国害指定堕落都市   作:tesorus

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侵略者の双璧

昼の11時過ぎ、場所はバタフライ達のアジト。鈴達は早月の居ない部隊がキャンプをしている場所まで来て、革命軍の手がかりを探っていた。

 

「…別に、あなた達を許した訳じゃないから。と言うか、革命軍を追い出したら、さっさと帰ってもらうよ。」

 

「分かってます。こちらの任務もこれっきりですから。まず、私達とは別の部隊がここに居ます。それで、この辺りはもう探しました。」

 

「…祠や村には近寄ってないわね。」

 

「はい。集落から許可が出ないうちは、住民に迷惑はかけないようにと先生から言われていたので、中心部は避けて奥を探しました。特に祠は神聖な場所だから、触らないようにした方が良いと申し出た生徒が居たので。」

 

「ふうん、あなた達クズの中にも、礼儀のある奴は居るのね。分かった。知ってるだろうけど、私は雨森鈴。何か解ったらここに電話して。」

 

「はい。ありがとうございます。」

 

冷たい瞳を向ける鈴と、できるだけ無礼のないようにしようとするバタフライの少女。二人の間には、まだ微妙な空気が流れていて、鈴はまだ白黒のオーラを纏う。

 

鈴は生徒に電話番号を渡し、三人はバタフライのキャンプを後にした。

 

「…やっぱり、村のことを一番知ってるのは長老かしら?」

 

キャンプが遥か遠くへ見えなくなった先に、イザナミは一言呟いて鈴の方を向いた。すると鈴はその意味を理解し、それはダメとため息をついた。

 

「…お爺ちゃんが知ってるなら、もうタツノオトシゴで知らせてくれているはずだもの。」

 

「あ、そっか。じゃあ探すしかないな。鈴、どこにいると思う?」

 

「そうだね。さっきのバタフライ兵のスカートの中。」

 

「えっ!?それは流石に…」

 

「冗談冗談。見つからないから、集落近くの森にいるのは確かだね。毒草もちょくちょく生えてるし、保護色になるんじゃない?」

 

まあ、確かに村にとってアンウェルカムだから、森の中にキャンプするしかないかと刹那は感じ、三人は森の中を探り始めた。

 

行けども行けども同じ風景。地中にはミミズが這い、蝉の奏でる旋律と夏の暑さが彼らの集中力を奪う。蚊達の飛び回る音もそれに混じり、聴覚、体感気温、両方が彼の体力をガリガリ削っていく。

 

刹那は、こんな場所に潜むのはやはり蝶だけだと弱音を吐き、そろそろ昼も近いし戻らないかと二人を誘う。二人も納得し、来た道を戻ろうとする。

 

しかし、来た道を戻ろうとしても戻れない。しばらく歩いても、蝉の音が煩く鳴り響くだけで、バタフライのキャンプや集落は見えてこない。完全に迷ったと確信したイザナミは、ロープを持ち出し、木に縛りつけて歩き出した。

 

こうしてマーキングしておけば、どこが通った場所かが分かる。イザナミのマーキングを元に、一同は歩き出す。

 

肌はシャワーを浴びたように汗で濡れ、汗の匂いと森の香りが乳酸を刺激する。光を遮る森林の下、彼らはついに森を抜けられぬ理由に突き当たる。

 

刹那達の前に立ちはだかる、白いロープ。それは紛れもなく、イザナミのマーキングのロープであった。

 

「これって…まさか!?」

 

「だね。同じ場所をぐるぐる回ってる。恐らく革命軍の守護霊に、私達まんまと嵌められてるよ。森は行けども行けども同じ道。同じ場所をぐるぐる回っていても、なかなか嵌められてるとは考えないからね。」

 

「そんな!?どうしたら…」

 

「大丈夫、私に任せな。」

 

自分達が罠に嵌ったことに困惑する刹那に対し、鈴は酷く落ち着いていた。それどころか、むしろ彼女は安心していた。自分達が幼い頃から見てきた常盤で迷うようなことがあれば、彼女の雨森の血がそれを許さないからである。

 

鈴は抑えていた白黒のオーラを再び纏い、量の手のひらを合わせ、静かに目を閉じ祈りを捧げる。白黒のオーラからは何匹もの蛇が生まれ、鈴の辺りを舞う。

 

「龍神の眷属様…我らに向かう災厄、正気を削る卑しき邪念をどうかお清めください!天界除厄災!」

 

龍神の眷属である蛇は、鈴の祈りと共に解き放たれ、絶望の光を持つ森にかかる闇を払う。すると、みるみる森は姿を変え、ついに守護霊使いの少女が姿を表す。

 

少女は半袖のシャツを着て、肩には彼女と守護霊と思われる生物が眠っている。

 

「守護霊キラー…驚いたね。あ、私は茜って言うんだ。守護霊使いの革命軍。もちろん目的はバタフライの殲滅。」

 

少女は微笑しながら、三人との間合いを詰める。能力がどのようなものか判らない以上、迂闊に向こうの誘いに乗らないのが一番だ。

 

刹那は、その状況ではそのようなことを考えていた。これは大半の人間が考えることであり、確実にブレーキを踏むのが正論である。

 

しかし、そんな中でアクセルを踏む人間が、近い場所に存在した。

 

森の中で対峙する、図体の大きい男とバタフライ兵の少女。テライは間合いを詰めつつ、彼女の様子を伺う。それに対してバタフライ兵である早月は余裕気に彼を挑発する。

 

「あれ、どうしたの?怖いの?そんなんじゃあ、いつまでたっても勝てないよ?」

 

彼女の挑発に対し、テライは表情一つ変えずに間合いを詰める。その距離は徐々に縮まっていき、ついには彼女と目と鼻の先になった。

 

単純に馬鹿なのか、それとも何か策略があるのか。そこでテライは迷っていた。もし馬鹿ならば、相手にすることはない。さっさと退けてしまえばいい。

 

だが、彼の戦士としてのプライドはそれを許さない。彼は不意に殺気を発し、彼女の喉元に拳をぶつけようとする。

 

しかし、その一撃は彼女には届かない。彼女は攻撃が届く直前に姿を消し、彼の周りの木々の間を高速で飛び回る。

 

「残念だったね、そんな攻撃は通らないよ。その程度でバタフライに刃向かうなんて、馬鹿じゃないの?」

 

彼女は飛び回る中で、何発ものフェイントと攻撃を入れる。しかし彼女の中にオーラは無く、全てを守護霊抜きで行っている。そのことはテライにも全て分かりきっていた。

 

「何の真似だ!守護霊抜きで、この俺を倒そうと言うのか!」

 

「いや?でも、君なんか、守護霊の攻撃を勘違いしてるお馬鹿さんには負けないよ?革命軍サブリーダー、重要指名手配犯のテライ・ハスループさん。」

 

早月は知っていた。彼が人並み外れた剛腕によって、何人ものバタフライの兵隊を葬ってきたことを。守護霊を使わず、力づくで守護霊使いを倒す彼の情報は、一夜にしてバタフライから全世界に流れ出した。

 

そして、その情報は早月も知っている。よって早月は、そこから素手で守護霊を返せるおおよその手段を考えついた。

 

恐らく、彼は守護霊の力を何年も浴び、その上で守護霊が繰り出すパターンや弱点を知っているのだろう。それで、本来ならどれだけの豪腕でも跳ね返すことのできぬ守護霊の力を防いでいるのだろう。事実、彼がこんな単調な攻撃を破って来ないのがその証拠。

 

もちろん、彼女の勝手な妄想だ。しかし、彼女の予測は恐ろしいほどに的中していた。

 

彼女は、その勝手な妄想を元に、その豪腕が跳ね返せぬ攻撃を繰り出す。

 

「守護霊の攻撃、そんなに自信あるなら跳ね返してみな!行くよ、龍神様!守護霊、雨雪龍レイン・アイ!」

 

早月は、彼の攻撃を注意しつつ青いオーラに身を包む。テライは自信有り気に拳を構えるが、早月はクスッと笑うだけで何も警戒しない。

 

「逆鱗!」

 

早月は強化された四肢と共に、木の様々な場所に複雑に動き回る。テライは必死でそれを追おうとはせず、ただひたすら守護霊の攻撃を待つ。

 

レーザー系なら、素手で跳ね返す。弾丸なら握りつぶす。飛び道具ならば耐えられる。

 

しかし、そんな威勢は無力となって消える。

 

「うっ……ぐは…!」

 

そして放たれた一撃。守護霊でガードしていないテライの身体には重すぎる一撃。まるで身体を大砲で撃ち抜かれたような痛みが彼を襲う。

 

「…ダメっぽいね。」

 

早月はしばらく、動かない彼に様々な尋問をしたが、彼は答えずに泡を吹く。せっかく期待していたのにと残念そうに、その場に倒れる彼に唾を吐いてその場を去った。

 

それからしばらくして、早月は森を抜け、街はずれの草原に出た。その草原には一人の7歳くらいの男の子がいた。

 

こんなに小さくても、やはり雨森の人間。男の子は、一目で彼女を雨森の人間だと確信した。しかし彼は、早月と同じ制服を着たバタフライの兵隊が森の中で何かをしている様子を見ていた。その後、彼は鈴に会って、その制服を着た人間を見たらすぐに大人の所へ逃げるようにと言われていた。

 

「お姉ちゃん…なんであの怖い人達と同じ服来てるの?」

 

彼の問いかけに対して、早月は彼に微笑し、彼をそっと抱き抱えた。彼女が彼の背中を撫でると、彼は不安そうに彼女にしがみつく。

 

「ごめんね、やっぱり怖がらせちゃったよね…でも大丈夫。終わったら、みんな居なくなるから。」

 

「…お姉ちゃんも?僕、まだ会ったばかりだけど、お姉ちゃんもここの人だって解るんだ。なのに…居なくなるの?」

 

「うん。私も、あそこの人間だからね…」

 

早月は、涙を浮かべる少年の耳元で、このことは鈴お姉ちゃんには内緒だからねと囁き、またどこかへ走って行った。

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