偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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地味な人生に拍手を送ろう①

 

 

 

 

 その男には、緑の鶏冠(とさか)が付いていた。

 

 なんで二回言ったかって? それは、それしか見えないからだ。

 

 さっき一瞬見た様子だと、眼のふちに隈取(くまどり)がしてあるようだ。上半身が裸で、黒いズボンを履いているその姿はまさに世紀末。

 

 そんな世紀末の崖っぷちを全力で満喫しているような男が、ここぞとばかりに張り切っていた。

 

「命が惜しくば、金目のもの出せぃ!」

 

 なぜその姿をきちんと確認できないかといえば、舞い踊る銃弾からわたしを守るように、ランがわたしに覆いかぶさっているからだ。

 

 男がマシンガンを構えて入って来た瞬間に、ランはわたしを抱え込んだ。

 

「ったく、アイツなにしやがってんだ……」

 

 息が目にかかるその距離で毒づくその顔は、見覚えがあって。

 

「オイ、桜。大丈夫か?」

 

 その修羅場をいくつも潜り抜けてきたような()のような声に、聞き覚えがあって。

 

「あなた……もしかして……」

 

 そう言いかけた時、銃声がピタリと止んだ。

 

「ヤベ、銃弾切れやがった……」

 

 そんな声に、みんながそろりと上体を起こそうとすると、

 

「なんてなァァァァアアアアア!」

 

 また再び、ダダダと銃弾が吹き荒れた。辺りのソファやカーペットはボロボロ。シャンデリアは異様なバランスで大きく揺れていた。

 

 それに、ランと名乗った彼は舌打ちする。

 

「性格悪りィなー、ストレスか?」

「ドSの君に言われたくはないと思うよ?」

 

 思わず返したわたしに、彼はニヤリと口角を上げた。

 

「お、ようやく飼い主に気付いたかィ」

「何してんの、一体……」

 

 半眼を向けるわたしに、女装している沖田総悟は後ろを親指で指す。

 

「それはまず、あのバカに言ってやってくれや」

「……知り合いなの?」

「山崎」 

 

 彼の言った人名を、繰り返す。

 

「山崎?」

「そ、山崎。マウンテン殺鬼(ザキ)のザキは、山崎のザキ」

「山崎って、あの地味な山崎」

「そ、アンタの浮気相手の山崎」

「誰が浮気なんて!」

 

 わたしが声を荒げると、同時に銃声が再び止んで。

 

「オイ、今叫んだ女! こっちに来い!」

 

 山崎らしい世紀末山崎に、呼ばれる。

 

 沖田の腕の隙間から覗き見れば、世紀末山崎とばっちり目が合って。

 

「お前だ、お前! これ以上撃たれたくなければ、こっちに来やがれ! そろそろ本気で誰かに当てちまうかもしれねェーぜ?」

 

 ――あれが、山崎ねぇ……。

 

 普段の地味を絵に描いたような山崎の顔を思い浮かべる。よく見れば、似てるかもしれない。てか、同じような隈取して、同じような髪型をすれば、誰だろうが見分けがつかないかもしれない。

 

「……とりあえず、どいて?」

 

 わたしは彼を押しのけて、ソファから立ち上がる。

 

「オイ、大人しく人質にでもなるつもりかよ?」

 

 伸ばして来る手を、わたしは振り払った。

 

「うん」

「そんなにアイツがいいのか?」

 

 真剣な顔でそう言ってくる沖田に、わたしは顔をしかめた。

 

「……今、仕事中だって言ったの、誰だったっけ?」

 

 わたしはそう言い残して、世紀末山崎の元へ歩く。

 

 将軍はテーブルの下に隠れていた。他の面々も、ソファの上で丸くなっていたり、とりあえず無事そうである。

 

 銀時と新八の姿は見当たらず。だが、こんな三流にやられるわけはないと、無条件で無事を認識する。

 

 三流なのだ。やることも、見た目も。

 

 とりあえず、わたしは仕事であろうことをする。

 

 ――将軍に傷の一つでも付けちゃ、いけないわよね。

 

 今一番やらなければならないことは、将軍も無事を確保することである。

 

 そのためなら、人質だろうがなんだろうが、お安い御用だ。

 

 それなのに、

 

「待ちたまえ! 人質ならば、余がなろう!」

 

 いつの間にかテーブルから出てきた将軍は、裸のまま仁王立ちでそう言い切った。

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