勘違いから始まるリリカルなのは   作:龍角散

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ではよろしくお願いします。


第4話【boys side→girls side】

「あの子が俺を好きか嫌いか? そんなの言うまでも…………」

 

「あっれ〜? どうしたの? 言うまでもないんでしょう? なら答えなよ? ぷーくすくす」

 

「…………」

 

俺は言おうとした。言おうとしたがちょっと待てと自分を抑える。命……そんな物を賭ける勝負の問題が、そんな単純で俺が知っている事そのままなのか? それで合ってるのか? 俺はあの子に嫌われてると思ってる。当然だろう? 何度も殺されそうになった。バレンタインデーにカッターの刃だぞ? 嫌われてる以外に一体何がある? でもおかしい。俺の直感が違うと言っている。この幽霊っ子は魔女といった。ならその言葉は信用していいものなのか? そんなサービス問題を出す物なのか? 答はNOだ。ならヒントはないのか? これは俺とあの子の問題だ。他人には分かるわけもない。あの子は必要以上に俺の所に来ていた気がする。それは何故? 決まっている俺を殺したいからだ。しかしそれなら側で俺と話をしたがる理由になるのか? 殺す気ならこっそり殺ればいい。けど実際はどうなのか? 俺はあの子の事を何も知らない。ただ怖いとあの子とは向き合ってこなかった。逃げていた。怖いから、あの子から逃げてあまり関わらないようにした。

 

だがよく考えろ。妹の仲のいい幼馴染。あの子の親友だ。そんな子を親友に何て選ぶのか? 今ではすっかり妹も仲のいいあの子。妹は人だけは見て選ぶ。それは信用していい。では幽霊っ子はどうだ? 何か言っていたか? 思い出す。俺は目を閉じて考える。するとあった。幽霊っ子が最後に言っていたこと。『どうかどうか? 貴方の勘違いが正される事を』。勘違い? 俺は何を勘違いしているのか? あの子は俺が嫌いだ。それは疑いようがない。俺はそれは完全に心に定着している。定着? 心に定着? それがそもそも落とし穴なのではないのか? これは命のやり取りだ。前提条件……それは何の意味もないこと。そう俺は考える。壊せ。前提条件を。壊して初めて見ることができる。

 

常識はいらない。狂気を優先しろ。頭を働かせ、あの子が俺の事を嫌いと言うその決めつけを……壊す。あの子は俺にチョコをくれた。秘密の取引をするように。それはどうして? やましいからか? カッターの刃が入っているからか? 違う。あれは照れ隠しだ。カッターの刃は何らかの形で間違えたと仮定するべきだ。そうすれば。そこはクリアされる。なら、あの椅子はどうだ? どうしてわざわざ引いた? 俺を殺す為? いや、あれで人は殺せない。嫌がらせにしてもそのあと謝る必要はない。あれも勘違い……あれは緊張でついやってしまったと考えるべきだ。理由はわからんが。なら……お昼。階段での事は? あの子はポケットからハンカチをわざと落とした。俺に踏ませる為に。あり得ない。ポケットから落とすように俺の足を狙うのは不可能だ。という事はあのハンカチは初めからあった? いや、それはない。あれはなかった。となれば……あの子の前にいた2人のうちのどちらか。そう仮定すればあの子は何もしていない。

 

「考えてるね? その顔いいよ。人間がたかがその程度の問いにそこまで思考を巡らせることなんて普通できない。貴方は今、全てを疑い、答えを得ようとしている。それだけで貴方は十分に私を楽しませているよ」

 

「決めた! 」

 

「おお〜思ったより早かった。一応人間に答えられるであろうレベルまでは問いを落としてはいるんだけど……聞かせて……貰おうかな? 貴方の答え」

 

俺は決めた。問題なのは病室での事。あの子は俺の顔に花瓶を叩き込んだ。どうしてそんな事をする必要があった? それが一番わからない。しかしそれも今なら分かる。あの後俺の病室には最初にあったであろう花瓶が花を入れられてまだあった。つまり割れた花瓶はあの部屋のものではない。なら……別の花瓶と見るのが正しい。となれば、あの子は何もしていない。やったのは消去法で一番最初に来た妹と仲のいい幼馴染。今からしてみれば普通に酷いことをしてやると言われた後だった。俺は全く信じていなかったが。今度また会えたら聞いてみようと思う。結果、あの子は最初以外何もしていないことになる。だから俺の答えは決まっているのだ。

 

「答えは好き」

 

「ぷーくすくす! ……ご明察! いいね? よかったよ? 貴方の考えてる時のその顔! 私は久々に満足できた。はい、約束通り貴方に命をあげる。これで生き返れる。よかったね? それじゃ〜元の世界に帰りなよ」

「1つ聞いていい? 」

 

「ん? 何? 」

 

「これが互いに有意義なものが手に入る賭けならどうして自分で生きかえろうとしないの? 」

 

俺が抱いだ今の疑問。このゲームが命を蘇らせるほど凄いものであるならば、何故幽霊っ子は自分を報酬の対象にしないのか。俺を自分のものにするのであれば自分を生き返らせればいいじゃないか。俺はそう思った。そう思っての質問だった。でも帰ってきたのは何ともつまらない都合のいいルールと言う答えだった。魔女は自分で自分を蘇らせてはいけない。それがこの遊び場のルール。ルールに抵触すれば重いペナルティが課せられる。ならどうだ? 幽霊っ子は死んでからどうやって魔女としてここにいるかは分からない。分からないがそれは寂しい事だった筈だ。幽霊として現実をさまよい、暇を持て余す。たった1人で、誰とも会話する事なく。苦しい筈だ。そう思った。しかしそれならば俺は帰る事などできない。まだしなければならない事がある。常識、ルールなんて物はどこかに綻びがある。この場合俺がその綻び。この幽霊っ子は魔女のくせにそんな事も見抜けないらしい。俺は思う。将棋でも同じだ。考えた一手など……意味はない。意味があるのは……その裏。将棋は、将棋盤をひっくり返してこそ面白いのだから。

 

「そっか」

 

「うん……わかったらさっさと」

「もう一回」

 

「あ? 」

 

「今貰った命を賭けのチップにしてもうひと勝負」

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

この人間は今何て言った? もうひと勝負? しかも今貰った命をチップに? 笑える。物凄く笑える。そんな事をするメリットがこの人間にあるのか? いや、あるわけはない。なら何故? どうしてまだ勝負がしたい? 私には分からない。せっかく手にいれた命だ、何を無駄にする必要があるのか。人間のくせに、いや、人間だからこそ……命は惜しむものだ。命が惜しくないのか? そう考える。だが死んでいる身だ、それはない。それは現実で接してよくわかった事だ。なら何故? 顔を見れば真剣なのも分かる。では現実よりも己の欲求を優先した? 人間の分際で魔女を暇つぶしの道具にしようと? 笑える。ナメるにも程がある。少し甘えて可愛がってやればつけ上がりツバを吐きかける。人間とは愚かな生き物だ。そう改めて感じる。殺すのは簡単だ。だがそれではつまらない。さっさと帰ってもらうのがいいだろう。

 

 

「ぷっ! ……はは……あははは!! 人間? 調子に乗ってんじゃないよ。命は無駄にするもんじゃない、さっさと帰れ」

 

「貰った命が有限であるならば、無駄に使ってこその命でしょ? それにこんなつまらない生活より、ママさんや妹と楽しく過ごしたくない? 」

 

「それは何が言いたい? 人間のくせに私をナメると許さないよ? これでも魔女だからね? 貴方を殺すくらいわけないだけど? 」

 

「負けるのが怖いなら構わないけど? 魔女はその程度の勝負度胸しかないのか? 」

 

「……は……はは……あはは! あっははははは!! あひ! ははははははは! ……はぁ〜あ、いいね? 上等じゃないか? 人間如きが私を挑発するなんて笑えるよ! けど命をかけての賭けとなれば勝負もそれの見合った問いになるよ? 人間如きが答えられるわけもない、ぷーくすくす。いいよ、わかった。受けよう。その勝負。これは本来の魔女の遊び。ルールは変わらない。でも己の求めるものは勝負が終わるまで決して晒してはいけない。後、貴方は人間だ。だから勝負の最中の長考は限りなく認める。そして現実に戻ってヒントを求めるもよし。そうじゃないとフェアーじゃないからね? あ〜ただ現実に戻る際は貴方は幽霊として戻って貰う。命はチップにしてるからね? あははは! じゃ〜始めようか人間? 命を賭けた暇つぶしを! 」

 

「そうこなくちゃ」

 

「あはは! いくよ? 問い……『貴方はいつ死んだ? 』」

 

「え…………」

 

私がそう質題すると人間は一気に顔色を変え驚き固まった。しかしそれは当然の反応と言える。自分がいつ死んだなどと聞かれて正確に答えられる者は少ない。だから今人間が考えているのは自分がどこで死んだ? いつ? 決まっている。フェイトとあの子に吹き飛ばされた時だ……そう考えている。それが人間の限界。これは意地の悪い問いだ。でも私は魔女。意地が悪くて何が悪い。これは勝負だ。せっかくあげた命を無駄にし、私をナメ、あまつさえこの私を挑発した愚か者。殺してやる。完膚なきまでに負かして。いくら長考しようと無駄だ。この人間に勝ち目などない。何故なら死んでいる人間には知りえない情報と答えだ。魔女の暇つぶしとは言っても言い方が違うだけでこれは潰し合い。けど私達はそれを遊びと呼び楽しむ。相手を屈服させ、蹂躙し、貶める。なんて素敵で気持ちのいい事か。成仏なんてさせない。私の人形だ。人形にしてやる。私はそう決めた。

 

流石に人間相手は初めてだがこれはこれで楽しめるというもの。この人間の絶望する顔が目に浮かぶ。それを眺めるのが今の私の楽しみだ。考えろ、考えて知れ。自分がいかに無力で脆弱な人間であるかと。そう心で微笑む。目の前の人間は必死に長考している。今何を考えているのか。絶望しているのか? 思い知っているのか? いずれにしてもいい顔だ。私の心をこれでもかというくらいくすぐってくれる。するとこれ以上考えても無駄と判断したのか現実に戻ると言い始めた。もちろん許可する。じっくりと考えて絶望して貰わなければ面白くもない。しかし人間が出て行った後、珍しいお客さんが来た。本当に珍しいと思う。

 

普段絶対に顔なんか出さない。私が1人で暇してるというのに来やしない。本当に冷たい女だ。でも魔女だから冷たくて当然。それは普通だ。なら何故きたのか? 一体何につられてここに来た? 笑える。本当に笑える。あの人間……どこまで私を楽しませてくれるのか。こんなお客さんまで呼び寄せて? 本当面白い。そう思う。銀髪っぽい髪色に先っちょが黒くなっているこの女。いつもは3人でいる筈だが……何を考えているのやら。己の楽しみの為ならどこまでも冷酷に残酷な事をする女。私がもっとも屈服させてみたい魔女。他の魔女なんか屁とも思わないがこの魔女だけは違う。私が唯一認める女だ。感情論では動かず、完全に相手を制圧する。

 

「我らに黙って随分面白そうな事やってるじゃないか? 人間なんかと遊んでそんなに楽しいのか? どうなのだ、エターナル・ロリータ」

 

「あはは! これはこれはディアーチェ卿? お久しゅうございますね? 」

 

「その馬鹿にしたような物言いはやめよ。我は質問しておるのだ」

 

「……まぁ〜面白いと言うだけで所詮は人間。私が負ける事はないよ」

 

「だと……いいがな? お主ともあろうものが人間に負けたなどとなれば……こんなに楽しくて愉快な事はないからなぁ? 」

 

「ぷーくすくす、あまり口が過ぎると殺すよ? 」

 

「あーはっははは!! 面白い! お主如きが我に勝てるなら是非やってみるがいい。服を剥いでペットにしてやるわ! 」

 

口ではそう言うが私が彼女に勝てる事はない。もし本気でやれば確実に殺されるのは私の方だ。きっと私の魂を縛り、裸の私に首輪と紐をつけて散歩でもするつもりなのだろう。そんな屈辱を味合うくらいなら消滅した方がマシだが。敵に回すとこれ程嫌な魔女はいない。この女があの人間に目をつけたとなれば、あの人間が不憫になると言うものだ。でもこの女に屈服させるくらいなら私が屈服してやりたいと思わなくはない。なにせあの人間と最初に関わったのは私だ。渡してやる義理がどこにある? いや、ない。奪われる前に私が貰う。この勝負であの人間を私のおもちゃにする。そうすればここにいても寂しくはない。1人でいなくていい。ず〜と遊べる。そう思うのだ。しかしこの魔女、今何を考えて笑っているのか。何を企んでいる? 私は考察するがまるで読めない。この女の考えてる事は分からない。何も手を出してこなければいいのだが。

 

「時に……アリシア卿知っておるのか? 今魔女達がここに集結しつつある」

 

「へぇ〜それは愉快な事だね? で? 一体何の為に? 」

 

「宴を……な? 」

 

「はは! 宴? それは楽しみだ! 今回は何人消えるかねぇ? ぷーくすくす」

 

 




次回もよろしくお願いします。
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