selector infected WIXOSS―torture―   作:Merkabah

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『この出逢いは必然《前編》』

────夢の中で私は一人の女の子とお揃いのリボンを髪に結びあっていた。

 

その女の子の髪は私より長く、腰まで届かないほどで暗めのブラウンカラーだ。

 

女の子の後ろから左側をまとめるのに手間取っている私は涙ぐんでしまう。これでは困らせてしまい迷惑がかかるから。

 

横目で見ていた女の子は私の手を優しく取り、「わたしがやるから泣かないで」と微笑みながら器用に髪をまとめた。

 

終わった後すぐにまたリボンを取り私に手取り足取りゆっくりと教えてくれた。

 

その姿を見て私もこの人のようになりたい。その当時は憧れの存在だった気がする。

 

その数年後、あいつは逃げ出した。何も言わないで。

 

それから心の中で憎しみが生まれた。

 

........姉を............許さない。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・

 

「................う」

 

瞼の上に朝日があたり意識が目覚めた。

 

まだ脳が寝ぼけているが上体を起こして周りの景色を見て理解した。

 

「............ソファーで寝ちゃったのか」

 

昨日帰宅後すぐ着替えもせずソファーで横になった自分を思い出し今着ている制服の匂いを鼻で嗅ぐ。

 

「臭くはないけど、シワが出来ちゃってるなぁ」

 

意識がまだハッキリしていないが立ち上がり身体を伸ばす。

 

「んっーー」

 

全身を使って息を吐き出す。とりあえずお風呂に入らなくては外に出られない。

 

風呂場へと行動しようとした時、腰に巻いていたベルトとそれに取り付けているデッキケースの存在を思い出す。

 

「ミュウおはよう」

 

ベルトを緩め外している最中、中に着ていたシャツがめくれ肌に痕が残り赤くなっていたが気にせずデッキからミュウのカードを抜き取る。

 

『............寝心地さいてーだった』

 

「ねこは狭いところが好きだからよかれと思ったんだけど。ダメだった?」

 

『........』

 

「............ごめんなさい」

 

カードの前で頭を下げる姿は絶対に情けなく見られるだろう。

 

頭を上げミュウの様子を観察する。

 

不機嫌そうに私に指をさしてきた。

 

『時間』

 

「時間?........あっ」

 

昨日の放課後遊月と約束していたのを思い出しすぐさまソファーのそばに掛けていたコートから携帯電話を確認する。

 

6時59分と液晶に表示されている。十分前や五分前に遊月からの不在着信が数件履歴に残っていた。

 

「あちゃー。今から向かっていっても遅刻確定か。メールを送って先に向かってもらおう」

 

『............』

 

もう一方の手で握っていたミュウは何か言いたげな顔をしていた。

 

「笑いたいならどうぞ」

 

『ぷっ』

 

「お尻で答えた?」

 

『口で笑ったの............そんなことより............随分うなされていたけど............姉の夢でもみたの?』

 

「............」

 

眉をピクリと動かし口を開かずにいるとすぐにミュウは反応する。

 

『図星............大体貴女がうなされている時は姉が関わってる時くらいだからわかる............』

 

「はぁ。見透かされるなんて私もちょろいわね」

 

携帯電話をコートの上に放り投げる。

 

「寝言聞いた?」

 

『さぁ............ここで聞いてたなんて言ったら貴女はどうする?』

 

歩きながら顎に手を当てて考えるフリをする。

 

「他のルリグだったら破り捨てたわ。でも、あなたは私の大切なパートナーだからそんなことしない。うん本当に」

 

冗談ぽく言うがミュウの顔は微塵も笑っていない。長年私のルリグを務めているだけあり以心伝心とまではいかないが、そこの所は分かっている。

 

『無駄話してると時間なくなる............』

 

「はいはい。すぐに仕度して遊月達と合流しないとねー」

 

脱衣所へカードを持っていくと濡れてしまう恐れがあるのでいつものテーブルにカードを置いた。

 

 

・・・

 

 

ミュウは桃香がお風呂に入っている間テーブルの隅に置かれていた写真立てに目が行く。

 

『............』

 

父と母、二人の間に幼い頃の桃香。小学校低学年の時に撮ったものだと思う。

 

無邪気な笑顔でピースをする至って普通の女の子。

 

でもその写真には違和感があった。

 

父の膝あたりに小さな手が写っているが人の姿はない。

 

彼女の性格から察するにそこには姉がいて切り取った気がする。

 

『よく見るとハサミかカッターで切った跡がある........』

 

紙など切った際出る微妙な切れ端が僅かに残っていた。

 

『............このまま.......夢限少女になってしまったら............』

 

私は彼女の願いを叶える立場。同意してしまったからには二人三脚で闘い続けなければならない。

 

本当にそれでいいのか。

 

『顔を合わせて話せば何か違う道が見えるかもしれない........でもこの街での目撃証言はゼロ............』

 

桃香はセレクターバトルをしながら聞き込んでいる。

 

姉がセレクターという真相は不明だがお揃いのリボンを今でも付けているならいずれ会えるはず。

 

それが何年、何十年かかるかわからないが桃香は死ぬまで追い続けるだろう。

 

 

「ふぅー上がったよー」

 

私のご主人様が戻ってきた。この件は一旦保留にしておこう。無駄に感の鋭い彼女に疑われたら何をされるか分からない。

 

「次入る?」

 

『................』

 

櫛で髪をとかしながら冗談を言うが聞き流す。

 

「パパッと準備してレッツゴー」

 

そそくさと左右の髪を結びお気に入りのリボンの位置を手鏡で調整しカード(私)を人差し指と中指の間で挟む。

 

「今日から酷な事をするけど我慢してね」

 

『............いつもの事じゃない。今更』

 

「........」

 

静かに私を撫でると暗闇のデッキケースの中へと仕舞った....。

 

 

・・・

 

 

 

桃香は朝の通勤ラッシュの時間の電車の中でもみくちゃにされながらやっとのことで降りることが出来た。

 

「最悪....熱気と人の多さに朝からもう疲れた」

 

駅のホームを出て太陽に当たりながら着ていたコートを整える。

 

携帯電話で遊月に連絡をして目的地の地図を貰った。

 

「学校じゃなくて傍でやってる建設中工事現場ってどこよ」

 

文句を垂れるが遅刻した私が悪い。

 

歩いていると違う学校の生徒達とすれ違うが時々視線を受ける。

 

昌が通う学校前に近づくにつれ歩く人の数も増えていく。

 

他所の学校の生徒が登校時間にこんなところにいたら確かに変だ。

 

学校の校門前を通り過ぎて謎の緊張感が解ける。

 

「はぁ........」

 

爪を噛もうとした矢先曲がり角から人が飛び出してきた。

 

「ひゃ!?」「きゃっ!」

 

避けきれず衝突してしまう。

 

「だ、大丈夫!?ごめん、よそ見してたらから........」

 

よろける程度で済んだが相手は両膝をコンクリートの地面についていた。

 

「怪我してない?」

 

ハンカチを取り出し差し出す。が髪の長い女の子は顔を上げてくれない。

 

同じ目線の位置になりようやく顔を見れたがその目から大粒の涙が零れていた。

 

「ごめんなさい........ごめんなさい........」

 

「ちょ、ちょっと?」

 

応答に応じない上何度も謝り続ける。

 

ふと、両腕でガッチリと抱き抱えている緑色の物に視線がいく。

 

(あれは『GREEN WANNA(グリーン ワナ)』のデッキケース........まさかこの子セレクター?)

 

この状況で聞くわけにもいかず彼女が落ち着くまで傍にいることにした。

 

歩行者の妨げにならない建設中と書かれた看板裏に彼女の肩を持ち壁に寄せた。

 

「........遊月に遅れるって伝えないと」

 

携帯電話を出そうとした時、工事現場の暗い物陰からゆっくりと足音が聞こえ顔を向ける。

 

「あれれ~?ひっとえ~まだいたんだ~」

 

「晶....」

 

予想以上に甘ったる声で顔をしかめてしまう。

 

モカオレンジの様な髪色にカールが少しかかった長い髪を指でクルクルといじっている。

 

蒼井晶(あおい あきら)』は髪をいじるのをやめて私に指をさす。

 

「ねぇねぇ君もセレクター?」

 

返答せず目線を合わせたまま黙っていると。駆け足でしゃがんでいた私の前に移動し小さな顔が一気に近づいてきた。

 

思わず体を引くが晶は気にもしていない。

 

「よくみるとあの三人と同じ制服だぁ。ねぇねぇメアド交換しない?セレクターじゃなかったら消すし」

 

左手に持っていた携帯電話を見せびらかしてくる。

 

「私携帯持ってないんだ。セレクターだけど」

 

「うっそ!またまたレアキャラ?........そのポケットに入っている手は何かな~?」

 

「あっ」

 

コートに入れていた右手を無理やり取り出され携帯電話の存在がバレた。

 

「はい交換。赤外線でいいよね?」

 

「........ネットにアドレスばら撒くかもしれないけどいい?」

 

「やぁんこわ~い」

 

駄目だ。余計に腹が立ってくる。

 

お互い送信終えると近くにあった顔がようやく離れ晶は私に笑顔で手を振り去って行った。

 

「じゃあねモーモー!」

 

「私は牛じゃないっ!この............っち」

 

立ち上がり何か言おうと思ったが、晶の姿遠くに行き小さくなっていくのを見て暴言を吐くのをやめる。

 

一難去ってまた一難、また足音が聞こえ呆れながら後ろへ振り返る。

 

「みんな........」

 

るう、遊月、香月くん達が疲れた顔で現れた。

 

「あっ桃香!今来たのか!?」

 

遊月と香月くんが駆け寄ってくる中るうは顔を俯かせていた。

 

「....今勝負したのってるう?」

 

「彼女だよ」

 

香月くんは座り込み泣き続けている女の子を見る。

 

「あんなの酷いよ........」

 

るうの悲しみが混じった言葉に二人は視線を地面に移す。

 

どうやら晶と彼女のセレクター同士の闘いで嫌な印象を受けたらしい。私としては好都合でしかない。

 

「ふぅん」

 

素っ気ない返事をするとるうは顔を上げて一歩踏み出してくるが横から遊月は手を取り、

 

「それより遅刻するから急ごう!」

 

「う、うん........」

 

「桃香さんはどうする?」

 

「私は....もう少し彼女のそばにいる。ぶつかった時に怪我してないか気になるし」

 

「わかった。それじゃまた学校で」

 

走っていく三人を見送りまだ涙を流す女の子の隣に座り声をかける。

 

「晶に何をされたの?」

 

「........私のせいで緑子が........」

 

「ボロボロになるまでバトルしてくれたルリグに感謝しなきゃいけないよ?」

 

髪の隙間から覗かせた肌からつたる涙を拭う。

 

「あの....ありがとうございます」

 

「やっと顔見せてくれたね」

 

大きな眼鏡をかけた女の子は恥ずかしそう頬赤らめまた顔を俯かせた。

 

「ねぇあなたの名前は?私は『水無月 桃香(みなづき ももか)』」

 

「えっと『植村 一衣(うえむら ひとえ)』です....」

 

怯えているのか人と接するのに慣れていないのか分からないが話しながらでも一衣はビクビクしている。

 

「一衣か、こんなところで座ってるのもなんだし近くの喫茶店に行かない?」

 

「こ、これから学校に........」

 

手を取り一緒に立ち上がる。

 

「今から行って遅刻で怒られるくらいならサボった方が気が楽だよ」

 

「で、でも....さっきいた人達が待っているんじゃ....」

 

携帯電話を出し親指で液晶をタッチして打ち終えた画面を一衣の顔の前に出す。

 

「『今日は休むから先生に言っておいて』....遊月さんってあのパーカー着ていた人ですか?」

 

「そうそう。友達の遊月」

 

「友達........」

 

空いていた手が、胸の前にいくと強く何かを握りしめるような仕草をしていた。

 

すると顔を上げて何かを決断した顔つきに変わる。

 

「あ、あの!」

 

「ん?」

 

「友達になって下さい!!」

 

「うん。いいよ」

 

「やっぱり嫌ですよね。いきなり........え」

 

一衣はまた泣きそうな顔をしたかと思えば驚きの表情に変化する。

 

私は握っていた手に少し力をいれる。

 

「よろしく。一衣。私の事は桃香でも何でもいいよ。そうだ!あだ名つけた方がいい?ひっとえんどらーん!とか」

 

 

『サムッ....』

 

これまでずっと黙っていたミュウが小さな声でツッコミをいれてきた。

 

カードを取り出し紹介する。

 

「これは私のパートナー『ミュウ』。いつも寝ているグータラルリグ」

 

『よろしくヒットエンドラーン........寒い。寝る』

 

「寒いなら私が摩擦で暖めてあげる」

 

『カードが折れるからやめて』

 

「それそれ!」

 

私とミュウのやり取りを見て一衣の顔に笑顔が戻っていく。

 

セレクターバトルで負った傷を簡単に癒すことは難しい。私も一度負けた事があるからその気持ちはよく分かる。

 

だからこそ、一衣の様な少女がふさぎ込んでいるのを見ていると夢限少女なんか諦めて舞台から降りて欲しい。

 

「........あのさ一衣」

 

ぽつりと名前を小さな声で呼ぶ。

 

「はい?」

 

「初対面で出会って数分しか経ってないけど........ルリグを私に渡してくれない?」

 

「えっ............?」

 

動揺しながら私から距離が離れる。

 

「いきなり変な事言ってるのは私でも自覚してるし、ルリグを奪う為に友達になったわけでもない」

 

「むしろ心配で、一衣みたいな純粋な子はセレクターに向いていない」

 

「............」

 

ただ黙って聞いてる一衣の肩を両手で掴む。

 

「今すぐセレクターをやめて、普段通りルリグのいない生活に戻って欲しい........。じゃないとこの先最悪な人生になるから!」

 

 

脳裏に残っていた記憶が蘇る。

 

あれは数ヶ月前、一人の少女が私に挑んできた。願いは『頭がよくなりたい』と努力すれば叶う簡単な願い事だった。

 

いつも通りバトルし勝つと負けた少女は三回目の敗北でセレクターとしての資格を失い、絶望し真っ青な顔で走り去っていった。

 

........その翌日、ニュースで交通事故にあい記憶喪失で入院に見舞われたと報じられた。

 

ミュウからは敗北した者には代償で願いの反転が生じると告げられた。

 

その言葉の後、

 

勝利して夢限少女になった者はルリグと入れ替わり、他のセレクターの下バトルをする。

 

願いを叶えるの勝者の身体を使ったルリグ。

 

元は普通の少女だったルリグが外から出たくて、一方的に願い事を要求するというケースも多いらしい。

 

終わりの見えない連鎖になっている事も全て教えてくれた。

 

 

その時既に一度負けていた私は淡々と説明してくれた、ミュウに怒りをぶつけたり、嘆いたりせず寧ろ笑みを浮かべていた。

 

純粋な心なんて選ばれた時いや、二年前から捨てていた。

 

負けた者に同情するなんて有り得なかった。勝ってルリグになってもルリグが悲願を達成してくれるなら文句はない。

 

ただただ腹の底から笑っていた。

 

 

........でも、友達のるうと出会ってから心が揺らぎはじめている。

 

タマを手にした時、私はどんな手段を使ってでもるうを守ろうとした。資格を剥奪しようとした。

 

偽善者と言われようが構わない。

 

いつか私と闘う日が来るより何倍もましだから。

 

大切な友達が目の前で勝っても負けても嘆くなんて見たくない。

 

「............」

 

セレクターバトルの真相を話そうとしたが一衣は私の手を取って握る。

 

「桃香さん、心配してくれてありがとう」

 

微笑み理解してくれたかと思った

 

「でも、私緑子がいないと弱くて意気地無しでいつも下ばっかり向いて歩いているからまだ手放せない。それでも、いつか手放す時が来たら桃香さんに渡します」

 

「........それじゃ駄目だよ........」

 

いつかじゃなくて今すぐカードを手放さないと....。

 

手を離され一衣は頭を下げてくる。

 

「やっぱり私、学校に行きます。........それと迷惑じゃなかったらメールアドレス交換して貰えますか?」

 

・・・

 

 

一衣と別れてから何時間街を放浪していたか記憶ない。気づけばマンション近くの公園のベンチに座り空を仰いでいた。

 

耳に入るのは公園で遊ぶ幼い男女の声。学校で授業を終えた小学生達がはしゃいでいる。

 

体をベンチに預け目を閉じて物思いにふける。

 

「どうして皆セレクターを続けようとするんだろう」

 

いっその事このバトルに隠された裏側をSNSでばら撒いてしまえばいいのか?

 

「一人が活動したところで妄想ですまされるしなぁ。誰かテレビに出てるセレクターが発言したら変わるんだけど」

 

知り合いに有名人なんて一人もいない。いるはずがない。

 

「クソッタレ!」

 

汚い言葉を吐き捨て目を見開き頭を上げた時、

 

「いたっ!!」「ひゃっ!?」

 

何か硬い物とぶつかり鈍い音が頭の中で響いた。

 

ベンチからフラフラしながら離れぶつけた物を目視する。

 

「げっ、蒼井晶........」

 

涙目でおデコをさすってる辺りお互い同じ箇所に怪我を負ったようだ。

 

「モーモーいきなり攻撃しかけてくるなんてひーどーいー。私が悪戯しようと思ったのに~」

 

「なら仕掛けて正解だった」

 

サラッと悪意を働こうとしていた晶を妨害できて良かったと胸をなで下ろし、用件を聞く。

 

「何でここにいるの?」

 

私の前に来て携帯のメール画面を見せられる。

 

「え~?メール見てないの?」

 

コートから携帯の電源を押してみるが反応がない。

 

「電池切れになってた」

 

「そっかー。モーモーと同じ制服着たあの子にも沢山メール送ったのに返事来ないし....あきらアンラッキー?」

 

朝の事を考えるに遊月だろう。るうは携帯電話を持っていないし。

 

「私も晶と出会ってアンラッキー」

 

「はぁ?」

 

唐突にボケてみたが眉間にシワを寄せて失笑される。

 

「とにかく今からモーモーの学校に行くから一緒に来てね。私一人だと心細いから」

 

手を取られそうになるが腕を振り回避する。

 

「ちょっと~?」

 

「携帯のナビで行けばいいじゃん。私は帰る」

 

背を向けて歩き出す。

 

すると前に回り込まれ顔を覗かれる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「あの子のいたぶられる姿を見たくないんだぁ?」

 

「........友達だからね」

 

「やぁん、モーモーは友達思いなんだぁ!」

 

クネクネと身体を動かす晶に呆れため息をこぼす。

 

「そうそう。それじゃ」

 

「............」

 

晶の横を通り過ぎた直後、ドスの聞いた声が私の耳に入りまた目の前に来て胸ぐらを強い力で掴まれていた。

 

「気取ってんじゃねぇよアマッ!」

 

先程の笑顔から一転して、怒りに満ち溢れた顔で私を睨みつける。その間にまた力がはいる。

 

動揺することなく顔を背け鼻で笑う。

 

「それがアンタの本性か。随分とまぁ....汚い言葉を吐きますねぇ」

 

さっきまでの蒼井晶は営業スマイルみたいなもので胸ぐらを掴んでいるこいつは化けの皮が剥がれた本当の蒼井晶。

 

 

この場に遊月やるうが訪れ無いことを祈りながら晶の対応を考えた........。

 

 

 

『この出逢いは必然《前編》』end

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