――何なのよ、あの女は!
ちぃちゃんを持つ手がわなわな震える。すると、隣の将軍が、
「どうしたのだ? もしかして、緊張しているのか?」
そんなことを、言ってきて。
「へ?」
「恥ずかしながら、余も緊張していてな。城下のことを知るのも仕事だと松平候に促され、こうしてやって来てはみたものの……こうして女性と対面して話す機会は今までなかなかなくってだな。今日は桜ちゃんがいてくれて、本当によかったと思っている」
少し照れた様子で話す将軍は、なにやらいいことを言っているようだが。
要約すれば、こういうことだろう。
「……それは、わたしが女らしくないということで、いいのかな?」
「いや! そういうことではない! そういうことではないのだ! 現に今日の桜ちゃんの姿を見て余は……」
慌てて否定をするものの、言い淀んではシャンパンを一気に飲み干す将軍。
「ほらほら、桜さん。おかわり注いで差し上げて」
妙に促されて、わたしはテーブルの中央に置かれたボトルを手に取る。
「……別にいいもん。どうせわたしなんて、侍上がりの男くさいのが似合っている奴だもの」
呟きながら、空いた将軍のグラスにシャンパンを注ぐ。ちょうどボトルがカラになったので、近くに立っていたウエイター姿の銀時に目で合図をし、それを渡すと、
「なーなー、もしかしてさ……もしかして、そのしょうちゃんってさ……?」
小声で、目を泳がせながら訊いてくる銀時に、わたしは簡潔に答える。
「将ちゃんは将軍様の略だけど、それがどうかした?」
「どうかしてるじゃねェかァァァアアア!」
手をわなわなさせる銀時のお盆を支えつつ、わたしは真顔で言う。
「大丈夫よ。そんな驚きと恐れはとっくに通り過ぎて、開き直って友達マイフレンドよ!」
「待って! 若いからこそ開き直れるその境地に達するの、お兄ちゃん時間かかるから待って!」
「……なんか、無理みたいだよ」
お盆を銀時に押し付けると、他のみんなはなにやらゲームを始めるようだった。
その名はまさに、
「将軍ゲェェェムっ!」
松平の手には、人数分の割りばしが握られていた。
「なんアルか? 将軍ゲームって」
「ルールは簡単。割りばしを引いて、将と書かれている人がそのターンの将軍。ほかの割りばしには番号が書かれていて、将軍は好きな番号の人に、命令をすることができるって遊びさ」
首を傾げる神楽に、松平は簡単に説明する。
「命令ってなんでもいいアルか?」
「あぁ、もちろん。しいていえば、この場が盛り上がるような命令ってのが縛りだな――じゃあ、せーので一斉に引いて、掛け声で同時に将軍かどうか確認するからな……せーのっ!」
みんなが一斉に割りばしを引く。わたしも一足遅れて、残りのうちの一本を引き、
「じゃあじゃあ……将軍だーれだ!」
手を開く。割りばしの下の方には、三と書かれていた。
その時、
「私だァァァァァア!」
そう叫ぶのは、仕切っていた松平のおっちゃん。
「くっくっく……残りものには福があるとは、まさにこのことだな」
どこの悪者だよという笑い声をあげる松平を冷たい目で眺めていると、その隣のランが笑顔でチラリとこっちを見て、口を動かしてくる。
――わ、らえ……?
プロ根性というものなのだろうか。この出来レースを笑顔で楽しめと指示してくる彼女に、口パクで「はーい」と応え、とりあえず口角だけは少し上げてみる。
そして、松平将軍は命令した。
「では、将軍命令だ――三番、服を脱げぃ!」