偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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鎮魂歌は誰のために歌うのか②

「それとこれと、どこが関係あんの?」

 

 そう訊いてくる銀時は、わたしの方を見ず。食べかけの赤い煎餅をじっと見つめていた。

 

 そんな彼の横顔は、昔と変わっていない。

 

「あの人、そんなに土方さんが好きだったのなら、田舎で大人しく待ってないで、後を追ってくれば良かったじゃない。そもそも、無理矢理一緒に付いてきたって、良かったのよ」

「ンなもん、実際なにがあったのか、お前知ってんのか? もしかしたら、あの野郎がコテンパンにあの女のこと、フッてたのかもしんないぜ? 他の女作ってたとかさ」

「そんな度胸ないでしょ、土方さんに。さっきドーテー言われて、赤面してたわよ」

 

 銀時は、小さく吹き出した。

 

「なに、アイツ童貞なの? それはそれで……さすがに若い頃のあの女の方が、童貞はちょっとなぁとか、思ってたかもしれねェーし」

「それもないわね。あの女は、病弱で薄幸な自分に酔うタイプよ。そーゆー顔してたもの」

 

 わたしが断言すると、銀時は一瞬、目を細めて、

 

「……で、それを反面教師にしようとか、そう思ったワケ?」

 

 そう言うと、わたしの頬を手で触れて、ぐっと顔を引き寄せられる。視界の端に、食べかけの煎餅が落ちていく様を見た。

 

「なら、こういうコト、したいワケ?」

 

 わたしの顔を両手で押さえる銀時に顔に、悪戯な色はなかった。わたしを見つめる瞳はどことなく赤く、徐々にその距離を近づけてくる。

 

 きっと、彼は、わたしが撥ね退けると思っているのだろう。

 

 そして、顔を赤くしながら、ビンタでもしてきては、セクハラだとか罵るだろうと踏んでいるのだ。

 

 ――ナメてくれちゃって!

 

 わたしは両手を伸ばした。銀時のくしゃくしゃな頭を抱えて、自分から彼の唇を噛んでやる。

 

 自然と閉じていた瞼を少し開けば、彼は少し驚いたように目を見開いていた。

 

 少しだけ彼の唇を舐めて、顔を離す。

 

 数拍置いてから、銀時は呆然と言ってくる。

 

「……何してんの?」

「や、そっちから迫っといて、何してんのはないんじゃない?」

 

 顔をしかめながら答えると、銀時は頭をぽりぽりと掻いた。

 

「あぁ……まぁ、そうか……」

 

 困っている銀時が、妙に腹立たしくて、わたしは追い打ちをかけることにする。

 

「これでも、わたし初めてだったんだからね?」

「まぁ、そうだろうなぁ……」

「そうだろうって、わたしそんなにモテなさそうですか? これでも結構美人な分類に入ると思うのだけど?」

「そーゆー意味じゃねェーよ。これでも、昔はずっと一緒にいたお兄ちゃんだからね! 妹の友好関係くらい、把握しとくっての」

 

 ――全然、そんな気を使われてる感じはしなかったけど?

 

 そう返そうとして、やめる。

 

 そういう話をしたいわけではないのだ。

 

 だから、わたしは黙った。

 

 計算がずれた銀時は、嘆息する。

 

 そして、訊いてきた。

 

「――で、どうだったよ?」

「どうだったって?」

 

 首を傾げると、銀時は真面目な顔で訊いてくる。

 

「そのファーストキス。ドキドキしたか?」

 

 彼の口から出る、可愛い単語に、わたしは再び顔をしかめた。

 

 ドキドキしたのか。

 

 覚悟は決めた。なにせ初めてだったし。緊張はした。

 

 だけど、それをドキドキしたかと訊かれると……。

 

 ふと考え込むわたしに、銀時はふっと鼻で笑った。

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