偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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結婚を人生の墓場だと決めた人は誰か⑤

 

 

「総悟くん、もう仕事に行ったの?」

 

 朝、六時。曇り空でお日様は挨拶したように見えない空だが、わたしは元気に起きていた。きちんと桃色の髪もとかして、身だしなみもばっちりだ。

 

 訓練をする時間なのだ。

 

 本当ならば、沖田と訓練するのが日課のはずなのだが、かれこれ一週間、その日課が寂しいものとなっていた。

 

「ねぇ、土方さん。総悟くんに何の仕事させてるの? てか、顔すらろくに合わせてないのだけど」

「極秘情報だ。言えねーって、何度聞けばわかるんだ?」

 

 土方は庭の大岩に腰かけながら、タバコをぷかぷか吸っている。どうやら、朝の一服というものらしい。

 

 そんな土方に、わたしは頬を膨らませながら抗議した。

 

「なによ今更極秘情報なんて! わたしと土方さんの仲じゃないっ!」

「俺とお前がいつどんな仲になったよ……また親友とか言うつもりか?」

「港で密輸のことはあっさり――」

「オイ!」

 

 慌てた土方が、手でわたしの口を塞いでくる。

 

「蔵馬の件は他言すんな言っただろうが! 他の奴らにバレたら、総悟の立場がなくなんだろ?」

 

 小声でそう言ってくる土方に、わたしは唇を尖らせた。

 

 沖田の姉であるミツバの婚約者、蔵馬当馬が攘夷浪士に武器の密輸している。

 

 いわば、蔵馬は真選組の敵ということだ。

 

 その敵と縁者になる沖田の立場を危うんで、土方はこの件を極秘裏に始末したいらしい。

 

 だから、わたしも口止めをされているのだが、

 

「じゃあさ、わたしにも秘密にしておけば良かったじゃない?」

 

 そう尋ねると、土方はタバコに口を付けて答える。

 

「てめぇを野放しにしておくと、それこそ話大きく広げてくれそうじゃねぇーか」

 

 わたしは弱弱しく首を傾げた。

 

 実際、ミツバの婚約者が敵だとわかって。

 

 本当ならば、その婚約を破棄させたいと考えてしまうのだ。

 

 悪いやつと結婚だなんて、不幸になるに決まっている。

 

 敵と結婚するなんて、沖田が悲しむに決まっている。

 

 理由をあげるならば、色々出てくるが、でも、それを土方は否定するのだ。

 

「……俺だって、あいつにゃ幸せになって欲しかったんだよ」

 

 独り言のように呟く彼は、わたしのことを見ていなかった。

 

 想う女性は、一人なのだ。

 

 病弱で、故郷に一人置いてきた相手が、結婚するという。

 

 自分が幸せにしてあげることができなくても、幸せになってほしいと願うことを止めることはできないのだろう。

 

 それが、ひと時のまやかしだとしても。

 

 わたしは、そんな彼の独り言を聞かないことにして、わざとらしく首を傾げて見せた。

 

「そんなこと……しないと、思うけど?」

「嘘っぽくに言ってくれるなぁ、おい」

 

 苦笑して、土方はタバコの吸い殻をケースにしまう。

 

「で? てめぇは俺に何の用なんだ? 総悟の代わりに訓練付き合えってのか?」

「いや、そんなことしたら、総悟くんの機嫌がまた悪くなっちゃいそうだから違うのだけど」

「……お前、なんだかんだ総悟のこと好きだよな?」

「土方さんほどじゃないよ」

 

 ミツバのことを願って。

 

 沖田のことを想って。

 

 ――忙しい男だねぇ。

 

 そんな男に、わたしができることは対して多くはないけれど。

 

 わたしは、素直じゃない男に歌ではなく、曇天に負けない満面の笑みを送る。

 

「一緒にお散歩に行こう!」

 

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