勘違いから始まるリリカルなのは 作:龍角散
ではよろしくお願いします。
「水の神……その御心……我らに捧げる恩情があるならば……この厄災、その無限とも呼べる器で抑え込みたもう! たもう!! ……厄道護法・水の陣!!! …………うぐっ!? ……ダメ、抑え……きれない! 」
「叶ちゃん!? 」
海に立った数個の水柱。私はなんとか抑え込めなものかとやってみる。何故か人間だったユーノ君に空中で支えてもらい。いつものように目の前に五芒星をきり、そこへ護符を叩きつける。そうする事で青い光がそこを中心にして私とその周りを大きく包み込む。そして言霊の完成後に天空より巨大な五芒星が水柱を囲み下に下がるようにそれを抑え込もうとするが柱を起こしている力が強すぎて私の力では限界があった。これは私の力不足……勿論それもある。けどこんな物を抑え込めるとしたら後は『神おろし』をするほかない。しかしそんな事をすればただでは済まない。この辺一帯が吹き飛ぶのは目に見えているのだ。だがどうしてだろう。茶髪のお友達は諦めるどころかその目に自信を宿している。さらに押さえ込んでいる私に、後は任せて? と笑うと近くにいたボロボロの金髪の子に話しかける。彼女は敵のはずだが、それでも茶髪のお友達は一緒にとその場を譲らない。1人よりみんなの力。それは何よりも強い力だ。
するとどうしてだろうか? 一瞬金髪の子の顔が何かに怯えたように歪む。しかしその後すぐに茶髪のお友達に向けて小さく頷いた。2人は協力するらしい。これならと……私は確信を強くする。2人の足元には魔法陣がそれぞれ現れ、せーの! という掛け声でその光を解き放った。でもその光は直撃したと同時に消えた。2人とも、私を含めて驚く。これでもダメなのか……ならどうすればいい。私は必死で頭を働かせる。けど何も思いつかない。その間にも水柱はどんどん大きくなっているというのにだ。どうするどうする……私は焦る一方だ。するとどうしてだろう。金髪の子が怯えた顔をした後にハッとなる。何かに気づいたのか? いや、そんな様子じゃない。ではどうして。私は彼女を見たまま考える。今の反応は何か。だが私達は金髪の子が指さした事でその方向に視線を向ける。
そこには何がある? 石だ。ジュエルシードが見える……私達は今まで上しか見ていなかった。あの状況なら冷静に周りを見るのは難しい。ましてやあのような場所に本体が露出しているなど分かるはずもない。言われなければわからない。なら金髪の子は何故気づいた? 私達よりもボロボロでなおかつ冷静さも低下してきている状態で。しかしそれは結局私にはわからなかった。茶髪のお友達と金髪ツインテールの子はもう一度そこへ向けて砲撃をする。するとその瞬間さっきまでの水柱が嘘のように収まった。けどそんな時、何故かお兄ぃの口癖と言うか、よく言っていた事を思い出した。お兄ぃはよく私にいっていた。視野は広く見ても肝心な事は何も見えていない。目に見える物だけがが正解じゃない。だからお前は馬鹿なんだとよくおでこを小突かれた。私はお兄ぃの癖にといつもお兄ぃをボコボコにしていたが、今なら思うことがある。
もし仮にここにお兄ぃがいたとしたら……真っ先にあのジュエルシードに気づけたのではないのか。私はそう思った。そして……何より、早くお兄ぃにあいたかった。どこへ行ったかもわからないお兄ぃを。でもどうだろう。今なら金髪の子も教えてくれるのではないのか。お兄ぃの居場所を。そう思ったがダメだった。その後すぐにチャチャが入り、金髪の子はオレンジ髪のお姉さんと消えた。茶髪のお友達も残念そうに俯く。しかしどうして? 地上に戻った後、どうして茶髪のお友達は急に顔を上げておかしな物を見るように私の方を見ているのか。私の顔に何か付いているのか? 驚き、涙を流し、口に手を当てて少し後退る。そんなにも私は酷いことになっているのか? 少し怖くなってしまった。でも茶髪の子は何も教えてくれない。夢、幻だと言って教えてはくれないのだ。何が夢? 幻? 私は意味がわからなかった。
そしてそこから2、3日たった後の事。金髪のお友達が犬を拾ったのだと言う。私達は金髪のお友達の家にお邪魔させてもらった。だがどうだろうか。その犬はあのオレンジ髪のお姉さんだった。どうやら怪我をしているらしい。事情を聞くためユーノ君がリンディさんとこっそり話している。しかしその話はわけのわからない話だった。金髪ツインテールの子が酷い事をされていたのはわかった。そこまではいい。そこまではいいのだが、お兄ぃをそのお母さんが預かっているというのが意味がわからない。お兄ぃは言い方は悪いが死体だ。なら何故預かるのか。まさか処分などしていないだろうか……私はそれだけが心配だった。もしそんな事になれば……お兄ぃとはもう会えなってしまうのだから。
「あ、あの子は何者なんだい? 」
「え? 」
「あんたのお兄さんなんだろう? どうして……どうして………」
「お兄ぃがどうしたんですか!? お兄ぃは死んでるんじゃ」
「死んで……そうだね。悪いとは思ってるよ。思ってるけど……死んでなお……あれじゃ……まるで」
そうオレンジ髪のお姉さんは言った。お兄ぃは死んでない? 疑問。その答えの得る事ができない疑問。まるでお兄ぃと会話をしてきたかのようなその怯えた言葉。私は答えのない答えを求めるように考える。お兄ぃは本当に死んでいるのか。実はまだ生きているのではないか。そんな気持ちが溢れてくる。死んでいなければそれにこしたことはない。私はそう期待した。だがそれを後から聞いた茶髪のお友達は何故か顔を青くし始めていた。そしてつぶやく。ただただ許してと。許してとはなんなのか。何に対して、どういう訳で。でも教えてくれない。頑なに、怯えて教えてはくれない。何があったのか。私は友達なのになんの力にもなれない事に歯痒さを覚える。しかしそれでも私には何も力になれないようだ。それは今この瞬間も同じ。
私達は翌日の朝、公園に行き、金髪ツインテールの子と最後の戦いを挑みに来た。けど私は手を出しちゃいけないと茶髪のお友達は念を押す。2人だけの、一対一の戦いだと言うのだ。絶対に勝つから任せてと自信満々に笑う茶髪のお友達。そこまで言われては私も何も言えない。黙ってお友達の勝利を願う。だがどうして。おかしい。茶髪のお友達と金髪ツインテールの子が戦っている最中……私は不思議な現象に襲われた。今私が思うのは何故、どうして。それだけ。というのも私達が茶髪のお友達を見守っている場所の少し横で何やら大人の男の人がその戦いを見ていた。けどそんな事はありえない。この場所は厳重にエイミィさんというアースラのクルーの人が結界を張っている筈だからだ。ならばあの男の人は誰なのか。もしかしてよからぬ人間ではないのか。私はユーノ君達に言って、その場を離れて男の人へと近づく。
だが私は不思議と他人の気がしなかった。でも……こいつは敵だ。敵であると私の全本能が言っていた。よって私は護符を取り出し、まず捕縛しようと先手を取ろうとしたのだ。確実……確実に私の捕縛結界は男をとらえた。捕まえた。捕まえた筈だった。しかし私が目にしているのは平然と何事もなく立っている男。代わりに私は自分の捕縛結界に囚われていた。驚き、固まる私。すると男は私の方を見た。見え覚えがある。見覚えがあるが誰かわからない。ただ……雰囲気がお兄ぃに似ている。何者なのか、今私はそれを考えている。服装は普通だ。白い半袖のポロシャツにジーパンを履いているだけの服装。
男は私を見るなり少し笑みを浮かべると指をパチンと鳴らした。するとどうしてだろうか。私の周りは真っ暗な空間に変わる。何も見えない。しかし男の姿はハッキリ見えた。これから何をするつもりなのか。身動きが取れない私を殺す気なのだろうか。私は冷や汗をかいて男の様子を伺う。けどそんな事はなかった。男は私に喋りかける。優しい声で、まるで話したのが初めてじゃないかのように。
「この頃のお前はまだ可愛げがあるんだな? 」
「何が……言いたいんですか? 私は貴方なんて知りません! 」
「まぁ〜そう怖い顔をするな。ただ見てただけだろう? なのはとフェイトの懐かしい戦いを。それに2人が喧嘩をしている所も今にない光景だ。今じゃ、逆に俺がみんなと喧嘩してるもんな? 本当……懐かしいよ」
「私は貴方が何を言ってるのかわからない。貴方は誰なんですか! どうしてなのちゃんの事を、それに……相手の子の事も」
「……はは、いつも言っていただろう? 自分で考えろ。視野は広く見ても肝心な事は何も見えていない。目に見える物だけがが正解じゃない。だからお前は馬鹿なんだ」
「つっ!? ……それ……え、なん……で? それ……その言葉お兄ぃの……貴方は誰!? 誰なの!? 」
私はよくお兄ぃにされる時と同じようにおでこを小突かれた。私は思う。何故、どうしてと……しかもその言葉はお兄ぃの言葉だ。どうしてこの男はそれを一字一句間違えずに私に言った? わからないわけがわからない。誰だ。この男は一体誰なのか。私は迷走した。だがダメだった答えは出ない。誰だ。誰だ誰だと私は気がおかしくなりそうになった。動悸が激しくなり呼吸困難になる。しかし気がつくと私は元の場所にいた。あの男はいない。けど……2人の戦いはもう終わっていた。一体どれだけ時間が過ぎた? そんなに時間は経っていなかった筈だ。混乱、困惑。私は心配して来てくれたユーノ君を見る。だがその瞬間、金髪ツインテールの子は空から落ちた紫の落雷に撃たれた。
命に別条はないようだが金髪ツインテールの子は拘束され、アースラに乗せられた。そして……お兄ぃの居場所もわかった。それはアースラに繋がった通信……と言うよりも金髪ツインテールのお母さんがいる場所に潜入した魔導師達。その人達があの子のお母さんを逮捕しようとした時、流れている映像の中に金髪でカプセルに入れられている女の子が映った。その横にお兄ぃも別のカプセルがだがそれに入れられていたのだ。私は拳を握りこむ。早くお兄ぃを。その気持ちが強くなる。しかし潜入した魔導師達は逮捕には失敗してしまった。しかも何やら次元震やら私にはわからない事を騒いでいる。それが危険というのはわかったがそれ以上はわからなかった。
茶髪のお友達達は次元震とやらが起きる前に金髪ツインテールのお母さんを捕まえにその場所へ潜入する。勿論私も同行させて欲しいとお願いした。お兄ぃを助けるために。だが潜入したはいいが、邪魔な機械兵とも呼ぶべき物がいく手を阻む。茶髪のお友達や私もそれを壊しながら進むがどうにも捌ききれない。そんな中茶髪のお友達がピンチになった。もはや目を閉じて一撃を覚悟してる。私では間に合わない。助ける事が出来ないのだ。でもそんな時だ。さっきまでお母さんに酷いことを言われ、ショックで放心状態だった金髪ツインテールの子が茶髪のお友達を危機から助けてくれた。アースラから駆けつけ、一緒に機械兵を倒す。私はそんな2人を見て、もう大丈夫な気がした。2人はもう立派に友達になれると。
「叶ちゃん危ない!? 」
「え? ……ごほっ!? うっ!? ……嘘…………」
「叶ちゃん!!! 」
「叶!!! 」
茶髪のお友達の声とユーノ君の声が聞こえた気がした。私は自分でも何をされたのか最初気づいていなかった。しかしそれは段々とわかる。お腹が熱くなり、痛みが体を襲う。急に咳き込み、手で口元を押さえたが、離してみると血だらけだった。私は機械兵にお腹を貫かれたのだ。なんて馬鹿なのか。よそ見なんてするんじゃなかった。これでは足手まといもいいところ。お兄ぃを助ける事もできずに私は死ぬのか。それが頭を過る。体から力が抜け、糸の切れた人形のように地面に倒れる。冷たかった。冷たくて、凍えてしまいそうなくらい。茶髪のお友達やユーノ君が涙目で私を抱えて見えている。ユーノ君が必死に回復魔法をかけてくれているのがわかるがおそらく無理だろう。私は助からない。
しかしどうして。何故か。ありえない。私は生きている。しかもそれだけじゃない。私は少し前に見た光景を見ていた。デジャビュ……この後私は貫かれた。そう……少しだけ……時間が戻った? そう思わざる終えない事だった。あの痛みは絶対に気のせいや幻じゃない。確実に……私は死んでいた筈だ。なのにどうして……私は取り敢えず私を刺した機械兵を破壊。その場を切り抜ける。だが瞬間。ふと……上の方を見た。そこに……女の子がいる。誰? 私は思う。みんなに指をさして教えてみたが誰も見えないらしい。私は自分の目を疑った。金髪で……左右の目の色が違うオッドアイ。そして茶髪のお友達のように両端をぴょこんと出した髪型。けどもっと不思議に思ったのはどこかの学校の制服に、それに見合わない黒いマント。まるで魔女のようなその格好は、私をさらに困惑させる。すると女の子は私に言いたい事だけ言うと消えた。まるで意味のわからない言葉を。
「みんなツメが甘いんだから。今のなのはママ達とは大違いだよ。でも……今回は私の気まぐれ、サービス。命は大事にしないと……だよ? じゃないと……つまんないから。くふ、ふふふふ」
次回もよろしくお願いします。