勘違いから始まるリリカルなのは   作:龍角散

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この作品の合言葉は勘違いです(笑)

ではよろしくお願いします。


第1話《裏の裏の裏》【girls side】

始まりはいつからか。それは私にもわからない。私が彼を意識……もとい、私の事が好きなんじゃないかと思い始めたのはバレンタインデーからだと思う。定かではない所はあるが、でも……あの子とはいつも隣の席だった。あの子は隣でいつも授業中ほとんど寝ているような、そんな男の子。ただ、最近変わっていると言えば、目を全開に開けて寝るようになったと言う事だけ。正直に言おう。はっきり言って怖い。あの子は決まって私の方を見て寝る。目を開けたまま、まるで凝視してるかのように。それにしょっちゅう訳のわからない寝言をつぶやいたりもする。けどいつしか、そんなあの子を見ているのが楽しみなっていた。今度はどんな寝言を言うのか、この目は本当に何も見ていないのか。たまに目の前で手を振ったりもする。しかし彼は本当に寝ているようで、反応どころか目を閉じることもない。このままではドライアイになってしまうんじゃないかと言うくらいの開けっぷりだ。

 

違うクラスだがあの子と同じ名字の女の子とは物凄く仲がいい。と言うより、幼馴染と言っても過言ではない。よく遊び、その子の家にも行った事はある。それに歳の近いお兄さんがいると聞いた事はあるが、見た事あるのは一度だけ。とても優しかった気がする。だがよく覚えていない。覚えていないのだが……なんとなく好きだった気がする。そうだ。思えば私はそのお兄さんに恋をしていなくもない。むしろ好きだった筈だ。最近は会えないので覚えてはいないがそんな気がするのだ。今度聞いてみようと思う。

 

そんなこんなでバレンタインデー。それは突然起こった。可愛い頑固者の親友が好きな子が出来たようなそんな話をほのめかす。これは是非是非協力してあげなければ。そう思い、気の強い親友とチョコを渡す。まさかあの子だとは思わなかった私だが……どうして。どうしてこんなにも面と向かってあの子にチョコを渡すのが恥かしいし、照れくさいのか。けど渡さなければ親友の為にならない。私はキチンと義理とつけて渡した。しかしどうして。どうしてこんなにも私の目を真っ直ぐ見るのか。あまりにもしっかり見られ過ぎてなかなか目を反らせなかった。だから思わず顔が赤くなる。そして逃げるように頑固な親友に番を回した。

 

私は別にあの子が好きなわけじゃない。私には好きな人はいる。そうだいるのだ……多分。しかしかと言って嫌いではないが、好きになられても困るというものだ。と言うのも、まず。バレンタインデーの次の日。あの子は隣の席で言った。チョコありがとうと。そして私のチョコが一番美味しかったと言うのだ。どうしてそんな事を言うのか。やめてほしい。やめて欲しかった。あの子にくっついて欲しいのは親友だ。頼むから親友を見てやってくれ、そう思う。だが何故。あの子は私に積極的に話してくる気がする。いつからだ。いつからこんなにもあの子は私に喋りかけてくる? どうして? わからない。どうしてなのか。すると……ひとつの答えに行き渡る。自意識過剰ではないのか? 確かにそう言えばそうかもしれない。でも、でもだ。他の子と私に対する接し方が違う気がする。私にだけ、妙に楽しそうと言うか、どうしてなのだと考える。私じゃない。親友に。親友を好きになってあげてくれ。そう思うのだ。

 

何故なら……あの子は私が好きらしい。そう思った。だがその時、黒いと言う程ではないが、出来心? いや、はっきり言ったほうがいいのか。嫌われようなどと思ってしまった。あなたが見るのは親友で私ではない。親友を見てもらう為、私は汚れ役を買おう。しかしどうする? どうすればいいか。まず最初、私は計画した。考えた。どうしたら嫌われるのか。どうすれば嫌な女の子になれるのか。だから取り敢えず、心苦しいが怪我をして貰おう。そして私がやる姿をその目に焼き付けて貰おう。そう思った。結果、上手くいった……筈だ。あの子はしっかりと見てくれた……筈だ。ある日の昼。親友がご飯に誘おう。そう言ったのが計画の始まり。階段を登り、一番上の方へたどり着くのを今か今かと待った。時が来る。ころいい場所まで来た。よって、私は動く。後ろにいる頑固な親友の目をそらす為、ティッシュをくれないかと言うと、その目がポケットにいったスキにハンカチを投げた。あの子に確実に見えるように投げた筈だ。しかしここで思わぬ、思わぬ事が起きた。あの子は思ったよりも下へ、下へと転げ落ちる。ここで気づいた。

 

私は……何をやってしまった。これでは……やり過ぎだ。殺してしまったのではないか。そんな事を考え、すぐさま追いかけた。神に祈りながらお願いした。生きててください。親友の恋する人が死んでませんようにと。でも結果あの子は生きていた。生きていたのだ。右足こそ酷い状態だったが取り敢えず安心した。しかしどうして。どうしてだ。あの子は痛がりながらなんて私に言った? 何故。どうしてそんな事を言うのか。やったのは私だ。確実にあの子も見ていた筈だ。見ていた筈なのだ。にも関わらずあの子はなんて言った?

 

「謝る……必要なんか……ないよぉ? 」

 

「っ!? どうしてぇ…………」

 

私はまず謝った。小さい声で、本当に小さい声で。なのに聞こえたらしい。どうする。バレてしまったのか? 私の計画が明るみに? しかしそんな事はなかった。どうやらバレていないらしい。でも泣きながらもあの子は謝らなくていいなど言った。という事は、私はまだ嫌われていない? そう思った。なら私はまだ嫌われる為に努力をしなければならない。あの子には本当に悪いと思うが、嫌ってもらわなければならないのだ。だがどうする? どうしたほうがいいか。確実に嫌われる為には。と……考えていた私はある事を思いつく。最低で、どうしようもなく残酷な事。人の好意を踏み躙る事を。でも私はやる。親友の為に。あの子に嫌われる為に。そう考えていたのだ。最初、私は病室を訪れた。まだ誰も来てはいないだろう。そのように動いたのだから。けどあの子は笑う。何故。あの子はお見舞いに来た私にお礼を言う。何故。あの子は普通に話をする。何故。わからない。あの子の感情が、考えてる事が分からなかった。しかし私は止めない。嫌われる事を。動く。動くのだ。私はあの子に言った。言ってやった。私はあなたが嫌いだと。嫌いだからこれから酷い事をしてやると。そして外へ。私の考えではあの子は割と危機に敏感だ。ならあの子は急いで外へ行く筈。あえて怪しまれないよう、少し距離のある場所へ花瓶という得物を置いておき、急いでそれを取りに行った。

 

行ったまではいい。得物も花瓶だから誰かに悟られる事はない。事は……ないのだがいざ戻ると中が騒がしい気がした。きっとあの子は急いで準備を済ましているのだろう。まだか。もう少しだ。そう考えながらきっと私は悪い顔をしているに違いない。絶対にそうに決まっている。私は自分を誤魔化しているのか? いや、決してそんな事はない筈だ。だがその時は来た。来てしまった。横扉が勢いよく開けられ。あの子が松葉杖をつきながら外へ出てきた。だから私は用意していた花瓶をあの子の顔面に叩きつける。確実に。外す事なく。全力で。しかしここで間違えないでほしいのは、私は殺す気でやっているわけではないという事だ。だから用意した花瓶も飴細工。怪我などしない。だがどうして。どうしてあの子は気絶した? 普通はしない筈だ。ならどうして? どうしてなのか……それは花瓶を叩きつけた際、私の手が勢いをつきすぎてあの子のアゴを捉えてしまったからだ。後ろへ倒れ、あの子は倒れたまま動かない。見ると何故かベットの近くに顔を赤くした気の強い親友もいる。見られた。見られてしまった。どうする。どうすれば。などと考えていると気の強い親友がこうすれば大丈夫と言ってどこから取り出したのか赤い紙をあの子の下に滑り込ませた。何も知らない人が飛び込んでくれば、きっとただの惨状にしか見えない筈。するとどうだろうか。なんてタイミング。どうしてか。扉を開け、恋する親友が入ってきた。花瓶に花を入れ、唖然とこの状況を見ながら花瓶を落とす。親友は泣いていた。泣いてしまったのだ。

 

ここで……私は気がつく。気がついてしまった。馬鹿な事をした。親友に対して馬鹿な事をした。そんな事をしなくてよかった筈だ。そう反省しながら頑固な親友に泣きつく。謝りながら私も泣いてしまった。動揺し始めたというのが正しい。嫌われたくない。本当は嫌われたくなどないのだ。だがこのままでは親友にすら嫌われかねない。私はそれ以上何も言う事はできなかった。頑固な親友が勘違いをし先生を呼びに走った。私はその瞬間青くなったが、気の強い親友がそれを止めてくれた。なんとか助かったと思ったが、そのスキにあの子をベットに戻した。そして、親友が戻ってきたところで頑固な親友に対してあの子の真実を突きつける。それが親友に対してのせめてもの償いだと思ったからだ。しかしどうして。何故か気の強い親友とハモった。親友はなんて言った? パンツがどうこう言っている。よって恋する頑固な親友は目を丸くしてフリーズしてしまった。当然だと私も思う。もうやめよう。そう思った瞬間でもあった。これ以上どうして酷い事をする必要がある? 謝るのだ。本当の事を言ってあの子にもきちっと謝るのだ。そう思った。だがどうして。どうしてなのか。何故状況はどんどん訳のわからない事になっていくのか。

 

ここで……病室に新たな人間が入ってきた。ここまではいい。入って来たのだ。しかし何故。どうしてなのか。どうして私がよく知る仲のいい幼馴染が入ってくるのか。私は固まらざるおえなかった。何故、何故、何故なんだと。どうして幼馴染はそんな言葉を言った? どうしてそんな単語を言うのか。それはつまり……つまりどういう事なのか。もはや動揺どころの話ではない。私は余計に罪の意識が強まってしまった。たった今、本当の事を言うと決めたばかりなのに。揺らいでしまった。言えない。言えるわけがない。嫌われたくない。今更ながら、親友にも幼馴染にも、あの子にも。私はわがままだ。どうしてこんな事になってしまったのか。全然わからない。わからないがこれだけはわかる。私は……とんでもない勘違いをしていた。あの子が私に対して積極的なのは当然だ。あの子が私に対してよく話しかけていたのは当然だ。あの子のお見舞いにあの子と名字が同じ幼馴染が来るのも当然だ。何故なら……何故なら……私はあの子と無関係なクラスメイトではない。

 

「お兄ぃ元気〜? ……あれ? すずちゃん? 来てたの? その2人は……すずちゃんのお友達だったっけ? ふふ、わざわざお兄ぃのお見舞いありがとう」

 

「え……いや……あの……嘘ぉ…………」

 

何故なら私が仲のいい幼馴染とあの子は……同じ名字どころか兄弟らしい。衝撃の事実だった。

 




さぁ〜そろそろ将棋盤をひっくり返しましょう。


次回もよろしくお願いします。
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