偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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女の敵は女②

 首には、いつもの赤い首輪を付けていた。彼女の指先が鈴に触れて、チリンと可愛い音がする。

 

 色も合うし、ワンピースの胸元がかなり開いていたから、露出を押さえる意味でも付けたままでいいかと思ったのだが。

 

「……なかなか、そそるじゃない」

 

 唇を舐めながらそういう彼女の顔が、彼と重なる。

 

「……離れてもらえます?」

「あら、御免なさい」

 

 顔をしかめるわたしに、彼女は余裕の笑みを返した。

 

「お姉ちゃんも今日の助っ人なのか?」

 

 一歩後ろに下がった彼女に対して、銀時が疑問を投げかける。

 

 彼女は髪を指で弄びながら、名乗った。

 

「えぇ。今日はランと名乗らせてもらうから。よろしくね、旦那様」

「旦那ってか……普段はメイドかなにかか?」

「それは秘密」

 

 唇の前で指を立てる彼女の手は、さっきも思ったがけっこう大きいようだ。肩幅も少し広いのか、ストールを巻いて隠しているようである。

 

 それでも、爪は赤で彩られており、動きの一つ一つが優雅。努力を欠かさないこういった女が、きっと本物の夜の蝶なのだろう。

 

 ――侍が、一丁一夕で蝶になれるわけがない……か。

 

 ちょっとだけ落胆しながら苦笑していると、

 

「皆さま、準備が整いましたか?」

 

 現れたのは、この店のオーナーらしき男。いかにも胡散臭い恰好の男の隣には、紫の着物をしっぽり着こなす妙がいた。

 

 ――あら、いつも通りなんだ……。

 

 そんな疑問を口に出す間もなく、オーナーがパンパンと手を叩く。

 

「もうすぐお客様が到着されます! 皆さま、不慣れな方も多いとは思いますが、今日一日、なにとぞ! なにとぞ宜しくお願いいたします!」

 

 オーナーも緊張しているのだろう。声かけが堅かった。

 

 スタッフの半分は素人で、しかも四人のみ。それでも迎えなければならない客が果たして誰だかは知らないが、江戸随一の大物とのこと。失敗したとならば、店が潰れるのも簡単らしい。

 

 ――それで、妙さんが職を失うのは、可哀想だしね。

 

 わたしのそんな同情をよそに、妙はいつも通りの朗らかな笑顔だった。

 

「さぁ、みんな! お迎えの準備をするわよ! 入口に集合して!」

 

 わかりやすい指示の元、移動する。入口付近で並べと言われ、わたしと神楽、反対側に妙とランが並んだ。

 

「なぁーなぁー、私でもちゃんと出来るアルか?」

 

 いざとなって不安になってきたのか、神楽がわたしを見上げてくる。

 

 ――可愛いなぁ。

 

 極力優しい笑顔を作って、わたしは頷いた。

 

「大丈夫だよ。基本的に笑って話を聞いていればいいだけらしいし」

「簡単アルな!」

「わたしたちなら楽勝でしょ」

 

 わたしがこぶしを作ると、神楽のこぶしがカツンと当たる。

 

 さて、と入口が開くのを確認しようと視線を動かしたとき、向かいのランと視線が合った。

 

 何か言いたげな顔でこちらを見ては、挑発的に口角を上げていて。

 

 ――何、あの人……?

 

 訝しく眉をしかめた瞬間、扉の向こうから現れた人影に、わたしは驚愕の声を上げる。

 

「と……トッシー!」

「だからトッシー呼ぶなっつーの!」

 

 登場早々そう怒鳴ってくる土方は、いつもの黒い真選組の制服を着ていた。そして、隣には局長が残念そうな顔でこちらを見ていた。

 

「もしかして……桜ちゃんにとって、俺って影薄い……?」

「や、別にそういうわけじゃないけど、なんか近藤さんってよく唾が飛んでくるようなイメージでね?」

「ひどい! ひどいよ、桜ちゃん!」

 

 何故か近藤が泣いているが、そんなことは今はどうでもいい。わたしは土方に尋ねる。

 

「江戸随一の客って……まさか真選組ってオチはないよねぇ?」

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