偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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バズーカを人に撃たずにどこに撃つ⑧

「桜ちゃんっ!」

 

 尻餅をつくわたしに覆いかぶさるように、山崎がわたしを抱え込んでくる。

 

 キン――と鼓膜が震え、熱と、爆音と、煙に巻かれる。

 

「トシィィィィイイイイッ!」

 

 土方の名を呼ぶ近藤の声が聞こえた。目の前の山崎は何回か咳をして、わたしに弱弱しく微笑んでくる。

 

「だ、大丈夫?」

「う……うん……」

 

 一瞬、反応が遅れた。

 

 その一瞬に、おそらくバズーカだろうが、撃ち込まれ、土方と、山崎に助けられた。

 

 真選組のみんながやって来て。土方や山崎と少しだけ談笑して。

 

 その結果――

 

「――山崎、桜のことは頼む……俺は……蔵馬を追う」

 

 硝煙が開けて見えた土方の背中は、さらにボロボロだった。足からの流血は勢いを止めず、刀を支えに使うことによって、かろうじて立っている、その後ろ姿に。

 

 ――今、かけれる言葉なんか、あるわけないじゃない。

 

 勢いをつけて走り出す土方の背を見つめながら、わたしは山崎に訊いた。

 

「ねぇ、なんか遠くを撃てそうな武器、ある?」

「え……? あれ、とか……?」

 

 山崎が指差したのは、少し離れたコンテナの上からこちらを見下ろす浪士だった。鋭く、長い銃に付いている小さなレンズを覗き込んで、照準を合わせているらしい。ライフルというものだ。

 

「よし、山崎。刀借りるわよ」

 

 言うのと同時に、わたしは山崎の腰から刀を抜き去り、頭の上の高さで、コンテナにそれを突き刺した。そして、それを足場にコンテナの上に登る。

 

「さ……桜ちゃん、何してんの!」

「いいからさっさと上がって来なさい! 副長からわたしのこと頼まれたでしょう!」

 

 狼狽える山崎を叱責すると、「えー」と非難の声を上げながら、山崎も同じような感じで上に登って来ようとしていた。

 

 わたしは彼を置いて、走る。浪士は数人いるものの、ライフルを持つ一人だけの腹を斬り、ライフルを奪い取ると同時に蹴り落とす。

 

 すると、いくつもの銃口と剣先がわたしに向けられた。わたしは着ていたジャケットを脱ぎ、走ってくる山崎に投げ渡す。

 

「山崎、あとは任せた! 武器たくさんそれに入ってるから、わたしのこと守ってね」

「え、え……ちょっ! おもっ、これ重過ぎんだけど、桜ちゃんっ!」

 

 あたふたとする山崎にも、浪士が数人向かうが、わたしは気にせず、近場の一番高いコンテナに上がった。

 

 ――いた。

 

 コンテナの間の道を三個挟んだ向こう、港沿いの広めの道路を、走り去ろうとする車が一台。その車の上には、土方らしき黒い恰好をした男がしがみ付いており、その車と並走する一台のスクーターに乗った白い男と、何やら揉めている姿が見える。

 

 その白い男の姿を見て、わたしは苦笑した。

 

 ――わたしの出番、なかったかな。

 

 しかし、車の勢いは止まらない。ふと、その車の先で、真選組の制服を着た少年が、一人佇んでいる姿が目に入る。彼は刀を構えているようだ。車を一閃するつもりなのだろう。

 

 それに気づいてか、土方も車の側面に移り、車を失速させようとしていた。それでも、車の勢いは止まらず。

 

 わたしは、ライフルを片手で構え、すぐさまトリガーを引いた。それを三回。狙い通りに後輪に当たったのだろう、車は少し後ろ側に傾き、横滑りに回転しだす。

 

 そこを、少年がすれ違いざまに一閃した。

 

 今日何回の聞いた爆発音と共に、赤い焔が立ち昇る。

 

 雨を降らす曇天の夜空を、その焔は赤く鮮やかに彩っていた。

 

「まったく……姉が危篤だって時に、弟までこんなとこ来て、どうするのよ」

 

 遠くで、土方と沖田が何か見つめあっている姿を見ていると、

 

「さ、桜ちゃん……、そろそろ、そろそろ……」

 

 すぐそばで聴こえた情けない声に振り返ると、山崎が必死にマキビシを投げながら、泣いていた。その必死さとマキビシの量に、確かに敵は近寄って来ないものの、少し離れた場所で、呆れたように立ちすくんでいる。

 

「ねぇ、山崎……一応、真選組の古株なんだよねぇ? 総悟くんよりも、一応、年上なんだよね?」

「一応じゃなくて、年上だけど! 今年でもう三十二だけど!」

「うそぉ!」

 

 全ての者に平等に落ちる雨の下、わたしは今日一番大きな声を上げた。

 

 

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