偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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猿山の大将は高いところが好き①

 

 

 

 

 将軍といって思い浮かべるのは、ちょんまげとでっぷりしたお腹だった。

 

 ちょんまげは昔からの伝統だろうし、江戸一番権力を持っているのが将軍というものだから、きっと私腹の肥え具合は身体も比例しているんだと思う。

 

 きっと、内面が滲み出るようなブオトコだろうと。

 

 天人(あまんと)と仲良く江戸を乗っ取ろうとしている男だと、そう思っていた。

 

 徳川茂茂(とくがわしげしげ)

 

 ちょんまげは想像通りだった。

 

 しかし、身体はスレンダーだった。顔立ちものっぺりしながらも真面目さが滲み出ていて、そして声も落ち着くいい声だ。

 

「お初にお目にかかる、沖田総悟(・・・・)殿」

 

 そんな愛想のいい笑顔を向けないでくれたまえ、将軍よ。

 

 わたしは天守閣に乗り込む気は満々だったが、貴方様にお会いするつもりは微塵もなかったのですよ。大胆かつひっそりと潜り込んで、こそっと用事だけ済ませて退散するつもりだったのですよ。

 

 まぁ、真選組の上官、警視庁長官松平片栗虎(まつだいらかたくりこ)というおっちゃんに会うとは聞いていたわさ。

 

 けどね、まさか将軍様にお会いするとは思わなかったのよ。

 

 ――といった目で左隣の近藤を見る。近藤も目が泳いでいた。気持ち悪いバカっぽい笑みを浮かべている。

 

 次に、右隣を見た。松平のおっちゃんは短い白髪に、将軍の前だというのにサングラスをかけたままの、よく言えばダンディなお偉いさんらしい。ここに通される前に松平にも挨拶と、経緯を話したのだが、その時聞いた声は、とても渋く、深みのある、二度と忘れないような独特な声音だった。そんなおっちゃんは、近藤とはうって違い、のんびりと胡坐を掻いて、わたしの肩を叩いた。

 

「いやぁ、悪いね将ちゃん。こいつ将軍の前だから緊張してやらぁ」

「固くならないでくれたまえ。良ければ、君も将ちゃんと呼んでくれても構わない」

 

 将ちゃん呼べるかぁぁぁぁぁぁあああああああああ!

 

 胸中叫びながらも、わたしは額の脂汗を拭う。ゆっくりと一呼吸し、頭を下げた。

 

「初めてお目にかかるぜぃ、将軍様よぉ。おれぁ、真選組一番隊隊長、沖田総悟でさぁ」

(桜ちゃぁぁぁぁぁぁあああああん!)

 

 もの凄い小声で、近藤が叫んでくる。

 

(どうして将軍様にそんな喋り方しちゃうの? ねぇ、将軍様だよ将軍さま!)

 

 わたしは疑問符を返す。

 

(沖田少年、こんな喋り方してなかった?)

(普段はね! 普段は確かにそんな生意気な感じだけどね! 常に見下した敬語でいらっとするときおれもあるけどね! けど、さすがに今は将軍様の前だから! てか、そういったクオリティ求めてないからっ!)

(ちぇっ)

(なに? 今、舌打ちした? 残念なの? 何気に楽しんでたの?)

 

 前を見ると、将軍は少し残念そうな顔をしていた。今の会話が聴こえたわけではなさそうだが、なぜだろうか。

 

 そんな将軍が、気を持てなおしたように言う。

 

「しかし……気を悪くしたら悪いのだが、女みたいな凄腕剣士が真選組にいるとは聞いていたが、こんなにも美しいとは思わなかった。まるで女形俳優さながらだな」

「ありがてぇお言葉です」

 

 わたしは将軍にむかって、ぺこりと頭を下げた。まぁ、当然といえば当然。なにせ、女が男装しているのだから。

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