スター・プロファイル   作:さけとば

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エピローグ
1. 本当のお別れ


 エナジーネーデまるごと創造から一夜明けた、次の日。

 クロード達やフェイト達も巻き込んでの、夜遅くまでのお祝い騒ぎから一転、ナール市長はすでに市長室で大量の書類と向き合っていた。

 

「これから忙しくなりますな。このネーデの責任者として、これからのネーデのありようを、皆と一緒に考えていかねば」

 

 クロード達の方は、小型艦の整備やらの関係ですぐにエクスペルには帰らず、一週間ほどこのままエナジーネーデに滞在する事になったという状況だ。

 整備作業中のミラージュなど一部の人を除いて、するべき事も特にない。

 

 ということで今は各々自由に、無事に大切なひと達に再会できただろうチサトやノエルのところに遊びに行ったり、セントラルシティのおしゃれな街並みの中でおいしいモノたらふく食べたり。または、未開惑星保護条約なんてもう知っちゃこっちゃないとばかりに、一応フェイト達には内緒で、仲間二人も引き連れてエナジーネーデ中をせわしなく飛び回って視察しまくる事にしたらしい誰かさんなんかもいたり。

 

 そんな中、クロードとレナも、他の仲間達と同じくチサトとノエルに会いに行く前に、軽い気持ちで市庁舎ビルに立ち寄ったところ……

 

 

「クラス9のシールドもないのでは、昔と同じように星に引きこもるのも中々難しかろう。というところまでは、大方の意見もまとまっておりましてな。当然反対する者もいますが、ではどうすればよいのかと問われると何も……」

 

 あまりに忙しそうな様子に、二人とも挨拶だけして即退散しようとしたのだが。ナール市長はそんな二人を引き止め、いったん仕事の手を止めてさらに喋る。

 

「頭ごなしに否定する気持ちも分からないのではないのです。我々ネーデ人の歴史を考えると、やはりどうにも……。例え我々全員が同じ轍を踏まない意思を貫けたとして、この宇宙の広さを考えれば、当時を覚えている星が完全にないとも言い切れない。好ましい事態にならないのは明白でしょう」

 

 ナール市長は真剣な表情だ。

 どうやら恩人相手だからぞんざいな対応をしづらいとかではなく、個人的にクロード達に意見を聞きたいという事らしい。

 

「知られてしまってからでは遅いのです。“エナジーネーデ”という星の存在は、どうあっても、過去の時代に消え去ったものでなくてはならない」

 

「それは……“やっぱり、ネーデ人は外に出るべきじゃない”って言いたいんですか? あの時みたいに、宇宙のために自分達は犠牲になるべきだって?」

 

 ナール市長の話ぶりに、クロードがつい先走って気色ばむ。

 遅れて話を理解したレナも、深刻な顔になっていると。

 ナール市長は申し訳なさそうに笑って言った。

 

「これはとんだ誤解をさせてしまいましたな」

 

「……誤解、ですか?」

 

「いえ、誤解かどうかは現時点では分かりませんが……。我々ネーデ人がこれからどうするのかは、あくまで我々が自分達で決めるべき事。ここまでして頂いたクロードさん達にこの上すべてを決めてもらおうなどとは、誰一人として考えてはいないのですよ」

 

 ナール市長の言う「クロードさん達」には、ここにいる二人はもちろんの事、なにより自分達を再びこの宇宙に存在させてくれたレナスの事も含まれているのだろう。

 まあそこまで干渉する気は最初からなかったらしいその当人はというと、「周り中に崇め奉られるのが嫌」というよりは「一週間しかないんだからもっとちゃんと色んなところ見ておかないと」な理由でお忍び視察の真っ最中なわけだが。……というか、何日か後にはむしろ彼女の方がナール市長に治世方面の質問をしまくってそうな様子ですらあったわけだが。

 

 未来の『惑星ミッドガルド』のためにもタイムパラドックスが起きないよう気をつけてください、というフェイトの言いつけを今まであれだけ律儀に守っていたのに。超技術満載のエナジーネーデを自分で創っちゃった途端、あの変わりようである。

 どうせ創る段階で全部知っちゃったし、今さら見ないふりしても意味ないから、という事なのか。引き止めるまではいかないまでも、クロードもそんなレナスの意識の変化の理由はなんか気にかかるところではあるが……

 

 それはさておき、そんな事になっているとは全く知らないナール市長は、落ち着いた笑顔を見せつつ言う。

 

「私がこんな話をしたのは……そうですな。これはまだ、私の頭の中だけで考えている事でして。もしその案が実現した時の参考に、お二人にも意見を頂ければ、と思ったのです」

 

 と言われても、やっぱり先の話がまだ分からないだけに、二人ともろくな意見を言える自信はない。

 思わず顔を見合わせたクロードとレナの前で、「ちょっとしたアンケート、といったものですよ」とナール市長は重ねて言ってから、本題を切り出した。

 

 

「いっその事、名前を変えてしまおうかと思っているのです。“エナジーネーデ”の名を捨てて、何か別の名を持つ惑星にでもなってしまおうか、と」

 

 

 二人とも、まったく予想してなかった話の内容だ。

 ついびっくりしてナール市長に聞き返すと、

 

「エナジーネーデの、名前を……変えちゃうんですか?」

 

「やはり、こずるい方法と思いますかな? 先ほど話した問題も、これならばうまくやり過ごせると思ったのですが」

 

「あ、いや……ダメって事は、ないと、思いますけど」

 

 そこまで返事をしてから、クロード達も確かにナール市長の言う通りな事に気づく。

 かつて銀河の大部分を支配した、ネーデ人の末裔が住む惑星『エナジーネーデ』がこの宇宙に存在してはならないというのなら──

 

 “エナジーネーデ”という存在でなくなってしまえばいいのだ。

 

 我々の住む星は“エナジーネーデ”などではない、別の星なのだと周りの目をごまかしてしまえばいい。

 三十七億年も昔に歴史の表舞台から消えた星の、名前以外の詳細まで事細かに覚えている者など、どうせいるわけがないのだから。

 

 ……とは言っても、今までの名前をばっさり捨てるというのは、心情的にどうなのかと。

 自分達の歴史を大事に考えてきた地球人として、クロードがナール市長を気遣わしげに見るけど、ネーデ人的にはそんな事はまったく気にならないらしい。

 

「忌まわしい過去の名に固執する必要がどこに? 一度死んで生まれ変わったような気分ついでに、名前も新しくこれからの時代を生きる。素晴らしい事ではないですか」

 

「そういう……ものなんですか?」

 

「ええ、なによりめでたい事です。市民達もさぞ喜んでくれましょう」

 

「そ、それじゃ、わたし達に聞きたかった事って……」

 

「はい。この星の新しい名前を、よければ皆さんに考えて頂けないかと」

 

 

 ナール市長はやっぱり笑顔で言うが。

 いきなりそんな事言われた二人からすれば責任重大すぎる質問である。

 一体これのどこが、ちょっとしたアンケートだというのか。本当に参考にするだけならいいけど、ナール市長の今の言い方だとそれもなんかだいぶ怪しいし。

 

 

 星の名前ってそんな簡単に決めていいものなの?

 というかそもそもわたし達が決めちゃっていいものなの? いくら恩人扱いされてもエナジーネーデ創ったのレナスさんだし、ナール市長も本当はわたし達じゃなくてレナスさんに名前を考えてほしいんじゃ……

 などと腰が引けてるレナの横で、クロードも緊張たっぷりに、

 

「あの、それじゃ、本当に参考にするだけっていう前提でですよ? まずはどういった感じの名前がいいとか、そういった希望とかは……」

 

 といった事をナール市長におそるおそる聞いている。

 ナール市長はしばし考えてから、「では、私個人の意見でよければ」と前置きして、

 

「わずか一握りの人間によって、完璧に統治された楽園ではなく。一人一人が個人の意思で決めた道を自由に歩む──。これからのネーデが、そんな星になれればいいと思っております」

 

 とか、

 

「我々は宇宙の支配者などではない。この広い宇宙の中で、地に足をつけて生きる、ただの人間にすぎないのですから」

 

 とか、すごくいい事を言ってくれているのだけど、やっぱりそれらしい名前なんてレナには少しも思いつかない。

 困りに困ったあげく、

 

「つまり……。ただの人間が住む場所、って感じの名前ですよね?」

 

 せっかくのいい話を台無しにするような、身もふたもないまとめ方をしてみたところで。

 横のクロードがようやく何かに気づいたらしい。いきなり「ああーっ!」と大きい声をあげたのだった。

 

 

「そ、そういう事だったのか! 普通に人が治めてる、エクスペルからけっこう近いところにある、先進惑星って……!」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 ちなみに、エナジーネーデ中を忙しく飛び回っていて出発時間ギリギリまで戻ってこないんじゃ……と思われていたレナス達三人は、予想に反して、その二日くらい前にはすでにセントラルシティに戻って来ていた。

 

 みんなの前に戻ってきた時のアリューゼとメルティーナは、どう見てもこの間の決戦より疲れてたし……というか飯ぐらいちゃんと食わせろとか、ここまで来てガリ勉とかマジありえない、男あさりぐらいさせろなどなど、不満たらたらだったし。

 さすがに二人にも休息をあげなきゃとなったのが、理由の大部分なのだろうけど。

 

 レナスも翌日にはレナやソフィアやアシュトンに混じって、ネーデのお料理教室なるものに参加していた辺り、ある程度は“ガリ勉”にも区切りがついたのだろう。

 というか、ノースシティの図書データ閲覧にもさんざん付き合わされたメルティーナいわく、

 

「隣の芝が青く見えてただけって、よくある事じゃない? つかエネルギー元からなにから私達のと違うんだから、そもそも参考になるわけないっつうね」

 

 との事のようだ。

 役に立たない可能性大の視察をギリギリまで続けるより、お別れの時が近い仲間達との思い出作りを優先させる事にしたのかもしれない。

 

 

 そんなこんなで一週間後。準備が整ったフェイト達一行は、まもなく“エナジーネーデ”じゃなくなる惑星を離れ、惑星エクスペルに戻る事になった。

 一週間かけてセントラルシティの外まで移動させておいた小型艦に、フェイト達はもちろん、クロード達やレナス達も乗り込む一方。

 

 ナール市長や未来人じゃない方の“ミラージュ”さんなど、見送りにきたネーデの人達の横には、チサトとノエルの二人もいた。

 二人とも、もうしばらくは故郷の星に残る事にしたのである。

 

 これが最後の別れになるだろう未来人のフェイト達や異世界の住民のレナス達には、心の底から名残惜しそうな別れの挨拶と、心よりの感謝の言葉を。

 彼や彼女らに続き、「お元気で」と感無量に言おうとしてたクロード達には、

 

「あっ、そうだ。私の部屋の物まだ片づけないでって、ボーマンとニーネさんに伝えといてくれない?」

 

「また会いましょうね、みなさん」

 

 との事。

 そういえばネーデの人達もこれからは星の外に出かけられるようになったのだし、これが最後の別れというわけではないんだなと。

 ようやく理解できたクロード達も、あえて軽い調子の挨拶を二人やナール市長達に返し、小型艦に乗り込んだ。

 

「はい。いつかまた、きっと会いましょう!」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 ディプロでの帰り道も、驚くほどあっという間だった。 

 

 フェイト達未来人はここでお別れでもよかったのかもしれないが、そういやエル大陸の拠点を完全には片付けてなかった事を思い出したので。

 みんなを送り届けるついでに自分達も小型艦に乗り込み、さっそくドックから発進させたところ。

 

 なんかやたらそわそわしてたレナスが、大気圏突入したあたりでいきなりぴたっと動きを止め、なにやら意識を集中。

 近くに座ってるアリューゼとメルティーナがつっこみを入れるより先に、なんかいきなりハッと我に返り、二人を引き連れて姿を消した。

 

 もちろん上空にいる、小型艦の中での出来事である。

 同乗していたクロード達には何の説明もなしに、である。

 

 彼女が神様パワーで瞬間移動したのはみんな、なんとなく分かったけど。

 え、どこ行ったの? 戻って来るよね、まさかこれでレナスさん達とお別れじゃないよね? ……みたいな衝撃である。

 

 戸惑いつつも仕方ないので、小型艦を予定通りエル大陸拠点に着陸させる事にしたところ。

 

 拠点の前に、レナスはいた。

 呆れ果てたアリューゼとメルティーナも一緒に。というか一人増えてた。

 レナスは見知らぬ青年と手を繋ぎながら、クロード達が拠点に到着するのを待ってたのである。

 

 

 そんな見知らぬ青年は、案の定はぐれたレナスの恋人『ルシオ』だったわけだ。

 聞いた話ではラクールで傭兵をやってお金稼ぎしつつ、彼なりにレナスを探してたのだとか。

 ……結局すれ違いの連続で見つけられないどころか逆に彼女に迎えに来られるとかいう、なんとも不運な結果に終わったようだが。

 

 とにかくレナス達が一度戻ってきてくれた事に一同ほっとしつつ、その初対面の彼とも一緒に、拠点の片付けを進めた。

 作業にはそれなりの時間がかかった。

 やる事が多いというよりも、みんなの手が止まりがちだったからである。

 

 フェイト達もレナス達も、この時代のエクスペルの人間ではない。

 これが終われば、いよいよみんな、それぞれの場所に帰っていくのだ。

 

 

 

「話に聞いた通りの年下彼氏ですわね」

 

「いてもたってもいられなくなって迎えに行っちゃうなんて、レナスさんかわいい~」

 

「かわいい、じゃないわよ。こういう時こそふたりで勝手にしけこみなさいってのよ。なんで私らも連れて……バカなんじゃないホント、バカなんじゃないのあいつ、まったく……」

 

 やや遠くからセリーヌとソフィアが、周りが初対面すぎて若干居心地がなさそうに手伝ってるルシオを、しげしげと観察しながら会話したりしている中。メルティーナもなんかその会話に混じって愚痴ってる中。

 

 レナスはさっきからずっと、エクスペルの空を見上げていた。

 上空には、どこかで見た事あるような小鳥。

 どんな表情で見ているのかは分からなかったけど、少なくともレナとプリシスが近くに来た時には、レナスは少し寂しそうな顔をしていた。

 

「んん? ああっ、あのコってもしかして……!」

 

 レナスの視線の先を見たプリシスの声に、小鳥がビビったように遠くに飛び去っていく。どうやらプリシスの直感は正解だったらしい。

 ちょうど向こうの方で解体作業を手伝っているアシュトン……というか背中のギョロとウルルンと目が合ったので、プリシスが声をかけようとしたところ。レナスが言った。

 

「今だけは、見逃してあげられない? ……あのこも、“彼女”のために行動したことに違いはないようだから」

 

「え……でも」

 

 横で不思議そうにしてるレナはともかく。騒動が落ち着いた後にアシュトンから色々教えてもらったので、あの小鳥がなんなのか、どういう事をしたのか、プリシスは大体の事をすでに察している。

 一方、

 

「私も迷ったわ。“彼女”から聞いたのとずいぶん違う性質で。さっきも誰にも聞こえてないと思って好き勝手にいろんな事を言っていたし……」

 

 引き止めてるはずのレナスは、やや渋い顔。

 見えてなかったけど、たぶんさっきもこんな顔をしてたのだろう。本気でどうしてくれようか相当に迷ったと思われる。

 ……一番に迷惑被ったの彼女だし。結局許しちゃうあたりがさすがだけど。というか自分までキレたら収集つかなくなっちゃうと思って仕方なく諦めただけなのかもしれないけど。

 

「レナスが言うなら、いいけどさあ。……ホントにいいの?」

 

「ええ。あのこがいたから“彼女”も助けられたし、みんなにも出会えた。だから今だけは、ね」

 

 小声で確認をとったところ、レナスがそう言ったので、遠くのアシュトンには元気な大声で「なんでもないよ!」と返しておく。

 ギョロとウルルン、さらにフェイト達やメルティーナやディアスなど、あのこに用事があるだろう面々には申し訳ないけど……もしかしたら今じゃなくても、その内そういう機会もあるかもしれないし。

 

 たぶん同じ事を考えているだろうレナスと同じく。

 プリシスも今はそんな事で、みんなとの貴重な時間を無駄にしたくなかったのだ。

 

 

「なんか、どんどん片付いていっちゃうね。あんな散らかってたのが、ずっと昔のコトみたい」

 

 プリシスの言葉に、レナスもレナも同じ方向を懐かしそうに見る。

 個人的に未来にとっとと帰られたら困るフェイト達の方は、なんだかんだ理由をつけて(未来の方の到着時間を調整すればいいだけなんだし)もう少しエクスペルにいてもらう予定だけど。レナス達はそうもいかない。

 

 チサトとノエルが故郷に帰れた事も。

 自分がもう少ししたら、エクスペルから旅立っていく事も。

 みんな悲しい事じゃないって頭では分かってても、やっぱりどうしても寂しい気持ちにはなってしまう。

 

「もうちょっとゆっくり、ってわけには……いかないよね?」

 

「長く、いすぎたくらいだもの。いつまでもみんなを待たせてはいられないわ」

 

 ついには口に出して聞いちゃったけど、レナスはやっぱり首を振って言う。

 素直にしゅんとしかけてから、

 

「あ! ねえでも、レナスのとこの“帰り道”は、こっちと繋がってるままなんだよね? じゃあさ、向こうにいったん帰って、好きな時にエクスペルに来る事だってできるよね?」

 

 という可能性に気づいたプリシスが、ひたすら喋るけど、

 

「今は忙しいんだったら、忙しくなくなってから遊びにくればいいじゃん。アタシはいるか分かんないけど、セリーヌとかアシュトンだったらたぶん……」

 

 レナスはそれも寂しそうに微笑んでいるだけで、何も答えない。

 

 彼女にとって一番大切なのは、やはり彼女の世界の“みんな”なのだ。

 いつでも気軽にエクスペルに戻ってこられるような立場だったら、その大切なみんなとの再会をこうやって遅らせてまで、ほとんどする事もない拠点の後片付けを最後まで手伝ったりなんかしない。

 これが本当の別れになると思っているからこそ、レナスは今ここにいるに違いなかった。

 

 薄々気づいていたプリシスも、今度こそ諦めたように息をついて、どんどん片付いていく向こうの様子に目を移す。自分自身のこれからの事も含めて、寂しいけどしみじみと一人で納得する事にしたようだ。

 

「……だよね。いつまでもみんな一緒は、無理なんだよね。うーん……。こうしてみんな、オトナになってくのかねえ」

 

 そんな二人のやり取りをさっきから見ていたレナの方は、レナスの気持ちにはじめから気づいていたのだろう。最初ちょっとだけ声を詰まらせた後、

 

「レナスさん、向こうに帰っても──」 

 

 皆さんと末永くお幸せに、のような事をレナスに言おうとしたらしく、その皆さんの方を見渡してから、

 

 

「その前に、ルシオさんにあのプレゼント渡しましたよね?」

 

「……あれは、まだ──」

 

「やっぱり。なんで再会してすぐに渡さないんですか、ちゃんと直したのに。ルシオさんきっと“あのゴミ”でプレゼント終わったと思ってますよ。挽回する気があるなら前の失敗なんかなかったくらいの勢いでばばーっと……」

 

 

 実際には口から出るままの事を言い続けた。

 さらにはセリーヌやらソフィアやらメルティーナやらにも、その会話の内容がばっちり聞こえたらしい。

 どやどや集まってくる女子達に囲まれるレナスに、その様子を遠くから見てるフェイトやマリアはやっぱり他人事のように、

 

「レナスさん、最後まであんな扱いだったな。本物のよその世界の創造神だったのに」

 

「親しみやすさが売りなら、まあいいんじゃない? 違和感なく見えるのも本人的にはたぶん本望なんでしょ」

 

 クリフは「いやさすがに望んでねえだろ、あそこまでは」とつっこみたさそうな顔。また別の場所ではクロードが代表して、色々びっくりしてるルシオに謝る。

 

「すみません。なんかもう本当に、僕達だいたいずっとこんな感じで」

 

 結局は拠点の片付けもこんな感じで、にぎやかに終わったのである。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 拠点を片付けた後は、すぐに小型艦でリンガの町に向かった。

 移動中の小型艦の中でレナスが急に思い出したように、そういえば惑星エクスペル全体にかかっていたらしい転送障害は今どうなっているのかと、もはやすっかり忘れていたフェイト達に聞いてきたので。

 クリフがディプロの人達と通信して確認したところ、なんといつの間にか解消されていた事が判明した。

 

 ……気づいたのがすでに小型艦の中だったので、今回はそのままリンガの町まで行く事になったけど。

 それにディプロからの転送降下だって、結局は目標地点の近くまで行くのに多少は時間のかかるものだし。その気になれば本当に一瞬で目的地に行けちゃう、レナスのとんでも神様パワーとは違って。

 

 

 そんなこんなでリンガに着いたのは夕方近く。

 全員でボーマンの店に行って、今回の出来事を色々話そうとして……

 

 レナス達はそこまで長居をするつもりはなかったらしい。

 無事に合流できた事と世話になった礼を、みんなの話が盛り上がる前にボーマンに短く言い、それじゃあと店の外に揃って足を向ける。もう夕方だし帰るのは明日にすればというプリシス達の引き止めも、飛んでいけばすぐだからと断った。

 

 店の入り口で見送るみんなは、レナス達にそれぞれ最後の別れの挨拶をした。

 

「レナスさん、皆さんも。いつまでも元気でいてくださいね」

 

 ここに来るまでに言いたい事はだいたい言っていたので、レナはそれだけを言った。

 みんなから数歩下がり、いよいよその場から去ろうとしたレナス達に、こらえきれなくなったプリシスが声をあげる。

 

「さっきの話、アタシはやっぱ本気だから!」

 

 オトナっぽく見送るのはやめたらしい。

 いったん動きを止めたレナスに、考え直してくれるよう言い続けるプリシス。

 

「いつでもいいから、誰にも会えなくっても、来たくなったらすぐに来なよ! またいつか、エクスペルに──」

 

 アリューゼ達三人が待っている中。

 さっきと同じく静かに聞いていたレナスは、プリシスが声を詰まらせたところで、さっきとは少しだけ違う反応をしてみせた。

 

「ありがとう」

 

 と穏やかに微笑んで一言。

 それから、

 

「みんなのこと、この世界のこと。私もずっと、忘れないわ」

 

 最後にそう言って、レナス達四人はみんなの前から姿を消した。

 




エピローグ前半終了。
次回で完結です。
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