それに、土方は何も返すことなく、ただ、息を整えていた。
「姉を握れば、総悟君は
「ハナから俺ら抱き込むために、あいつ利用する気だったのかよ……」
「愛していましたよ!
きっぱりと。はっきりと。
蔵馬はそう、彼女のことを言いきって。
「あのような欠陥品に、人並みの幸せを与えてやったのです。感謝して欲しいくらいですよ」
その顔には、
――道具には、情の欠片もないということ……?
ふと、そんなことを考えるが、言葉には出なかった。
何かを言い返そう、言い負かそうと考えるけど、なぜか、口が開かない。
土方は、そんなわたしを撥ね退けた。そして、懐からタバコを取り出して、火を付ける。雨にもタバコの火は消えることなく、彼は煙を吐き出して、小さく笑った。
「外道とは言わねぇよ。俺も、ひでぇことを腐るほどしてきた。挙句に、死にかけてる時にその旦那を叩き斬ろうとしてんだ……ひでぇ話だ」
「同じ穴の
「そんな大そうなもんじゃねぇーよ」
土方はそう言うと、ゆっくりと刀を横に構えた。多くの人を斬り、ボロボロになった刀が、濡れて鈍い光を放つ。
「俺はただ……惚れた女にゃ、幸せになってほしいだけだ」
その横顔は、とても鋭利だった。
「こんな刀振り回している俺には無理な話だが、普通に働いている奴と所帯持って、ガキ産んで、普通に生きていってほしいだけだ」
前を見る視線は、空からの黒い雨に怯むことなく、ただただ、前を見据えていた。
「ただ……それだけだ」
それに、蔵馬は見下げるように笑って、
「なるほど……やはり、お侍様の考えることは、私たち下郎にはわかりませぬな」
手を挙げた。
「撃てぇ!」
その瞬間、全然違う方向から爆撃が撃ち込まれる。蔵馬たちは、それに身を屈めた。
煙が退けて、飛び出してくる集団に、わたしは小さく微笑んだ。
「遅いわよ……」
「いけぇぇぇええええ!」
大将を筆頭に、黒い集団が刀を振り上げて、突撃してくる。
「真選組だぁぁぁああ!」
どこからともなく上がる怯えた声。近藤が何人もの浪士を切り捨てている最中、わたしたちの傍に駆け寄ってくるアフロがいた。
「桜ちゃん! どーしてこんな所にいるの!」
心配を顔に描きながら、頼りなさそうに駆け寄ってくる山崎に、わたしは愛想笑いを浮かべた。
「んー、アフロが愛の救世主になればいいかと思ってね」
「んなことどーでもいいから、さっさとこいつ連れてってくれ」
呆れたようにそう言う土方に、山崎はびっくりして、
「わわっ! 土方さんひどい怪我! それに対して……桜ちゃんは元気そうだねぇ」
「うん! 土方さんが身を挺して守ってくれたよ」
「やめてくれ……余計に情けなくなる……」
わたしの小さな嘘に、土方が頭を抱えた時だ。
「死ねぇぇぇえええ!」
そんな怒声が聴こえた時、わたしは思いっきり、土方に突き飛ばされた。