ワンピースというものを着たのは初めてである。
その真っ赤な薔薇のようなスカートのワンピースを着てみた感想は、思ったよりも動きやすいということだった。ただ、足元のハイヒールというものは少々バランスが取りにくいが。
肌にも
髪もゆるく巻いて、片側に寄せていた。もう少し髪が長かったのなら、きっともっと映えたであろう。
店のホールに出ると、そこには銀時と新八の二人が待っていた。
「ほぉ、
そして、兄の感想はそういうことらしい。
「ちょっと銀さん! なんでちゃんと褒めてあげないんですか!」
「褒めてんじゃねェーか。だったら新八がもっと気の利いたこと言ってやらァいいだろーが」
「そ、そんな……」
新八はちらりとわたしの方を見ると、すぐに顔を真っ赤にして顔を背けた。
「そんな、女性の肌をそんなマジマジ見るなんて、僕には出来ませんよ!」
――なんて初々しい反応……。
人の裸をマジマジ見ながらニヤリと笑う少年の顔を思い出しながら、わたしは新八の肩をトントンと指で叩く。
「もっと見てもいいよ……?」
すると、新八の耳は真っ赤に染め上がり、両手で顔を押さえてうずくまった。
「純情乙女かよ、テメェーは」
銀時が呆れた様子でそう投げかけるが、同じ感想を抱いて、わたしは苦笑する。
とりあえず、それなりな美しさに仕上がっているらしい。
「……化粧、自分でしたのか?」
「うん。妙さんに教わりながらやってみたんだけど、どうかな?」
横目でじろじろ見ながら訊いてくる銀時に、小首を傾げる。
「立派なもんじゃねェーか」
その思いがけない賛辞に笑みを返し、わたしはついでに小さな声で訊いてみた。
「キス以上のことしたくなりましたか?」
「バカヤロー」
軽く背中を叩かれ、わたしが笑った時である。
「銀ちゃん銀ちゃん! 私はどうアルか?」
スタッフ口から飛び出してきた顔に、思わずわたしは吹いてしまった。
いつもよりも少し豪華なチャイナ服はいいのだが、おろした髪はくるくるを通り越してチリチリ。まつ毛はバサバサ、目の回りはパンダ。頬にピンクのまるまるとしたスタンプを付けた口裂け女顔に、銀時は半眼を返すだけだった。
「……どうしてお前、やってやんなかったの?」
「ごめん、自分のことで手一杯だったよ」
銀時とそうコソコソ話す間を縫うように、神楽は間を飛び回る。
「なぁー、銀ちゃんどうアルかー? 綺麗すぎて言葉も出ないアルかー?」
「ほら、はしたないわよ」
その時、神楽の肩を押さえつけるようにして、制止させる女性が現れた。
緩やかな亜麻色の髪を腰まで伸ばした女性である。背は女性にしては高い方で、深く入ったスリットからは締まった脚がなめやかに伸びていた。品のある整った顔立ちの中に、好戦的な瞳が光る、そんな魅惑的な女性である。女であるわたしも、一瞬目を止めてしまう美しさがあった。
そんな彼女が片目を閉じて、
「賛辞は自分から求めてはだめ。男は寄ってくる魚には餌を与えないものなんだから。女の一番の化粧は笑顔よ。笑ってなさい。あなたはそれで充分可愛いのだから」
言い聞かせるように神楽にそう言うと、彼女は満面の笑顔で頷いた。
――それでも、化粧が下手なのは致命的だと思うけどね。
しかし、本人がとても満足そうなので、わたしは何も言わないでおくが。しかし、彼女が言うと、こんな化粧をした神楽でも、可愛いと思えてしまうのが不思議である。
――これが、本物の夜の蝶ってやつなのかしら。
そんなことを考えていると、その女性が近寄って来て、わたしの首に触れてくる。
「イイモノ付けてるじゃない。ずいぶん飼い主に従順なのね」