その男には、緑の
なんで二回言ったかって? それは、それしか見えないからだ。
さっき一瞬見た様子だと、眼のふちに
そんな世紀末の崖っぷちを全力で満喫しているような男が、ここぞとばかりに張り切っていた。
「命が惜しくば、金目のもの出せぃ!」
なぜその姿をきちんと確認できないかといえば、舞い踊る銃弾からわたしを守るように、ランがわたしに覆いかぶさっているからだ。
男がマシンガンを構えて入って来た瞬間に、ランはわたしを抱え込んだ。
「ったく、アイツなにしやがってんだ……」
息が目にかかるその距離で毒づくその顔は、見覚えがあって。
「オイ、桜。大丈夫か?」
その修羅場をいくつも潜り抜けてきたような
「あなた……もしかして……」
そう言いかけた時、銃声がピタリと止んだ。
「ヤベ、銃弾切れやがった……」
そんな声に、みんながそろりと上体を起こそうとすると、
「なんてなァァァァアアアアア!」
また再び、ダダダと銃弾が吹き荒れた。辺りのソファやカーペットはボロボロ。シャンデリアは異様なバランスで大きく揺れていた。
それに、ランと名乗った彼は舌打ちする。
「性格悪りィなー、ストレスか?」
「ドSの君に言われたくはないと思うよ?」
思わず返したわたしに、彼はニヤリと口角を上げた。
「お、ようやく飼い主に気付いたかィ」
「何してんの、一体……」
半眼を向けるわたしに、女装している沖田総悟は後ろを親指で指す。
「それはまず、あのバカに言ってやってくれや」
「……知り合いなの?」
「山崎」
彼の言った人名を、繰り返す。
「山崎?」
「そ、山崎。マウンテン
「山崎って、あの地味な山崎」
「そ、アンタの浮気相手の山崎」
「誰が浮気なんて!」
わたしが声を荒げると、同時に銃声が再び止んで。
「オイ、今叫んだ女! こっちに来い!」
山崎らしい世紀末山崎に、呼ばれる。
沖田の腕の隙間から覗き見れば、世紀末山崎とばっちり目が合って。
「お前だ、お前! これ以上撃たれたくなければ、こっちに来やがれ! そろそろ本気で誰かに当てちまうかもしれねェーぜ?」
――あれが、山崎ねぇ……。
普段の地味を絵に描いたような山崎の顔を思い浮かべる。よく見れば、似てるかもしれない。てか、同じような隈取して、同じような髪型をすれば、誰だろうが見分けがつかないかもしれない。
「……とりあえず、どいて?」
わたしは彼を押しのけて、ソファから立ち上がる。
「オイ、大人しく人質にでもなるつもりかよ?」
伸ばして来る手を、わたしは振り払った。
「うん」
「そんなにアイツがいいのか?」
真剣な顔でそう言ってくる沖田に、わたしは顔をしかめた。
「……今、仕事中だって言ったの、誰だったっけ?」
わたしはそう言い残して、世紀末山崎の元へ歩く。
将軍はテーブルの下に隠れていた。他の面々も、ソファの上で丸くなっていたり、とりあえず無事そうである。
銀時と新八の姿は見当たらず。だが、こんな三流にやられるわけはないと、無条件で無事を認識する。
三流なのだ。やることも、見た目も。
とりあえず、わたしは仕事であろうことをする。
――将軍に傷の一つでも付けちゃ、いけないわよね。
今一番やらなければならないことは、将軍も無事を確保することである。
そのためなら、人質だろうがなんだろうが、お安い御用だ。
それなのに、
「待ちたまえ! 人質ならば、余がなろう!」
いつの間にかテーブルから出てきた将軍は、裸のまま仁王立ちでそう言い切った。