偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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男のためであっても女は売るな②

 考える。屯所内に入ろうとするには、ふてくされた顔をしている沖田が立ちはだかっており、門から外で出ようには、怪しい笑みを浮かべている銀時が歩いてくる。

 

 そして、気が付いた。銀時の後ろを歩くのは、赤いチャイナ服の神楽と、どこにでもいそうな眼鏡少年の新八である。そこにいるもう一人が、にこやかな顔でわたしに手を振っていた。

 

「久しぶりね、桜さん。あの時は楽しかったわね」

 

 まだ少し暑かった頃、本当に屯所の自室で軟禁されていた時に、一緒にお風呂に入った女性だった。

 

 名前は確か、志村妙。眼鏡少年、新八の姉だったはずである。

 

 長い髪をポニーテールにして、水に濡れてなくてもしたたかそうな気品があった。

 

 とりあえず、わたしは彼女に対して会釈をする。

 

「ご無沙汰しております、妙さん……こちらこそ、あの時はありがとうございました」

「ふふ。また一緒にアイス食べましょうね」

「え、なに? お前ら知り合いなの?」

 

 銀時がわたしたちを交互に指差して来る。わたしと妙は顔を見合わせて、笑った。

 

 わざわざどんなことがあったか、話す必要もないだろう。

 

 ――その方が、面白いしね。

 

 なので、わたしは話題を変えることにする。

 

「で、お兄ちゃんは何しに来たの?」

「おー、よくぞ訊いてくれました! 実は、お兄ちゃんは桜ちゃんに大事なお願い事があってだな――」

 

 予想通りなことを話し出す銀時の横から、神楽が銀時の袖を引っ張っていた。

 

「なーなー、だから、可愛い子なら、わざわざこんなトコ来なくてもいつも傍にいるアルよ!」

「桜ちゃん、今晩暇? お兄ちゃんのお仕事をちーっとばかし手伝ってもらいたいのだけど」

 

 神楽を無視しながら、銀時はへらーと愛想笑いを浮かべてくる。

 

「……どんな仕事よ?」

 

 白昼堂々、子供たちも引き連れて頼みに来たのだ。物騒な依頼ではないだろう。だけど、ろくな依頼でないことは銀時の顔を見れば明白である。

 

 聞くだけ損かもしれない。けど、聞かずに追い返すのは気が引ける。

 

「銀さん、私から説明させてもらっても構わないかしら?」

 

 すると、妙が一歩前に出てきた。銀時は「あぁ、どうぞ」と快諾する。

 

 そのやり取りに小首を傾げると、妙はわたしに頭を下げてきた。

 

「お願いします。私の店を、助けてください!」

 

 

 

 

 要約すれば、妙の働くキャバクラで一日店員として働いてほしいということだった。

 

 そこで働く従業員たちが、妙以外全員食中毒に遭ってしまい、出勤できなくなってしまったのだ。

 

 しかし、今日は江戸随一の大事なお客の予約が入っている。そのため、臨時休業にすることも出来ない。

 

 そのため、妙の知り合いであり、そのキャバクラの客として利用していた銀時率いる万事屋に、臨時従業員を手配してほしいと依頼があったという。

 

 そこで、見目麗しいわたしに白羽の矢が立ったのだ。

 

「けど、お兄ちゃん。仮にも妹にキャバ嬢やれっていうのは、兄としてどうなの? 倫理とかモラル的なものとして」

「なーに言ってんの。キャバ嬢だって立派なお仕事よ? お客さんに気持ちよくお金を落とさせるなんて、誰も損のしない素敵な営業じゃないか! さらに、給料もいい! 桜ちゃん、たくさんのお金を短時間で稼げるんだよ! タイムいずマネーだよ!」

 

 つまりは、この斡旋がうまくいけば、万事屋にもかなりのお金が入るという。

 

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