偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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序幕 偽・紅桜篇①

 

 

 夢から覚めたとき、うっすらと目の前に見える顔は、妖しく微笑んでいた。

 

「桜……もう少しだ。もう少しで、お前を救ってやれるからな」

 

 左目が包帯で巻かれたその顔は、女のように美しく、だけど死神のように冷たい。

 

 ――気取ったこと言ってるんじゃないわよ。

 

 そう言い返してやりたいが、わたしの口は動かない。口だけではない。手も、足も、まるで始めから存在しないかのように何にも感覚がなくて。

 

 だから、わたしの頬にそっと触れてくる手を、払いのけることすら叶わない。

 

「もうすぐ、紅桜が完成する。そうしたら、もうお前は無理やり戦わされることもないんだ。代わりに全部あの刀が――化け物が、敵を排除してくれるんだ。だから桜、もうお前が化け物と罵られることはない。お前は助かるんだ、桜」

 

 助けられる必要はないのだ。

 

 この男に、助けてもらう筋合いはないのだ。

 

 なにせ、わたしはこの人の一番大切なものを壊したのだから。

 

 わたしが、この人たちの一番大切なものを壊したのだから。

 

 だから、わたしはこの気取った奴に、哀しげな笑みを向けてもらう筋合いはないのだ。 

 

 こんなに優しく撫でてもらう権利はないのだ。

 

 なのに。

 

 それなのに。

 

「桜……」

 

 さも愛おしいかのように名を呼ばれて、わたしは目を背けたかった。

 

 だけど、それすらも叶わなくって――

 

 

 

 

 そしてわたしは夢をみる。

 

 荒れた荒野で戦う侍。敵は宇宙からの侵略者である天人(あまんと)

 

 地球を、日本を、江戸を、地球人のものであると死守するために、血を流して戦う男たち。

 

 その男たちと共に、わたしもこの星を守ろうと刀を振るう。

 

 大切なものがあったから。大切な人たちがいたから。

 

 それらを守りたいがために、わたしは数えきれないくらいの敵を討つ。

 

 敵は異形の集。赤や緑や動物のようなものたちを、斬る。切る。伐る。

 

 しかしそれらの形がだんだんと変わっていく。

 

 どんどん、人間になっていく。見覚えのある顔に変わっていく。

 

 それでも、わたしは斬るのをやめない。

 

 サングラスをかけたいつも笑っている男を斬った。

 

 優しげな風貌をした独特のカリスマ性がある男を斬った。

 

 いつも人を見下している色気のある男を斬った。

 

 それでも、わたしは斬るのをやめない。やめることができない。

 

 そしてとうとう、わたしはやる気がなさそうで、だらしのない男に刀を向ける。

 

 その時、その男は持っていた刀を捨てた。

 

 そして、言うのだ。

 

『お前に斬られるなら本望さ』

 

 そして、笑うのだ。

 

『それで、お前が救われるのなら、いくらでも俺の命、くれてやらぁ』

 

 そして、

 

『だけど、約束してくれ。先生を……俺の大事な友が幸せに暮らせる場所を、守ってくれ――』

 

 

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