男のためであっても女は売るな①
葬儀も終えて、一週間。わたしの日常は帰って来た。
わたしは、後光を浴びたシャトルを打ち落とす。
「しゃぁおらぁっ!」
「甘いっ!」
地面に届く瞬間に、遮ってくるのは山崎のラケット。高く打ち上げられたシャトルは、前傾であったわたしの頭上を弧を描くように飛び越えて行って。
コトっと、地面の上に落ちてしまった。
わたしはこの不満に口を尖らせる。
「えぇー、なんでー? 何点差よ、今」
「二十点差だね。まぁ、まだバドミントン始めて三日でしょ? やっぱり桜ちゃん、筋がいいよ。もう俺から三点も取れるようになったんだから」
励ますようなことを言いながらも、鼻が高くなっている山崎の顔が憎らしい。
わたしはラケットを山崎に突き付ける。
「まだまだ! 次行くわよ、山崎っ!」
「えぇー、そろそろお昼ご飯でも食べようよ……あ、沖田隊長! お疲れさまっす!」
山崎が頭を下げる先には、耳にイヤホンを付けた沖田が、ズボンに手を入れながら歩いていた。わたしと目が合うやいなや、そのイヤホンを外して、
「おい、桜。区切りいいなら、たまには昼飯でも一緒に……」
何食わぬ顔で誘ってくるので、わたしはプイっと顔を背けた。
「ったく……あんなことでいつまで怒ってるんでィ。アンタの裸くれェ、出会いがしらに散々拝んでるっつーの」
「そういう問題じゃありません!」
「じゃあアレか? 汗臭せェー締め付けてそうな服着たまんま布団に転がせば良かったのかよ?」
「良かったんですよ、それで」
そう言い捨てて、わたしは山崎の手を引いた。
「行こ、山崎。わたしお腹空いた」
すると、山崎がわたしの耳元で慌てて言ってくる。
「ちょちょ、桜ちゃん、やばいってそれは!」
「え? 何がやばいのよ?」
「沖田隊長が先にお昼誘ってきてんだから、それをないがしろにして俺なんかとは……」
「山崎無駄に三十路越えしてんだから、黙らせといてよ」
「無理だって! 黙らせる前に俺の生首がリアルに飛んで黙らされちゃうよ!」
今日はとってもいい天気である。しかし、紅葉を散らし切った風は、もう冷たい。
「……弱いなぁ」
「やめて! しみじみと遠い目をして言うのはやめて! わかってるから! 俺が弱いのはわかってるから、せめてもっと冗談っぽく言って!」
その時、正門から聴こえてくるのは、珍しい声だった。
「ちわーっす。ちょいとお邪魔しますよー」
誰の許可もなく入って来た四人の姿に、わたしは目を見開いた。
白髪のもじゃもじゃ頭の侍が、わたしの姿を見るやいなや、
「おーい、桜ちゃーん。お兄ちゃんが遊びに来ましたよー」
へらへらと笑みを浮かべて来る。
その笑顔に、わたしは思いっきり顔をしかめた。
――怪しい。めちゃくちゃ怪しい!
銀時とは、葬儀の時に顔を会わせていた。病院での一件があったものの、その時は普通に挨拶して、普通に一緒にお
それはそれで、腹立つものの。
しかし今、銀時は何かを企んでいる顔だった。絶対にわたしに何か面倒なことを押し付けてきそうな顔だった。
――どうする……どうする、わたし!