勘違いから始まるリリカルなのは 作:龍角散
ちなみに……もう勘違いは起きてますよ?
皆さんはそれが何か……分かりますか?
なんて…………
ではよろしくお願いします。
始まりは突然。あの子……白い魔導師と出会い。初めて戦ったあの時から始まった。私がある男の子を意識……いや、私が怨まれていると思ったのは他でもない、その時が原因だ。偶然。決して、決してわざとじゃなかった。わざとじゃなかったのだが白い魔導師との戦闘中、砲撃系統の魔法の激突で近くにいた、間違いなく一般人の男の子を吹き飛ばしてしまった。事がすみ、ちょっと気になって男の子が飛ばされた方へ顔を出せば、血まみれの男の子が木に引っかかっていた。正確には木の枝が胸を貫いていた。どうして……なんて事をしてしまったのか。なんの関係もない。なんの関係もない子を巻き込んで……あまつさえ殺してしまった。どうにか、どうにかできないのか。助けられないのか。私は取り敢えず、男の子を木から下ろし、自分の拠点へ連れて帰った。回復魔法を使い、治そうとするがもう死んだ命だ。蘇りはしない。だが取り敢えず傷は塞がった。塞がったがここまで。これ以上私にできる事はない。後悔と罪悪感が私を苦しめる。もう少し気をつけていれば。あの子を殺さずに済んだのではないか。今となってはもう遅い。
私は悩んだ。温泉地で再び白い魔導師と戦い。余計な邪魔は入ったがジュエルシードを奪い何とか逃げ帰る。しかしその後も私は悩んだ。悩む、罪悪感が止まらず。どうしたらいいと。私は悩んだ末、母さんに相談をした。まず怒られた。だが連れて来いとの事だ。私はこの世界に来たばかりだが一旦母さんの元へ戻る。それからあの男の子がどうなったかはわからない。男の子の事は気にせずジュエルシードを集めて来いと言われた。お仕置きとして鞭で叩かれたところが痛い。でも何故であろうか。見えた。お仕置きされている最中……突然目の前にあの男の子が。私は自分の目を疑った。疑い……そんな馬鹿なと自分を誤魔化す。けど目の前の男の子は消えない。申し訳なさそうな顔で私をジッと見ていた。怖かった。あの子は私を怨んでいる。死んでなお、私のところへ怨みを晴らしに来たのか。上から吊り下げられ、動けない私は謝るしかない。謝るしかないのだが男の子は消えない。
母さんに許してもらい、自分の寝泊まりするマンションに戻った私は使い魔のアルフに傷を見てもらっていた。しかしどうして。また……あの子の姿が見える。あそこから私を追って来たのか。この子はどうあっても私を許してくれない気がした。何かを呟いているのか口は動いている。ただよくは聞こえない。私は怖かった。ただ怖かった。幽霊何て信じてはいなかったが、目の前に現れてしまえば話は別だ。するとどうだろうか。さっきまであまり聞こえなかった筈の声が、聞こえた。ここには私とアルフ以外にはいない。なら誰の声だ。聞こえる筈のない声。あの子しかいない。でもアルフには聞こえていない。私にしか、私にしか聞こえていない。それが私の体から自由を奪う。震え、声に出して謝るしかできなくなった。しかしその子の声は確実に私の心を蝕む。聞いてしまった声、言葉、単語。聞こえたのだ。確かに……死ねよ。そう言っていた。やはり私は怨まれている。あの子は私に死んでほしくて来たんだ。
けど殺したのは私だ。怨まれても仕方がない。でも死にたくない。死にたくないのだ。許してほしい。わざとじゃない。わざとじゃない。そうとしか言えない。謝ってもあの子は消えない。ずっとそこにいる。きっと私が死ぬまで側にいる気なんだと震えを強くする。誰にも助けを求められない。あの子は私が殺した。そうぐるぐると考える。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!? 許してぇぇ……え……あ……いやぁ…………」
「諦めろ」
幽霊の男の子が私の方へ片手を広げながらそれを向けた。その瞬間、私は殺されると覚悟した。どんな方法かはわからない。だけど相手は幽霊だ。方法なんて非常識に違いない。そう思うのだ。それに、諦めろ……そう言われ、何かがプツンと切れた。恐怖がピークに達し、悲鳴を上げてアルフを困らせる。でもアルフには見えてもいなければ聞こえてもいない。アルフには分からない。私の恐怖が。だがどうして。あの男の子は消えた。跡形もなく。その場から姿を消した。助かった。そう思った。許してくれたのか? もう私の前には現れないのか? その事で頭がいっぱいになる。しかしあの男の子が消えた事で、私の緊張の糸は切れた。私はそこで一旦意識を落とす。そして次に起きた時は、心配そうなアルフ顔があった。私は取り敢えず安堵する。周りをキョロキョロとし、あの子はいないか再度確認した。だがその子はいない。よかった。そう思う。
でもどうして……どうしてこんな事になった。あの白い魔導師、その子とまた戦闘になった。以前より確実に強く厄介になっている。真ん中にはジュエルシードが暴走寸前であるというのに。早く奪わなければ、奪わなければ。そう思い、気が焦る。焦って……ジュエルシードを取り合い、お互いのデバイス同士をジュエルシードの前でぶつけ合った。互いのデバイスがひび割れ、破損する。しかもジュエルシードは暴走し始めた。止める。抑え込む。そう決め、私はそれを両手で押さえ込んだ。魔力を必死に、必死に送りこみ。しかし何故。どうしてこんな時に……私の目の前にあの男の子が現れる。まだ許して貰えてない。そう思ったら体が震えだした。魔力コントロールを失い、抑え込めない。怖い。目の前の男の子が怖い。どうしてこんなタイミングでくるんだ。どうして……そう思った。けどそんな事は考えなくても、思わなくてもわかる事だ。このタイミングで私を怖がらせれば、私は簡単に死ぬ。そうだ。この子は私を殺しに来たんだ。なら、現れて当然じゃないかとだんだん諦め始めた。
手袋が破け、体が傷ついていく。私は死ぬ。このまま死ぬ。もうどうする事も出来ない。1度冷静さを失ったら終わりだ。震えた体はなかなか元には戻らない。恐怖が、絶望が私を襲った。死にたくない。死にたくない。私はまだ母さんにしてあげたい事がある。しなければならない事があるのだ。だがそう思ってもジュエルシードは止まらない。確実に私を死へと誘う。するとその時だった。幽霊の男の子が私の手に触れる。私はこの時戸惑う。触れる? 幽霊が? 私に? 何故、どうして。離すなと言いたいのか。死ねと、殺してやると。それにしても冷たい。物凄く冷たかった。私の手に触れている男の子の手はまるで私の手に氷を当てているかように冷たく、一切の体温を感じない。私が奪ったのだ。私がこの子の温もりを……人としての人生を。でも何故なのだろうか。冷たい。そして怖いのに。ふと男の子の顔を見た瞬間、それが消えた。
震えが止まる。どうしてこの子は少し笑みを浮かべているのか。私が憎いのではないのか。私を殺しにきたのではないのか。そんな事を考えながら確実に冷静さを取り戻していく。しかし次の瞬間、手にあったジュエルシードが強烈な光を放ち、目の前の男の子は光と共に消えた。ジュエルシードも何事もなかったかのように大人しい。あの子はどこへ行ったのか。あの笑みは何だったのか。どうして私を殺さなかったのか。私にはわからない。でも最後に聞こえた。男の子は私に言った。確かに聞こえたのだ。喧嘩なんてやめろって。それは……とても優しい声だった。
◇◇◇◇
「あはは!! ようこそ! さっきぶり? まさかここにアクセスしてこれるなんて驚いた。私としては……もう少し甘えたかったんだけど。仕方がないよね? 『神杖 堕散流(しんじょう おちる)』君? 神の杖が堕ち、散り流れる。酷い名前だよね? こんな名前をつけた親の気が知れないよ」
「ほっとけって!? 名前なんか言ってないのにどうやって知ったし。と言うかその喋り方は何なの? どうした? さっきまであんなに無邪気だったのに……アリシア」
「アリシア? 確かに貴方といた幽霊は私。けどそれは現実での私の在り方と存在する理由。でもそれは本当にそうなの? どうして? 一体誰が決めたの? 神様? 存在するかも分からないのに? あはは! 冒涜しようよ神の存在なんてさぁ〜? 」
「アリシアじゃないなら君は誰なのさ。それにここどこ? 」
俺は今不思議な空間にいる。さっきまで金髪の子の前にいた筈だ。にも関わらず、どことも知れないお花畑に囲まれた場所。空が白い……と言うより、どこまでが空でどこまでが地面なのか定かじゃない。この空間全てが白い。さらにはそこの中心。丁度俺達がいるところには丸いテーブルがある。ティータイム用のテーブルだろうか。目の前のこの子はティーカップに入った紅茶を飲んでいる。だがどうして。どうしてさっきまで子供のようだった幽霊っ子はこんなにも別人に成り果てているのか。一体どういう事か。まるで理解できない。この空間にしたってそうだ。訳がわからない。俺は死んでから理解の追い付かない事ばかりな気がする。世界はこんなにも複雑で訳がわからないものだったのか。
「まず、ここはアルハザード……って言っても、ママが追い求めるような場所じゃないのだけど」
「へぇ〜お前のママさんはこんな所に来たかったの? 」
「そうだね? 全部私の為に……なんだけど。私を生き返らせようとしてる。だけどそれは間違った事。ママは勘違いしている。アルハザードはそんな理想郷じゃない。はは! ならここはどんな場所かって? ここは『魔女』の遊び場。互いのチップをかけ、己が望みを実現させる場所。システム。退屈な魔女の暇つぶしだよ。あ! チップって何かって顔してるね? それは……命。魂。呼び方は色々あるね? ん? ……へぇ〜」
「暇つぶし……」
「貴方やっぱり面白いや。その歳で、いや……人間のくせにもう人生に飽きている。そんなところかな? あの真っ黒な部屋はそんな貴方の心の闇から来ているのかな? いずれにしても人が考える事じゃない。そうだね? 試しに遊んでみる? 貴方は死んでるから賭ける物はないけど……ああ、安心して? 貴方は何も賭けなくていいよ。今回はここに来れたご褒美。サービスって事で。そしてもし貴方が勝ったら、貴方に命をあげる。生き返れるんだよ? やったね! でも負けたら……賭けなくていいとは言ったけどタダってわけにはいかないね? ……貴方には私の物になって貰おうかな? ここは寂しいから」
「…………」
俺はどうしてか……胸の辺りがモヤモヤとする。気持ちが高ぶっているのか。面白そうと思ってしまった。俺は今まで退屈しか感じなかった。普通男の子がやるようなゲームは面白くない。友達と遊んでも何が面白いのか。ぼっちと言えばそうかもしれない。普段俺は将棋を1人でさしてその一手をいつまでも考える毎日。だからつまらない。まだ全然生きてないけど、つまらなかった。日常が、生きている事が。だがこれはどうだ? チップが命? 魂? 負ければ終わり、勝てば先へ進める。単純。そして奥が深そうだ。興味がわく。俺が今まで感じた事のない想いが出てきている。やってみたいと言う想いが。
目の前の幽霊っ子だって言った。退屈な魔女の暇つぶしと……暇つぶし……是非俺もそれをやってみたい。暇がつぶせるという事は楽しい筈だ。目の前の幽霊っ子は何を考えているかわからない。物凄く嫌な笑みを浮かべて俺を見ている。どうして? 何故見ている? 期待してるからじゃないのか? 俺がそのゲームを受けるのを密かに期待してる。期待されたからやらねばならないのか? いや、違う。俺がやりたいのだ。言い訳なんてしない。する必要もない。今目の前に俺の求めていた何かがある。空虚な日々を変えてくれる何かが。だから俺は……受ける。
「いい顔してるじゃん! 今までで1番生き生きしてる。沈黙は肯定……へへ! ルールは簡単。私が出す問いに答えるだけ。正解すれば貴方の勝ち。不正解なら貴方の負け。あ! 自己紹介してなかったね? 私はアリシア。ここでは永遠の幼女。魔女・エターナル・ロリータって言われてる……あはは! 早速始めようか? 問い……貴方のよく知るクラスメイト、高町なのはは『貴方の事が好きか嫌いか』。貴方の答えは……私を楽しませてくれるよね? あは! あははは! どうかどうか? 貴方の『勘違い』が正される事を? ぷーくすくす、あっはははははは!!! 」
次回もよろしくお願いします。