偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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地味な人生に拍手を送ろう③

 真剣で。少し焦っているような、そんな眼差しで。

 

 ――迫真の……演技?

 

 そうとしか思えないような表情に、笑いたくなるのを我慢する。

 

 たとえ、山崎が本当にご乱心だとしても。

 

 ――わたしが山崎なんかに負けるわけはないじゃないか。

 

 そう考えれば、不服でもあるが。

 

 しかし、今それを訴えるのは、場の空気を壊してしまう。

 

 将軍様に、臨場感あふれる危機感を味わってもらわなければ。

 

「た……助けて……」

 

 震える声音で言う。敢えて目を瞑っているのは、泣いているのか笑っているのか、誤魔化すため。

 

「くそっ」

 

 駆けだそうとする沖田を、押さえたのは、将軍だった。

 

女子(おなご)の汝が出ていくのは危ないだろう、ここは余に任せてはもらえないか」

 

 そう言って一歩前に出るのは、裸の将軍。

 

「マウンテン殺鬼(ザキ)と言っていたか……貴公が欲しいのは、金、ということで間違えないか?」

 

 そう話ながら、悠然と歩いてくる将軍に、世紀末は狼狽えながら「お……おう」と答える。

 

 まっすぐこちらを見据えてくる白ブリーフの男に、恐怖感を抱くのはわからないでもない。

 

 けど、手が震えると本当にわたしの首が切られてしまいそうで、余計な恐怖でわたしは顔をしかめた。

 

「金なんかでよければ、余がいくらでも出そう! だから、その娘を離したまえ!」

「いくらだァ? そう大口叩くくらいなら、金百両くらいは出してくれるんだろうなァ?」

「百億」

「……はぁ?」

 

 百億と言い切る将軍に、思わず聞き返したのはわたしだった。

 

「ちょっと将ちゃん、こんな身分もろくにない女に、さすがに百億はないんじゃないの?」

 

 財政などまるで詳しくないが、おそらく国家予算規模の金額である。それに、将軍は真顔で首を振った。

 

「何を言う。汝は余の友なのだぞ? 友のためならば、金などいくら積もうとも、まるで惜しくない。喜んで払おうではないか!」

 

 ――大丈夫かなぁ、この国……。

 

 なんとなく、天人(あまんと)に侵略されたのもわかるような気がして、わたしは苦笑するしかなかった。

 

 世紀末は叫ぶ。

 

「な……なら! 持ってきやがれ百億両ッ!」

「かしこまった。じゃあ……」

 

 その時には、将軍はもう目の前にいて。

 

 将軍の腕が眼前まで伸びてくる。ナイフを持つ世紀末の手を捻った。

 

「いでででででで!」

「独房の中で百億両稼げるようになるくらい、きっちり反省してもらおうではないか」

 

 そう言いながら、空いている手でわたしを引き寄せる。

 

「桜ちゃん、怪我はないか?」

「大丈夫大丈夫」

 

 見上げる将軍の顔はとても端正で。

 

「将ちゃん、格闘出来るんだね?」

「護身術を教わっていた程度だ」

 

 護身術を嗜む程度で、ここまで鮮やかなお手並みだと、アッパレであるが。

 

 わたしは顔を上げたまま、にこりと微笑む。

 

「ありがとう」

「う、うむ」

 

 将軍の顔が少し赤らみ、照れ臭そうに笑みを浮かべた。わたしはその顔を見続ける。

 

 ――下向けば、パンツ一枚だからね。

 

 しかしまあ、これで将軍もカッコよく人質救出できて、いい体験となっただろう。果たして、ネタバレするのかしないのか、周りの様子を伺おうとした時だ。

 

「オレ様を馬鹿にすんじゃねェェェェェエエエエ!」

 

 ナイフ構えて、突っ込んでくる世紀末。血走ったその目と、勢いを、さすがに将軍が無傷で対処するのは難しいだろう。

 

 ――さすがに、そろそろいいわよね。

 

 わたしは迫るナイフを蹴り飛ばそうと、脚を振り上げた時だ。

 

「あ」

 

 軸足が、くきっと曲がる。

 

 ――あ、ヒール履いてたんだっけ。

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