刀で髪をばっさり切ったものの、それでも男に比べたら幾分か長かった。だからハサミできちんと切ろうと思ったのだが、土方や近藤、その他あらゆる隊士たちに止められたので、無理やり一つに結っている。前髪もちょっと逆立てたりしてみた。正直、我ながらこの場で一番カッコいいと思っている。
真選組隊長の付き添いとして相応しいであろう人物に変装して、堂々潜入。はぐれたふりして、沖田少年を捜索、奪還、逃走という手筈。困ったことがあればすぐさま内部にいる近藤や松平、外が近ければ待機している土方等に報告という参段もばっちりだ。
そう――警視総監の松平も、わたしが女だということは知っているのだ。
それなのに、
「将ちゃぁん、真選組に女なんているわけねぇだろぉー? なぁー?」
わたしの胸を叩きつつ、一瞬むにゅっと揉んでくるのは、どうしてだろうか。
さらしもきちんと巻いているし、正直たゆむほどのものはないのだけど……それでも、なんか痛いし、なんか屈辱。微妙に鼻の下が伸びている気がするのがむかつく。隣の近藤も生唾飲み込んで、微妙に羨ましそうな顔をしているのが、気持ち悪い。
わたしはひきつる表情を無理やりコントロールして、愛想笑いを浮かべた。
「そうですぜ旦那ぁ。男の胸揉んで喜ぶおっさんが、いるわけないですぜぇ」
そして、松平の手をやんわり避け、ついでに爪を立てて抓ってやる。
それに眉ひとつ動かさない警視総監は、
「そういや将ちゃん、この沖田くんが、ちょっと
と、話を促してくれるのはさすがということか。けど、蹴鞠で天守の頂上に鞠って、無理ないか?
しかし、将軍は感心したような顔で顎に手を置く。
「ほぉ……お主、蹴鞠を
「へ……へい。暇さえあれば近所のガキと遊んでるんでさぁ、ちょいと調子に乗っちまいまして」
へらーっと笑いながら、内心覚悟を決める。
乗りかかった船だ。嘘も方便全力である。
「しかも、その鞠がとある少年の大事なものでやして。話聞いたら、亡くなった父ちゃんが誕生日に買ってくれた最初で最後のプレゼントみたいで……どうやらその父親、仕事で失敗し、そのプレゼントをあげた翌日に首を吊ったらしく。その母親も子を養うために夜の店で働いてるみたいでして……そんな子の大事な鞠を、おれは……おれは……」
わたしは一縷の乱れもなく綺麗に編まれている畳に、こぶしを思いっきり打ちつけた。うつむき、歯を噛みしめて、肩を震わせる。
――嘘くさい……とっさについた方便とは言え、芸がなにもないぞ、わたし!
そんな不安を隠しつつ、ちらりと将軍の顔を見ると、細い瞳からつーっと涙が落ちていた。
「そ……そんな可哀想な子供が城下にはいるのか……わかった。鞠は兵をあげて全力で捜索させよう!」
将軍はきらきらとした闘志を宿した目でそう語り、立ち上がる。
「いやいやいやいや、そうじゃないから!」
わたしも慌てて立ち上がり、将軍に駆け寄った。将軍は小首を傾げる。
「どうした、何が違うのだ?」
いや、正直あなたは間違っていないよ。むしろいいことをしようとしているよ。権力を乱用している気もしないでもないけど、ちょーいい人だよ、将軍。