偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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結婚を人生の墓場だと決めた人は誰か②

「いやー、トッシーが好きな歌の一つなんだけどさー、今の土方さんにぴったりだなぁって思って」

「やめろ、そーゆー著作権的に危ないのは」

「ほんと、土方さんって総悟くんと同じようなこと言うのね」

「あぁ?」

 

 今度は口に出して言う。それに土方は、

 

「てめぇが言いたくなるようなこと、言うからだろーが」

 

 と、やっぱりそれを嫌がることなく、認めた。

 

「なんで土方さん、総悟くんに嫌われてるの?」

「知らねーよ。俺が聞きたいわ。昔っからだ、あいつが俺を一方的に嫌ってるのは」

 

 土方は煎餅を完食すると、上着のポケットを漁っていた。

 

「土方さん的には、やっぱり仲良くしたいの?」

「そりゃあ……な。武州から一緒に出てきた真選組以前からの仲間だしな」

 

 タバコを口にくわえて、火を付けた。ライターがマヨネーズの形をしているのが可愛らしい。

 

「けど、昔っからだ。今さらそんなの、気にしてねーよ」

 

 ――まぁ、ミツバさんも土方さんのこと好きそうだしね。

 

 しかし、少なくとも、沖田が土方のことを嫌う理由は、わかったような気がした。

 

 大事な姉が、よその男を好いていることは、気に食わないだろう。

 

 ましてや、土方のこと態度だ。ミツバの好意を知った上での拒絶とか、充分にありうる。

 

 ――不器用だなぁ。

 

「ごめんねー素直じゃなくってー」

「だから歌うなっちゅーの!」

 

 その時、ボーと船の寄港の合図が鳴る。

 

 土方はタバコを消して、双眼鏡に持ち替えた。

 

 けっこう大きな船だ。雰囲気的には、貿易船。シンプルな形をした船である。

 

「お、ビンゴだな」

 

 土方が言った。

 

「あの船を探してたの?」

「あぁ。蔵馬当馬(くらばとうま)という商人が、攘夷浪士に違法な武器を横流ししているという話が入ってな。その調査をしてたんだ」

「刀とかってこと?」

「もっとタチの悪いもんさ。拳銃やら、マシンガンやら――そういうもんは、政府で輸入や流通を取り締まってるんだがな。近頃、攘夷浪士の奴らの武装が進んでたから、山崎に調査させてたのが、ようやく実ったってもんだ」

 

 わたしは小さく笑った。

 

「その山崎が、その徹底的証拠の瞬間にいないと?」

「あぁ、そのパフェ吐血事件とやらでな。で、その吐血事件の犯人は誰なんだ? 目星はついてんのか?」

 

 土方がわたしの方を見て、にやりと笑う。

 

 わたしも、同じような笑みを浮かべた。

 

「大丈夫よ。被害者が訴えなければ、犯罪にはならないんだから」

「よく言うぜ」

 

 夕陽が、海に隠れようとしている。

 

 

 

 その後、屯所へ帰る前に、蔵場当馬の屋敷へ寄ることになった。

 

 あくまで、寄るだけ。今後、本格的な調査のための足掛かりである。

 

 なんでも、来週に再び大きな交易があるとの噂があり、その時には現行犯で捕らえようという魂胆らしい。

 

 土方の運転するパトカーに乗って、その屋敷の前へ。

 

 けっこう大きなお屋敷だった。一目でわかる、お金持ちの家。召し使いも何人も抱えているであろう。

 

 ――この家も、いつかは潰れるのかな。

 

 そう考えて、わたしは思わず苦笑した。

 

「なんだ? 何か変なもんでも見つけたか?」

 

 隣の土方が、つまらなそうに訊いてくる。

 

 わたしは首を振った。

 

「いや、土方さん、けっこう丁寧な運転するんだなー思って」

「ルールを守るお巡りが荒い運転してどーすんだ」

「お仕事お疲れ様です」

 

 屋敷の正門前を通ろうとした時、車道を邪魔するように立ち話をしているカップルが、ライトに照らし出された。

 

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