつも、レナは大声で呼びかけた。
レナの声はしっかり届いたようだ。
メリルさんは地面に片手をつき、バーニィを支えにしながら、ゆっくりと立ちあがる。
その間にも、魔物はどんどん彼女に近づいていく。
よほど体調が優れないのだろう、メリルさんの動作はひどくゆったりとしていて、とても目の前すぐにまで迫っている魔物からは逃げ切れそうにない。
走りながら、セリーヌが詠唱の構えをとる。一か八か、この距離であの魔物を狙って術を放つ気なのだ。しかし──
メリルさんがようやく立ちあがった。
魔物との距離はもう、わずかしか残されていない。
セリーヌが術を放つにはもう少しだけ時間がいる。
それまでに、メリルさんが魔物からうまく逃げてくれれば──
(お願い、間に合って)
とレナが祈る中。
メリルさんは怯えるバーニィの頭をそっと一撫ですると。
なぜか魔物に向かって足を踏み出した。
「──え?」
そこから先は、まさに一瞬の出来事だった。
メリルさんは自ら魔物の元に近づくと。魔物が槍を振り上げた瞬間、魔物の顔に向かって石を投げつけたのだ。
投げた石は魔物の目に当たった。
投げつけるとほぼ同時に、メリルさんは身を低くして魔物の懐に入る。槍の穂先に近い部分の柄を掴み、そのまま流れるような動作で体を反転し、魔物の後ろに回り込み。
さらに空いたもう一方の手で魔物の体を押さえつけ──しばらくしてから、メリルさんは両手を放した。
支えを失った魔物がゆっくり倒れる。
自分の目の前でどさっと崩れ落ちる魔物を、メリルさんは事もなげに見続け。
魔物が完全に地面に倒れた頃、疲れたように息をついたのだった。
すっかり狐に化かされたような気分で、メリルさんの元へ戻るレナとセリーヌ。
当のメリルさんはというと足元の地面の土を掴みとり、汚れてしまった手をきれいにしている。
バーニィ酔いのせいで顔色が良くない事を除けば、彼女の表情は至って普通。
少なくとも、つい先ほど、“命がけで”魔物と戦った人の表情ではない。
(ええー……。こんな時まで、あんなに落ち着いた上品な仕草って)
「確実に慣れてるひとの動きでしたわね……」
「すみません。余計な気を揉ませるつもりはなかったのですが」
色々な出来事に衝撃を受けながら近づいてきたレナとセリーヌに、淡々と謝った後、メリルさんは言った。
「私も、多少武術に心得があるんです」
……そりゃあ「私まったく戦えません」なんて、メリルさんは一言も言ってなかったけど。
常に身の周りに護衛はべらせて行動しているようなとびきりのお嬢様が、魔物と立派に戦えるなどと、一体誰が想像できるだろうか。むしろそこらの一般人よりさらに弱いだろうと思ってしまうのが、自然な思考なのではないだろうか。
いくらレナが人一倍、見当はずれな勘違いをしやすい、おっちょこちょいな思考回路の持ち主だからといって。
まさかメリルさんのようなおしとやかお嬢様が、こんな──
(み、みかけで人を判断しちゃいけないよね。オペラさんだってお嬢様なのに、バッチリ魔物と戦ってたんだから)
と自分を戒めつつ、レナは足元に転がる魔物を見た。
魔物の喉元には槍が突き刺さっている。一目見ただけでしっかり止めを刺せていると分かる。
(素手で倒したのよね、メリルさん。……お嬢様なのに)
いや、正確には石投げてたけど。とどめ刺したのも槍だけど。
手ぶらだったのに。お嬢様なのに。
(……。オペラさんは、一応銃使ってたわよ?)
脳裏に再び“組織”の影がちらつき始めたところで、
「どうかされましたか?」
とメリルさんに聞かれ、レナは精いっぱい平静を装って答えた。
本当はちょっとどころではないし、今現在もあってはならない想像を必死に振り払っている最中なのだが。
「な、なんでもないです。メリルさんが魔物と戦えるなんて思わなかったから、ちょっと驚いちゃったというか」
「びっくりしたなんてもんじゃありませんわ。常に護衛に囲まれて旅しているようなお嬢様が、魔物を倒せるなんて普通は思わないですわよ」
「……そうですか。確かに、お二人がそう思われるのも無理はありませんね。私も事前に伝えておくべきでした」
口々に驚く二人を見て、自分の落ち度を冷静に納得するメリルさん。
「えっ、そ、そんな……わたしたちが勝手に驚いちゃっただけですから。メリルさんは何も悪くないですよ」
とレナも慌てて言った後、しょんぼりと謝る。
「こっちこそごめんなさい、メリルさん。……安心してください、なんて言ったのに、結局メリルさんを危険な目に合わせちゃって」
「いえ、そのような事は」
「はあー……。本当ですわね、あんな雑魚をとりこぼすなんて、わたくしもとんだ凡ミスをしましたわ。メリルさんが自分で対処してくれなかったら今頃どうなっていたことか」
セリーヌもため息をついた後、返事に戸惑うメリルさんに改めて言った。
「本当に、無事でなによりでしたわ、メリルさん」
「ええ。お気遣いありがとうございますセリーヌさん。レナさんにもご心配をおかけしてしまいましたね」
と微笑を浮かべて言ったメリルさんに、今度はセリーヌが好奇心まる出しで聞いたところで。
レナもようやくある事に気づいたのだった。
「けど多少武術に心得があるって……それってやっぱり、旅の途中でこういう風に魔物に襲われた時の事を考えて習ったんですの? レナが使う護身術みたいな感じで」
(そういえば、わたしも思いっきり素手で魔物と戦ってたわね……)
武器も持たず手ぶらで魔物に立ち向かっていくレナの姿を見て、メリルさんもさぞかし驚いたに違いない。
どうして彼女のような回復術使い、いわゆる後衛が“護身術”という名のガチ格闘技を見事に使いこなし、魔物と互角以上にやり合えているのだろうか──と。
みかけによらないのはまずお互い様だろう。
(そうよね。別に、そんなにおかしい事じゃないわよね)
とレナはあっさり納得した。
再びメリルさんに抱きかけた、あってはならない想像もすぐに霧散する。
彼女が本当にヤバい人なら、レナも間違いなくヤバい人になってしまうのだ。自分は絶対にヤバい人ではない。よってメリルさんも全然ヤバい人ではない。
お嬢様が多少魔物と戦えるぐらいで、即“組織”と繋げて考える自分の頭がどうかしているのだ。
あのオペラだってお嬢様なのにドレスの上にジャケット羽織って戦場走りまわりつつ、でっかい銃で魔物をぶん殴ってたではないか。
自分の身を守るために、襲いかかってきた魔物を素手で撃退するくらい。
なんにもおかしくなんか──
レナが納得している中。
「レナさんの、護身術ですか」
メリルさんはレナを見て、若干返事に困るような仕草をしてみせた。
……あれが護身術? と疑問に思っているに違いない。絶対にそうだ。
「護身術ですよ! ただの!」
レナは声を大にして言い張った。
きょとんとした二人に向かって、
「旅には危険がつきものですよね! 日ごろから鍛えておかなくちゃ危ないですよね! わたしもわかります、その気持ち!」
シュッシュッと拳で空を切りつつ、元気よく言う。
「ふーん。メリルさんはちゃんと護衛がついてらっしゃるから、そういう事を気にする必要もないと思ったんですけれど」
「護衛の人だって、いつもちゃんと守ってくれるとは限らないわけですし! いや人を信用してないとかそういう事じゃなく……ようは気持ちの問題ですよね、メリルさん! こう、わたしだってじっとしてられない、みたいな!」
とレナはセリーヌに主張しつつ、メリルさんにも笑顔で同意を求める。
自分と一緒ですよね?
なんにもおかしくないですよね?
必死なレナの言い分を、当のメリルさんは少々気後れした様子で聞いた後、
「……そうですね。私も人に守られる、という事には少々抵抗を感じているのかも知れません」
などと言ってレナに控え目な笑みを返した。
「皆にもよく落ち着きがないと窘められますが……。きっと性分ですね」
「ですよね!」
レナが力強く頷く中、セリーヌが感心したように言う。
「なんか……意外ですわね。まさかメリルさんがそんなアグレッシブなお嬢様だったなんて」
「やはり不自然に思われますか」
「いえいえ、そんな。別に結構じゃないかしら。“思ったより全然行動的なお嬢様”って、わたくしは好きですわよ、そういう人」
「ありがとうございます、セリーヌさん」
とセリーヌに言った後。
メリルさんは少し離れた所で寂しげにこちらを見つめる、バーニィ達に目線をやって言った。
「そろそろ行きましょう。……いつまで経っても乗り手が戻ってこないのでは、彼らが気の毒です」
バーニィのところへ戻ったメリルさんは、それ以上休憩をとる事はなかった。
「クロスへ行きましょう」と言うなり、再びバーニィの背に乗ったのだ。
彼女がバーニィから降りていた時間は少ししかない。
あげく魔物と戦ったり、レナ達と立ち話していた時間もあったのだから、ろくに休憩なんて出来ていなかったはずなのに……
見るからにまだまだ顔色の悪い彼女に、もちろんレナもセリーヌも揃って、もうしばしの休憩を勧めたが、しかし。
なんだか意固地になってるメリルさんが、そんなヤワな意見を素直に取り入れる事もなく。
心配するレナ達に向かって、ひたすら「全然具合悪くないもん!」といったような言葉を、息も絶え絶えに連呼し続けた末──
めでたくクロスに到着した時にはほぼ意識不明。
バーニィの背から剥がれ落ちるように降りた彼女を、二人がかりで両脇からがっちりと支え。
そのまま三人が宿に直行した事も、もちろん言うまでもない。