勘違いから始まるリリカルなのは 作:龍角散
ではよろしくお願いします。
始まりは小学2年の冬。私が彼を意識……もとい好きになったのは間違いなくこの頃から。私はあの子に助けて貰った。何を助けて貰ったかといえば、私は学校の帰り、通学路で何かに押しつぶされた。目の前は一瞬で真っ白になり、自分でどかすことはできない。冷たくどうしようもない絶望が私を襲った。このまま死ぬかもしれないとさえ感じた。けどそれは当然なの。私の上には屋根から落ちてきた雪がのしかかっていたのだから。しかも周りからは私は埋まっていて見えない筈だ。誰にも見つからず、ここで凍え死ぬ。すごく怖かった。誰か。誰か助けてとその場で私は泣き続ける。しかし一向に助けは来なかった。けど突然私の体を温かい何かが滴り始め、その場の雪は一瞬で溶けて無くなった。結果、私は何故かビショビショになっていたが雪から逃れる事が出来たのだ。おそらくかけられた物はお湯だろう。
誰が、誰が助けてくれたのか。私は辺りを見渡す。すると1人の男の子がバケツを持ってどこかへ行ってしまう姿が見えたのだ。私は顔を、その顔を必死に目に焼き付けた。追いかけることはできなかったが絶対に忘れまいと。だから、彼を好きになったのはここから。王子様だと思った。何も言わず、ただ私を助け、去って行った。なんてクールなのかと。私は思った。またあの子に会いたい。あって話を、お礼を言いたい。そして仲良くなりたい。私は思った。あの子の事を考える日々が続き、もう暇さえあれば考える。あの子に会いたい。しかし私の願いは早くも叶うことになった。それは私が気がつかなかっただけなのだが、同じクラスだった。一番後ろの席で教室の入り口側。なんで今まで気づかなかったのか。
けどいざそこにあの子がいると思うとなかなか喋りかけられない。その子の事を見ることはできても喋りかけられなかった。そこで今年3年生になる年のバレンタインデー。私は話をするきっかけ、それを求めて渡す事にする。家で親に手伝いをこい、チョコを自作する。しかしどうして。私はどうしたらいいのかわからなかった。バレンタインデー前日になって、勇気が出ない。果たして渡せるのか。渡せるのかと不安に駆られる。自分の作ったハート型のチョコ。それを自分の家が経営している店のカウンターで眺めながら顔をカウンターに乗せた。ふとチョコの入った箱の横を見れば、全く同じ箱に入ったカッターの刃が置いてある。なんでこんなに沢山敷き詰めてあるのだろうと言うくらい入っている。そんな中、私は同じクラスの親友2人に相談することにした。電話をし、その子達と待ち合わせる。だから私はそのチョコにフタをした。すぐ戻ってくるつもりでそこへ置きっぱなしにして。今考えればこれが間違いだったのだろう。
そして親友2人にあった私は好きな子? 好きな子なの? と言われ赤くなる。否定するにできない私は静かに頷いた。すると少し気の強い親友が私に助け舟をくれた。自分達も義理でチョコを渡してあげると言うのだ。自分達2人が渡した後なら渡しやすいでしょう? と言ってくれた。私はなんて幸せ者だ。2人に感謝する。だが家に帰るとカウンターに箱が1つ。ちゃんとフタもしてあるし、これに違いないと明日の事で頭がいっぱいの私はそこにあった箱を部屋へ持っていくと綺麗に包装し、明日に備えた。これが間違いだと気づかずに。何故中身を確認しなかった。何故少し重いと気づかなかった。何故音がおかしいと気づかなかった。今となっては馬鹿な自分に腹がたつ。
しかし当日、それが爆弾だと気づかない私は彼に渡そうと廊下の曲がり角で彼を待った。そして最初気の強い親友がチョコを渡す。そして大人しい親友がその後に続く。それで最後は私。渡さなければ。渡さなければ。ここまで来たのだ。渡さなければと馬鹿みたいに緊張していた。覚悟を決め、いざ彼にチョコを。とここまでは良かった。ここまでは! 良かったのだ。彼の顔が視界に、すぐ近くにと認識した瞬間何も言葉が出なかった。でも渡す。渡さなければ。そんな気持ちだけが私を突き動かし、彼の手にチョコを叩きつけ、掴んだと確認したところで即座にその場から離脱した。そんな私は動揺している。渡せた、渡せたと気持ちが高ぶっているのだ。
「わ、わわわ渡せた!? 渡せたのアリサちゃん!? 喜んでくれるかな! どど、どうしようアリサちゃん!? 」
「と、とりあえず落ち着きなさいなのは……というか……秘密の取引してるんじゃないんだから……戸惑ってるわよ? あの子」
「ふぇ!? 」
「う、うん……あれじゃ……戸惑うかも」
「ふぇええ!? 」
私は上手く出来なかったと少し落ち込んだが、私が何かの間違いだとショックを受けたのはバレンタインデーから2日後だった。うちの店の冷蔵庫に箱がある。あの箱だ。まさか……まさかそんな……と震える手で箱に手を伸ばした。箱を掴み。その箱を凝視しながら私は箱を開ける。どうして、何故。どうしてここに私が作ったハート型のチョコがある。私は困惑した。それはあの子に渡した筈だ。確実に渡した筈なのだ。なら何故ここに。だが当然なの。私はまんまとドジをした。箱を間違えた。つまりどういう事か。私が渡したあの箱は……あそこにあった大量のカッターの刃。私は冷や汗全力全開で立ち尽くしチョコの入った箱を床に落とす。ハートは見事に真ん中で砕け、それが何を物語っているか私に伝えてくる。
謝らなければ、彼に謝って誤解を。そう思い、ある日の休み時間。私はあの子を机の側で待った。そしてあの子が来た。来たが上手く言葉が出ない。どうする。どうすればいい。彼は座る体勢に入った。しかし私は何をおもった。何をおもって何をしている? どうしてやってしまった。何故彼が座る体勢に入っている時にもう少し後ろの方が座りやすいのではないかというお節介を有言実行という形でしてしまったのか。何故……だが気づいた時にはあの子の後頭部は椅子の角へ。私は完全に意地悪な子になってしまっている。だから急いで謝る私。けどあの子の顔は……何故か私を怖がっているように見えた。そんな顔を見た私は……頭を真っ白にする。嫌われた。嫌われてしまった。そう思ってしまった。どうする。どうすればいい。私はもうわからなかった。だが現実は残酷。もうあの子は私が何を言っても何も言ってくれない。全て無視されてしまう。泣きそうだった。胸が痛かった。こんな痛みは感じた事がなかった。傷が痛むのとはまるで違う苦しい痛み。
しかし偶然にも挽回できるであろうチャンスが来た。あの子と日直という絶好のタイミングが来た。よって私は体育の時間、最後の片付け、そこであの子に強引にでも話を聞いてもらおうとあの子の行く手を阻み、優しく後ろの跳び箱に押し付ける。あの子は驚いていた。驚いて、私が言う事に戸惑っていた。そしてあの子の表情が変わった。私の言っている事が伝わったと確信できた。だから私はここで思い切る事にした。自分の中の気持ちを全て伝える。勇気を持って伝えるのだと目を閉じ、声に出して言った。けど全て伝える前に私は目を開けて唖然とする。どうして。何故。何故こうなった。どうしてあの子は跳び箱に押しつぶされているのか。倒れるわけない。倒れるわけがない。跳び箱が何故倒れた。そして何故かあの子は苦しそうに鉄のおもりがどうのこうの言っている。けどそれは当然なの。そう勘違いしても仕方がない。何故ならその跳び箱、その上に……気の強い親友が乗っていた。
私はここで考える。どうしてここに? どうしてあの子を潰したのか。どうして邪魔をしたのか。何故、どうして。しかし親友は何も教えてはくれなかった。少し気まずそうに上から下りると急いであの子を救出する為に跳び箱をどかす。すると大人しい親友も何故か駆けつけ手伝ってくれた。幸いあの子に怪我はなかったが……どうして。どうしてあの子は私だけにそんな目を向けるのか。今のは私がやったわけじゃない。けどあの子は私の所為だと思っているらしい。悲しかった。そしてその後、気の強い親友にプンスカと怒る。すると素直に謝り、次の作戦だと気の強い親友が再度切り出した。それはお弁当作戦。あの子をお昼に誘うと言うものだった。私は今度こそと気合いを入れる。
次の日。私はあの子を誘った。親友2人を交え、彼の警戒心を少しでも解く。誤解を。とにかく誤解を解くのだ。私は緊張な面持ちで階段を登る。だがここで私は自分のポケットをまさぐった。ティッシュを取り出す為だ。理由は目の前の親友が欲しいと言ったから。ただそれだけだった。それ……だけだった筈だった。
「なのはちゃん? おかず作戦は大丈夫? 」
「だ、大丈夫なの! け、計画通りなの! ……え? きゃぁぁぁああああああああああ!? 」
「「ちょっ!? 」」
見事だった。まるで絵に描いたような、バナナを踏んで滑る人間の転び方。後ろへ倒れ、階段を綺麗にローリングして一番下まで落ちて行く。死んだのではないか。私は恐怖で走る事ができない。しかし親友2人は走ってあの子を追いかけてくれた。そしてやっと私は1階までたどり着く。だがそこには右足をグニャグニャにしたあの子が泣きながら倒れていた。どうして。どうしてまた私を見ているのか。今私は泣いている。どうしてこんな事に。どうしてあの子は怪我をしてしまった。どうして……そんな目で睨むのか。誰か教えて欲しい。私は切に願う。
当然だが私はあの子のお見舞いに行った。でもあの子はあまりいい顔をしてくれなかった。睨まれ、悲しかった私だがお花を持ってきたのでそれを入れる為、花瓶の方へいく。しかし何故。どうして私はこけた。ここには何もないのにだ。しかもナースコールと共に。けどすぐに起きて逃げるように花瓶を持って部屋を後にした。そして水道まで行き、水を入れ、花を入れる。だが私はここで少し考え込んだ。あの子は私が嫌いなのだろうか。もう誤解は解けないのだろうか。もう……仲良くはできないのだろうか。私はそう考えながら病室へと足を戻した。しかしどうして。何故。どうして。どうしてあの子は松葉杖事床に倒れている。どうして床には花瓶が粉々になって散らばっているのか。いや、それよりも……どうして床が血で染まっているのだろうか。私の思考は停止した。
当然なの。何故なら大人しい親友がそこにいるのだ。しかも、花瓶の破片を持って。どうして。どうして親友がそんな事をするのか。どうしてあの子を傷つけたのか。どうして泣いているのか…………。
だが大人しい親友は私の顔を見るなり泣きじゃくりながら私に抱きつく。そんな様子を見ていればわかる。どうやらわざとではないらしい。では何故か。しかしそれは何も答えてくれなかった。ここで私はふと思う。どうして私は先生を早く呼ばないのか。一気に我に返った私は先生を呼ぶが……さっき引きちぎったのでナースコールがない。私は走った。ナースステーションまで全速力で廊下を走る。途中怒られたがそんな事は関係ない。一刻も早く先生を。そう思って走った。が、私は急に体を止める。いや、止められた。誰に? 誰に止められた? 私は後ろを見る。気の強い親友だった。
「ま、待ちなさいなのは!? 勘違い! 勘違いよ!! 」
「ふぇ? 」
勘違い。それを聞いた私は親友に向き直った。一体何が勘違いなのか。私は気の強い親友と病室に戻る。するとさっきまで血だらけだった病室は綺麗になっていた。しかしあの子が気絶しているのは本当のようでベットに戻されている。瓶の破片はゴミ箱の中だ。どうして。何が起きている。何が起きているのだろうか。当の親友2人は言いづらそうな顔をしている。どうして。一体どんなやましい事が。私は疑いたくない親友2人に対しての思考を必死に抑えている。今日は2人と話し合わなければならない。2人の口からその真意を聞くのだ。しかしなんて言った? 親友2人はなんて言った? 聞こえた。確かに聞こえた。聞こえたが頭に入ってこない。2人が何を言ったのか理解できない。当然なの。2人とも……言ってる事が違うのだから。
「その子は私が好きみたいなの!? 」
「こいつは私のパンツが好きなのよ!? 」
「ふぇぇ……? 」
「「「え??? 」」」
しかし結局……あの惨状の説明にはなっていなかった。だがのちに分かる。ここにいる私達は……勘違いの上になりたっている勘違いの上にいるのだという事を…………
次回もよろしくお願いします。