定食屋兼居酒屋の店主になった俺の店に知り合いばかり来店するんだが   作:やましょー

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笑顔1回がチョコバー2000本分相当の価値があるとか言うけど実際にチョコバー2000本用意されたらチョコバー2000本の方が嬉しいんじゃないかと少なからず思う。

本とカレーが有名な街、東京都の千代田区神田神保町の一角に佇む昼は定食屋、夜は居酒屋と二つの顔を持つ店『あみーご』を若くして継ぐことになった俺、『筑波 隼人(つくば はやと)』は定休日だった今日、一日中料理の幅を広げる為に厨房に立っていた。

 

「隼人〜。こっちは明日の準備終わったぞ」

 

「すみません光太郎さん。定休日なのに手伝って貰って」

 

「いいっていいって。どうせ家にいてもすること無かったし」

 

俺の二つ上の先輩で『あみーご』のバイトの一人である『沖 光太郎(おき こうたろう)』は無邪気な笑顔を俺に向けた。聞く所によると中学高校と勉強しなくても授業を聞いているだけでテストの点数が取れるタイプの人らしく大学でも暇を持て余しているらしい。なのでバイトの中でもぶっちぎりでシフトが入っており、定休日でも顔を出しに来る時があるのだ。

 

「大学生って楽しそうですよね。高校生の時はまさか店を継ぐことになるなんて想像もしてなかったですよ」

 

暇な光太郎が少し羨ましく思わず愚痴が漏れてしまう。

 

「まぁな、でも俺からしたら店を継いでちゃんと働いている方が楽しいと思うけどな」

 

「確かに楽しいですよ。こうやって新しい料理を身につけている時には。でもそんな時に限って来るんですよ」

 

「あ〜もうそんな時間か」

 

光太郎が時計を見ると時計の針は7時半を指していた。バイト仲間の間でも誰もが知っている話がある。定休日だと分かっているからこそこの店に来る客が9人いると。その次の日は決まって隼人の調子が悪くなると。店の引き戸が勢い良く開き、そして今日もその内の一人がやって来た。

 

「あ〜疲れた〜!隼人くん!いらっしゃいました!」

 

来た。しかも一番疲れる相手が、3年前第2回ラブライブにて優勝を果たし一世を風靡したスクールアイドルμ'sのリーダーだったが、俺からしたらまるで何処かの海外に行けば日本の気温が下がり向かった地域の気温が上がる某元テニスプレイヤーぐらいの熱さぐらい面倒な俺の幼馴染の高坂穂乃果がやって来た。

 

「いらっしゃい」

 

「うるさい」

 

光太郎さんとは違い俺は穂乃果の方を向かずに言った。

 

「ええっ酷い!穂乃果はお客さんだよ!お客様だよ!お客様は神様だよ!」

 

「その考え古い。んな事言ってるとこの店出禁にするぞ」

 

「そ、それだけはダメだよ!ごめんなさい!」

 

穂乃果は謝りながらテーブル席に座った。はぁ、どうしてここまで元気なんだろう。高校の時も笑顔が絶えなかった印象があるが疲れないのだろうか。別に笑顔が嫌いな訳ではない。イギリスの研究者によると1回の笑顔はチョコバー2,000本分相当の価値があると言われている。だけどぶっちゃけ穂乃果のファンの人には悪いがもう見慣れた所為かチョコバー3本分ぐらいの幸福感しか得られない。おっと話が逸れたが兎に角幼馴染だろうが店に来たからには客なのでおしぼりとお冷を出す。

 

「まぁいい。で、ご注文はどうされますか?お客様?」

 

「隼人くんごめんだって。穂乃果が悪かったです!」

 

俺たちのやりとりを見かねた光太郎さんが穂乃果のフォローに回った。

 

「隼人も許してやれよ。穂乃果ちゃんも大学で疲れているんだから」

 

「光太郎さん、お久しぶりです。絵里ちゃんが何時も楽しそうに光太郎さんの事話してくれますよ」

 

「え?絵里が?全く…」

 

この文字だけを見たら怒っているかもと思う人がいるかも知れない。でも目の前の光太郎さんはニヤけまくっていた。

 

「ゲフン!ゲフン!光太郎さんそろそろ上がった方がいいんじゃないですかね」

 

わざと咳払いをして光太郎さんに惚気話をさせないようにした。光太郎さんの唯一俺が苦手な所。それは彼女でありμ'sのメンバーの1人である絢瀬絵里に対して甘いという事だ。実際どら焼きのガムシロップ漬けぐらい甘いと思う。

そして絵里さんも光太郎さんに甘い。前に二人が店でいちゃいちゃし始めた時には見ているだけで胸焼けがする程いちゃいちゃしていた。勿論その後1ヶ月間2人揃って店に入る事を禁止しておいた。

 

「そうだな。絵里ももう直ぐ帰ってくる事だしじゃあまた明日!」

 

「本当にあれさえなければ良い人なんだけどなぁ」

 

「あはは、そうだ隼人くんは何作っているの?」

 

「ん?今は昨日テレビで観たピカタが美味しそうだったからメニューに追加できたらいいかなって思って作ってみてる」

 

「ピカタ?」

 

「ピカタってのはうす切りの肉を小麦粉と卵液の衣で包んで焼いたイタリア料理の事だ。肉以外にも魚や野菜を使う場合もあるらしい。味は唐揚げに近いけど油で揚げずに焼くからヘルシーだな」

 

「じゃあそれ頂戴!」

 

「おっけ。ちょうど味見して欲しかったからな」

 

「じゃあ後生一つ!」

 

「はいはい。わかったよ」

 

予め食べやすい大きさに切っておいた鶏もも肉と鶏胸肉に塩胡椒を振り下味をつける。鶏もも肉に小麦粉をまぶし、鶏胸肉にはカレー粉を混ぜた小麦粉をまぶす。そして二種類の鶏肉を溶き卵にくぐらせフライパンで焼いていく。

 

「うわぁ〜良い匂い」

 

匂いと油の弾ける音が胃袋を刺激する。穂乃果の顔を段々とだらし無くなってきた。

 

「うへへ〜隼人くんまだ〜?」

 

「ほい出来たぞ。こっちは塩胡椒だけで味付けした鶏もも肉のピカタで、こっちはカレー粉を使った鶏胸肉のピカタだ」

 

穂乃果に二種類のピカタと白ご飯に生ビールを出した。

 

「じゃあ…いただきます!」

 

先ず穂乃果は鶏もも肉のピカタを食べる。鶏もも肉はからあげでよく使われ、ほどよく脂がのっているので脂身と赤身のバランスが程よくお肉のジューシーさが堪らないはずだ。

 

「う〜んやっぱり隼人くんの料理は美味しい〜」

 

次に穂乃果が食べた鶏胸肉のピカタは淡白であっさりとしており鶏もも肉の様に塩胡椒だけでは物足りないと感じると思いカレー味にしてみた。カレー味にする事で淡白さを補う事ができるはずだ。

 

「ふえぇ〜美味しい〜」

 

先程穂乃果の笑顔は見飽きたと言ったが美味しそうに料理を食べている時の笑顔だけはいつ見ても良い笑顔だと思う。やっぱり自分の料理を食べてくれた人が笑顔になってくれるのは嬉しい。料理人冥利に尽きるってやつだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すぅ…すぅ…」

 

「こうなると思ったわ」

 

あの後追加で更にビールを飲んだ穂乃果はテーブルに突っ伏して酔い潰れて寝てしまった。疲れているのもあったのかも知れない。俺がここで働く様になってから2年間殆ど穂乃果達と店以外で会っていない。なのでみんなが何をしているかもざっくりとしか知らないし集まりがあったとしても顔を出せないでいた。

 

(穂乃果も頑張っているんだもんな)

 

ここで寝させておくわけにもいかないので穂乃果を俗に言うお姫様抱っこをして2階にある自分の部屋のベッドに連れて行く。

 

「今日もソファーで寝ないといけないのか…」

 

そんな隼人の顔は疲れは見えず少し嬉しそうな顔をしていた。




この作品は作者の殆どない料理知識をフル活用している作品です。なのでこんな料理がありますよ、こんな料理どうでしょうなどの意見が貰えると大変ありがたいです。
それでは最後まで読んで頂きありがとうございました。
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