スター・プロファイル   作:さけとば

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13. 久しぶりの再会 part2と初顔合わせ

 宇宙艦ディプロから、小型艦で一足先に戻ってきたエル大陸の地。

 もう一方、ラクール大陸の居残り組を回収しに行った仲間達全員との合流を、というかクロスで別れた時から実時間で数えてゆうに二か月くらいぶりのレナとの再会を、そわそわと待ち望んで数時間後。

 

 待ってる間になんか十賢者を一人ほど倒したような気もするけど、そんな事よりフェイト達の艦はまだかなあなんて事を、見張りを交代した小型艦の前で、隣のアシュトンと並んで体育座りで空を見上げて待ちつつ。

 

 見上げ続けて若干首が痛くなってきた頃にようやく、クロードは迎えに行った人達も含めて九人もの仲間達、もといその中にいるレナとの再会を無事果たす事ができた。

 

 

「こうやってみんな集まるのも、久しぶりだよねえ。で、そういや、さっきこの辺でジョフィエル倒したんだって?」

 

「ん、ああ。そうだね。小型艦のすぐ前で戦ってたから、まあ大体この辺りだったと思うよ」

 

「へえー。アタシ達の時もそうだったけど、やっぱ見事になんも残ってないね。なんか改めて不思議現象って感じ」

 

「お疲れクロード。他のみんなも」

「あ、ありがとうレナ」

「おつかれー」

 

 久しぶりの再会は、思いのほかあっさりと済まされた。

 一番乗りで元気よく艦から降りてきて、クロード達の姿を見るなり昔と何ら変わらない気楽な調子で声をかけてきたプリシスをはじめ、続けて艦から降りてきたレナ達の興味もすぐに十賢者の事に移ってしまったのである。

 

 というか状況を考えればそれが当たり前か。

 それが目的でみんな集まってるんだから。

 七対一っていうあまりにも余裕な状況でさくっとジョフィエル撃破しちゃったものだから、ついつい本来の目的意識が薄れていたけれど。

 

 やや遅れて小型艦から続々と出てくる残りのフェイト達みんなと、しっかりしている感じのレナの様子を目の当たりにしてすぐ、

 

(いけないいけない、こういう気のたるみは問題だよな)

 

 とは自分を戒めてみたものの。

 浮かれた気持ちと肩すかしを食らったような気持ちが、ほんのちょっぴり漏れてしまっていたらしい。

 

 

「うわあ、プリシスだあ。本物のプリシスだあ。夢じゃないよね、夢じゃないよね?」

 

 後ろの方で感動しすぎて、ギョロとウルルンに引かれつつ一人で勝手にやってるアシュトンをよそに、

 

「どうしたの? クロード、さっきからわたしの顔じろじろ見て」

 

「い、いや、なんでもないよ。それじゃあみんな集まったわけだし、さっそく次の事を考えようか。つもる話も色々あるだろうけど、まずはやる事をやらなきゃな」

 

 と不思議そうなレナに向かって、精いっぱい真面目なリーダーぶりをアピールし。

 クロードはいそいそと、もう一方の小型艦の中で待っている仲間達を……

 ていうかレナ達の乗ってきた艦もすぐ隣に並んで着陸したんだから気づいてないはずがないのに、ソフィアやセリーヌ辺りが自分に気を使ってるつもりだかなんなんだか、一向に外に出てくる気配のない仲間達を呼びに走った。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 さてそんなこんなで全員が無事に合流できたので、次の行動開始である。

 とりあえず今から具体的にやる事はひとつ。

 惑星ストリームのとても物知りなタイムゲートさんに作ってもらった機械『十賢者レーダー』を、自分達のすぐ目の前にあるエルリアタワーの上層階まで持っていき、とにかくそこにあるだろう惑星レベルでの広範囲探索システムに接続。

 そうやってレーダーの探索可能範囲を十分に広げた状態で、十賢者達の現在の居場所を効率よく検索する事、以上だ。

 

 この辺の事は話し合いをするまでもなく決まっていた事なので、クロード達みんなの行動も早い。

 

 ついさっき十賢者が自分達の目の前に現れたという事もあって、念のため小型艦の守りに残ると言ったミラージュ以外にも五人ほど……、道案内役のクロードとマリアを除いて、エルリアタワー最上階までの近道をすでに知っているセリーヌ、アシュトン、ディアス、ノエル、ソフィアをその場に残し。

 それ以外の全員で、さっそく目と鼻の先の距離にあるエルリアタワーに入っていった。

 

 

 最上階までの近道というのはつまり……

 この間ここでクロード達がミカエルはじめ、三人の十賢者達を倒した帰りに発見した、魔物や十賢者達が使用していたであろう、地上から最上階までの直通大型エレベーターの事である。

 

 ちなみに地上の方の乗り口はなんか普通にタワーの裏の方にあった。

 特に隠された入り口とかじゃなくて、普通に堂々と。さすがに鍵はかかってたけど。

 

 見つけた時には(苦労して登ったのに、あいつらこんなズルしてたのか!)みたいな感じで、脱力感よりむしろ『ソーサリーグローブ事件』当時の十賢者達とか手間のかかるパスワード入力とか状態異常リザードとかに対するもろもろの怒りを再燃させたクロードだったわけだが、まあそれはそれ。

 エレベーター自体はすごく便利だし、使えるものは有効活用させてもらおうではないか。

 ていうか自分ちのアジト帰るたびにいちいち『もくしろく』とか律儀にやってたとしたら、それはそれで(馬鹿じゃないのかあいつらは)とも思うし。

 

 

 そんなこんな今回は小型艦も最初からそのエレベーターの乗り口がある、エルリアタワーの裏の方に泊めてあるので、わざわざタワーの外周に沿って長距離を歩いて移動する必要もなし。

 

 ソフィアやマリア達未来人と一緒にこのエルリアタワー内をあらかた探索したのも、宇宙艦で行ったり来たりしてきたクロードにとってはだいぶ昔の事に感じるが。

 エクスペル内の時間で言えばつい数日前の出来事なので、最上階に辿り着くまで、タワー内に住みついていた雑魚魔物との遭遇、戦闘も一切なし。

 

「うー。ほぼ突っ立ってるだけですぐに最上階いけるなんて」

 

「なんか……エルリアタワーって感じしないわね、こんなにも順調だと」

 

 本来の大変さを知らない他のみんなが、普通に後をついてくる中。

 拍子抜けしたようながっかりしたようなプリシスとレナの会話に「だよな」と力強く同調しているうちに、小型艦を離れてからものの十分程度で、簡単に最上階の目的地についてしまった。

 

 

 目的の設備はかつてこのタワーを作った十賢者達が、もとい世界征服好きないかにも悪い奴らが、いかにもな悪だくみをする際に使用していた──

 いかにも未開惑星保護条約を無視した、ようするにエクスペル全体をざっと監視できる電波塔的なアレである。

 

 部屋の上方部分、モニターには今もでかでかと惑星エクスペル全体の地図が表示されたまま。肝心のコンピュータの方もわかりやすくそのすぐ下にまとめてあったので、すぐさま作業にとりかかる事ができた。

 

 持ってきた『十賢者レーダー』を直接大型機械に繋げたりするのは機械工作の分野なので、プリシスと実は工学系の学生だったらしいフェイトが(てっきり彼は自分と同じ軍人だとばかり思っていたのだが。なんかやたらと戦闘慣れしてるし)協力して作業にあたる。

 それから繋げたシステム同士の細かな書き換え作業等については、プリシスとマリアの得意分野なので彼女達にお任せ。

 クロードを含めたその他の面々は、ぶっちゃけその作業をただ見てるだけである。

 

 いやだって、フェイズガンのメンテナンスとかだったら自分にもできるけど。

 一般的な地球人に毛の生えた程度の知識しかないのに手伝っても、邪魔になるだけだし。

 本当はできたらむしろ手伝いたいんだけど。隣のレナがさっきからずっと、尊敬の目で三人の作業見てるから。

 

「あれで十賢者の居場所がわかっちゃうんだ。機械って本当になんでもできちゃうのね」

 

 感心するレナの隣で、クロードが今度時間のある時に、プリシスにでも機械の事教えてもらおうかなと思う中。

 

「言っても見た目なんか地味じゃない? ていうか情報さえ知ってりゃ、術でも似たような事はできるしー」

 

「……メルティーナ。あれは魔術と違って一度形にしてしまえば、それこそ私達のような理屈を何も知らない者達にも扱える、素晴らしい技術よ。見た目は問題ではないわ」

 

「そら技術として、私達の魔術と同等かそれ以上の可能性がある、ってのは理解できるけどさあ。いまいち私の趣味じゃないのよねえ。そもそも術使えないやつの事なんか知ったこっちゃないし」

 

「……。ねえチサト」

 

「いやいや、そんな「あなたからも何か言ってやって」みたいな目でこっち見られても。レナスには悪いけどさすがに今回はそっちの肩持つわよ、私も。一応エナジーネーデの民なんだから」

 

 何気に未開惑星保護条約がきっちり守られそうな感じになっているところで、ようやく作業が終わり、検索できる環境が整ったのだった。

 

 

「うーん。一応はできたけど……」

 

「まあやってみるしかないわね。たかだか数キロ程度の索敵範囲を頼りに、そこら中しらみつぶしに探し回るよりずっとマシな事は確かなわけだし」 

 

 作業を終えたプリシス達の表情は思わしくなさげ。

 とりあえずこれ以上考えていても仕方ないと必要な情報を打ち込み、検索を開始してみたところ、さっそくその表情の意味がクロード達にも分かったのだ。

 

 

 

「検索結果予測時間、およそ五十時間後って……」

「マジ?」

 

「ええ。それもこの辺の、エル大陸西方部だけでね」

 

 ようするに検索結果が出るのに、えらい時間がかかる事が判明したのである。

 

 エル大陸西方部だけで二日。

 この調子で惑星エクスペル全体を調べるとなると、海を除いた陸地の部分だけで計算しても一か月弱はかかりそうな勢いだ。

 

「ふっ。“機械”も大した事ないわねえ。こんなもん、本気出したこいつだったらそれこそ一瞬で──」

 

「はいはいそうですね。レナスさんすごいすごい」

「まあそのこいつが本気出せねえ状況になってるから、俺らも今こういう事してるわけだけどな」

 

「やめてメルティーナ。やめて」

「ちょっとフェイト、クリフさんも! そういう言い方はレナスさんに失礼でしょ!」

 

 発言が正直すぎる問題児達をそれぞれレナスとレナが諫めたりもしたが、とにかく検索結果がすぐに出ない事には変わりない。

 さっきマリアも言っていたように、時間がかかろうが何だろうが、しらみつぶしよりはずっとマシなのだ。

 

 従ってクロード達がこれからとる行動も当然、検索結果が出るまでひたすら待機。

 

 とは言ってもさすがに、今から五十時間ほど、ひいては惑星エクスペル全体の検索にかかるであろう一か月弱もの長い期間を、この陰気くさいエルリアタワー最上階で我慢して過ごすつもりはない。

 厳密な待機場所はタワーのすぐ外、すなわち留守番組が待っている小型艦周辺だ。

 

 設備の重要さを考えれば、本当はこの場でちゃんと待機し続ける方がいいのだろうが……

 まあ十分程度にしか離れていない場所ならたぶん大丈夫だろう。

 警戒すべき十賢者達の動向についても、『十賢者レーダー』自体がしっかり機能してくれるのはジョフィエルの件で証明済み。設備が問題なく機能しているかどうか、ちょくちょく様子を見に戻るつもりもちゃんとあるわけだし。

 

 

 そんなわけで今現在の検索状況がどうなっているのか逐一確認できるよう、小型艦のモニターにここ最上階のモニターのと同じ映像を映せるような最低限の追加作業を、小型艦にいるミラージュと連絡を取りつつ手早く済ませ。

 クロード達は全員来た時と同じエレベーターに乗り込み、その場を後にした。

 

 

 

「検索にそんな時間かけちゃって大丈夫なのかしら」

 

「なんかもうアタシ達がこういう事やってるうちに、残りの十賢者が向こうから来そうだよね。ザフィケルとかジョフィエルみたいにさあ」

 

「あーありそうだわそれ。だってここって元は十賢者達の拠点だったんでしょ?」

 

「残った奴らが取り戻しに来てもおかしくはないな、確かに」

 

 帰り途中、会話の流れで「それならそれで、手間がはぶけていいわね」と言い切ったマリアに、

 

「私もそれ賛成。お礼参りを返り討ち、だけで全部終わってくれたらくっそ楽だわ」

 

 とメルティーナが同意したところ、マリアが聞いてきた。

 

 

「というかジョフィエルって、ついさっき倒した十賢者の事?」

 

 出会ってすぐに倒したせいでもう名前も覚えてないらしい。「ああ、そうだよ」とのクロードの返事を受けた後、マリアは何やら考えつつ、クロード以外のみんなに向けて言った。

 

「言い忘れてたけど。彼に関しては別に、お礼参りを返り討ちにしたわけじゃないわよ」

 

「え? それってどういう事?」

 

「ひとの留守中によくも好き勝手してくれたな、みたいな恨み言は言っていたけど。少なくともあれは、拠点を取り戻しに来たわけでも、ましてや仲間の仇討ちに来たわけでもなかったのよ。……クロードも彼の言っていた事、大体は覚えてるでしょう?」

 

 聞かれたのでクロードも答える。

 さすがについさっきの事なので忘れようがない。クロード達に囲まれたジョフィエルはあの時、確かにこんな感じの事をわめいていたのだ。

 

「大体はね。ホカノサンニンヲドウシタ!? ……みたいな事だろう?」

 

「声真似は要らないわ。もちろんあれが演技でなければ、の話だけど……彼はあの時、私達が待ち構えていた事にむしろ驚いているふうだった。まるで普通に外出先から戻ってきたところを、たまたま私達に捕まったみたいに」

 

 マリアの話にしばらくみんな黙り込んだ後。

 プリシスが正直な感想を言った。

 

「なんか十賢者もグダグダだね。マリアの推測が当たってたら」

 

 

 それは正直クロードも思ってたけど。

 あいつらの行動がグダグダなのは今に始まった事じゃないし真剣に考えすぎないようにしてたのに。

 

 

(言っちゃうかあそれ、言っちゃったらそんな奴らに振り回されてる僕らの立場もなんかさあ)

 

 何気に真剣に眉をひそめていたりする最中なレナスをよそに、クロードがなんかやるせない気持ちになる中。

 

「そう。あまりにもグダグダなのよ。たかだか十人程度の集団なのに、まるで統率がとれていない……」

 

 ジョフィエルの事を話すうちに考えがまとまってきたのだろう。マリアはというと、さらに真剣に考えつつ、十賢者のグダグダ具合をしっかり語ってしまう。

 

「こうして私達が彼らを着実に各個撃破している間に、残りもすでに四人。もう一人の時は仇討ちが目的で襲ってきたんだから、お互いの連絡手段は最低限用意できているはずよね? なのにこれは一体どういう事? 一人一人の実力は高いんだからまとめて襲いかかってこられたら私達だってもっと苦労するはずなのに、無駄に自分達の戦力を減らすような中途半端な事しかしてなくて、彼らは一体何がしたいの?」

 

「さ、さあ? 何が目的でこんな事ばっかりしてるんだろうな? 十賢者は」

 

「ほ、本当に……わかりづらくて困っちゃうわよね、こんな事ばっかりだと」

 

 

 お願いだからこれ以上はやめてくれとばかりに、クロードとレナが揃ってあくせくしていると。

 

「考えすぎだと思うけどなあ。だって十賢者って大体そんなもんだよ?」

 

「そうならいいんだけど、どうも気になるのよね。この状況は今のところ、私達の有利に働いている。だけど、このまま彼らの目的が掴めない事には……」

 

 あっけらかんと言ってしまったプリシスに、マリアはやはり真剣に考えつつ言い。

 それからレナスに向けて言った。

 

「先ほどの十賢者の時はあなたの忠告に忠実に、決して相手を甘く見ないよう、反撃の隙も与えず速攻で倒したわ。彼は明らかにあなたの「力」を持っていなかった。彼は違う、“ただの十賢者の一人”だと、戦っている最中に直感で分かったとしてもね」

 

 マリアは一呼吸置いて、さらに言う。

 

「こういうのは、安全が確認できた今だから言える事なのかもしれない。でも今の私は、あれはもう少し他にやりようがあったんじゃないか、と思い始めているわ」

 

 レナスも考えつつ聞き返し、マリアもそれに真剣に答える。

 

「引き出せる相手からは、もう少し情報を引き出せる立ち回りをすべきだと?」

 

「決して相手をみくびるわけじゃないわ。もう少し対応に幅を持たせてもいい、という提案よ」

 

「引き出せる相手と、引き出せない相手の見極めは? どこで判断するの?」

 

「もちろん、相手と対峙してみてからの全員の勘に頼る事になるでしょうね。あなたのあの「力」の事を考えれば、危険な賭けだとは思うわ。ただ不安材料をこのままにしておくのも、同じくらい危険な事だと思うのよ」

 

 聞いているクロードとしてはぶっちゃけ

 

(二人とも十賢者の事なのに、すごいちゃんと考えているんだな。なんか別の世界の話し合い聞いてるみたいだ)

 

 といった心境だ。

 同じく二人とも考えすぎじゃない? みたいな事を考えているらしいレナやらフェイトやら、とにかく他のみんな達と一緒に感心しつつ会話をほけーっと聞いていると。

 

「みんなは、どうすべきだと思う?」

 

 なんと真剣に考えすぎているうちの一人、レナスがそのクロード達に判断を仰いできたではないか。

 

「ええっ? えっと……そうですね、いや、どうなんだろうな?」

 

「私は十賢者の事に何も詳しくないから。以前の彼らと、創られた彼らと、未だ誰とも相対した事のない私が決めるべき事ではないと思うわ。だからみんなが決めて。私は、十賢者の事をより知っているみんなの判断に従うわ」

 

 ごもっともな意見ではある。

 がしかし、そこまで真面目に考えてなかった自分達に急に振られてもどうしたらいいやら。

 

「そういえば僕も十賢者、まだ一人も見てないな」

 

「新しく出てきた方は私もまだ見てないわね……。なんか話題に取り残されてる感じでちょっとショックだわ」

 

 などとフェイトとチサトが本題と関係ないところでうなる中。

 真剣な様子のマリアとレナス、それから特に意見がなさそうな他のみんなの視線も受け、クロードはリーダーとしてなんとなく結論をくだしたのだった。

 

「はあ。じゃあ……大丈夫そうだったら、もうちょっと十賢者から話を聞けるよう頑張ってみるという事で。元凶の方の情報を得るのももちろん大切だし、油断しなかったらいいんじゃないかな?」

 

 

 聞かれたのでちょっと真面目に考えてはみたけれど。

 十賢者の強さが以前と変わらないのだったら、よっぽど油断しないかぎり、そっちの方は速攻で倒そうが情報引き出してから倒そうがあまり変わらないんじゃないかと。

 

 この状況で自分達にとって厄介なのは、十賢者よりも、むしろレナスの「力」を持っているであろう元凶の方だと、『パラケルススの円卓』でその「力」のヤバさをしっかり目の当たりにしてしまったクロードなんかは思うわけだ。

 それでもしも十賢者の誰かがその元凶だった場合、すなわちレナスの「力」を持っていた場合は……

 なんとなくだけど、たぶん一瞬で分かるような気がするし。あ、これダメなやつだなって。

 

 そんな風になんとなくで出した結論だったが。

 マリアをはじめ他のみんなも特に異論はなく、まあそれでいいんじゃない? みたいな感じで、真面目だった話し合いは実に緊張感もなく終了。

 ようやく地上まで下りたエレベーターから、

 

「これから暇ね」

 

「あー、っとに、とっとと残りの奴らも出てくればいいのに」

 

「結果出るまでどうしよっかな。……あ! ねえねえ、小型艦についてる『レプリケーター』っていうの、あれ使ってもいいの?」

 

「無駄使いは禁止な」

 

「おっけー、じゃアタシ的に無駄じゃないから平気だね」

 

 とわらわら外に出ていくみんなに続いて、クロードも歩き出そうとしたところ。

 

 

「ねえクロード」

 

 思いかねたように声をかけてきたレナスが、口に出していいか迷った様子で、声をひそめて聞いてきた。

 

「残りの四人も、能力に変わりがなければ、今までと同じようなやり方で倒せる相手なの?」

 

「えっ……」

 

 

 正直なところ、他のみんなの気楽な調子につられて、っていうか敵側と自分達全員との戦力差など普通に考えてクロード自身もまず大丈夫だろうと思っていたし、うっかり

「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。彼らも強いですけど、それ以上に僕達みんなが強いですし」

 と返事しそうになったが。

 

 帰りの艦の中では、誰よりも一生懸命鍛錬に励んでいた彼女の事だ。

 すんでのところで(求めている答えはそういう事じゃないんだろうな)と察したクロードは、自信満々でレナスに答えたのだ。

 

「大丈夫です、四人のうち三人はかなり強いですよ」

 

「それは……大丈夫、なの?」

 

「ええそれはもう。なめてかかったら確実に痛い目みますよ」

 

 今まで倒した奴らが六人中五人も大した事なかっただけで、残っている奴らにはリーダー格のガブリエルをはじめに、手強い奴らが残っている事。

 今までの奴らが大した事なかったといっても、あれはあくまで自分達がいつも数的優位に立っていたからの結果であって、一対一の勝負ではそれも分からなかった事。

 ガブリエルなんかは当時の自分達が何人も一斉にかかって、それでもやっと倒せるほどの強さだった事など。

 

 それはそれで複雑な表情になっているレナスに安心してもらえるよう、クロードはとにかく十賢者達の強さだけを強調して語り。

 さすがに言いすぎたかなと思ったところで、

 

「それでもこうやってなんとか勝てたから、今の僕達があるわけで」

 

 とクロードはまとめる。

 

「だからまあ……あの時より味方の数も増えてますしね。僕達みんなで協力すれば、そんな十賢者達だって恐れる相手じゃない。だから大丈夫、って言いたかったんです。僕はね」

 

 これからもお互い油断する事なく、張り切って十賢者を倒していきましょう。

 ……といったような言葉までかけてから、とりあえずは言われた通り気を抜かず前向きに真剣に考える事にしたらしいレナスを連れて、二人取り残されていたエレベーターの外にようやく出た。

 

 

 ちょっと嘘くさくなったけど、でも一応嘘は言っていないし。全部本当の事だし。

 ひたすら十賢者の強さを語っている最中、常に頭の中に浮かんでいた

 

(でもレナスさんならガブリエルも一人で倒せるんじゃないかな。あいつも基本術師だし、やられる前にやっちゃえばいけるよな)

 

 とかいう本音をひた隠しにさえすれば、たぶん今のやり取りで何も間違っていないのだと思う。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 小型艦の前までクロードとレナスが戻ってきた時にはもう、先に合流していた仲間達がわいわいとやっていた。

 留守番していた仲間達に、向こうでやってきた事とこれからの予定との両方をざっくりと伝えるのは、マリアとかクリフとかが今すでにやっている最中で。

 

 その輪の中心から外れたところでは、アシュトンがチサトに勇気を出して話しかけている。

 

「チサトさんこれっ、頼まれてた写真と資料です」

 

「はあどうも。資料は助かるんだけど……これ、何?」

 

「だから写真ですよ。ディアスの。なんとかみんなで頑張ったんですけど……これじゃあダメですかね?」

 

「いやだからアシュトン、そういう事じゃないのよ? この下の方に映ってるのたぶん『微笑みのプラトー』よね? なんでこんなもん食って顔ひきつってるディアスの写真なんか」

 

「だっだめなんですか!? そういう小道具使ってズルした写真じゃ、やっぱり……!」

 

 あれは確かチサトに頼まれていたとかいう理由で、アシュトンがなんかいろいろ頑張ってディアスのイイ笑顔を撮ろうとした結果の写真だったか。

 

(そういえばそんな事もあったな。チサトさんもなんだってそんな無茶ぶりを)

 

 そういう類の物事をアシュトンというより、ディアスに求める事自体まず間違っているのではないかと、以前アシュトンから大体の話を聞いていたクロードが改めて首をひねる中。

 

 久しぶりの再会ついでに手渡された写真に、頼んでいたチサトの方もなぜか本気で不思議そうに首をかしげている。

 背中のギョロとウルルンにやたらとギャフギャフ、フギャフギャ言われつつ、びくびくとチサトの評価を待っているアシュトンの事も不思議そうに見つつ。

 

 最終的にもう一回写真を見て、

「まあいいか。それにしても、ヘンな顔ねえ」

 と面白そうに呟いてから、写真を渡された資料の中につっこんだ。

 

「よ、よかったあ~」

 

 ものすごい安心しきってへなへなと座り込むアシュトンをよそに、チサトはちょうど目線の下まで落ちてきたギョロとウルルンと普通に会話。

 

「ギョロとウルルンもなんか久しぶりね。元気だった?」

「ギャフ?」

「フギャフギャ?」

「私? 元気元気、そりゃもう元気よ」

 

 二匹の喋ってる事なんかたぶん分かってないだろうに、見事に世間話をこなすだけこなしたチサトは興味がよそに移ったらしく、

「せっかくだからこれで写真でも撮るかしらね」

 などと言ってアシュトンから返してもらった予備のカメラでさっそく、ぱしゃっと一枚アシュトンと二匹を撮ってから、他の仲間のところに行き。

 取り残された二匹は二匹で構わずお喋り中。

 

「ギャフ」

「フギャギャ」

「ギャフギャフ」

「ん? なんだなんだ? 二人だけで楽しそうに話しちゃって」

「フギャ」

「ギャフーン」

「えー。けちー僕にも教えろよおー」

 

 そんな風に二匹に話しかけているアシュトンを見て、

 

 

「なるほど。あそこで自分の背中の竜といちゃついてやがるのがアシュトンか」

 

「さすがは英雄サマ。見た目がなんかすごいわね」

 

 なんか近くにいたアリューゼとメルティーナが正直な感想を言っているのが聞こえてしまったクロードは、思わず二人に声をかけた。

 

「ア、アシュトンはそんな悪いヤツじゃないですよ。ギョロとウルルンも、ちょっと見た目は近寄りがたいのかもしれないですけど……」

 

「いや見た目っていうかむしろ……何つーの? 光景?」

 

「そんな事より名前あるのかよあの後ろの奴ら」

 

「てかギョロとウルルンて。見た目に反して名前ださすぎじゃない?」

 

「いいヤツなんです彼は。本当に。ギョロとウルルンも。いい魔物なんです。いい名前なんです」

 

 

 などとお互い噛み合ってない会話をやっているうちに、輪の中心にいる他の仲間達の報告も大体終わったらしい。

 大体の仲間達が真面目な話も終わった事だし、久しぶりの再会もしくは初めましての自己紹介にと、今まで以上に近くの人とそれぞれ自由気ままにお喋りを始めつつある雰囲気の中。

 

 なんか変な会話をしているクロード達をとりあえずそのままにして、それまで外から様子を眺めていたレナスもてくてくと近づいていく。

 ある程度近づいたところで即座に鋭い視線を浴びせてきた人物に、レナスはできるだけ柔らかな表情で声をかけた。

 

 

「久しぶり、セリーヌ」

 

 がしかし、声をかけられたセリーヌはやはり不機嫌そうに腕を組んだまま。

 挨拶代わりにレナスに非難の言葉をぴしゃりとぶつける。

 

「どうして黙っていたんですの?」

 

「……それは」

 

「レナス。わたくしショックでしたのよ、あなたに内緒にされていた事」

 

 レナスの方も心当たりがあるのだろう。気まずげに視線を落とし、セリーヌの非難をおとなしく受けている。

 なにやらただならぬ雰囲気だ。

 

(セリーヌさん、レナスさんに正体隠されてた事怒ってるのか? でもあれは……)

 

 別行動をとっている間も通信機を挟んでこの二人が結構会話していた事は、セリーヌの近くにいたクロードも知っているし、さらにクロスで二手に別れる前は、この二人が結構仲よく行動したりしていた事もレナから聞いている。

 仲良くしてたのに実はよその世界、というかよその星の神様だったという、とんでもない事実をひた隠しにされていた事にセリーヌが怒る気持ちは分からなくもないけど。

 でも彼女の方にだって、きっと何か事情があったはずだ。

 

 なにより彼女は今、あんなにしおらしくなってセリーヌの怒りを受け止めているのだ。

 レナス本人だって秘密にしていた事を後悔しているだろうに、これ以上そんな彼女を責めるのは酷じゃないのか。

 

 ちょうどセリーヌの近くでそのやり取りを見ていたレナも、クロードと同じような事を思ったらしい。

 クロードが声をあげるより先に、

 

「セリーヌさん待って、レナスさんはそんなつもりじゃ……」

 

「そういうつもりじゃなかったら一体どういうつもりだったんですの? わたくしだけじゃありませんわ。レナだってあなたに裏切られて、本当は怒ってるんですのよ? どうしてちゃんと言ってくれなかったんだって」

 

 止めに割って入ったレナまで巻き込んでから、

「レナス、あなた──」

 とセリーヌはものすごい怒りの笑みを浮かべて言った。

 

 

「いたんですのよね、ちゃんと。お相手が」

 

「……」

 

 レナスがしおらしく怒られている中。

 やや間を空けてから、固まっていたレナが言葉もなくかくっと肩を落とした。たぶん思っている事はクロードと同じであろう。

 

(え……そっち?)

 

 

 そういえば確かに、今日フェイト達が小型艦でこっちに向かっている時にそういう話聞かされた後辺りから、セリーヌさんなんかちょいちょい不機嫌だったような。

 ていうかレナスさんの正体バレを通信機越しに聞いた時は、一応驚いてたけど結構普通に納得してたような気が。

 

(あ、ああ、なんだ、そうだったのか……)

 

 事情がようやく理解できて、ある意味修羅場だけど深刻な修羅場じゃなくてよかったと、セリーヌ達の方を見てクロードが内心ほっとする中。

 

「言う機会はいくらでもあったはずですわよね? なのにあなた、自分だけずっと知らぬ存ぜぬの態度で……、ひどいと思いませんこと?」

 

「……まさかとは思ったけど、あなたの怒るところはやはりそこなのね、セリーヌ」

 

「そりゃそうですわよ。自分はひとの事情までいちいち根掘り葉掘り聞きだしておきながら、なんですの、あの今までのあれは。怒らない方がどうかしてますわ。まったく、いかにも恋愛のれの字も知らないようなそぶりで。ひとの事ばっかり、一方的に、面白おかしく……」

 

「待ってセリーヌ。何を言っても言い訳にしかとられないと思うけど、訂正だけはさせて。面白おかしく聞き出してはいないわ。他のみんなの事も、あなたの事も、どれも偶然耳にしただけよ」

 

「まーっ、この期に及んでいけしゃあしゃあと……!」

 

 観念した様子でおとなしく怒られていたレナスは、でもちょっと納得いかないところがあったらしい。他のみんなに聞こえないようところどころ小声で何か言い返した結果、余計にセリーヌを刺激してしまったのだった。

 

 

「ふっ。あなたがそういう態度なら結構ですわ。素直に謝れば許してあげようと思いましたのに──」

 

「セ、セリーヌさん、一体なにを」

 

「そりゃ当然、このままじゃあまりにも不公平ですからね。……ねーレナ? レナもそう思いますわよねえ?」

 

「ええっ? そ、そう言われてみれば……確かに、そんな気もするかも」 

 

 レナまで味方につけたセリーヌは、レナスの前で不敵な笑みを浮かべて、

 

「教えてもらいますわよっ! 洗いざらい、その“ルシオ”とかいう方の事を!」

 

 とむちゃくちゃでかい声で宣言してびしっと指差し。

 すかさず集合の合図とばかりに、

 

「なになに? レナスの彼氏ぃの話?」

「わたしも気になります! どんな人なんですか? 性格は? イケメンなんですか? 身長は……」

「じゃあ私も私も」

 

 なんか周りにいた女子達がわらわら集まってきてレナスの姿が見えなくなった。

 

「……っ、待ってセリーヌ」

「さあもう逃げ場はありませんわよ! 素直に喋ってしまいなさい!」

「そうじゃなくて、今はまだ、大事な話の途中で」

「またまたー恥ずかしがっちゃって」

「だからそうじゃなくて。残りの十賢者達の具体的な対策もまだなんにも……こんな話をしている場合じゃ」

「まあまあそんなの後でいいじゃんいいじゃん。時間はたっぷりあるんだから」

 

 

 なんという恐ろしい光景か。

 っていうかこれは確かに恋人の事を内緒にしていたかったレナスの気持ちもなんかわかる。

 

(……楽しそうだなセリーヌさん)

 

 こういう場合は止めた方がいいのかどうなのか。真剣に悩むクロードの他には、

 

「そんなの後でいいのか。やっぱり十賢者より食いつきがいいんだな」

 

「これじゃまともな話ができないわね。仕方ないから各自休憩にしましょ。というより、そろそろ晩ご飯の準備の時間よね」

 

 などと完全に他人事状態のフェイトとかマリア。クリフやノエルは

「あいつもなー。最初からさらっと言っておけば、こんな状況にはならんかったろうに」

「逃げるから追いかけたくなる。肉食系動物の本能と同じですねえ」

 とまったり冷静な分析である。

 

 あげくのはてには

 

「やっだなんか超面白そうな事始まってんじゃーん」

 

 とメルティーナもさっそく女子の輪に加わりに行ってしまったではないか。

 

(あ……。レナスさん、ごめんなさい……)

 

 この件に関しては一番ヤバそうな彼女を止めるでもなくただ見送ってしまい、すごく申し訳ない気持ちになってきたクロードと同じく。

 女子の輪のうちの一人レナも、セリーヌに同意しちゃったはいいけど、さすがにちょっと申し訳なくなってきたらしい。

 苦笑いで、やや居場所がなさげに辺りに視線をやった、ちょうどその時。

 

 

 

 騒ぎで話し合いが中断されたためか。この場にいる意味はもうないとばかりに、一人の人物が歩き去っていくのが、レナの視界にも入った。

 

 反対にレナスの方に向かうメルティーナとすれ違い。

 いつもとはまた違った仏頂面で歩いてゆく彼は、クロードの前までやってきてから、後ろを見もせず、近くにいるアリューゼにも聞こえないくらい低い声で、クロードに短く聞く。

 

「あの女が、別の世界の神か」

 

 聞かれたクロードはあくせくと答えた。

 

「あ、ああ。そういやディアスは、レナスさんを直接見た事なかったんだよな。……あーうん、なんか彼女がそうらしいね」

 

 

 本当は彼女本人が自身について言っていた事や『パラケルススの円卓』での事を思えば、本来の彼女は確かに自分達とは違う、人ならざる存在なのだろうと。今のクロードはなんとなく理解できてはいる。

 

「いや僕もついこの間知ったばかりだから、今もあんまり神様って感じはしないんだけどさ、レナスさん。なんか普通にすごくきれいですごく強い人っていうか……」

 

 それでも聞かされたばかりの時は確かにそんな感じで、普段自分達と話している彼女も、結局は大体そんな感じで、だから彼女は全然“神様らしくない”のだと。

 この場でクロードの口から出るのがそんな言い訳じみた強調ばかりなのは、それ以上何も言わないディアスの顔を見て、直感で理解してしまったからだ。

 

 ──ディアスにだけは、絶対に言うべきじゃない。

 彼女がいかに“神様”らしいか、などという事は。

 

 

「そう、だから本当に強いんだ彼女は。ディアスも一度手合わせしてみたらいいんじゃないかな。あー僕は本当に、いい勉強に……なると、思うぞ?」

 

 一生懸命なごやかな表情で話し続けるクロードの気持ちは、はたして届いていたのか。

 何も言わないディアスは、クロードが「レナスとの手合わせ」を勧めたところで、一瞬確かに、眉間の皺を深くし、

 

「……必要ないな」

 

 一言だけ喋ってから、一人で人気のない岩陰の方へと歩いていってしまった。

 その後ろ姿を気まずげに頭をぼりぼりかいて見送るクロード。やり取りを見ていたらしいレナが、メルティーナと交代で輪を抜け出し、クロードの元に駆けつけて聞いてくる。

 

「クロード、ディアスは……」

 

「えーと。特に何も言わずに行っちゃったけど。どこか静かなとこに行って、昼寝……じゃなくて、夕寝でもするんじゃないかな?」

 

 クロードのはっきりしない返答自体には耳を貸す様子もなく、レナは眉間に皺を寄せて真剣に考え込む。

 しばらくしてから思いかねたように顔を上げ、

 

「わたし、ちょっと行ってくる」

 

 とクロードが止める間もなく、レナまでディアスの消えた方へ駆け出してしまった。

 

 

 

 十賢者達を倒すべく集まった仲間達がようやく一堂に会して早々、こんな問題が出てくるとは。

 これもついさっきのセリーヌみたいに、自分のささやかな思い違いであってくれればいいのに。しかし今度のはどう考えても、本物の修羅場というか軋轢発覚というか。

 

 レナスさんはもちろん何も悪くないし、レナの気持ちもわかるけど。

 僕もできる事ならそうしてほしいけど。でも──

 

(……こういうのって、周りが言ってどうなるものでもないと思うんだよなあ)

 

 だからといって具体的に何をどうすれば解決するものなのか。

 とんと思いつかないクロードは、(なんとかうまいこと収まってくれないかなあ)とディアスとレナが消えた先をいつまでもぼりぼり頭をかいて見送っているところで、近くにいたレナスの仲間の一人、アリューゼに聞かれ、

 

「忙しい奴らだな。お前のところもいつもこうなのか」

 

「え、ええ。まあ、大体いっつもこんな感じですね……あはは」

 

 よりによってこの人に事情を打ち明けられるわけもなかった結果、ごまかし笑いで濁したのだった。

 

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