偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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女の敵は女③

 すると、土方は鼻で笑った。

 

「んなわけねぇーだろーが。所詮俺らはイモ侍……しかも、近藤さんなんか週に二回は通ってらぁ」

「お妙さんに会うためなら、たとえ屋根裏やら井戸の中!」

 

 こぶしを握り熱く宣言する近藤に、わたしは呆れて言い返す。

 

「妙にリアルで、嫌」

「どうせなら、もっと頻繁に通ってくれればいいのにねぇ。出来れば、頻度少なく金多く落としてくれるのが一番。ゴリラに会わなくて済むし」

 

 頬に手を当ててため息交じりで言う妙を見ると、この恋はきっと成就しないのだろうが。

 

「お妙さーん、そんな寂しいこと言わんでくださいよぉー」

 

 なんて、鼻の下を伸ばしている近藤にしてみれば、照れ隠しにでも見えているのだろうか。

 

「……て、こんなくだんねぇー話している場合じゃねぇーんだよ。桜、やると決めたからには、きちんともてなしてくれよ? この任務には真選組総出で取り掛かってるんだから」

「ん……うん」

 

 土方の思いがけない真剣な眼差しに、虚ろな返事を返すと、

 

「それでは、準備整いましたので。お入りください、上様(うえさま)

 

 近藤と土方は(うやうや)しく頭を下げて、扉を開ける。

 

 上様。

 

 決して、領収書で名称不明な人に対する呼び名ではないことは、知っている。

 

 ならば、真選組の上役がそう呼ぶ相手は誰か。

 

 想像するのは容易く、現実を受け入れるには難しく。

 

 だけど、その見事なちょんまげを見れば、わたしは声高々に彼をこう呼ぶしかなかった。

 

「しょぉぉぉおおちゃぁぁぁあああん!?」

「久方ぶりだな、桜ちゃん――と、直接こう呼ぶのは初めてだったか。嫌ではないか?」

 

 薄い顔付きながらも優しい微笑。落ち着いた耳に心地の良い声音。ずっしりと上質な着物をきっちりと着こなす彼の名は、徳川茂茂。

 

 誰もが知っている、江戸随一の偉い人、将軍様である。

 

 ――そりゃあ、粗相の一つでもあれば、こんな店簡単に潰れるわ。

 

 そんな納得をしつつも、わたしは将軍に質問されていたことを思い出して、首をぶんぶん振る。

 

「とんでもない……いや、とんでもございません、上様。むしろ、わたくしなどの名を呼んでいただくなど、恐れ多い次第でございます!」

 

 そう言って頭を下げると、頭上から悲しげな声がする。

 

「そんな構えないでくれないか……余は、思いがけず友に会えて嬉しいのだ。それとも、友と思っているのは、余だけなのか……?」

 

 そんなことを言われ、わたしは慌てて顔を上げた。

 

「いやいや、そういうわけじゃないし、わたしも久しぶりに会えて嬉しいんだけど、でもわたし今キャバ嬢だし……」

 

 手を振りながら助け船を求めて見渡せば、将軍の後ろからひょこっと顔をのぞかせるのは、白髪交じりのおっちゃんだった。

 

 サングラスをかけた軍服を着たおっちゃんは、これまた親し気に手を振ってくる。

 

「おー、ほんとに桜ちゃんがいたんだねー。大丈夫だよー、ちゃんと報告は近藤から受けてるからー。ここは俺らの身内しかいないし、店の回りも真選組が警備に当たっている。気を楽にしてくれて構わないよー?」

 

 やたらダンディな声音の偉い人は松平片栗虎。真選組のさらに上の人である。

 

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