勘違いから始まるリリカルなのは 作:龍角散
「……ア、アリシア? まぁーどうでもいいけど……不法侵入だぞ? 警察呼ぼうか? 」
「えーつまんないよー! もっとこう……ないの? 私幽霊だよ? ゆ・う・れ・い! うらめしや〜ってやる奴」
「幽霊感がない。と言うか悪い冗談だ」
「ちぇ〜自分だって死んでんじゃん…………」
「はん、何を馬鹿な……あれ……なんか透けてる? 」
「ご愁傷様ぁ! 」
そう……にこやかに言われた。なんなんだこの子は。それで何? 俺は死んだ? なんの冗談だ。そう思う。だがどうだ? 俺は透けている。どうして気づかなかった。しかし幽霊……俺も? いやいや、やめよう。死ぬには早いって、俺まだ生きてたいし。けどダメだ。目の前の子が俺の手をとってその辺の家具に手をぶつけようとする。触れない。スカスカしてる。俺ショック。そんな事を考えていた。一体いつ死んだ? 俺はいつ死んだ? あるとすれば妹と仲のいい幼馴染の家。あのわけのわからない戦いで吹き飛ばされた時だ。でもあれで死ぬ? 俺はどんだけ軟弱なのだろうか。すると幽霊っ子は俺に言う。お揃いだね? と……しかしそれは何が? 幽霊であるという事が? ふざけんなと言いたい。そんな事お揃いにならなくていい。お揃いにならなくていいがどうしてこの幽霊っ子はふんぞり返っているのだろうか。だがそれは自分が先輩だからとの事だ。幽霊……幽霊歴は自分が長い。そう言いたいらしい。それは誇るべきことなのだろうか?
そんなやり取りをしていると妹が帰ってきた。早い。もう旅行に行ってきたのか? さっきまで朝だったじゃないか。そう思ったが……気がつけば日付けが変わっていた。馬鹿な、一体いつまでくだらないやり取りをしていたんだと思う。しかし経ってしまったものは仕方ない。だがどうして……どうして妹は俺の部屋に入り始める? 何故。おかしくね? なんで無言で人の部屋に入るの? そう妹に叫ぶ。けど聞こえてはいない。幽霊になったなら幽霊らしく見えてもいいじゃないかとつぶやくがそれも聞こえていない。代わりに幽霊っ子が聞いている。何やらドンマイドンマイと慰めてくれるが、全然嬉しくない。するとどうだろうか。妹が色々物色し始めた。こいつ……いい加減にしろ! と怒りたかった。何故俺の部屋を荒らすのか。冗談ではない。しかも隣では幽霊っ子が言うのだ。つまんない部屋だね、ぼっち? と……悲しかった。言うなよ……と言ってやったが、幽霊っ子は聞いちゃいない。妹について俺の部屋を物色している。悪いが何も出てきやしない。ここには何もないのだから。
しかしどうして……妹は見つけやがった。俺の……俺だけのリラクゼーションスペースを……見られた。見られてしまった。俺の……黒い部屋。妹は口を押さえて何やら気味悪がっている。当然だ。こんな真っ黒で何もない部屋誰が気味悪がらない? まず気味悪がるはずだ。使ってる俺が言うのだから間違いないだろう。だが幽霊っ子は違うらしい。というより、その部屋に置いてある将棋に興味があるようだ。俺を見ながら将棋盤の前で指をさし、これ何? これ何! と大はしゃぎしている。ちょっと可愛いと思ったがそれだけだ。そして幽霊っ子には将棋がどういうもの説明してあげたがよくわかからないらしい。馬鹿なのか? と思ってたら幽霊っ子に引っ叩かれた。もしや心を読めるのでは? と怖くなる。妹は行ってしまったが俺はこいつとこの部屋に残った。少しここに座わりたくなった。目を閉じ、将棋盤の前で正座をする。それを見た幽霊っ子は厨二? 厨二? とわけのわからない事を言っている。
しかししばらくして、幽霊っ子が俺の手を引っ張る。行こうと言うのだ。どこへ? 一体どこへ連れて行く? まさかこの子は俺を迎え来た天使なのだろうか。俺はこのまま天に……と言う事はなかった。どこだここは……そう思う。幽霊っ子の行くままに来たが、わけのわからない空間に来た。暗いし、ラスボスの城か!? と思わせる内装の建物だ。一体どうやってきた? なんか飛んだらこれた。幽霊って便利。そう考えていた時だ。幽霊っ子が俺の手を放し、タッタとステップを踏むようにどこかへ行く。見ていればその先に幽霊っ子そっくりの子が鞭で叩かれている所だった。見た瞬間俺は全力で引いた。なんだこのDV。と……けど幽霊っ子は吊り下げられているそっくりっ子の横で頑張れフェイトー! 負けるなフェイトー! と応援し始める。よく分からない光景だ。ところでこの怖そうなおばさんは誰なのだろうか。そう思っていれば幽霊っ子がそのおばさんの近くに行き、ママの馬鹿ー! と言っているのを聞いて、この子達のお母さんなのだと分かる。
すると何故、今度は俺の所に幽霊っ子が来た。そして俺の手を取り俺を近くまで連れて行く。なんのつもりだろうかと思ったが、涙目になりながら必死なのが分かるので理由はわかったが何もできない。何故なら俺も幽霊。触る事など出来ないのだから。
「ママを止めて!? フェイトが可愛いそうだよ! 」
「そんな事を言われてもな……俺もお前と同じだし」
「……そうだよね…………」
「え……へ? う、嘘……ひっ!? あ……ああ……そんなぁ……ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「なぁ〜あの子凄い謝りっぷりだけど……そんな悪い事したのか? 突然と言うかさっきより怯えてる気がする…………」
「ああ……ごめんねフェイト……お姉ちゃん無力だよ…………」
お姉ちゃん? 誰が? いやいや、逆だろ? と思うがまた引っ叩かれた。もうやめよう? 心読むの。そう言いたい。幽霊っ子はこの子の姉? ならそっくりっ子は妹。そう見れば、幽霊っ子は優しいお姉ちゃんなのかもしれないと見直す。見直したまではいい。見直したまではいいが俺はまた連れて行かれた。どこへ? 分からない。ただ妹の所に行くと手を引かれ、どこかのマンションへ。ここに住んでいるのだろうか? あまり家具のない所だ。娯楽もなさそうだし。だが俺の言えた事ではない。俺も似たようなものだ。
幽霊っ子はまたそっくりっ子の近くへ行き周りをあちこち回りながら言う。大丈夫? 痛くない? フェイトなら頑張れる! ファイト! などと言っている。お前は応援団か! と言いたいくらいの応援っぷりだ。幽霊っ子が一緒に応援してよ! と言うので応援しているのだが意味がわからない。意味がわからないから幽霊っ子に俺も死んでるんだから聞こえないよ。と言う。すると何故。心はないのか! と怒られてしまった。酷い言われように、死ねよ! と言ってやった。そしたら死んでるよ! と怒鳴られた。コントかよ……と思ったがその瞬間、そっくりっ子は固まり、怯え始める。一緒にいるオレンジ髪のお姉さんも何やらそっくりっ子の取り乱しように驚き、落ち着かせようと呼びかけるがそっくりっ子は頭を抱えてうずくまる。一体どうしたと言うのか。
ひたすらそっくりっ子はごめんなさいと連呼し、その間に許してください。とか。最後には嫌!? いや!? と叫び始めた。よっぽどママさんの鞭が怖かったのだろうか。幽霊っ子も何故か一緒になって泣き始める。なんて優しいお姉ちゃんなんだと思ったが、目にゴミがと言い始めたので引っ叩いてやった。すると、むきー!と唸りながら俺に突進してくる。俺は漫画のように幽霊っ子の頭を片手で止めた。幽霊っ子はそれでも俺を殴ろうと言うのか両手をぐるぐる回す。
「諦めろ」
「いーやーだー! 」
「いやぁぁぁぁあああああああ!? ごめなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!! 許して! 許して!? わざとじゃない!? わざとじゃないだぁぁ…………」
「フェイトどうしたんだい!? しっかりして!? 」
状況は変わらず、そっくりっ子は取り乱している。怯えているそっくりっ子を見てちょっと可愛いと思ってしまった俺はヤバイのだろうか。すると隣で俺の肩を叩き、幽霊っ子が言った。変態……と。変態? なんて失敬な幽霊っ子なのか。俺は変態じゃない。何を根拠に変態などと言うのか。それはちょっと言い過ぎなのではないのか。そしてそれを言いながら俺を見ている幽霊っ子のゲス顏は見ていて腹が立つ。しかし俺ももう疲れた。幽霊なのに疲れたと言うのはおかしいのかもしれないが、疲れたと言っておこう。だがどうして。何故だ。何故この幽霊っ子は俺にまとわりつく。俺はもう帰りたいのだ。帰らせてくれと言うのだが一緒にいると言って聞かない。俺は嫌だと言う。そうしてもみ合っているうちに知らない場所に来た。一体どこのお屋敷なのか。妹の仲の良い幼馴染と同じぐらいの家だろうか。デカイ。でも俺は幽霊だ。見つかる心配はないだろう。心配はない……のだが……幽霊っ子は一体何をしているのか。何やらベットの上に大量に並べられたパンツを見ている。普通のものからただのヒモに至るまでありとあらゆるパンツがそこに。ここはパンツの理想郷なのか……そう思った。
だが勘違いしないでほしい。俺はパンツなど好きではない。まだ小学生だ。そんな物には興味はない。むしろ妹の所為で嫌いだ。パンツなど嫌いなのだ。すると誰かが家に入ってくる。俺は思わず固まった。裸でバスタオルしか身につけてない金髪のクラスメイトが入ってきたのだ。俺は思い当たる。わかった。何てことだ、ここは金髪のクラスメイトの家なのかと。しかしこいつは小学生のくせに何パンツを一生懸命見て赤くなっているのか。普段のあいつからは想像できない姿に俺は見ていられない。何故。何故こいつはヒモをとった。ヒモを片手でプラプラと持ち息を荒くしながら顔を真っ赤にしているのか。言わせて貰えば変態にしか見えない。かく言う裸のクラスメイトを透明なのをいい事に見ている俺も変態なんじゃないかと思うが、横の幽霊っ子。この幽霊っ子はまた言いやがった。ゲス顏で。これ以上ないくらい人を見下したような顔で。変態……と。
最初は可愛いと思って野放しにしていればだんだん調子にのってきている気がするのは俺の気のせいだろうか。いや、絶対に気のせいじゃない。しかも何だろう。金髪のクラスメイトに近づき、胸の辺りを幽霊っ子が指差し誇らしげに言うのだ。私の方が大っきいなどと。だからなんだ。大っきかろうが小ちゃかろうが俺は一向に構わん、興味がない。興味はないが……何故だ。何故金髪のクラスメイトはヒモを身につけた。そんな物つけて鏡で自分を見るんじゃない。何てはしたない。俺はそう言いたかった。妹もそうだがはしたなすぎる。
「見て見て? 」
「はい? 」
「くまさん」
「わかった。分かったから服を下せ。俺はお前のパンツになんか興味はないし、パンツなんか大っ嫌いだ!! 」
「えー……じゃ〜脱がすの? 」
「は? 」
「嫌いなんでしょう? なら脱がせばいいじゃん。やだ〜この幽霊変態ー! 」
俺は思う。もう帰りたい。幽霊っ子はもうどこかへ行ってくれないかと思う。だがこいつはどこにもいかない。話せるのが俺だけだと言って離れる素振りもない。むしろだんだんベタベタしてきてる気がする。結局俺は家に帰れずぷらぷらと外を徘徊する。まさに浮遊霊だ。俺はこれからどうなるのだろうか。しかしどうにもなりそうにない。何故? 何故って俺は死んでいる。死んで生き返る何てことはない。そんな奇跡起こりっこない。なら成仏すればいいのだろうか。けどそんな方法があるのか? 幽霊初心者の俺には分かる筈もない。わかる筈もないのだが……一体何をしているんだ? そう思う。徘徊していれば見知った顔がいた。あの子だ。いや、あの子達と言ったほうがいいのか。1人はそっくりっ子。もう1人は俺を殺したいあの子。また戦う気なのだろうか。’俺は言いたい。やめなさいそれで人1人死んでるんだよ? と……。俺はだんだんイライラしてきた。喧嘩ばかりするあの子達に。何故争う? 話し合え。できないのか。そうブツブツと声に出す。幽霊っ子は何故か震えだした。俺が怖いのか? そんな怒っていない筈だ。いや、怒っているのか。小動物のようにハウハウしている幽霊っ子。大丈夫だと言いたい。少し言ってくるだけだ。いい加減にしろと。ただそれだけ……しかしどうして……。またその場は弾けた。ひし形の宝石を中心にしてそれを奪い合った結果なのか。何回俺を吹き飛ばせば気がすむのか。幽霊だから痛くはない。でもそういう問題じゃないだろう。見れば2人も吹き飛んでいた。さらに青い宝石は嫌な音を立てて光り輝いている。だがそれを……そっくりっ子が両手で掴みとり、祈りを捧げるように抑え込み始めた。
次回もよろしくお願いします。