スター・プロファイル   作:さけとば

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 本文の前に~~
 久しぶりの投稿すぎるので、前回までのあらすじ

 いつの間にか惑星エクスペルにいた、昔レナ達が倒したはずの十賢者達。
 そもそも十賢者を再び出現させたのは誰?
 別の世界……ていうか実はやっぱり別じゃないかもしれない世界で『創造神』してたレナスをおびき寄せ、「力」を奪った、すべての元凶は今どこに?
 いろんな謎が残ってるままだけど……

 十人全員しっかりいた十賢者の方は、なんやかんやで力を合わせて倒して、残りはあとカマエル、ルシフェル、ガブリエルの三人。
 どうやら敵の狙いっぽいレナスを守りつつ、これから残りの奴らも探し出すぞ!
 
 そんな感じで、本編の続きです


17-1. 嵐の前のなんとやら

 エルリアタワー近くの拠点暮らしやらを始めてから、さらに日々が流れた頃。

 『十賢者レーダー』での惑星エクスペルのエル大陸およびその近辺の小島等の検索を終えた後。次にとりかかったクロス大陸についても、ようやく全部分の検索が完了しようという時だった。

 これまでゆっくりではあるが、しかし着実に働いていた十賢者の検索機能について、ちょっとした問題が発生した。というか明らかになった。

 

「あれれ? この暗いトコなんだろ?」

 

「これ……モニターの故障じゃ、ないよな」

 

 モニターにでかでかと表示されている、クロス大陸の地図。他の場所全部が『該当パターンなし』の色で埋め尽くされている中、円を描いたある一部分だけが『検索エラー発生』となっていたのだ。

 つまり地図の暗くなっている部分だけが、どういうわけかまったく検索できていなかったらしい。

 

「うわあ……。これクロス城下もすっぽり入っちゃってるね」

 

「肝心なところが調べられてないって事ですわね。まったくもう」

 

 円の中心部分こそクロス洞穴の辺りにあるのだが、円の大きさは結構大きく、近い距離にあるクロス城下までもが全部その範囲内に収められてしまっているのだ。つまり、よりによってクロス大陸で一番人の多い地域周辺である。

 で、そんな事になった原因はというと、

 

「まさか、十賢者達による妨害?」

 

「さあね。パネルにはオブジェクトの状況を確認して、って書いてあるけど。とりあえず調べてみない事には……」

 

 首をひねるレナに「オブ、ジェクト?」「たぶん電波塔、ってやつじゃないかな。エクスペルのあちこちに設置されてるんだと思うよ」とクロードが説明する中。マリアがパネルを操作し、

 

「大抵はエクスペルの文明度に合わせて、周囲の自然物か何かに紛れさせてあるみたいね。この周辺のポイントに置かれているものは──」

 

 マリアがモニターに表示させたのは、『指定のオブジェクト』とやらのサンプル画像。

 先がとがった感じの、やたらと縦に長い、いかにもな怪しい岩である。

 

「……あ」

「……。あの、セリーヌさん。もしかしてこれ、クロス洞穴の」

 

 一瞬で原因を察しちゃったらしいクロードとレナの二人は、小声で近くのセリーヌに話しかけ。

 同じくめちゃくちゃ心当たりがあるらしいセリーヌは、珍しく焦った様子を見せたのだった。

 

「あ、あら? どうしてかしら? ……すごく、見覚えがあるような気がしますわね?」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 そんなわけで絶賛故障中らしい、クロス洞穴にあるオブジェクトの修理に向かう必要が出てきたわけだ。

 

「わ、わたくしのせいじゃありませんわ。だって地図にちゃんと書いてあったんですのよ、雷の紋章術に反応するって!」

 

「だ、大丈夫ですセリーヌさん、わたしもちゃんとその文字見てますから! ……ねえクロード? そうよね? あの地図を作った人が悪いのよ、あの地図を作った人が」

 

「まあ、電気に反応するってのは間違ってなかったんだろうな……。そりゃそうだよな。昔のエクスペル人が機械の事なんか、知ってるわけないだろうし」

 

 

 一部の人が今さら過去の出来事によって地味にショックを受けていたりするが、実際の被害は「クロス周辺を調べるのが後回しになった」程度だ。よって当人達以外、他のみんなは特に気にしていない雰囲気下での話し合いである。

 

 とりあえず時間がもったいないので、すでに検索については残りのラクール大陸の方を先に行なうよう、機械に指示変更はしてある。

 例の『オブジェクト』の方はその後軽く調べてみたところ、ややこしい構造をしているわけでもなく、多少の機械知識がある人なら問題なく直せる代物だという事。ただ大きさが縦十メートルに迫るでかさなので、場合によっては少々修理に時間がかかるだろう事が分かった。

 

 で、誰がその修理に行くかという事だが。

 

 

 役に立てる機会がさっそくきたという事で、プリシスがまっさきに元気よく手をあげたのに続き。

 それにつられて、実はめっきり役に立っていないかもしれない事をけっこう気にしていたらしいチサトやらレナスやらも、道中の魔物退治役が必要だからとかいう名目でいそいそと名乗りをあげ始め。

 大人しくすると言ったそばからお出かけしたがるレナスに呆れつつも、

 

「これは十賢者達とは直接の関係がない問題よ。すべてを人に任せきりにして、時を無為にやり過ごすとまで言った覚えはないわ」

 

 これぐらいはいいじゃないと一切譲る気のない様子の彼女に折れたらしく、メルティーナも「じゃあ私も行くわよ」となり。

 あとはじゃあ念のためもうちょっと人数も多い方がいいよねとか、修理材料運びのお手伝いとか、クロスのケーキおいしかったからもう一回食べたいなどといった理由で、クロードやらフェイトやらレナやらソフィアやらもわらわらと手をあげた。

 

 結局は拠点の留守番組がマリア、クリフ、ノエル、ディアス、セリーヌの五人。

 クロスに向かうのは、小型艦の操縦をするミラージュも含めて残りの十一人。

 

 たかだか一本の電波塔の修理に、ぶっちゃけどうせ他にする事もそんなにないしみんなで行っちゃえ、みたいなノリで以上の事が決まったのである。

 

 

「セリーヌさん、本当に留守番でよかったんですか?」

 

「ええまあ……わたくしまで向こうに行ってしまったら、万が一にも十賢者達がこちらにやって来た時に困りますもの。あの拘束術のような荒っぽい術は、ノエルとは少々相性が悪いでしょうしね」

 

「そっか。それもそうですよね。僕はてっきり、セリーヌさんが昔、紋章術であの塔を思いっきりぶっ壊したとかいう事を気にしてるのかと」

 

「ええまあ。気にしてませんわよ、まったく。だからそれ以上はやめてくださらない? フェイト」

 

 

 留守番組として拠点に置いている戦力の目安は、ハニエルの時と同じく、例え残りの十賢者のいずれか一人に襲いかかられても「これだけいればまず勝てるかな」となれる程度のものだ。

 今回はさらにあれから時間が経ち、奴らを倒さず生け捕りにする方法なども術師の間で話し合ったらしいので、その辺の戦力バランス(まあそういった事が得意なセリーヌとメルティーナは別々のパーティーにした方がいい、程度の事ではあるが)も考慮に入れての結果である。

 

 それと肝心のクロスに向かう組が、もしも十賢者達に狙われたりしたらどうするかという事だが。

 これについても、ある程度の対策は実はできていたりする。

 

 前回ハニエルの時には間に合わなかったが。この待機生活中に、プリシス達が『十賢者レーダー』のレプリカをばっちり作ってくれていたのだ。

 

 元々のレーダーと同じく検索できる範囲はさほど広くないものの、やはり再び自由に持ち出せるようになったというのは大きな利点であろう。

 検索に時間もかからない。向こうがもしレナスを狙うようなそぶりを見せたとしても、近づいてくるより早く気がつけるのだから大体は安心、というわけだ。

 おまけに今度のはアラーム機能付きという優れモノである。

 

 

 作られたレーダーのレプリカは二つだ。

 そのうちの片方は、念のため留守番組に預け。もう片方はクロス組に。

 

 さらには加えて、この待機生活中にガチの天才プリシスがちゃっかり完成させていた『一人用搭乗型ロボット』(操縦桿部分に無人君を操縦ユニットとしてはめ込む事により、人一人をその中に乗せて自在に動く事のできる大物機械。……ようするに人の背丈よりちょっと大きいくらいの、パイルダーオン的なアレである)も修理作業用に、十二人乗りの小型艦に積んで持っていく。

 

「じゃ、ちゃちゃっと行って直してくるよ! アタシに任せて!」

 

「やっぱりおみやげはケーキがいいですかね? セリーヌさん」

 

「そこはわりかし本気でどうでもいいところですけど……。まあその辺が無難なんじゃないかしらね」

 

 出がけのソフィアとセリーヌのやり取りに

(これ結局ただの観光パターンだな、たぶん)

 なんてフェイトもつい思っちゃいつつ。

 留守番組を除いた十一人は、さっそくクロスへ向かったのだが──。

 

 

 ☆☆☆

 

 

「うおー、久しぶりのクロスだー! 修理するぞー!」

 

「ケーキ食べるぞ、おー!」

 

 今回も人目を避けつつ小型艦で移動してきたので、艦の留守に残ったミラージュを除いた一行が、クロス城下に足を踏み入れたのは夜。

 よって着くなり気合を入れられたとしても、もちろん両方とも却下である。

 

「これから行くのは宿だってば。クロス洞穴は明日よ、わかった?」

「はーい」

 

 聞きわけのよろしいプリシス達も含めて全員で、レナの先導でおとなしく宿に向かう。

 今回お世話になる宿もやっぱり、レナの親戚のおばさんがやっている宿だ。

 

 

「この間よりさらに人数が増えてて、おばさんもびっくりするだろうな……」

 

「全員分の部屋があいてるといいけど……。食事は自分達で済ませた方がいいわよね、やっぱり」

 

 やら、

 

「ミラージュさん、ひとりで大丈夫かなあ」

 

「ひとりの方が自由に動きを取りやすくていいって言ってたけど、やっぱなんか申し訳ない気持ちになっちゃうわよね。……なんなら留守番してるだけでいいわけだし、明日は私が替わろうかしら」

 

「ギャフ」

 

「ええっ僕が? そ、そりゃあ別にかまわないけど……まあ、だよね、うん。留守番なら僕がやりますよチサトさん。僕に任せてください」

 

「おおっ、アシュトンかっくいー!」

 

「そっそうかな? そんな事ないと思うけど、えへへ」

 

「……フギャ」

 

 やら、

 

「いいわね、宿。んーいい響きだわ。ベッドマジさいこー」

 

「……。お前、普通に満喫してるだろ」

 

「べっつにー。むしろそれのどこが悪いんですかって感じだしー。……つか前々から思ってたけどさ、こっちの世界みょーにゆるくない? つか全体的に食い物クソ美味くない? そりゃあんたもおいしいものにつられて警戒心ゆるゆるになるわけだわ」

 

「……メルティーナ。私は別に、そういうつもりで旅をしていたわけじゃ」

 

「“ケーキ”、どうだったのよ?」

 

「……」

 

「おいしかったの、さしておいしくなかったの?」

 

「……」

 

「どうなのよ?」

 

「……。おいしかったわ。とても」

「素直でよろしい」

 

「……」

 

「さあて、愛しのケーキちゃんは一体どんな味なのかしらねえ。実に楽しみだわ」

 

 

 やら。

 夜の騒音にならない程度にわいわい喋りつつ、宿に向かい。

 無事に宿泊の手続きを済ませる。

 

 いざ明日に備えて寝ようと、各々の部屋に別れる直前。ロビーで軽くこれからの事の確認をしている時に。

 ようやく、ある“うっかり”に気がついたのだ。

 

 

「……で。クロス洞穴でもなんでも、アタシ達がどこに行っても、このレーダーさえあれば……って」

 

「あ」

 

 十賢者の居場所ならこれでバッチリ分かるから大丈夫。

 そう言ってプリシスが手元から取り出した『十賢者レーダー』は、反応なしどころか、画面全部が真っ暗。

 

「やば、電源入れてなかった」

 

 慌てて電源を入れると。

 

 瞬間、レーダーのほぼど真ん中に、でかでかと点が光って表示され。

 アラーム音が鳴る前に、すぐに消えた。

 

 

「ん? 今の──?」

 

「光った、けど」

「別に誰も……いないわよね?」

 

 

 全員できょろきょろと周りを見渡してみても。大人しくしてるはずなのに真っ先にとっさに動いちゃったレナスが廊下の死角を確認しに行っても、アリューゼが宿の外の方を見に行っても、それらしき人物どころか誰の気配もなし。

 いるのはカウンター前の、「あんた達さっきからいったい何してるのよ」みたいな感じで不思議そうにこちらを見ている、レナの親戚のおばさん一人だけだ。

 

 

「おばさん。この宿って今、他に誰か泊まってます?」

 

「さあ? 他に二、三部屋は借りられてるけど、みんな帰りが遅い方達ばっかりだから。今はまだあなた達しかいないと思うわよ」

 

 

 という事なので、レーダーの反応は何かの間違いだったみたいである。

 

「……それ、壊れてないよな?」

 

「むっそんなわけないじゃん。起動時の癖だよ、起動時のくせ」

 

 まさかこのレナの親戚のおばさんが実は十賢者……なんて事はあるまいし、今のはプリシスが言うように、単なるポインタの初期位置みたいなものが一瞬表示されちゃっただけだったのだろう。

 納得したところで「外に怪しい奴はいなかったぜ」とアリューゼも戻ってくる。

 無駄に警戒しちゃったなあと、さっそく緊張を解いたクロードやフェイト達に続き、

 

「“起動時の癖”?」

 

「んーまあ、機械ならではの紛らわしい誤表示ってやつかな。今見えてるなんもないのが正しいヤツだから、さっきのは気にしなくていいよ」

 

 プリシスの説明を受けたレナスも腑に落ちたような落ちないような、なんともいえない顔で、じっと見続けていた廊下の死角から離れかける。

 かと思えば、また後ろを振り返り、

 

「メルティーナ、ちょっと来て」

 

「……あんたさあ。自分の目で見てからじゃなくて、最初から人に行かせなさいよ。マジでなんかあったらどうするんだっつーの」

 

「いいから。どう思う?」

 

 メルティーナを呼びつけて、二人でなにやらこそこそ。

 杖を手に、しばしじっと目を凝らしたメルティーナは訝しげだ。

 

 

「どう思うって……別にそれらしい“痕跡”は読み取れないわよ。あんたの勘違いだったんじゃないの? つか、あんたこそどう思ってるのよ」

 

「私では判断がつかないから、あなたに確かめてもらっているのよ」

 

「よーするに、あんたも自分の勘に自信が持てないくらい油断しまくりだったっつう事ね」

 

「……。結論としては私の気のせい、という事でいいのね?」

 

「まあそうなるんじゃないの? ん……いや待てよ? 私達の世界とは異なる世界の存在構成……構築、分解の手順も……、そもそもこの方法じゃ検知できないって可能性は……?」

 

「分かった。ありがとうメルティーナ、もういいわ」

 

 

 ぶつぶつ言いながらメルティーナが真剣に考えなおそうとする一方。

 レナスは気のせいだったという結論に至ったらしい。

 

「レナスさん、メルティーナさんも。何かあったんですか?」

 

「いえ、何もなかったわ。メルティーナの言う通り、私も近頃は警戒心がうまく働いていないようね」

 

 不思議そうに見ていたレナ達に肩をすくめて答え、

 

「は? いやちょ、私まだ考えてる途中なんだけど」

「今のは完全に私の気のせいよ。余計な手間をかけさせてごめんなさい。──さあ、行きましょう。みんなが待ってるわ」

 

 廊下にかじりつくように居座っていたメルティーナにもそう促して、レナスはみんなと一緒に部屋へと向かう。

 メルティーナはちょっとの間、心残りそうにその場をじっと睨み、

 

「大丈夫だって、ほら。レーダーにはなんにも写ってないんだし。レナスの身に危険が迫ってたんなら、あんな一瞬で消えるわけないじゃん?」

 

「これからちゃんと気をつけてればいいんですから。起きてる時はレーダーもみなさんで、代わりばんこで確認し続けましょうね」

 

 とプリシスやソフィアに言われた内容とは関係なしに、一人で勝手に諦めたように息を吐く。

 それから気持ちを切り替えたように、メルティーナも廊下を後にした。

 

「どっちにしろ、一から考え直さなきゃ無理、か。んな事すら抜け落ちてたなんて……私も大概、平和ボケしすぎてるわね。ヤバいわマジで」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 ちなみに「ミラージュと留守番を交代する」と言ったはずのアシュトンだが。

 翌朝たどたどしい手つきで通信機を使いつつ、その旨を伝えてみたところ。

 

 

『いえ結構です。いざという時に艦を動かせる人間でないと意味がありませんから』

 

「は、はあ。そうなんですか。じゃあ……お言葉に甘えて。なんかすみません、こんな事いきなり」

 

『ああ、気遣ってくださるのは素直に嬉しいですよ。ただ、私にとってはこの環境、本当に苦ではないと言いますか。一人だといかようにも広く使えますし。機器類の匂い、私は嫌いではないので』

 

「え……そうなんですか?」

 

『ええ。それにアシュトンさんは、どちらかというと近くで見守っていたい方がいらっしゃるのでしょう?』

 

「うぇ!? そそそ、そんなことは……!」

 

『そういうの、私はもっと自分に素直になった方がいいと思いますよ?』

 

「……あ、はい……」

 

『という事なので、私はここで皆さんを待っていますね。アシュトンさんも頑張ってください』

 

「は、はい、ありがとうございます、がんばります……」

 

 

 なんか逆に優しく励まされたらしい。

 通信機での会話を終えるなり、地に足がついてないような様子で「なんかねえ、ミラージュさん艦に一人でいるの落ち着くんだって。なら仕方ないよねえ、うふふ」とか言っていたので、留守番交代の件はなかった事になったようである。

 

 

 という事なので次の日には予定通り、クロス洞穴へ行っての修理作業が始められた。

 

 クロス城の管理下にあるはずの洞穴で勝手に大がかりな作業しちゃっていいのか、という意見も出る事は出たが。

 まあどう説明したらいいか分からないし。特に見張りの人とかがいるわけでもないし。過去には堂々とトレジャーハントしてた人なんかもいるわけだし。

 結局は「壊れてる物を直すだけなので大丈夫だろう」という理屈で、王様への報告はなしに、ひっそりとやってしまおうという事になった。

 

 実際の修理の規模にかかわらず足場がいるだろうとの事なので、いったん洞穴の近くに隠してある小型艦に寄り。『レプリケーター』で適当な木材を作ってから、大部分をプリシスと無人君が乗り込んだ例のロボットで運搬。持ちきれない分は、残りのほぼ全員で手分けして持っていく。

 

 それから特に問題もなく、アシュトンを含めた十人全員で目的の『オブジェクト』にまでたどり着き。まずはさっそく故障の具合を目視で確認。

 現物を見たプリシスの第一声は、なんか巨大ドリルっぽくてカッコいいとの事だった。

 

 

「あちゃー、けっこうハデにやられちゃってるねえ」

 

 わくわく気分もそこそこに、まさにその気分を演出している主原因であろう、いかにもな自律型もとい無人君操縦型ロボットから降り。

 自分の足で周囲をぐるりと一周して、プリシスが言い、

 

「セリーヌさん、そんな派手にやらかしたんだ?」

 

「ええっ。さすがにそこまでの威力じゃ……なかったわよね、クロード?」

 

 思った事を素直に言っちゃうフェイトに、うろたえるレナ。

 聞かれたクロードは自信なさげに首をひねるが、

 

「いやいや、セリーヌじゃなくって。見ればわかるじゃんほら、たぶん魔物だよこれ」

 

 さすがにそこは濡れ衣だったようである。

 プリシスに言われてオブジェクトの裏側を見てみれば、なるほど確かに。ところどころ岩っぽく見せかけられている表面の擬態部分が無残にめくられ、中からずたずたに引き出された配線やらなにやらが、ばっちりと見えちゃっている。

 明らかに雷の紋章術だけではこうなりようがない壊れようだ。

 

「光り物が見えてたから持ってっちゃったんだろーね、きっと」

 

「どうプリシス、もしかして直すの難しそう?」

 

「うーん。難しいってか、時間かかりそうな感じ? まだ上の方どうなってるかわかんないし、まずは足場組んでみよっか」

 

 それからはほぼ全員で持ってきた足場の、地道な組み立て作業の時間である。

 

 

 オブジェクトがある場所、つまりみんなが今いる場所は、狭い通路になっていたりだだっ広い空間が広がっていたりと色んな表情を見せるクロス洞穴の中でも、特に分かりやすい一つの部屋のようになっていると認識できる場所だ。

 

 円を描くように、真ん中に大きなオブジェクトがすっぽり収められるほど広く高く、見事な自然のホールを形成している室内部分。天井からはところどころ自然光が漏れ、たいまつ等の明かりがなくても十分なほどにその室内部分を照らしてくれている。

 入り口部分のちょうど反対側にある壁の辺りだけは、何かの衝撃で崩れたらしく、岩や石くずや土砂が積み重なっている。

 

 クロードやレナいわく、本当はその辺りにもう一つ、この場所と同じくらいの広さを誇る秘密の部屋への入り口があったのだとか。

 宝の地図の謎を解いてお宝をゲットしたはいいものの、魔物に襲われなんやかんやの末に、今度はその部屋の入り口がセキュリティ関係なしに塞がってしまったらしい。

 

 ……というか。その奥の方の部屋に入るために、セリーヌ達が宝の地図に書いてある謎を解いた結果──

 まさに雷の紋章術を落とされたのがこのオブジェクト、という事であった。

 

 

 たぶんあの時の魔物は倒せたと思うから大丈夫と、二人は完全に塞がっている入り口があった辺りを見つつ話を締めくくった。

 

 実際に近づいてみても軽く叩いてみても、物音一つしない。なにより相当な厚みのある崩れっぷりだ。生きてたとしても、到底どうにかできる代物でもないだろう。

 現在のクロス洞穴の最奥部はつまり、自分達が今いる、オブジェクトのあるこのホールだという事だ。

 

 

 そのように他の空間と仕切られた場所なので、入り口に最小限の見張り役さえいれば、作業中の人がいきなり魔物に襲われる心配もない。

 交代は適当な時間置きにする。

 それと木材の一つも持たずに自分で持ってきたらしい紙の束に、なにやら文字を書き書き、

 

「私パスね、あんたらで勝手にやっといて」

 

 と目も合わせずに言い放ったメルティーナを除いた全員で、実に協力的に作業を進め、足場組みは無事完了。

 

(……相変わらずだな、メルティーナさん)

 

 とはフェイトも思ったものの。

 見張りの順番が回って来た際に、洞穴内の壁際に座り込んでいる彼女の手元を盗み見たところ。ワケの分からない文字がごちゃごちゃ書いてあったりして、難し気な顔でぶつぶつ言ったりもしてるし一応遊んでるってわけではなさそうだったので、

 

(一切手伝う気ないなら宿に残っててもよかったのでは……?)

 

 とはやっぱり思いつつも何も言わない事にしておく。

 これで本当に遊んでるだけだったら文句……を本人に言うのはたぶん効果がないと思うのでレナスに向かってそれとなく言うけど。たぶんそれでも効果はないと思うので結局言わないけど。

 

(まあでも、注意すべき時にはちゃんと注意してたりする気もするレナスさんが何も言わないって事は、一応そういう事なのか……?)

 

 その辺の真偽はともかく。

 その後、出来上がった足場に乗ったプリシスが、上方部分の故障具合も大雑把に確認。

 

 案の定とても一日では終わらせられない作業量であると。おおまかな見当をつけた頃にはいい時間になっていたので、その日はまたクロス城下に戻る事になった。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 次の日からもやっぱり、十人全員での、日帰りでのクロス洞穴通いが続いた。

 

 朝にクロス城下の宿を出て。おいしい朝ご飯を食べる。

 途中で小型艦に寄り、預けていた大型ロボットを引っ張り出し。『レプリケーター』で作った道具等を、手伝う気のない一人を除いた全員で手分けして持ち。

 辿り着いたクロス洞穴の先で、プリシスの他に、フェイトやクロード等のある程度は機械知識のある人も、ところどころプリシスの指示を受けつつ作業を手伝う。

 

 資材が足りなくなった時などは、がたいのいいアリューゼがほぼ一人で洞穴の中と外を往復。

 手が空いている時には、無人君が操縦しているロボットも、ご主人のプリシス抜きで運搬を手伝う。

 

 他の人達は見張り番とかで魔物の襲撃に備える、もといほぼひたすら待機。あるいはお昼ご飯を作る係。

 一人になったらいけないレナスはもちろんこの組である。

 

 メルティーナは相変わらず自分の世界で作業中。

 ひたすら自分の書いた紙とにらめっこしているかと思いきや、ホールの外でやっつけた魔物の体の一部分をわざわざこっちに持ってきて観察するとかいう怖い事してたり、なんか変な術かけてたり、たまに通信機でセリーヌと会話もしたり。レナやソフィアにも質問をしたり。

 

 そうして時間が過ぎていったところで、その一日の作業は終了。

 修理途中でまた魔物に壊されたら意味がないので、帰る時ばかりはメルティーナもホールの入り口に結界を張る手伝いをする。

 

 で、ミラージュのところに顔を出してから、かさばる大型ロボットをまた預けて、またクロス城下に戻る。

 おいしい晩ご飯を食べて。

 宿に戻って。

 ふかふかのベッドで眠る。

 で、次の一日がまた始まる。

 

 

 これまでの滞在中、異常事態は一切起きず。

 初日に一瞬だけ光った『十賢者レーダー』の反応も一切なし。

 

 オブジェクトの修理も、特に損傷がひどかった部分や人手がいる部分等はすでに大方を直し終え。元のように外見を岩に見せかけるコーティング作業などもばっちり完了。

 どころか今度のは、二度とその辺の魔物ごときに壊されないよう、外側の強度をガッチガチに増す改良まで加えてみた。

 

 あとは多く見積もっても一日二日、細かな調整等を終えればどこに出しても恥ずかしくない仕上がりといったところか。

 必ず何かが起こると思っていたわけでもないけれど、あまりにも平和な具合に、

 

「なんかただの出稼ぎだよね。あんまり宇宙の平和を守ってる気しない」

 

「一応観光ツアー気分じゃなかったんだな」

 

「なにか言った? フェイト」

 

「いや、なんにも。あんまり食べ過ぎるとまた太るぞ」

 

 とかいうお約束のやり取りまで、幼馴染とのん気に繰り広げちゃっていたバチが当たったのかもしれない。

 またしてもフェイトが油断しまくりかけていた時。

 思いもかけないところから、その報せは唐突に訪れたのだった。

 

 

 

『ちょっとまずい事態が判明したわ。人道的に考えて、早急に解決しなければならない問題というのかしら。──これを見てくれれば一目瞭然だと思うけど』

 

 

 通信はエル大陸で待機中のマリアからだった。

 クロス城周辺を後回しにして行なった、ラクール大陸検索結果の一部分が一足早く出たのだと言う。

 

 全員集まった小型艦内のモニターに表示されたのは、マリアの言う通り、一目瞭然のまずい事態だ。

 

 ラクール城下内に、十賢者の反応あり。

 しかも名前は、『カマエル』と『ガブリエル』の二つ。

 




次回からの話は数日ごとに投稿予定。

・それと事後報告、今までの本文を改稿しました。
細かい変更点などは活動報告に載せておいたので、気になる方はご確認ください。

※オリキャラ設定等をちょっと変えましたが、話の大筋自体は変わっていません。
あとは話数が三話分短くなったので、そこだけご注意ください。
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