国害指定堕落都市   作:tesorus

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早月ちゃんメインの話だと、何故か書くペースが早くなるここ最近。


革命軍と蝶兵少女

場所はサウス・メトロポリスの郊外。天気は曇り。

 

「お前、バタフライの生徒だな?悪いが、俺たち革命軍の餌食になってもらおう。」

 

バタフライの兵士、雨森早月の目の前に居るのは、ダメージジーンズと黒いTシャツを着た、スキンヘッドの身体つきの良い男。男は赤いオーラを見にまとい、右手を血に染めている。

 

そして、その右手の先には、バタフライの赤いネクタイが垂れている。恐らく、彼らの革命の犠牲となった、バタフライの学生のものであろう。

 

「餌食?ふうん。まあいいや、バタフライに逆らうなんて、まるでラビットみたい。ま、あいつはバタフライの子殺したりはしないけどね。君はラビットの仲間?」

 

「ラビット?ああ、川崎リーダーが言っていた、リーダーの仲間か。だが、今は付き合ってないって言ってたぜ。まあリーダーは、敵兵を生かしておく、あんな甘ちゃんとは違うからな。敵は倒す。それだけだ。」

 

「あっそ。じゃあさ、君、闇切刹那って子は知ってる?」

 

「さあ、そいつは知らねえな。少なくとも、俺らの仲間じゃねえ。なんだ?そいつも、ラビットとか言う奴の革命軍の一人か?」

 

「知らない。まあいいや。君の理論なら、私が君を殺しても、何の問題もないよね。じゃあ、背中に赤い十字架背負って死のっか?」

 

赤い十字架、と言うのは、蝶への反逆行為を行った人間が殺されたときに背中につけられる、赤い×印のことである。国際連盟が運営するバタフライでは、基本的に、バタフライに反逆する反社会勢力の処刑をする際、正規な手続きを不要とすることができる。

 

故に、その切れ込みを、同じ刃型が一切存在しない、バタフライの生徒しか持たないナイフで入れれば、その人間は、国の死刑による死亡として扱われる。

 

赤い十字架、と言うのは蝶狩りと同じく、一部の人間しか知らない通称だが、この行為自体は、蝶狩りとは違い、一般常識レベルで、民衆に知れ渡っている点で、それとは大きく異なる。

 

まあ、スキンヘッドの男は、その通称を知っている。故に、男はそれを聞いて、酷く腹を立てた。

 

「…舐めるのも大概にしろよ。教えてやる。俺は蝶狩りで妹を失ってから、蝶への復讐者として生きてきた。今までお前の仲間を何人も殺してきた!そして、川崎リーダーの元で誓った。お前達が百人狩れば、俺たちは二百人、バタフライの人間を狩ると!お前も、その一人になってもらう!」

 

「ふうん、じゃあ、君達のせいで、蝶狩りでは三倍の被害者が出てるわけだ…よし、じゃあ、そろそろ死のっか。」

 

彼女から大量のオーラが吹き出し、青い龍が天空に舞うと、天気が、曇りから土砂降りの雨に変わった。しかも、その雨は普通の雨ではない。雨は、革命軍の男の肌に当たると、男に激痛を与えた。簡単に言うと、空から画鋲の雨が身体にいくつも当たるようなイメージが良いかもしれない。

 

「くっ…痛え!畜生、酸性雨か!だが、こんな雨降らせば、お前だって溶けてなくなっちまうぜ!」

 

「いやいや、それは無いって。確かにこの能力「地獄雨」は、辺り一帯に酸性雨を降らすだけの能力。でもこの雨は、使用者の身体や服に当たると、ただの水になるし、周りの物や人に当たっても一緒。でも、その代わり、酸性雨に当たった時に、私以外の人間の皮膚に味わう感触は、実際に当たったときと同じものになるんだ。確かこの雨、空中では硫酸だったっけな?まあ、説明したとこで痛みが和らぐわけじゃ無いけど。」

 

早月の言う通り、男は痛みのあまり、我を忘れ、情けなくその場にうずくまった。

 

本来ならば、ここで彼女が、その場で彼を殺せば終わる話。だが、敢えて彼女はそうしなかった。

 

彼女は、本気で怒っていた。仲間を殺されたこと、それもそうだが、更に彼女が怒っている原因は、別にあった。

 

それは、彼の妹のことであった。バタフライの生徒は、今のところは、自分の意思で入った者はいない。皆、彼の妹のように、狩られて入ったものばかりだ。早月も、それに至っては例外ではない。

 

何故、そんな簡単なことが解らず、ただ独りよがりな正義を気取るのだろう。それが、彼女には不思議で仕方がなかった。

 

「…解らないの?被害者なんだよ。私だって、あなたが殺した、他の皆だって、君だって。まあ、だからって、私は夜に逃げた奴らと同じことはしたくないし、そっちにいたって、私はそんなことはしたくない。私の仲間達だってそう。皆、それでも前を向いて、置かれた場所で真面目に生きてるのに、どうしてそれが解らないの?…聞こえないか。」

 

彼女は、痛がる彼に向かい、そう呟いた。彼女はその時、哀しげな表情から一変し、彼は散々いたぶってから殺そうと、不敵な笑みを浮かべた。

 

彼女が、親指と薬指で指を鳴らすと、酸性雨は止んだ。すると男はしばらくして立ち上がり、黒い馬の守護霊と一体化し、早月に向かってきた。

 

しかし、そんな単純な一撃は彼女には届かない。本来ならば、バタフライとまともに戦っている相手ならば、打つはずがない戦闘手段である。先ほどの酸性雨の影響で、頭が上手く回らないのだろう。

 

早月はそれをひらりと交わし、彼の腹に拳を当てる。空を旋回していた龍は、彼女の元に舞い降り、彼女の中に入っていった。

 

「…逆鱗。」

 

彼の身を貫くほどの拳を、彼に食らわせる。彼はその場に倒れ、血を吐いた。

 

早月は彼の元に駆け寄り、今度は急所を蹴り上げる。彼の股間は裂け、血がそこから吹き出した。

 

彼は痛さに失神し、まともに口を聞くことができなくなった。彼女が、さっきの威勢はどうしたの?と聞いても、彼は答えない。

 

「…この右腕だね。この右腕が、みんなを痛めつけたんだね。」

 

彼の右腕を足で踏みつけ、へし折る。彼は喘ぎ声はあげるものの、それ以上の反応はしめさない。

 

「…次は左腕。」

 

今度は、彼の左腕をへし折る。今度も、彼は動じない。

 

早月は、だんだん、彼をいたぶるのがつまらなくなってきた。これ以上部位破壊をするのも面倒臭いどころか、もう赤い十字架を入れることも面倒臭く感じてきた。

 

彼女は、瀕死の彼をその場に寝かせ、その場から、刹那達が戦う場所へと去っていった。

 

「そうだね。天国で妹さんと逢えたら、しっかり謝るんだよ。じゃあね。」

 

彼がもう見えなくなるまで歩いた後、早月は守護霊と一体化したまま、流星群。と呟いた。

 

いくつものオーラの塊が彼の元に降り注ぎ、早月と彼が戦った場所は、巨大な穴だらけになった。

 

彼の身体は粉々に砕け、もう彼の死体すら見当たらなくなった。

 

 

 

 

 

 

「…くっ、まさか、本当にこのナイフが敗れるとはな。」

 

刹那の作戦、それは、彼本人を盾として、その攻撃をかわすことであった。ナイフは、無敵とは言っても、所詮は彼の守護霊の能力。彼の付近に逃げ込み、追跡すれば彼自身に被害が及ぶ範囲までこれば、彼のナイフは追跡してこない。

 

よって、接近戦に徹することで、そのナイフは無力と化す。

 

「なるほど…確かにそれならば、俺のナイフは避けられるか…」

 

「ああ。もし無力じゃなかったら、お前がナイフの餌食になるだけだからな。さて、今度はこっちの番だ!黒蚕……え!?」

 

刹那が、彼に攻撃を仕掛けようとしたその時、刹那は、彼の、悲しげな表情に気がついた。

 

いや、それだけではない。彼の目からは、少しだけ、涙らしきものも見える。明らかに、先ほどの彼ではない。

 

「……お前!」

 

「…解っていた。こんな戦い方では、お前らとは戦えない…」

 

「…どういうことだ?」

 

彼が刹那を見る目は、まるで、雛を守る、親鳥のようなものであった。彼は刹那の前で膝を折り、彼の前に這いつくばってみせた。

 

刹那は最初、彼の行動の意味が解らなかった。初めは、疲労で動けなくなったか、もはやこれまでと降参したのか。そんなことを考えていた。

 

しかし、どうもそんな感じには見えない。彼はまだ気力が余っていて、恐らく、接近戦で使える技も持っている。

 

その後、彼は、刹那から見れば恐るべきと言える、彼らの真実を話した。恐らく、刹那が自分達に何もしないことから、彼は、刹那がバタフライではないと見切ったのだろう。そこでようやく、刹那は彼の行動の意味がわかった。

 

彼はそれを聞いて、驚きを隠せず、また、不思議で仕方がなかった。バタフライの中にも、仲間の非道を許せぬものがいるのか。それが彼に対して、衝撃でならなかった。

 

しかし、その不思議を彼に話すほど、時間は残されていなかった。

 

刹那の背後に忍び寄る、大量の影。それにいち早く気づいたのは、青年の方であった。青年は、刹那と共に逃げるほど、時間は残されていないことに気づき、とある人間の名前を呼んだ。

 

「川崎!」

 

すると、彼ら二人は結界に包まれ、その場から姿を消した。一人残された刹那は、その大量の影…バタフライ兵達に囲まれた。

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ?何がどうなった?」

 

「なんだって、そりゃあ、守護霊の能力を使ったんだろうよ。じゃなきゃ、あんなことできる訳ねえだろ。」

 

「いやいや、奴ら、守護霊と一体化してなかったわよ?てことは、他の誰かの守護霊の力を借りたんじゃないかしら?」

 

「誰かって、誰?この目の前のガキか?それこそあり得ねえ。子供が、バタフライに反逆なんかするかよ。」

 

「でも、この一帯には、そういう奴もいるから、ひょっとすると、そいつらの仲間だったりするんじゃない?ほらほら、リペア先生が言ってた、ラビットって悪いやつも、まだ生きてるじゃん?」

 

「そうか、となりゃあ、殺っちまうか?」

 

バタフライ兵達は、刹那を取り囲みながら、そんなことを話している。なるほど、やはり青年の言っていたことは本当であった。彼らは、先ほどの青年を捕らえようと、町中の至る場所に居るらしい。

 

悔しいが、戦うしかない。刹那はそう思うが、その圧倒的な数を前にして、本当に勝てる訳がないと絶望した。

 

そもそも、相手の目を欺くことにその強みがある、ヤミギリの能力。これだけの数を相手にしていては、カラクリがバレて、すぐに仕留められてしまう。

 

そう思い、立ち竦んでいると、遠くから、援軍を連れてきたと、彼の聞いたことのある声がした。だが、彼が味方と思う人物ではなかった。

 

「何だ、随分と偉そうじゃねえか、一階。それに、援軍だと?今日来たのは、俺らだけじゃなかったのか。それも、何人かは反逆者の餌食って話じゃねえか。」

 

「うん。そうだったんだけどね。その話を聞いて、追加で行きたいって人も出てきてね。それで、先生から連絡受けて、すぐ向かって、今に至るって感じかな。それとさ、ここに来るちょっと前、その反逆者の一人を殺って来たんだけど……あれ?せっちゃん!奇遇だね。どうしたの?迷子?」

 

バタフライ兵、早月が刹那に駆け寄ると、周りのバタフライ兵は、なんだ、お前の知り合いかよ、と言って、彼から離れ、早月が連れてきた援軍と共に、別の場所を探しに走ってばらけ、その場に残ったのは、あの時と同じく、早月と刹那の二人になった。

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