勘違いから始まるリリカルなのは   作:龍角散

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ども〜

ではよろしくお願いします。


第9話【boys side→girls side】

 パンツとは素晴らしき聖遺物だ。この世のどんな物よりも価値がある。美しい。手触り、形、色、匂い、味。どれを見て見てもパンツとは素晴らしい物だ。

 

 

 私はアリサ。

 

 

 パンツの虜となり、パンツに全てを捧げる者。人間は嫌いだ。でもダーリンは好きだ。何故って、ダーリンはパンツだ。私がパンツと呼ぶダーリンがパンツでパンツがダーリンなのだ。パンツであるダーリンを愛してなくて誰を愛すればいいのか。パンツ……パンツ……パンツだ。

 

 パンツって何なのか……昔なら迷走していた物だろう。しかし私はパンツの探究者。パンツの為に動き、パンツの為に命をかける魔女。私はたどり着いたのだ、パンツの理想郷に。だがそこへ導いてくれたのはダーリンだ。彼が私にパンツ愛の扉を開かせた。感謝、感謝、パンツに感謝だ。

 

 ところで、今目の前にいるダーリンのパンツは何色なのだろうか。普通に座っていてもカッコいいダーリンがはいているパンツはどんな色か。はたまたどんな形なのか。ちょっと見せてはくれないだろうか。私はさっきから気になって仕方ない。ちょっとだけ、ちょっとだけ見せてくれればいい。それだけで満足ではある。

 

 だが本当はそのままくれないかと思う。何故って、ダーリンのはいているパンツだ。欲しくないわけがない。パンツがはいてるパンツだ。何だそれは!? 神か!? と大声で叫びたくなるような物だ。

 ダーリンのパンツ、ダーリンのパンツ、ダーリンのパンツが見たい。トランクス、ブリーフ? まさかのふんどし? どっちだどっちだと私の頭の中はパンツだらけだ。なんて幸せなのか。ダーリンの事を考えるだけでパンツまみれになることができる。

 

 ダーリン、パンツ、ダーリン、パンツ、ダーリン、パンツ、ダーリン、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ、パンツ……あれ?

 

 

 どっちがパンツ?

 

 

 ダーリンがパンツで、パンツがダーリンで……つまり私のはいてるパンツもダーリンなのか? 迷走、私の悪い癖だ。どうもダーリンとパンツの区別がつかない時がある。でもいいのだ。どっちも私の愛するパンツなのだから。

 ところでダーリンは私の紐パンをどう思ったのだろうか。紐パンが好きと言ったのはダーリンだ。まさか似合ってないなどと言うまい。いや、それとも素敵すぎて言葉も出なかったのではないだろうか。ダーリンは私を好きになってくれたのではないか。紐パンが好きなダーリンの願いを叶えてあげられるのは私だけ。私だけがダーリンの為に紐パンをはいてあげられる。

 

 引いて、引っ張って? 卑猥な一本の紐をダーリンの手で。なんて興奮するシチュエーションなのか。しかし何故さっきは引っ張ってくれなかったのだろうか。いや、私には分かっている。ダーリンは照れているのだ。私には分かっている。ダーリンは紐パンを引っ張りたくて仕方ない。我慢しているに違いない。

 

 

 

 

 なら私ができることは一つだ。優しくダーリンの手を取り、私のスカートの中へ、そして卑猥な紐を握らせるのだ。

 

 紐がゆっくりと引かれていく。ゆっくりゆっくりと……。興奮。素晴らしすぎて昇天してしまいそうだ。魔女だから死にはしないが昇天してしまいそうだ。

 するとどうだ。ついに私の紐が。ただ一つの防御壁が引き抜かれ…………

 

 

「お、おい……何考えてるかわからないけどその緩みきった顔をやめて早く内容説明しろよ。というかヨダレ垂らすな」

 

「え? ……はぁ〜今の妄想? 残念……でも素敵な夢だったぁ〜」

 

「現実のバニングスとはえらい違いだな。まぁ〜あいつもあいつで変態になってきてる気がしたが」

 

 

「ふふ、現実の私も今の私も同じ。どっちもパンツが好きな女の子。何も変わらないわ。だけど『あの子』は受け入れない。だから私の存在を認識できないし、知らない。自分が何に貪欲でいるかを……」

 

「な、なぁ〜バニングス」

「そんな名で呼ばないで」

 

「……じゃ何て呼べばいいんだ? 」

 

「ふふふ! 私の名はアリサよ。パンツの探究者にして究極のパンツを求める存在。そう! 私こそ、パンツを愛し! パンツを求め! パンツに愛された存在なのよ! だからこう呼ぶがいいわ!

 

 

 

 魔女・パンティー・ロリータ! 」

 

「お前ら……アリシアといい名前酷すぎないか…………もはや意味としてよくわかんないし」

 

 

 ダーリンは私を見ながら少し引いているように見える。だが何故? どうして引く必要がある? 私はパンツが原因で魔女と化した。だから名前にそれがつくのは当たり前。むしろパンティーを名乗れるなど素晴らしい事。

 

 

「それじゃ〜始めましょうか! 内容は簡単よ? 私の問いから『正解を見つける』だけ。問いに答えればいいのよ」

 

「方式はアリシアと同じか。で? その問いは? 」

 

「んふふ、私が今はいている『とすれば』、私のパンツは何色でしょ〜か! 」

 

「…………ふざけてんの? 」

 

「あら? 真面目も大真面目よ? 一口に色を求めてると言ってもそれは数多の色の数だけ選択肢がある。私なら簡単に答えられるけどダーリンは人間。そう簡単には答えられない筈よ? 」

 

「何言ってんだ、さっきお前自分のスカートの中見せて…………」

 

 

 当然、言葉は最後まで続かない。私のパンツの色を当てろ。さっき見せたのだから答えるのは簡単。そう思ったのだろう。しかしそれはどうして? 何故簡単なのか。今スカートを捲り上げていれば別だが私は今そんな事をしているわけではない。

 では何故? 何故決めつけられる? そんな事は不可能だ。一旦見せた情報が正しいとは限らない。ましてや私は魔女だ。意地が悪い、何かを仕掛けている、そう見る。そこまで疑えば、人間は迷う。疑う。何も信じられない。

 

 とある法則としてシュレーディンガーの猫と呼ばれる物がある。

 

 猫を箱に入れ、その中に毒ガスを入れる。するとその箱を開けるまで、その猫が死んでいるか生きているかと言う2つの重なる事象が発生する。

 結論、その箱を開けるまで、箱の中身がどうなっているかはわからないという事だ。

 

 つまり私のスカートの中はまさにその箱。中を覗くまでどんな色のパンツかはわからない。私が最初に見せた紐パンは確かにはいていたものだ。しかし現時点でそれを確認する手段はない。

 

 ダーリンは猫を、もとい紐パンを確認した。これは箱に猫を入れるまでの状態。私がスカートを下ろした事で箱は閉じられた。ここからは憶測では当たらない。見たというだけでは正解できない。

 考え、その結論に至らなければ正解などできない。だからダーリンは負ける。私に負ける。そして私を食べてくれる。

 

 ダーリンは今考えているはずだ。私のパンツが何色であるかを。でもそれが正解を求める上でどんなに愚かな事かをダーリンは知らない。常識とは常に己の中にある。質問に答える。それがこの問いの最大の落とし穴だ。

 

 問いに馬鹿正直ではこの問いは解けない。はたしてダーリンは私の事を分かってくれるのか。今凄く楽しみだ。この質問に答えようとするダーリンの顔が、その考える苦悶の表情が、私の事を考えてくれていると思うとゾクゾクして仕方ない。

 

 私のスカートの中身をそんなにも真剣に考察しているダーリンがとても愛しい。私のパンツを、パンツを、パンツを、パンツの事を考えているダーリンが。

 いつまでも考えていればいい。私のパンツを。私のはいている至高の聖遺物を。濡れる。幸せと共に。素晴らしき幸せな時間。ダーリンとのゲーム。遊びだからこそ成り立つ幸せ。

 

「凄いな。こんなくだらない問いの中にも奥深いものがある。下手に答えを出せないのが悔しい。なるほど、シュレーディンガーの猫に当てはまるな。あまり好きな理論じゃないが」

 

「……ダ、ダーリン凄い!? 今のでそこまで考察できたの!? というかその歳でそれ知ってるってどうなの? でも、ふふ。やっぱり素敵なダーリン! 」

 

「本来さっき見せた紐パンで間違いない。つまりは白。だが今の状態ではそれを確認できない。でも結論から言って答える選択肢は2つ」

 

「え? 2つ? 」

 

「そうだ。お前がパンツを『はいているか、いないか』というな」

 

「…………」

 

 私は今信じられない気持ちでいっぱいだ。人間が、魔女の理論を考察できている。ありえない。子供の、ましてやその歳でこの考察に気づける筈がない。

 何故ならこの問いには正解があって正解がない。答えはあるが、そこにはたどり着けない理由が存在する。それは問いが正解の問いではないという事だ。

 

 これは単純な言葉遊び。私は言った。

 

 

 《んふふ、私が今はいている『とすれば』、私のパンツは何色でしょ〜か! 》

 

 

 と……。はいているとすれば……それははいていない場合もある事を意味する。それに私は1度たりともその答えが正解などと言っていない。私が言ったのは私の問いから正解を見つけると言うもの。

 だがこれに気づく事などまずない。何故ならこれは問いの『外』。求められた情報を壊し、外から情報を持ってこようとしなければ得られない答え。

 

 つまりダーリンは人のみで、前提条件を壊して問いの真理にたどり着いた。正直に言おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 悪魔じみている。

 

 

 

 魔女である私にはわかる。投げかけた問いを壊す。それを一体どれだけの人間ができるのか。いや、不可能だ。そんな事普通の魔女でも難しい。

 問いを答える、そう言われてしまえば人間はそのサガから逃れられない。正直に問いの答えを考察し、私のパンツが何色かを考える。ましてや、この問いの真理にたどり着くには1つ、大きな壁が存在する。

 それは私のパンツが『勝手に動き出す』と言う条件を導き出して考慮しなければならないという事。

 

 何故ならさっき言ったシュレーディンガーの猫。これを成立させる為には箱の中に入れた物が2つの事象を平行かつ同時に起きていると証明しなければならない。この場合、猫が生きているか死んでいるかという2つの事象。それをパンツに置き換えた場合、スカートの中のパンツが勝手に動き出すというありえない現象を肯定しなければならない。

 つまり、私がパンツをはいているか、いないかという2つの選択肢。ここまでたどり着いて初めてこの問いはスタートラインに立てるのだ。

 だがダーリンはたった数分でこれにたどり着いた。そもそも普通の人間と考えている物が違う。これはそう思わずにはいられない事だ。

 しかしだからこそ、私はダーリンの答えをこんなにも楽しみで仕方ない。私が惚れた男がどれだけ魔女に抗えるかという事を。

 

 

「そろそろ答え出た? 私早くダーリンの答えが聞きたい! 」

 

「急かすなよ。まぁ〜だいたい出たけどさ。まずお前の問いはおかしなところが多い。問いに『とすれば』、なんて普通はつけないからな。だからあの問いは間違いだ。でも正解でもある」

 

「うんうん! それでそれで? 」

 

「1番問題なのは問いを答える前。『私の問いから正解を見つけるだけ』。これだ。多分普通ならなんでもなく聞き流す筈だが、お前は魔女だ。その言葉1つ1つが罠。なら話は簡単だ。問いの中から正解の問いを見つけ出してその答えを答える。これがこの問いの真の答え。違うか? 」

 

 

「すっご〜い! ダーリン素敵、私の事そこまでわかってくれるなんて。でもスタートラインはここからよ? 例えそこまでわかったとしても答えを出せなければダーリンの負け。私はこれ以上ダーリンには答えられないと思うなぁ〜」

 

「いや、俺の勝ちだ」

 

「へ? 」

 

「王手! この問いはもう解けた」

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 私はふと目を覚ました。そこは機器のそろった病院らしい。しかし私が病院で寝ていたわけじゃない。私のママが今この部屋で横になって眠っていた。

 私は戻って来たのだ。現実に。ママやフェイトの生きる世界に。

 

「ママ……」

 

「んっ……フェイ……ト? っ!? ア、アリシア!? 」

 

「ふふ、私をフェイトと間違えるなんて、仲直りしたんだね。……ママ、ただいま」

 

「こんな、こんな奇跡……いえ、おかえりなさいアリシア。もう離さないわ! 」

 

 私は今最高の幸福を味わっている。これも全てあの子のおかげ。今頃、あの子は何をしているのだろうか。あの部屋で、魔女の遊び場で。

 もしかしたらあの女とゲームをしているのかもしれない。あいつは確実と言っていいほどあの子に興味を持った筈だ。

 

「ママ、私ママとこれからもずっといたい。でもね、私まだやらなきゃいけない事あるんだぁ。すぐじゃないけど、そのうち絶対に。だからその時は笑って送り出してほしいな」

 

「やりたい事? それはどんな事なの? 」

 

「えへへ、内緒。でも……そうだね。私が『好き』になった男の子に文句……言ってあげるとかかもね」

 

 

 次は私の番だ。してもらった恩には報いる。例え現実に戻ったとしても私はまだ魔女だ。それに、もうあの子とは他人じゃない。少なくても私にとっては。だから……だから…………

 

 

 

 

 だから必ず……おちるを生き返らせる。

 




次回もよろしくお願いします。
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