国害指定堕落都市   作:tesorus

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今回は少し短め…かもしれません。

やっぱり、制服女子は敵キャラの方が好きです。


少年ラビットと少女兵

サウザンド・リーフの河原、時刻は夜の6時。天候は豪雨。そこには、白いオーラを放つ、バタフライのブレザーを着た男と、同じく、バタフライのブレザーを着た、青いオーラを放つ茶髪の少女が向かい合っている。

 

「行くよ。死にたくないなら、戦いなよ。蝶としての誇りが欠片でもあるならさ。逆鱗!」

 

彼女が両の手のひらを重ね、祈るように叫ぶと、彼女の両眼は光り、男に無慈悲に殴りかかった。

 

彼女の守護霊、雨雪龍レイン・アイには、三つの能力がある。その内の一つである「逆鱗」は、彼女の意思とは無関係に、彼女の視界に入った生物全てを攻撃対象とし、攻撃する技。脳内の命令とは無関係に発動するため、彼女が認識していない生物にも攻撃が可能である。

 

「くっ、蜘蛛の糸!」

 

男は守護霊の力で身体を覆い、攻撃から身を守った。しかし、彼女の攻撃を前に、その守護霊の力は薄すぎた。彼女は、見た目とは似ても似つかぬ程の力の強さで、じわじわと男を攻め、やがて男は猛攻を前に意識を失い、その場に倒れた。

 

早月は、その男が気を失ったことを感じ取ると、逆鱗を解除した。

 

「…もう壊れちゃった。さて、そろそろ任務に戻らないと。せっちゃん、また何処かで会えると良いね。じゃあね!」

 

「…待てよ。」

 

早月が軽率に刹那に挨拶し、そこから掛けていこうとするのを、刹那はすかさず、それを止めた。

 

早月はそれに振り向き、なあに?と笑顔で受け答えた。それとは正反対に、刹那の顔からは、憎悪にも似た暗い意識を感じ取ることができる。

 

「何で、このまま帰るんだよ。そりゃあ俺だって、蝶を恨んでるってことはお前に言わなかった。お前に悪意があるとも思わない。だけど、聞いただろ。俺はお前達を憎んでいる。俺のやっていることは、蝶への冒涜であることは間違いない。だから…」

 

彼がそう話し出すと、早月は刹那の唇に唇を重ね、軽いキスをした後、だから、何?と彼に問いかけた。

 

彼女は、その答えも聞かずに、もう少しせっちゃんが大人になったら、捕まえに来てあげるから、そしたら、ここに電話して。と、彼女は彼のポケットに、電話番号が書かれた紙を入れた。

 

その後、彼女はズボンを脱ぎ、バタフライの制服のプリーツスカートをあらわにし、またね、と手を振り、男を担いで、川の先にある滝に飛び降りた。

 

「…おい!待てよ!まだ…」

 

刹那は、彼女が落ちていく滝の底を見たが、彼女の姿は見えなかった。その時の刹那の感情は、先ほどの感情とはまるで違う、複雑な感情であった。

 

 

 

刹那は、その複雑な気持ちを抱いたまま、ラビットの寝床へ帰った。

 

「遅かったな。守護霊はどうだ?」

 

「ああ、色々あって、こいつも心を開いてくれそうだ。それと…今日、バタフライの連中に遭った。」

 

「….そうか。どんな連中だった。」

 

「一人は、本当に俺の思った通りだった。利己的で、厭らしい考え方しかないような…でも…もう一人は、全然そんな事なくて、正体知るまでは…本当に、あいつを好きになってしまいそうで…」

 

何だよ、これ。彼は小さな声でそう呟いた。ラビットにはそれが聞こえたのか、彼には何も言わず、二階のベッドが一つ開いているから、今日はそこで休めとだけ言い、彼の下を去った。

 

ラビットは、刹那の元から去ると、自分の部屋として使っている、警備員室の鍵を開け、棚からインスタントラーメンを一つ取り出し、袋から出し、黒い器に湯と共に入れた。

 

ラビットは、他人に、自分の過去を一切語らない。

 

故に、彼が一体いつから、国害を狩るようになったか。それを知る者すら居ない。

 

ただ一つ、彼が話すこと、それは、ブラック・スライムに、かつての彼の仲間を奪われたこと。それだけである。

 

「…居るんだろ。出てこいよ。」

 

彼が、椅子から立ち上がり、天上に呟くと、天上に張り付いていた早月は、バレてた?と言って笑い、彼の前に音を立てずに着地した。

 

その後彼女は、あなたがラビット?と聞き、返事も聞かずに、子供じゃん。と言って彼を笑った。

 

「お前か、刹那が出会ったバタフライは。てか、お前も子供だろ。」

 

「はい!私、バタフライの1階生の、雨森早月って言います!あ、貴方の自己紹介は要りませんよ。ラビット・ジェニュアリィ。昔は私たちの仲間で、今は昔の出来事が原因で、シェイプ・リペア先生の目の敵!ですよね?」

 

「ああ、シェイプ・リペアとか言う男は知らんがな。1階生か。つまり、下っ端の下っ端、一番下だな。階が付いている時点で、活動時間中は制服が脱げない。76階が最高位で、42階から下は、ロクに国害を始末できない奴ばかり。俺を捕まえたければ、43階まで上がって出直しな。」

 

「ううっ…言ってくれますね。でも、残念ながら、ランクアップの試験は受けません。上になったら、責任どうたら面倒くさいですからね。一番下で結構です!」

 

「そうか。なら、お前は一生、4階辺りの生徒の靴でも磨いてろ。そもそも、7階以下の生徒は、集団行動以外はできないはず。抜け出してきたのか?」

 

「はい!まあ、1階の生徒なんて死ぬほど居るんで、あんま抜けても見つかりませんからね!」

 

ラビットはそれを聞くと、溜息をつき、再び椅子に腰をかけた。バタフライの人間にとって、1級の人間など、塵に等しい。その概念は、昔バタフライに居た、彼も同じだった。

 

せいぜい、泳がせておいても、大した脅威にはなり得ないだろう。彼女の内に眠る龍を知らない彼は、そう判断し、彼女を警戒することを止めた。

 

「そうか。なら、さっさと帰って、上の生徒にでも、この場所を知らせてきたらどうだ?今攻められたら、俺も勝てないだろう。」

 

「うーん、でも、せっちゃんは起こしたくないなあ。もう寝てますよね。」

 

「せっちゃん?刹那のことか。ああ。お前のことで、悩んでたぞ。」

 

早月は、悪いことしたかなあ。と考え込んだ後、立ち上がり棚のインスタントラーメンを一つ奪い、部屋の窓を開けた。

 

「そっか。なら、今日はもう帰ります。あ、そこにあるラーメン、一つ下さい。キャンプにあるお湯で食べるんで。」

 

彼女はラビットの答えを聞かず、窓から外に出て、樹の上に飛び上がり、樹と樹の間を飛び移り、帰って行った。

 

ラビットは、闇に消える彼女を見送った後、カーテンを閉め、伸びきったラーメンを貪りながら、光るパソコンの画面を見つめていた。

 

ラビットが普段していることは、以前の刹那とあまり変わらない。刹那とは違うことと言えば、実際に現地に行き、それの駆除をすることだ。

 

何も国害に関する事件が無い日は、お湯を沸かしながら、パソコンで国害について調べ、掲示板やSNSのページを貪り、腹が減ったら、沸かしたお湯で食事やコーヒーを作る。それが彼の日課だ。

 

世界を救うのは、案外地味。それが彼の口癖でもある。

 

「ブルーヘッド、こいつは、アオトカゲが核実験によって突然変異種。ドラゴンのような姿をしていて、高温の光線を吐く…D級の国害か。低級の国害は、その分神出鬼没だからな。その上、ブラック・スライムみたいに、さらなる進化を遂げて、S級に化けやがる種も、うじゃうじゃ居る。本来、仲間のはずの蝶と争ってる暇なんかねえってのに…シェイプ・リペアだったか、そいつも、川崎も、あいつら、本来の俺たちの目的を忘れてねえと良いが…」

 

刹那、あいつも心配だ、と言いながら器を片付け、ベッドの上に身体を投げた。

 

雨が去り、星が輝く夜空の闇は、何故だか寂しそうに見えた。まるで、雨が消え去って欲しく無いかのようであった。

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