「屋敷に入ろうとしてるのか? ちと
正直、職務質問するほど怪しくは見えない。女は大きな紙袋を持っているし、男は着ぐるみのように大きな帽子を被っているが、どうせデート帰りの浮かれたカップルであろう。
それどころか、逆光で見にくいものの、非常に見覚えのある気すらする。
――けど、大丈夫な気がするでいられないのが、お巡りさんか。
もしも助かる人がいるのなら。
もしも防げる事件があるのなら。
それを迷わず実行するのが、土方十四郎である。
「お前ら、何やってんだ?」
車から降りた土方が、ヘッドライトに映し出された。
振り向く女が、唖然と口を開いた。
「十四郎……さん?」
彼の名を呼び、駆け寄ろうとしたのか、重心が前のめりになった時、その女は急に胸を押さえて咳き込み出す。落ちた荷物が道に広がった。
「ミツバさん!」
わたしはその様を見て、慌てて車から飛び出す。
ミツバが膝をつき、道路に倒れるまであっという間だった。道に転がるのは、数々の
「ぼさっとしてないで、早く運ぶの手伝いなさい!」
煎茶に茶柱が横たわっていた。
なかなか風味の良いお茶である。お茶請けのお饅頭も甘過ぎず、夜に食べても胃にもたれることもないだろう。
――そういや、夕飯食べてないな。
「お兄ちゃんたちは夕飯、何食べたの?」
「チョッピーのナポリタンハンバーグセット」
なかなかボリュームのある夕飯だったようである。
しかし、銀時はお饅頭を何個もばくばく平らげていた。
わたしは机に頬杖をつき、そんな銀時を半眼で見た。
「太るよ?」
「甘いものは別腹っていうじゃーん? お兄ちゃんのお腹じゃなくて、きっとうろちょろ鬱陶しい副長のお腹につくんじゃないかなー」
「あ?」
部屋の中をうろうろ歩いてた土方が、片眉を上げた。
銀時はニヤニヤと見上げる。
「あー、ゴメンゴメン! もうすでにマヨで脂肪たっぷりだったかなー?」
「てめぇ、俺の腹のどこにそんな脂肪があるっつーんだ?」
「そりゃあ、男も女も見えないとこに隠してるに決まってんじゃーん。ましてや、恋人の『こ』の字も隠してる土方君だしねー」
土方が舌打ちし、銀時を睨む。
「何で今、恋人なんて単語が出てきやがんだ?」
「そりゃーねー、あんなお家の事情で別れることになってしまった昔の恋人同士の偶然の再会みたいなシチュエーション見せられたらねー。ねぇー、桜ちゃん?」
土方の苛立ちが絶頂のタイミングで話を振られて、
「まぁね。ミツバさんがあまりの衝撃で卒倒しちゃうくらいだからね。二人に事情がないわけはないよね」
と、煎茶をすすりながら、肯定した。
すると、土方がわたしの髪をわしゃわしゃ掻きむしる。
「あー、大丈夫。大丈夫だ、俺。初めからこの女にゃ何も期待してねぇーぞ、俺。苛立つだけ無駄だぞ、俺!」
おそらく、本当は殴りたいんだろうな、と思う。なんかそんな気がする。だけど、わたしが女だから殴れないとか、そんなくだらないことで葛藤している気がする。
まあ、そんなことわたしには関係ないのだが。
「土方さん、どうせならもっと愛情溢れる感じで撫でてもらいたいのだけど」
「あー可愛いなー! ペットは飼い主に似るって感じで、どこぞの飼い主にそっくりになってきやがってコノヤロー」
その時、ふすまが開いた。