selector infected WIXOSS―torture― 作:Merkabah
プロローグ
────今日は満月だ。
もう雪が降り注いでもおかしくない外の街を一人歩く少女は白い息を吐きながら思いふける。
すれ違う人々は仕事終わりやら部活終わりで溢れていた。それは当たり前の事だ。
帰れば家族が待っていて暖かい部屋にご飯があるだろう。
それが当然だと思ってる人達で溢れるこの街を私は少し嫌いだ。
苛立ちから制服のポケットに入れていた右手を出しつい親指の爪を噛んでしまう。
『........またイラついてるの?』
ボソッと囁くような声で私に声を掛けてきた。
「えぇ、この時間に外を歩いているとイライラしてきてね」
真っ赤なリボンを左右に髪留めと使用している少女は小声で返答しながら噛むのを止めない。
『菌が入るから止めたほうがいい....』
「はいはい。分かりましたよ私の大切なパートナー様」
気が触る言い方をすると口元から親指を離しポケットへと入れ戻した。
しばらく歩いていると人気ない公園にたどり着いた。
朝から夕方は近所の子供達の遊び場になっているこの場所に少女は呼び出されていた。
周辺を見渡し付近にあったブランコに座りゆっくりとこぎ始める。
『まだメールの相手は来てないの....?』
「まだみたいだね。巡回してる警察に見つかったら面倒だから早く来てくれるとありがたいけど....ん?」
視線を左の街灯へ向けると見慣れない制服姿の少女がゆっくりとこちらに向かってくる。
「やっと来たか....」
ブランコから「よっと」と言いながら私もその少女へと歩いて行く。
腰の左側に取り付けていたデッキホルダーから裏面白いカードを一枚取り出す。
表面を見ると猫耳のような大きな耳を付けた女の子が面倒くさそうな顔をして私を見ていた。
名前表記は『ミュウ』と書かれている。
「よく私が『
相手の顔は街灯より後ろにいるため顔はよく見えないが質問してみる。
「え、SNSであなたがそれぽいっ事を呟いてたし....後風景の写真を見てここって分かったから近所の人なんだなって....」
胸の前に手を当て答えるその言葉は震えていた。
「わざわざ私の場所を探すだなんて努力家だね。それとも焦ってるの?」
右足を前に出し一歩踏み出す。
「そ、それは........」
「一回?」
左足を踏み出す。同時に私は相手の反応を観察する。
「............二回負けたのか」
私は顔伏せていた少女の前まで距離を詰める。手に持っていたカードを一度しまい、その少女の頬にそっと両手で触れる。
体が震えている。この震えは寒いから?それともこれから始まるバトルに怯えているから?
きっと私の手も冷たかったのだろう。触れた瞬間、体がピクッと反応した。
顔がよく見えるようにクイッと上げると涙ぐむ綺麗で大きな瞳が私の瞳に映り込む。
私の全身が一瞬ゾクッとした。
恐怖ではない。相手に同情をしているわけでもない。
私の感情が昂り"興奮"し始めている。
頬触れていた手は相手の黒髪をサラッとなぞるようにして離れた。
「それじゃ始めようか」
五メートルほど距離を空けて再度ルリグカードである『ミュウ』を顔の前に出す。
私は目を閉じて顔を俯かせ相手の返事を待つ。いや返事は決まっている。
........どうせ何を言っても無駄だ。
過去にもこんな人達を何度も見てきた。相手にしてきた。
その度身体は火照っていき更なる快感を求めてしまう。
相手の願いや都合なんてどうでもいい。一々気にしていたらキリがない。
彼氏が欲しい。喧嘩した友達と仲良くなりたい。成績が良くなりたい。部活で優勝したい。
その程度努力をすれば叶うのに何故ルリグに頼ろうとするの?
どんなに努力しても手が届かない私の願い。
それは────姉に────る
「............ちっ」
空いた左手の親指の爪をパキッと噛み潰す。
「バトルします....!」
相手もカードを顔の前に出し私に見えるようにする。
そして息をスゥと吸い込み........
『オープンッ!』
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『プロローグ』END
........つづく。