――なにしてんだこの将軍はァァァァアア?
パンツ一枚でカッコいいことを抜かしている将軍のドヤ顔をぶっ飛ばしたいのを我慢して、わたしは言う。
「……変態ちょんまげ野郎がカッコつけたって、気持ち悪いだけだけど?」
あ、将軍泣いた。
けど、そんな些細な問題はどうでもいいのだ。
将軍の御身が大事。メンタルが多少傷つきようが、命あっての物種だ。
だけど、将軍は挫けなかった。
「たとえ余が変態であろうとも、人質としての価値なら負けてはおらぬぞ!」
世紀末山崎が言う。
「や、人質は可愛い女の子に限るっしょ」
あ、将軍また泣いた。
ともあれ、今のやり取りで分かったことがある。
この世紀末、将軍がいるからこそ、こんな暴挙に出たわけではないらしい。
普通に考えるならば、ただの強盗。先程金目のものを出せとも言っている。ちょうどターゲットに選んだ店、日時に将軍がいたというだけかもしれない。ただ、普通の三流風情な強盗が、真選組の目を掻い潜って、ここまで侵入できるものだろうか。
しかし、世紀末とはいえ山崎ならば。今日ここに将軍がいるという事実を知らないわけはない。今日は真選組の存続がかかった、大きな仕事なのだから。山崎だって、警備などの仕事が与えられているに違いないだろう。
ならば、どうして山崎が世紀末となってここにいるのか。
本当にストレスでおかしくなってしまって、こんな暴挙に出ている可能性も無きにしも非ず。現に、沖田はそう思っている節があった。
だけど、この数時間前まで一緒にバドミントンをしていたわたしからすれば、そこまで病んでいたとは考えにくい。
他の理由を挙げるとすれば。
――演出か!
ハプニングとは、時として人生を盛り上げる大きな一因となる。
将軍の初めての夜遊び。夜遊びならば、ちょっとした刺激があってもおかしくはない。むしろ、静穏無事に終わってしまっては、面白くないだろう。
きっと沖田は、細かな演出の内容までは知らされてなかったのかもしれない。
――なんか、おかしな方向持っていきそうだしね。
ならば、この演出の目的は、人質にされたキャバ嬢を将軍がカッコよく助けて、将軍に
だから、世紀末もあんな言い方をしてでも、人質役を将軍にやらせるわけにはいけなかったのだ。
――じゃあ、人質役のわたしがすることは……。
それを思案しながら、わたしは世紀末の元で辿り着く。
「おー、近くで見ると、より可愛いじゃねェか!」
世紀末はなんだかそれらしいことを言って、わたしの後ろから手を回し、首にシャキッとナイフの当てた。
「この女の命が惜しくば、ありったけの金を集めて来いよォ!」
「……甘いわね」
威勢よく叫ぶ世紀末山崎に、わたしは小さくダメ出しした。
「脇が緩いわ。それに、左手でわたしを羽交い絞めするくらいいしないと、背負い投げが容易に出来てしまうけど?」
「お……おう……」
言われた通りにする世紀末。ある程度は良くなったが、ナイフの角度が気に食わなかった。首に刃が向いてなかったら、臨場感がないじゃないか。
「あと、もうちょっと手首を捻りなさい」
「え……けど、そしたらホントに首に傷が……」
「やるからには本気で!」
「ハイィィィィイ!」
裏返った返事をして、世紀末がよくやくまともにわたしを拘束した。
さて、と一息吐いて、前を見ると。
――あれ?
首を傾げたくなるところを、我慢する。
沖田が、すごく心配そうな顔をしていた。