真剣で。少し焦っているような、そんな眼差しで。
――迫真の……演技?
そうとしか思えないような表情に、笑いたくなるのを我慢する。
たとえ、山崎が本当にご乱心だとしても。
――わたしが山崎なんかに負けるわけはないじゃないか。
そう考えれば、不服でもあるが。
しかし、今それを訴えるのは、場の空気を壊してしまう。
将軍様に、臨場感あふれる危機感を味わってもらわなければ。
「た……助けて……」
震える声音で言う。敢えて目を瞑っているのは、泣いているのか笑っているのか、誤魔化すため。
「くそっ」
駆けだそうとする沖田を、押さえたのは、将軍だった。
「
そう言って一歩前に出るのは、裸の将軍。
「マウンテン
そう話ながら、悠然と歩いてくる将軍に、世紀末は狼狽えながら「お……おう」と答える。
まっすぐこちらを見据えてくる白ブリーフの男に、恐怖感を抱くのはわからないでもない。
けど、手が震えると本当にわたしの首が切られてしまいそうで、余計な恐怖でわたしは顔をしかめた。
「金なんかでよければ、余がいくらでも出そう! だから、その娘を離したまえ!」
「いくらだァ? そう大口叩くくらいなら、金百両くらいは出してくれるんだろうなァ?」
「百億」
「……はぁ?」
百億と言い切る将軍に、思わず聞き返したのはわたしだった。
「ちょっと将ちゃん、こんな身分もろくにない女に、さすがに百億はないんじゃないの?」
財政などまるで詳しくないが、おそらく国家予算規模の金額である。それに、将軍は真顔で首を振った。
「何を言う。汝は余の友なのだぞ? 友のためならば、金などいくら積もうとも、まるで惜しくない。喜んで払おうではないか!」
――大丈夫かなぁ、この国……。
なんとなく、
世紀末は叫ぶ。
「な……なら! 持ってきやがれ百億両ッ!」
「かしこまった。じゃあ……」
その時には、将軍はもう目の前にいて。
将軍の腕が眼前まで伸びてくる。ナイフを持つ世紀末の手を捻った。
「いでででででで!」
「独房の中で百億両稼げるようになるくらい、きっちり反省してもらおうではないか」
そう言いながら、空いている手でわたしを引き寄せる。
「桜ちゃん、怪我はないか?」
「大丈夫大丈夫」
見上げる将軍の顔はとても端正で。
「将ちゃん、格闘出来るんだね?」
「護身術を教わっていた程度だ」
護身術を嗜む程度で、ここまで鮮やかなお手並みだと、アッパレであるが。
わたしは顔を上げたまま、にこりと微笑む。
「ありがとう」
「う、うむ」
将軍の顔が少し赤らみ、照れ臭そうに笑みを浮かべた。わたしはその顔を見続ける。
――下向けば、パンツ一枚だからね。
しかしまあ、これで将軍もカッコよく人質救出できて、いい体験となっただろう。果たして、ネタバレするのかしないのか、周りの様子を伺おうとした時だ。
「オレ様を馬鹿にすんじゃねェェェェェエエエエ!」
ナイフ構えて、突っ込んでくる世紀末。血走ったその目と、勢いを、さすがに将軍が無傷で対処するのは難しいだろう。
――さすがに、そろそろいいわよね。
わたしは迫るナイフを蹴り飛ばそうと、脚を振り上げた時だ。
「あ」
軸足が、くきっと曲がる。
――あ、ヒール履いてたんだっけ。