「ミツバさーん、また来たよー」
面会時間にはまだ早い。けれどわたしはガラガラと気にせず、病室のドアを開けた。
「ふふ、今日も早いわね」
ミツバが個室で入院していること、そしてこの時間には起きていることは、この一週間毎日通って、充分に把握している。
しかし、今日はいつもと違う点があった。ベッドの中で上体を起こしているミツバが、不思議そうな顔をして、尋ねてくる。
「桜さん……この人は?」
「ん? アフロ君」
わたしの隣には、アフロの男がぼさっと立っていた。肩のないGジャンを着、黒いサングラスをかけて、アフロの下には赤いバンダナを巻いている。
そんな不審者が、手には薄紅色の
「……ん」
彼は不愛想に、ミツバにその花束を差し出した。ミツバはそんな彼の顔をじーと見つめている。
サングラスの向こうが、見えたのだろうか。
ミツバはニコリと微笑むと、
「ありがとう。すごく嬉しいわ」
シンプルに、最大級の礼を言う。その目は、涙ぐんでいるようだ。
「結婚……おめでとう……」
ごもりながらも、彼はそう返し、
「じゃあ、用は済んだから」
足早に、病室から去っていく。
その背中をくすくすと笑いながら見送って、わたしはミツバに補足した。
「いやね、本当なら、今日結婚式だったじゃない? とりあえず気分だけでも、と思いまして。最近は白いドレスを着て、そんな花束を持つ結婚式も流行っているみたいだよ」
「そう……素敵ね。桜さんは、そんな結婚式がいいの?」
問われて、わたしは苦笑した。
「自分の結婚式なんて、考えたこともないや」
「あら、総ちゃんはもう考えてるみたいよ。昨日、
「マジで?」
「まじで」
「参ったな……」
首を押さえるわたしを見て、ミツバはくすくすと笑った。
「ごめんなさいね。総ちゃんが無理言っているみたいで。本当は付き合っていないんでしょう?」
そう訊いてくる彼女の心境は、どうなんだろうか。
沖田がわたしに迷惑をかけていることを謝っているのだろうか。
それとも、ミツバに気をつかって嘘をついていると、思っているのだろうか。
「……わたし、けっこう総悟くんのこと、気に入ってますよ」
「あら、ちゃんとあの子も脈ありなのね」
「そう言われると、恥ずかしいんですけど……」
ミツバの表情はとても穏やかで。
窓の外は、紅葉が艶やかに飾っていた。
「桜さんの持っている刀、もしかして、わたしが総ちゃんにあげたものかしら?」
「あー、そういえば、そうみたいですね。総悟くんがくれたんですけど……やっぱり、ミツバさんからしたら、あまり気分がいいものじゃ、ないですかね?」
わたしは、腰の刀に手を添える。
伊東鴨太郎との内乱の際に、沖田がくれた刀だ。
近藤から、沖田が姉からもらったずっと大事にしていた刀と聞いてはいたものの、沖田本人から、特にその話は聞いていない。
「いいえ。その刀で、あなたが私の大切なモノを守ってくれたらいいな、と思って。私には、出来ないことだから……」