ってなわけで秘書艦Верный君、第5話です。
お楽しみください。
11/16、Верный君の一人称が「私」になっていたところを「僕」に修正。
司令官の車に乗って内地の街にある大型ショッピングモールまで来た僕ら。
時間が時間ということもあり、まずは適当なところでお昼ご飯を食べて腹ごしらえをしてから買い物をすることにした。腹が減ってはなんとやら、ってやつだね。
それで目についたファーストフード店に入ったわけなんだけども…
「…ん?どうしたВерный」
「…いや、よく食べるなぁって…」
まさか司令官一人でセットを3つも頼むとは思ってなかった。
その結果出来上がったのは目の前にあるポテトの山。
…うぇっぷ。見てるだけで気持ち悪くなってきた。
「そうか?これぐらい普通だろ?」
「いや、セット3つはどう考えても正気の沙汰じゃないでしょ…。見なよこの目の前のポテトの山、頭おかしいんじゃないの?」
「そこまで言うか!?別に食べきれるからいいだろ…」
「いや、それはいっつも見てるからわかるけどさ、こう、もっと周りの目とかさ…」
「いいか、Верный。モノを食べる時はな、誰にも邪魔されず、自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだ。独りで静かで豊かで…」
「孤独なグルメがしたいならこんな店に入るな。というか独りでもないし」
「違いない。まぁパパッと食っちまうからもうちょい待ってろ。ていうか、お前はもう食べ終わったのか?」
「そりゃあ誰かさんみたいにセット3つなんて暴挙してないからね。普通においしく完食したよ」
いやぁ、久しぶりに食べたけどなかなかおいしかった。
鎮守府だと鳳翔さんとかが料理担当だから中々こういうファーストフードって食べれないんだよね。
「いっつも思うがお前ほんと少食だよな。そんなんでよく体持つな?」
ポテトの山と格闘する司令官が片づけ終えた私のトレイを見つつそう言ってくる。
「『燃費がいい』と言ってほしいな。というか司令官と比べないでほしいんだけど…」
そりゃあこれだけ食べる人から見たら少なく見えるかもしれないけど。
「いやぁ、にしてもバーガー単品にナゲットだけってのは…あと、『司令官』って呼ぶな」
「あー…うっかりしてたよ。ごめんね、『日高さん』」
司令官ーーー日高さんは休日に「司令官」呼ばわりされるのを嫌がる。
なんでも「オフの日なのに仕事を思い出すから嫌だ」、とのこと。公私はきっちり分けたいってことだろう。
その気持ちはわからないでもないんだけど、普段からずっと「司令官」って呼んでいるせいで「日高さん」呼びは未だに慣れない。
そもそもこんな風に日高さんとオフが被ることなんてめったに無いしね。被ったにしても一緒に内地までくるなんてそれこそ最初期のまだ私以外にほとんど艦娘がいなかった頃以来じゃないかな?
「んで、これからどうするの?どっから回る?」
最後に残しておいたオレンジジュースを飲みながら日高さんに尋ねる。
…これ果汁100%のやつだな。私としては果汁20%くらいのやつの方が飲みやすくて好きなんだけど…。
「あー…まずは先に目的のもん買っちまおうぜ。そっから適当に時間つぶせばいいだろ。」
「ってことは日高さんのアウターと私のコートか。いいのがあるといいけどなぁ…」
そう言いつつオレンジジュースとのにらめっこを止めてテーブルの上に視線を戻すと、ポテトの山が9割なくなっていた。
「こんだけでかい街なんだし、流石にどっかにはお目当てのもんがあるだろ。…うっし、食い終わったぞ」
「ま、それもそうか。それじゃ食べ終わったみたいだし早速行こうか。あ、お腹苦しいならもうちょっと経ってからにするけど?」
「いや、いい。食い終わってすぐ動けるように腹八分目にしたわけだしな」
あれだけ食べて腹八分目とかマジかよ。
「…日高さんさ、やっぱり頭おかしいんじゃないの?大丈夫?病院行く?」
「気遣いをしたのにキチガイ認定されるとは…」
そんなことを言いながらごみを捨ててトレイを返し、店を出る。
さて、さっき言っていた通り、最初は日高さんのアウターと僕のコート探しからだ。
俺たちの予想以上にショッピングモールは賑わっていた。
そこかしこから人々の話す声や店員が客を呼び込む声、ゲームセンターも近くにあるせいかゲームの電子音なんかも聞こえる。
「おぉー…平日だってのに結構人いるな…」
「そうだねー…夏休みでも何でもないはずなのにね。まぁ繁盛してることは良いことだよ」
「確かに寂れたシャッター街よか万倍マシだわな。さて、じゃあ店回るか」
「あいあいさー」
俺の言葉に気の抜けた返事を返しながら、ふらふらと前を歩きだすВерный。そこかしこの店の前に行っては自分の興味を引いたものを見て回っている。
時々振り返ってこちらを見てはいるが…なんというか、目離すとすぐどっか行きそうだな。
「…どしたの日高さん?さっきからぼーっとこっち見てるみたいだけど」
「ん?あぁ、悪い悪い。お前が少しでも目離すとどっか行っちまいそうでな」
「なに、僕のこの儚げな外見に見惚れてそんな感想まで抱いちゃった?」
「そうじゃなく、何にでもすぐ興味持つ小学生の親になった気分だよ」
「いくら背のちっこい僕でも小学生扱いは怒るぞ日高さん?!」
いや、普段の行動からもさっきの行動からも否定できんだろうに。
「その『何言ってんだコイツ…』みたいな目で見るのはやめてくれないかなぁ…。」
「そう思うんならもうちっと大人しくしてろ。ほら、服屋見つけたから行くぞ」
「ちぇー…。あのチンアナゴの抱き枕可愛かったのに…」
「そんな見たいならあとから戻ってくりゃいいだろ…」
「別にそういうんじゃないもん。ただ気になっただけだし」
「なんだそりゃ…」
そう言いつつ俺が示した服屋に向かってる歩いていくВерный。
時々、こいつの行動の意味が分からない時がある。…まぁいいか。こいつのことだ、どうせ何も考えてないんだろうし。
「…なんだろう、今誰かに馬鹿にされた気が…」
おのれバカの癖に鋭い。いや、バカだからこそ、か?
「気のせいだろ。とっとと行くぞー」
「むぅ…釈然としない…」
そんな会話をしつつ見つけた服屋に入る。すると、中にいた店員がこちらに気付いて話しかけてきた。
「いらっしゃいませー!本日はどのような服をお探しですか?」
「最近寒くなってきたんで1枚新しいアウターをと思いまして。こう、パッと上から羽織れるような汎用性のあるやつが欲しいんですけど…」
「そうですね…。では、こちらなんていかがでしょうか?」
そう言って見せられたのはカーキ色のジャケット。
全体的にスリムな形になっているカジュアル且つ機能性のあるもので、大き目のポケットが特徴的だ。
「おぉ、これはなかなか…。どう思うよ?」
「いいんじゃない?普段からインナー無地ばっかだし、それ上に着れば下がただのTシャツでも割とお洒落になるし」
「そうですね、どちらかというとミリタリー系の雰囲気があるものなので、普段から下に着ているのがシンプルなものが多いならかなり映えると思います」
「ほう、それはそれは…」
いいねぇ、リアル軍人の俺にピッタリじゃないか。
「なんか買う気マンマンみたいだけど、もう決めちゃっていいの?ここまだ1件目だよ?」
「なぁに、極論服なんて着れれば何でもいいんだよ」
「さいで…。じゃあ、これお願いします」
「ありがとうございます!他にも何かお探しでしたら一旦レジの方でお預かりしますがいかがいたしますか?」
「あー…どうする?まだ見るか?」
「いや、他のとこのも見て回りたいしいいや。お会計でお願いします」
「かしこまりました、それではレジのほうへどうぞ」
店員に連れられてレジへ行き、会計をする。
その最中、袋詰めの作業をしつつ店員が話しかけてきた。
「今日はお二人で来られたんですか?」
「えぇ、まぁ。近くにあってフラッと来られるところなもんで」
「お住まい近くなんですねー。いいですねぇ、僕もしてみたいです。あ、お荷物出口までお持ちいたしますねー」
「あぁ、ありがとうございます」
そうして店員は出口まで俺らを見送って、買ったジャケットが入った袋を手渡しながら、
「ありがとうございました、今日のデート楽しんでいってくださいねー!」
とにこやかな笑顔で言ったあと、その言葉を訂正する暇もなくお辞儀をして店の中へ戻っていった。
「…デート、デートねぇ……」
「…実情は男二人なんだけどね?」
「いやぁ、傍目から見たらただのカップルしか見えんわなぁ…。もしくは可能性は低いけど親子ってとこか」
「誰が女だ誰が。…まぁ実際私も今朝鏡見て『何だこの美少女。…あ、僕か』とはなったけどさ。」
「もう薄々自分でも認めちゃってんじゃねーか」
「違うんだ…この美少女全開な見た目が悪いんだ…」
「お前それ知らん人が聞いたらもの凄いナルシストな発言だからな…。いや、俺は意味分かるけどよ」
「…とにかく。これで日高さんの目標は達成できたわけだな」
「まぁ…そうさな。あとはお前のコートだけか。折角来たんだ、さっさと見つけて今日は遊ぶぞ」
「あいあいさー」
と、言って探し始めたものの。
「無いな…」
「無いねぇ…」
歩き疲れた俺らは休憩スペースでコーヒーとジュース片手に休んでいた。
「いやぁ、たかがコート1枚がこうも見つからないとは思わんかったぞ…」
そう、無いのだ。いいと思えるものが。
普通のコートならいくらでもあったんだが、Верныйが欲しいのは「海の上でも着られるようなコート」。
簡単に言うなら防風性はあっても防水性がなかったり、そもそも水に濡れるのがダメな、言うならばファッション用のコートしか無かったのだ。
「服屋さん10件くらいは回ったよね…。なんだかんだ日高さんのジャケット買ってから1時間くらい経ってるよ?」
「うげ、マジか。そろそろ良いのが見つかるといいんだが…」
「…これ買わずに今までの使ってちゃダメなのかなぁ?」
見つかる自信がなくなってきたのか、Верныйがそんなことを言い出す。
「まぁ、俺は構わんが、暁から何言われるかわかったもんじゃないぞ?」
あいつのことだ、「ぷんすか!」という擬音が目に見えるような感じで起こるに違いない。
「でっすよねー…そのあとに雷と電に正座させられて説教を受ける僕の姿が目に浮かぶよ…」
「だろ?そうならんためにもとっとと見つけるぞ…っと」
そう言いながらコーヒーを飲み切って立ち上がる。
「はぁーい…。……あ。」
俺の言葉に気の抜けた返事を返し、休憩を追えてまた探し始めようとした矢先、何かを見つけたのか、一方向を見てそちらに向けて歩き出すВерный。行先は…アウトドア用品店か?
俺もコーヒーの空き缶をごみ箱に捨ててから後を追う。
「おい、どうした?また変なもんに引っかかってんじゃないだろうな?」
「いやいや。ついにいい感じのを発見してね。これ、どうよ?」
そう言って見せてきたのは紺色ベースの迷彩柄のフィッシングジャケット。冬季用迷彩、と言ったほうがわかりやすいのだろうか。
なるほど、釣りのために作られたフィッシングジャケットならば防水性はもちろん、冬の潮風で体が冷えるのを防ぐために防風性も高い。また、釣りのために作られたことから機能性も高そうだ。
まさにВерныйが欲しかったコートそのものだ。
「おぉ、いいじゃねぇか。要望通り、まさにドンピシャなやつだな」
「でしょー?そこの釣りの写真見て閃いたのよ。『釣り用の上着なら濡れてもいいように作ってあるんじゃないか?』ってね」
「ほぉ…お前にしちゃぁ冴えてるじゃねぇか。見直したぜ」
「日高さんの中でどこまで僕は馬鹿扱いされてるのか、一回ひざを突き合わしてお話しをしたほうがいいみたいだな?」
イイ笑顔をしたВерныйがこちらを向いて何か言っているが無視して話を進める。
「んで?それにすんのか?」
「うん。これでいい、というよりこれがいい」
「そうかい。じゃあそれ貸せ」
「…?よくわかんないけど、はい」
「ん。すいませーん、これくださーい」
Верныйが選んだコートを持ってレジへと向かう。
一瞬何が起きたかわからず呆然するВерный。再起動すると慌てて俺のあとを追ってきた。
「ちょっ、それ僕の買い物なんだから僕が出すって!元々そういう約束だったじゃん!」
「あぁん?良いんだよ、買ってやるって言ってんだから大人しく奢られとけ」
折角人が払ってやろうって言ってるのに納得せずに尚も食い下がるВерный。
「いや、でも…!」
「じゃああれだ。どうしてもってんなら、これ着て前以上に働け。それでチャラにしてやるよ」
「…あぁ、くそぅ、ズルいぞ日高さん…。分かったよ、精一杯それ着て働かせてもらうよ」
「ん、それでいい」
その後もショッピングモールの中を2人でほっつき歩いて買い物を楽しんだり、見かけたゲームセンター内で不良に絡まれてВерныйがゲーム対決で全員撃退してそのゲーセンでの伝説になったりもしたが、それはまた別の話だ。
休日を終えて、鎮守府に帰る俺達。
また明日からは大量の書類との格闘や
だが、それが俺の仕事だ。
いつか日本の海を、世界の海を深海棲艦共から取り返す。
その為の、ガキの頃当たり前に見ていた綺麗な海を取り返すための仕事。それこそが俺が選んだ、誇りを持っている仕事なんだ。
願わくば、次に内地に来る時には世界中の海が平和になっていることを祈って。
「あ、精一杯働くって言ったけど完全週休二日制でおやつ付きね?そこは譲らないぞ」
「お前休みはともかく間食は取るなっつても勝手に取るだろうが!」
洋服の描写ェ………。
分かりにくかったらすいません。
Верный君の買ってもらった服は、簡単に言うなら秋グラのあのジャンパーです。
前書きにも書きましたが、「FGO SS 一週間一本勝負」という小説と同時投稿致しました。
あ、ちなみに別アカウントです。
URLの方は私の活動報告、「共同制作始めました。」に張ってありますので、興味がある方は是非ご覧になってください!(ダイマ)