偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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猿山の大将は高いところが好き③

 しかし、わたしたちはあなたを騙そうとしているのだよ。

 

「おれが見つけるから、きちんとした償いになるんでさぁ。おれが悪いことしたのに、他人の手……しかも、大勢の兵を借りるなんて、問題外だぜぃ」

 

 まぁ、意外と本筋に違いはないのかもしれないが。

 

 将軍は再び、感心したような目を向ける。

 

「主は……見事な侍だな」

 

 わたしは苦笑した。

 

「まさか。ただの、宇宙一馬鹿な侍ですよ」

「そんな馬鹿な侍に、友が手を貸すには問題あるまい」

「ん?」

 

 嫌な予感がして、わたしが首を傾げると、

 

「余も一緒にその鞠を探そう! どんな鞠だ? 何色だ? 高いところは余に任せておけ。これでも幼少の頃はお猿の将ちゃんと呼ばれたこともあるのだぞ」

 

 ――将ちゃぁぁああん、そのいい人っぷりもいい加減にしてー!

 

 心の中で泣き叫びながらも、その後、将軍を説得するのに十分以上はかかった。

 

 

 

 見上げなくても満月が見える。よく月にはうさぎが住んでいるというが、わたしはうさぎではなく、神様がいるのだと思う。もしかしたら、神様がうさぎなのかもしれないし、ただうさぎのコスプレをしているだけかもしれない。

 

 実際は天人(あまんと)の協力を得た調査で、月に生物は何も存在してないらしいが、そんなことわたしには関係がなかった。

 

 月には神様がいて、いいことが誰にも気づいてもらえなかったとしても、必ずその見返りはあるのだと。

 

 月には神様がいて、暗闇に隠れてどんな悪さをしても、必ずそれを罰するのだと。

 

 月には神様がいて、いつでも頑張って生きている人を見守ってくれているのだと。

 

 そう、教えてくれた人がいた。

 

 その人は温かいのだけど、太陽のような絶対的存在感はなく。どちらかといえば、月のようにどこか冷たいのだけど、優しい光を与えてくれる人だった。

 

 だから、月を見ると思い出すのだ。

 

 もう、この世にはその神様がいないことを。

 

「満月を後光にするなんて、カッコつけているつもり?」

 

 わたしは足を踏みしめつつ、瓦屋根をゆっくり上がっていく。

 

 天守の頂上に立つ避雷針に紐で結ばれているのは、気絶している沖田総悟。

 

 その前には、御徒士(おかち)が悠然と立っていた。鋭い眼光をしているが、決してわたしを警戒しているわけではない。そんな余裕が腹立つ。

 

「来たか。もう少し早くに来ると思っていたのだが」

「ちょいとしつこいナンパにあってね。撒くのに時間がかかったのよ」

 

 軽口叩いて、振り返る。

 

 天守の頂上はわかってはいるが、とても高い。夜の城下は暗闇にかすんでほとんど見えない。ちらほらとある提灯(ちょうちん)の灯りが、都会に迷い込んだ蛍のように儚かった。

 

 わたしは前を向く。

 

「しかしまぁ、こんな派手なところで、むしろあんたが捕まったりしないわけ?」

「将軍の護衛を主な仕事とする我らがいたところで、怪しむ者はいない。それに、人は見下ろしたものを凝視することはあっても、見上げたものを凝視するということはしないものだ」

「そういうもんかしらね」

 

 きっと誰かに対する皮肉なのだろうが、わたしにそうゆっくり構っている暇はなく、

 

「じゃあ、気づかれないうちにさっさと用を済ませようかしら」

 

 腰の刀を、引き抜いた。

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