刹那達の前に立ちはだかる少女。彼女は自らの肩にかけた守護霊を口に近づけ、ぺろっと舐めた。
「深海皇子アノマロカリス。こいつの力は、そこら中に迷宮を作り人々を迷わす能力なんだよね。でも、もちろんこれ以外にも技はたくさんあるよ。てか、今の能力はテライに勝つ為に作った能力だからさ。」
あ、テライってのはうちのリーダーね。と彼女が付け加えると、イザナミはその言葉の矛盾に気づき、彼女の上げ足を取る。
「どういうこと?仲間同士が争って、何になるの?」
その言葉に対し、茜は仲間同士で殴り合っちゃいけないの?と笑顔で答え、この守護霊とか言う武器を使い、戦えるのならば、相手は誰でも構わないと彼女は笑みを浮かべた。
常盤茜の中にとって、正義味方と言った概念など大したことではない。戦えればそれで良いということが彼女の心理であり、己の欲望が達せられればバタフライが滅びようと、革命軍がつぶれようと構わない。
そもそも、彼女が革命軍に手を出した理由に際しては、バタフライなど全く関係していない。単に面白そうだったから。そんなところである。
イザナミはその事実に薄々気づくや否や、彼女を末恐ろしいと余計恐れた。理由としては、彼女は指一本でバタフライに寝返ることもあり、また彼女が快楽の為に人を殺めているのならば、和解などでは決して止めようがないからだ。
革命軍に深く身を委ねず、また好戦的でもある彼女は、バタフライ兵となるにせよ、革命軍との和解を受け入れない因子となりうる。
とにかく、今は戦うしかない。戦うことで彼女の欲望に応えねば、彼女は敵味方問わず手にかける。そんな予感がして、イザナミは懐の刀を抜く。残る二人も、同じようなことを考えているのか、オーラを身にまとう。
「じゃあ行くよ!迷宮ーラビリンス解除!衝撃場ーダメージ・フィールド!」
茜が引き抜いた剣に、赤い刻印が張り巡らされる。彼女は躊躇もなくイザナミに斬りかかり、イザナミはそれを刀で受ける。
「………っ!」
イザナミの刀に、計り知れない重圧がかかる。それは剣の力と言うよりも、剣に触れたもののオーラを奪い取る力というようにイザナミは感じた。
イザナミは茜とのつばぜり合いの中、彼女を持ち前の剣術で一度引き剝がし、碧い兎を呼び寄せる。
「意志によって姿を変える兎、双尾之白兎!奇稲田姫の姿!」
彼女の身体を救うオーラが碧くなり、彼女を覆う。彼女は守護霊を身にまとうと、刀を懐にしまい、代わりに懐からスタンガンを取り出して自信に向けた。
「何の真似?あはは、もしかして私に殺されるくらいなら、自害するってこと?」
つまらないの、と漏らす茜をよそに、イザナミは自信の首にスタンガンを撃つ。すると彼女の身体は碧色に光り、彼女の髪は碧色のオーラを吸って輝く。
「白雪姫之電撃脳。この能力は、自身の身体全身に、あなたが吸いきれないほどの大量のオーラ纏い、鬼神の力を得る能力よ。」
だよね、と茜はため息をつく。彼女はスタンガンを鈴に投げ、先ほどとは似ても似つかぬ速さで茜に走り、彼女の剣を両手で握る。
茜は持てるだけのオーラを剣に注ぐが、ラビットはそれにもかかわらず、茜の剣をへし折り、彼女の腹に渾身の一発を打ち込む。
「……っ!」
茜は悲鳴をこらえ、気を失いそうになる感覚を保つ。しかし、その間に彼女は次の攻撃の為の準備をする。
「迦具土の姿!神隠姫之短剣!」
イザナミは赤いオーラを身にまとい、何本ものナイフを懐から取り出す。攻撃の手段が読めたのか、茜は目の前にあるイザナミのナイフをじっと見つめる。
ナイフには、追跡機能がある。彼女が避け続けるだけそれは威力を増し、決して避けることのできぬ弾幕を作り出す。
避けられぬ弾幕。彼女は剣に力を込め、ナイフを撃ち落そうと懐から拳銃を取り出し、オーラを込めて撃ち込む。
しかし、威力こそ和らげられるものの、彼女のオーラが篭ったナイフはなかなか止まらず、ついに彼女の一箇所にナイフの一つが刺さり、血が吹き出る。
「うっ…覚えてなさい!」
茜は吹き出た血を見るなり、自身の死を悟ると命惜しげに逃げ出した。イザナミはそれを見てナイフからオーラを抜き、鈴による追撃を右手で止めた。
深追いはしなくて良い。一度ナイフで刺した相手ならば場所が分かる能力だし、そもそも革命軍の二頭が倒れ、川崎もいない今、革命軍が利口ならばここに居ることはできないと悟るだろうと告げ、出口に向かって走り出した。
常盤茜。刹那ならば、恐らく命が二つ無ければまだまだ勝てない相手であり、また来るときは更に強くなるだろう。
自分ももっと強くならねばならない。そう感じた刹那の心は、ヤミギリにもしっかりと伝わっていた。彼の殻の中に見える炎の蚕蛾は、既にその翼を輝かせていた。
しかし、その翼を抱く蚕蛾の殻の外の世界は、まだまだ闇を増して黒く輝く。
「さて、率直にお伺いします。あなたが、革命軍内通者の倍咲真菜さんですか?」
蝶の制服を着た青年。彼は他に何人かの生徒を連れ、湖神社の巫女の命を狙う。
「…そうです。私はあの極悪非道な女です。今まで殺めた人間は数知れず、中には子供も殺したこともあります。」
巫女の薄い笑いには、本物の倍咲真菜に対する深い憎しみも含まれていた。そして、バタフライの青年はそれを見逃さなかった。彼は彼女の発言に対して怒りを覚えるバタフライ兵を差し置き、嘘はいけませんよ、と彼女に微笑み返した。
「ふふ。やっぱり解りますか?」
「はい。巫女さんが嘘をつくなんて、いけませんね。」
「すみません。私もまだまだ修行が足りませんね。」
二人は性格が被るな、とバタフライ兵のうちの何人かは察していた。彼らがそう思っている間に、巫女の真菜は彼に倍咲真菜の居場所を教えようとした。しかし、青年はそれを丁重に断り、そもそも暇つぶしの相手をして欲しかっただけと言って、余計な手間をかけさせた詫びとして、バタフライ兵達にしばらくは好きに遊んでも良いと言って幾らかのお金を手渡した。
「…随分とまあ、部下の方々にはお優しいのですね。」
「いいえ、単に当たり前のことをしているだけですよ。向こうから僕の護衛をしたいと申し出ていただいたのですが、流石に悪かったかなと思いまして。ああ、申し遅れました。僕はロイン・アーグル。主に国害討伐隊のサブリーダーをさせていただいてます。」
「…ご丁寧にどうもありがとうございます。私は湖真菜と申しまして、ここの巫女を勤めさせていただいております。どうです?よろしければ、中でお茶でもご用意しましょうか?」
「いえ、結構です。その代わりと言っては難ですが、見たところ、守護霊をお使いになられるご様子。ここらの国害指定動物の駆除をお手伝い願えませんか。」
彼がそう話す中、街には4体のドラゴンの影が見え隠れしていた。ドラゴン、ブルーヘッド達は灼熱で湖神社の森林を焼き払い、辺りは火の海と化す。
「…申し訳ありません。殺生などしたくは無いのですが、森林には他の生物達も住んでいるので…すみません。」
真菜から、大量の紅のオーラが噴き出す。イエスと取りますねとロインは笑いかけ、紫色のオーラを見にまとい、黒い羽を持つ女神を召喚した。
女神は左手の中に数字を埋め込み、彼女が右手、ロインが左手で指を鳴らすと、スロットが回転しだし、数秒して一つの目を出した。
「2か。まあ、滅多に良い目なんてでませんし。楽しむにはこれくらいが良いですね。賭博女神ヘルの、2の目の能力!セカンド・スロット!」
彼の女神の形が変わり、パチンコ台のような機械の先にマシンガンがついたようなものに変わる。マシンガンはブルーヘッドに弾丸を撃ち込み、ブルーヘッドにわずかばかりの傷をつける。
「…なるほど、双六のサイコロのような能力ですか。」
彼女の返答に、やっぱり解ります?と彼は笑って答え、四五六の目は中々出ないし、賽をふるには体力がいるし、不便な能力ですと言ってはにかんだ。
「さて、あなたの護衛の子達に迷惑をかけぬように、早く逝かせてしまいましょう。」
どうか来世ではご縁がありますよう、と彼女は祈りながら、紅の龍を呼び寄せた。
ロインと巫女さんはキャラが被る。